2012-02-24 (Fri)✎
『私の訪ねた路線』 第79回 士幌線 その2 糠平~十勝三股(バス代行区間) 〔北海道〕
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度(’79) / 営業係数(’83) 廃止年月日 転換処置
帯広~十勝三股 78.3km 359 / 1743 ’87/ 3/23 十勝バス
廃止時運行本数
帯広~十勝三股 4往復《糠平~十勝三股 バス代行運転》
帯広~糠平 1往復
帯広~上士幌 下り1本
《路線史(再掲)》
大雪山麓の豊富な森林資源開発の為に、軽便鉄道法(土地を所有する者に鉄道用地を供与させるべく立法化された“何でもアリ”のザル法として有名)により建設された路線。 1925年に上士幌までが開通し、それ以後も延伸を続けて1939年には十勝三股までの在存区間が全通した。 計画では更に三国峠を越えて、石北本線の上川まで建設される予定であったという。
しかし、元々大雪山麓へ向かう程に人口が稀薄となっていく上に、国道の整備や林業の衰退で人口の流失が続き、末端部ではゴーストタウン化して1日どころか年間でも利用者が数十人という所まで落ち込んだ・・という。 そのような経緯を経て、温泉地である糠平から先は代行バスによる輸送に切り替えられた。
これによって、士幌線の経常収支は3割改善された・・という。
糠平駅の先にあった車止め
もう二度と復活する事の
なかった休止区間
この路線も開拓路線の意味合いが強く、開拓が終わった現代は人口稀薄な酪農を主とする農村地帯や大雪山の山懐へ突き進む路線に利用客を見込めるはずもなく、当然に国鉄再建法では廃止対象の第二次候補に指定される。
地元では「帯広近郊の音更町のベットタウン化によって帯広との人的交流が増え、冬季の十勝大橋の車輌大量通行は安全上問題がある」として反対をしたが、もはや廃止の流れを止める事はできなかったようである。 そのような中で国鉄主導のペースで転換協議は進み、JR移行直前の1987年3月23日に「JR移行前にこの問題を終わらせる」とする国鉄サイドの思惑通りに路線廃止となる。
なお、代行バス化された区間の代替バスであった糠平~十勝三股であるが、現在は完全な無人地帯となり「年間利用客が40人未満」という所まで落ち込み、2003年に撤退したという。 現在は、帯広~旭川を走る都市間長距離バスが乗客の要望にあわせて乗降扱いをするのみとなっているようである。
地元では「帯広近郊の音更町のベットタウン化によって帯広との人的交流が増え、冬季の十勝大橋の車輌大量通行は安全上問題がある」として反対をしたが、もはや廃止の流れを止める事はできなかったようである。 そのような中で国鉄主導のペースで転換協議は進み、JR移行直前の1987年3月23日に「JR移行前にこの問題を終わらせる」とする国鉄サイドの思惑通りに路線廃止となる。
なお、代行バス化された区間の代替バスであった糠平~十勝三股であるが、現在は完全な無人地帯となり「年間利用客が40人未満」という所まで落ち込み、2003年に撤退したという。 現在は、帯広~旭川を走る都市間長距離バスが乗客の要望にあわせて乗降扱いをするのみとなっているようである。
この路線の遺構として有名なのは、糠平ダムの建設に伴って水没した『タウシュベツ橋梁』であろう。
1955年に糠平ダムが完成し、それによって路線がダム湖の湖底に沈む事から、湖を避けるように新線が敷設された。 その時の廃棄された路線上にかかるコンクリート陸橋が、この『タウシュベツ橋梁』である。
真に『幻の橋』
タウシュベツ橋梁
季節や発電用に供出するべく水位が変わるダム湖では、時期によってこの橋が現れたり、完全に水没したりするので『幻の橋』との別名もある。 概ね、冬から春先にかけての渇水期に姿を現し、夏から冬にかけての湛水期は湖水に姿を隠す。 白亜のアーチ橋が湖面に幾重の眼鏡を映し出す姿は周囲の自然情景との調和を魅せ、古代ローマ建築を思わせる気品を漂わせている。
ただ、50年以上も厳しい北海道の環境や湖水に晒されている事や、構造が鉄筋コンクリートの型の中に石を詰めているだけの粗雑工法の為に、一度崩れ出すと急速に崩壊が進んでしまう・・との事である。
『北海道遺産』にも選定されている同橋梁だが、いずれは崩壊する命運を辿るとの事である。
それに対しては「保存の為に対策を講じるべき」という意見と、「あえて補修や保存の手は加えず、成すがままに任せ、いずれ失われるのも止むなし」との意見に分かれているとの事である。 ちなみに、ワテが見学した時は欄干部分を除いて、湖水に没していた。
ただ、50年以上も厳しい北海道の環境や湖水に晒されている事や、構造が鉄筋コンクリートの型の中に石を詰めているだけの粗雑工法の為に、一度崩れ出すと急速に崩壊が進んでしまう・・との事である。
『北海道遺産』にも選定されている同橋梁だが、いずれは崩壊する命運を辿るとの事である。
それに対しては「保存の為に対策を講じるべき」という意見と、「あえて補修や保存の手は加えず、成すがままに任せ、いずれ失われるのも止むなし」との意見に分かれているとの事である。 ちなみに、ワテが見学した時は欄干部分を除いて、湖水に没していた。
『おわかれ士幌線・線内1日フリー乗車券』にあった
士幌線時刻表と沿線の概要
運行上においての特異な点といえば、先程も述べた糠平~十勝三股の代行バス輸送と、黒石平駅の取り扱いであろう。 黒石平駅付近は勾配がかかっていて、上り勾配となる上り列車の全列車が通過し、代わりに500m先に設けられた『電力所前仮乗降場』に停車していた。 逆に、下り列車は全列車が同仮乗降場を通過し、黒石平に停車していた。
代行バスの乗車記念スタンプ
《乗車記》
糠平駅で列車の運転は打ち切られ、これより先は代行バスの運行区間となる。 何でも、この代行バス区間のみの収支係数は22500と、日本一の赤字線の美幸線の末期の4780の5倍というとんでもない数値だったそうである。
荒れるまま放置
自然の力は人工物をも
自然の力は人工物をも
元に回帰させるのか
それでは、糠平駅前のロータリーに止められていた国鉄バスに乗り込もう。 でも、この国鉄バス・・、写真で見ても判る如く『白ナンバー』なんだよね。 今なら、たぶん突っ込まれると思うけど。
駅前に停車していた代行バス
下はモザイクを
掛けたくなるような『白ナンバー』
バスは、国鉄駅であった幌加と終点の十勝三股以外に、バスならではの停留所が2ヶ所あった。
まずは、この代行バス利用者の90%以上が下車する《糠平温泉前》停留所だ。 これは、糠平駅から約500m離れた糠平温泉郷のホテル街に停留所が設けられ、列車の利用客も500m離れて、しかも上り坂の糠平集落までの『送迎バス』として利用していたものである。
だからであろうか、運転手が個々の乗客が下車を希望するホテルの前で停車していた記憶がある。
この《糠平温泉前》の停留所を出ると、乗客は乗車目当ての『鉄』だけとなる。 その姿は、ひと目見ただけで判るだろう。
糠平駅から登ってきた坂の上端で糠平温泉郷は途切れ、道は然別湖へ向かう道と三国峠に向かうR273とに分かれる。 バスは右手に延びるR273入っていく。 道は突起した湖の縁を馬蹄形にめぐっていきく。 馬蹄形に巻くこの間は樹林が深く、湖は見渡せない。
湖が見えるのは、馬蹄形に巻いた先からである。 湖が見渡せる所には、北海道遺産にも指定されたアーチ型の陸橋を望む事ができる。 もし冬ならば、陸橋越しに氷結した糠平湖でワカサギ釣などを楽しむ人影が望めるだろう。
士幌線のアーチ橋
タウシュベツと共に
北海道文化遺産となっている
やはりタウシュベツに比べれば
オーラが足りないね
糠平湖の西岸に出ると、湖の縁を北上していく。 所々で休止区間の草生した線路と、美しいアーチ橋が望めるだろう。 そして、湖の北端に近づくと、運が良ければ『幻の橋』タウシュベツの連続アーチが見えるかもしれない。 でも、見えるのは樹間の一瞬であるので、やはり直接訪ねた方がいいだろう・・と思う。
やがて、完全無人地帯の湖畔を過ぎると、ゴーストタウンとなった幌加に着く。 士幌線の代行バスという事で、御丁寧にも国道から幌加の駅に入って、砂利敷の駅前で旋回して止まる。 そして、乗客である『鉄』連中(私も含めた)の下車と、駅舎・駅名標等の撮影タイムも『時間調整タイム』として設けられていた。
『列車の来ない駅』は
ついに何もない
廃屋になってしまった
そして時と共に朽ちていく
幌加駅の駅名標
3~4分の撮影タイムが終わると、乗り遅れがないかの点呼を受けて発車。 ほとんど、『鉄』のイベントバスのノリである。 幌加を出ると、《幌加温泉前》停留所に止まる。 この区間で『鉄』以外の利用客がいるとしたなら、この温泉の利用客位だろうか。
この温泉は、硫黄・重曹・カルシウム・ナトリウム・鉄など様々な成分の温泉が湧き出していて、《五色温泉》の別名がある。 また、ここは北海道の名峰・ニペソツ山への登山口(クリックでニペソツ山登山ガイドへジャンプ)でもある。
北海道の“槍”と称される
名峰ニペソツ山
・・といっても、温泉や山の登山客はマイカーやレンタカーで来るだろうけど。 だが、この代行バスは乗客の要望や旅館からの無線連絡ががあると、国道から奥に1kmほど入った温泉旅館の前まで入っていくみたいである。
雪に埋もれた
ゴーストタウンの駅・十勝三股
そして次は、終点の十勝三股である。 当時は路線休止という事で駅舎は取り壊されずにいたが、ここは幌加のように駅前に入ったりせずに、国道脇に設けられた《十勝三股駅前停留所》と掲げられたプレハブ待合室の停留所に止まる。 そして、十勝三股駅に入る踏切道がバスの転回場となっていて、ここでバスを転回して糠平へ帰っていく。 もちろん乗客は、往路と同じ面子の折り返しの『鉄』連中である。
コレって結構レアなのでは?
十勝三股で売っていた乗車硬券
十勝三股で売っていた乗車硬券
なお、タウシュベツ橋梁など湖によって水没した旧線区間であるが、3度のタウシュベツ訪問経験を活かして!?別腹で掲載しようと思う。 これは、「多くの枚数撮った事だし、これを是非とも掲載したい」という筆者の下心に配慮した為のものである。
次回は筆者の下心がつまった
『タウシュベツ編』でっす
・・という訳で、第80回も士幌線という事で。
乞うご期待・・←こんな人気のないブログ 何人が見るんだか・・
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No title * by 風来梨
タケちゃんさん、こんばんは。
ありましたね。 「当分の間、列車は通りません」の看板。
あまりにも当たり前過ぎて、撮ってません。 今思えば、思いっきり美味しいブログネタですね。
温泉は、落ち着いて入るなら糠平温泉郷のホテルの内湯ですが、夏冬問わずバトル(夏=ニペソツや石狩岳登山、冬はタウシュベツで日の出写真)の時は、やはり幌加の五色温泉ですね。 遠慮なく婆さんがあっても・・。 まぁ、まかり間違ってもお姉ちゃんはないですね。
でも、岩間温泉まではさすがに・・。←熊が湯浴みするという石狩岳・シュナイダー登山口にある伝説の露天風呂です。
ありましたね。 「当分の間、列車は通りません」の看板。
あまりにも当たり前過ぎて、撮ってません。 今思えば、思いっきり美味しいブログネタですね。
温泉は、落ち着いて入るなら糠平温泉郷のホテルの内湯ですが、夏冬問わずバトル(夏=ニペソツや石狩岳登山、冬はタウシュベツで日の出写真)の時は、やはり幌加の五色温泉ですね。 遠慮なく婆さんがあっても・・。 まぁ、まかり間違ってもお姉ちゃんはないですね。
でも、岩間温泉まではさすがに・・。←熊が湯浴みするという石狩岳・シュナイダー登山口にある伝説の露天風呂です。
No title * by オータ
岩間温泉、入りに行きましたヨ! もちろん車で、友人とです…
今も入れるのでしょうか? ここらへんは山麓のあちこちをウロウロしていたのですが…このところご無沙汰になってしまいました。
今も入れるのでしょうか? ここらへんは山麓のあちこちをウロウロしていたのですが…このところご無沙汰になってしまいました。
No title * by 風来梨
オータさん、こんばんは。
北海道の秘湯では、この岩間温泉とトムラウシ温泉側にあるヌプントムラウシ温泉が有名ですね。 何でも、この2つの温泉に入るのをステイタスにしている旅の形もあるとか・・。
私は石狩岳・ニペソツ山は登りましたが、温泉は幌加温泉で手を打ちました。
また、オロフレ山の四季を伝えて頂きたく思います。 オータさんの記事の再会を楽しみにしてます。
北海道の秘湯では、この岩間温泉とトムラウシ温泉側にあるヌプントムラウシ温泉が有名ですね。 何でも、この2つの温泉に入るのをステイタスにしている旅の形もあるとか・・。
私は石狩岳・ニペソツ山は登りましたが、温泉は幌加温泉で手を打ちました。
また、オロフレ山の四季を伝えて頂きたく思います。 オータさんの記事の再会を楽しみにしてます。
No title * by オータ
拝復… まぁどうしましょう(笑)
ヌプントムラウシも 幌加温泉(鹿の谷)も入ったことあるのですが…あと、然別峡(菅野)の露天風呂も…十勝はずいぶん回りましたねぇ。
逆に ウペもニペも登っておりません。今でも時間があれば登ってみたいと思っていますが。然別湖付近の山程度だったりします。
記事のほう再開に努めます。もう少しお待ちくださいませ…
ヌプントムラウシも 幌加温泉(鹿の谷)も入ったことあるのですが…あと、然別峡(菅野)の露天風呂も…十勝はずいぶん回りましたねぇ。
逆に ウペもニペも登っておりません。今でも時間があれば登ってみたいと思っていますが。然別湖付近の山程度だったりします。
記事のほう再開に努めます。もう少しお待ちくださいませ…
No title * by 風来梨
オータさん、こんばんは。
菅野温泉までとは、温泉通ですね。
ヌプントムラウシは、いつも通行止でなかなか行けない・・って事らしいですが・・。 私は、あまりキワドイ温泉は訪れた記憶がないなぁ。 北海道では、せいぜい知床のカムイワッカ位です。
菅野温泉までとは、温泉通ですね。
ヌプントムラウシは、いつも通行止でなかなか行けない・・って事らしいですが・・。 私は、あまりキワドイ温泉は訪れた記憶がないなぁ。 北海道では、せいぜい知床のカムイワッカ位です。
糠平温泉は、帯広在住時によく行っていましたので、当然糠平駅跡にも足が向きました・・・何も変化はないのですが、とにかく糠平に行くごとに行っていたように記憶しています。
まだ踏切跡には「当分の間、列車は通りません」の看板があったりして・・・。
それと併せて幌加温泉にも足を伸ばしていましたよ~。
宿泊したり日帰りで行ったりと・・・露天風呂からの眺めが絶景だったことと、混浴だったので、目の前で遠慮なく婆さんのあられもない姿を見せられたり?と・・・・若輩者にはかなり強烈でしたよ、いろんな意味で!
十勝三股発行の乗車券・・・「レア」どころではないのでは、と。