2012-03-09 (Fri)✎
『オホーツク縦貫鉄道の夢』 第31回 つながる事のなかった夢鉄道
この時をもって『夢鉄道』は永遠に
つながる可能性がなくなったのである
雄武・・、ここからは、未成線区間となる。 《雄武》駅(駅跡は『道の駅・おうむ』となっている)の構内から北方を望むと、奥にポッカリと口を開くトンネルの前で線路が途切れていた。
『興浜南線さよなら記念』に
印刷された雄武駅駅舎
雄武駅入場硬券
実際には『国鉄再建法』の施行によりこの先の路線建設は凍結・放置されていたのだが、『架空旅行』としてこの旅行を語るその間だけは、これより《北見枝幸》や《浜頓別》・《稚内》へ向けて線路がつながっているのである。 それでは、《雄武》駅の棒線ホームの《北見枝幸》寄りに停車しているキハ22系の単行気動車に乗り換えよう。
在りし日の雄武駅のスタンプ
《雄武》から《北見枝幸》までの未成線区間は、実に51km余りある。 路線は概ね国道より山側に敷設されていて、海を望むには少し割引感がある車窓風景だ。 北見山地から続くなだらかな丘陵の裾野に広がる酪農地帯の端を“間借り”するかのように細々と軌道は敷設されている。
だが、路線の建設規格は新しく、真新しく真っ白なコンクリート軌道がヤケに目につく。
海からも国道を挟んで微妙に離れていて、期待した割には素気ない車窓風景である。
海からも国道を挟んで微妙に離れていて、期待した割には素気ない車窓風景である。
雄武から北見枝幸までの興浜線未成線区間の予想沿線図
勝手に想像して作成したもので、路線位置や駅の位置
などに何ら根拠も確証もありません 悪しからず・・
《雄武》から約3kmほど行くと、最初の駅《元稲府》に着く。 小さな漁村集落が一ヶ所にあるだけの無人駅である。 近くに港と《エンコタン》という海水浴場があるようだが、夏でも気温が15℃を下回る・・というこの地域で海水浴ができるのだろうか?と思ってしまう。
次の《北見音稲府》であるが、少し内陸側に集落があるようで国道238号と共に内陸へ入ってゆき、海は視界より消える。 この海際には《音稲府岬》と青少年旅行村があり、もしレールが岬に沿って敷設されていたなら《日ノ出岬》のような風光明媚な風景を魅せてくれたかもしれない。
次に《北見幌内》。 道央の炭鉱路線・幌内線と区別する為に『北見』をつけたのだろうか?。
この未成線区間では、最大の集落となっているようである。 目立つ場所に郵便局があり、サケ・マスのふ化場もある。 だが、集落を少しでも離れると、再び酪農地帯と国道、そしてその先にオホーツクの海・・という単調な風景が繰り返される。 その幌内集落の外れにある《枝枝幸》の小集落前にも、停留場規格の駅が設けられている。
この未成線区間では、最大の集落となっているようである。 目立つ場所に郵便局があり、サケ・マスのふ化場もある。 だが、集落を少しでも離れると、再び酪農地帯と国道、そしてその先にオホーツクの海・・という単調な風景が繰り返される。 その幌内集落の外れにある《枝枝幸》の小集落前にも、停留場規格の駅が設けられている。
波戸場近くに民家がチラホラと点在する
程度では利用客は望めそうにない
元沢木より
次の《北見音標》は、小さな岬に沿って設けられた小さな港があるだけの所。 港町である《紋別》や《枝幸》から離れ、寂れる一方の漁村集落だ。 この寂れた情景を見る限り乗客は見込めそうにないのだが、距離的な関係で交換設備と運転要員が配置されている。
後は《風烈布》、《乙忠部》、《北見山臼》と停留場規格の駅に止まっていく。
でも、《北見山臼》駅は、興浜北線の仮乗降場である《山臼》を“本家”として『北見』を冠したのだろうか。 もしそうなら、「仮乗降場に譲った駅」として有名になったかもしれないな。
交換駅以外はきっと粗末な造りだったろう
元沢木より
元沢木より
次の《徳志別》にもサケ・マスのふ化場があり、おそらくもう廃業している・・とは思うが、地図には《徳志別温泉》という温泉が記載されている。 また、この付近でオホーツク海に注ぐ徳志別川はこの地域きっての渓流として知られ、ヤマメの釣り場として釣り人達に知られている・・との事である。
列車交換駅のイメージ
美幸線・仁宇布駅より
雪との闘い
興浜南線・沢木付近
二本のレールでの定時運行を
必死に守っていたのだろう
美幸線・辺渓~仁宇布
北国の軌道の保線・維持と定時運行は雪との戦いだったろう。 巨額を投じても利用客は数える程・・、そんな矛盾を抱えながらも当時のこの国はそれを維持していくパワーがあった。
僅か数人の交通弱者の為に定時運行を確約する力と優しさがあった。
未成線が開通していたなら、このような交換設備のある駅が設けられて列車の交換風景が見られたのだろう。 きっとこのように、冬になると毎日のようにラッセル車が軌道の雪を掻き上げていたのだろう。
あらゆる思いを捧げ、真っ直ぐな二本のレールでの定時運行を必死に守っていただろう・・と思う。
あらゆる思いを捧げ、真っ直ぐな二本のレールでの定時運行を必死に守っていただろう・・と思う。
この駅も距離的に交換設備は必要かな・・と思う。 でも、1日4往復程度の運行で事足りる程の輸送量でしかない路線で、2駅も運転要員が必要とすれば大赤字は必至だろうけど・・。
次の《岡島》も何もない所。 でも、道路沿いには『道の駅』があり、船の形を模した建物の立つ敷地内にはレストランや海産物店が並び、多くの乗用車が出入する。 その光景を望む人気のない停留場規格の駅。 これを目にすると、鉄道だけが取り残された印象を大いに抱く事だろう。
未成線区間の景色的なハイライトとしては、この辺りから枝幸にかけてだろうか。
未成線区間の景色的なハイライトとしては、この辺りから枝幸にかけてだろうか。
《岡島》を出て、程なくアイヌの古城跡とその柵が見えてくる。 もはやそれらしき盛土があるだけなのだが、この風景はこの地に歴史的なロマンがあった事を物語っているのである。
高層湿原で見られる花が
線路脇の湿地帯に咲き着そう事だろう
エゾカンゾウ
コウリンタンポポ
そして、あの路線がもうすぐ合流する。 あの路線とは、美しく幸を呼ぶ『美幸線』である。
当時の美深町長氏が熱くその思いを描いた『オホーツク縦貫路線』という壮大な夢を、この頁のこの時だけ実現させよう。
美・幸の両端の街以外は無人地帯
真に『オホーツクへの夢の如き路線』だった
志し半ばで建設が凍結されて
合流地点は信号所のある《南枝幸》。 だが、《南枝幸》は駅名としては趣がないので、近くの海水浴場の浜である《弓ヶ浜》と命名しよう。 まぁ、駅規格は、板張りの仮乗降場規格なのだが・・。
北見枝幸駅のスタンプ
なぜなら、これより入る北線区間には難所の《斜内山道》があり、路線規格の上から考慮すると単行運転が好ましい為である。 また、『美幸線』とこの未成線の運行本数が4往復と同じだから・・という事もあるし。
でも車輌運用の上で、《北見枝幸》駅構内に気動車の係留場所を設置して2~3両の気動車を確保しておかないと運行は難しいだろうな。 なぜなら『美幸線』にしても、美深からの路線延長が80kmにも及ぶ長大路線となるのだから・・。
でも車輌運用の上で、《北見枝幸》駅構内に気動車の係留場所を設置して2~3両の気動車を確保しておかないと運行は難しいだろうな。 なぜなら『美幸線』にしても、美深からの路線延長が80kmにも及ぶ長大路線となるのだから・・。
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No title * by 風来梨
タケちゃんさん、こんばんは。
国道238号のこの区間は、雄武と枝幸以外にまともな集落はないようですね。 海も季節風が吹き荒れて荒涼とした眺めでした。
もしつながっていたら、輸送量はどうなっていただろう?って思いますね。
まだ、枝幸とつながったと仮定した美幸線の方が、旭川への需要が見込める分マシだったかも・・です。
ただ、流氷列車はOKですね。 ガリンコ号に匹敵する人気を得たかも・・です。
国道238号のこの区間は、雄武と枝幸以外にまともな集落はないようですね。 海も季節風が吹き荒れて荒涼とした眺めでした。
もしつながっていたら、輸送量はどうなっていただろう?って思いますね。
まだ、枝幸とつながったと仮定した美幸線の方が、旭川への需要が見込める分マシだったかも・・です。
ただ、流氷列車はOKですね。 ガリンコ号に匹敵する人気を得たかも・・です。
一昨年だったでしょうか・・・仁宇布まで行って、家族で旧美幸線を利用するトロッコに乗ってきました・・・・「トロッコ王国」ですね。
仁宇布駅跡から延びる路盤もまだ判る状態でした。
興浜南線や北線・・・北見枝幸も雄武も結構大きな街で・・・南北線が繋がって「興浜線」となっていたとしたら・・・稚内から網走まで、素晴らしい路線になっていたんでしょうね~・・・営業収支は別にして。