2012-02-16 (Thu)✎
『オホーツク縦貫鉄道の夢』 第28回 もうこの国では見られない鉄道情景
もうこの国には存在しない鉄道風景
渚滑線より戻って、再び名寄本線を北上しよう。 渚滑を出ると、オホーツク国道のR238と併走する。
位置取りはR238が海側、名寄本線が陸側の小高い土手をゆく。 やがて裏側に、土手上の駅への覆いのついた階段のある乗降場・富岡を通過する。 この富岡は乗降場としては格下で、朝夕の下り2本・上り3本が止まるだけの乗降場だ。 乗降場の名称の富岡集落は内陸に2kmほど入った所にあり、駅付近の土手裏にもまとまった集落はなかったようである。
「思い出お~い名寄本線」記念スタンプ
《富丘》を過ぎて、いよいよ『流氷の丘』の最寄り駅《沙留》に着く。 駅の手前で国道をクロスして、これよりピッタリと海に寄り添う。 列車の車窓から流氷を眺めるのもいいが、ここはこの駅で降りて“流氷と列車の情景”をカメラに収めよう。 狙い時は、もちろん朝。 海の全てに敷き詰められた白い流氷群とピンク色に染まった空、そしてその中を行き交う赤い単行気動車の孤独な姿は、とても美しく崇高にさえ思う。
流氷を望む波戸場の小集落・沙留
なぜなら、名寄本線が廃止となった今、この国では二度と撮れない鉄道情景であるのだから。
流氷と列車の写真なら釧網本線の北浜付近で撮る事は可能だが、この区間のように前面に原野が広がる絶好の流氷スポットを走る鉄道路線は、もうこの国には存在しないのだから。
流氷と列車の写真なら釧網本線の北浜付近で撮る事は可能だが、この区間のように前面に原野が広がる絶好の流氷スポットを走る鉄道路線は、もうこの国には存在しないのだから。
拙いあの頃の腕ではあるが、とにかくその貴重な軌跡を残せたのはとても幸運な事だ・・と思う。
沙留を出ると流氷原に舞いおりる
早朝から朝へ
光が流氷原を眩く照らし始める
寂れた波戸場の駅《沙留》を出ると、海に向けて掘立て小屋のような待合室がポツンと佇む“侘しい情景の駅”の筆頭候補に挙りそうな《豊野》と待合室もない乗降場の《旭ヶ丘》を過ぎ、興浜南線の接続駅である《興部》に着く。
《興部》の駅跡は現在は『道の駅』となり、鉄道記念館も併設しているという。
また、キハ22を静態保存の上で、ライダーハウスとして使用している・・との事である。
興部駅跡は道の駅となっていた
この《興部》で名寄本線の『オホーツク縦貫』区間は終わり、この先は興浜南線へと続く区間へバトンを渡すわけだか、名寄本線のこの先の山間部区間も捨て難いものがあるので、興浜線を前にしてまたも寄り道であるが名寄本線の山線区間も立ち寄りたい・・と思う。
流氷が広がる素晴らしき眺めの車窓を満喫した後に望む、寂しきローカル線の“夜の闇と光”も哀愁の風情があっていい。 山間部の区間は冬ともなると氷点下20℃以下の猛烈な冷え込みとなり、雪と光が幻想的な風景を魅せてくれる。 そして、この辺りの大自然の神秘にも立ち寄ってみようかと・・。
それでは、次回の名寄本線の山線区間に乞うご期待。
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