2010-12-23 (Thu)✎
名峰百選の山々 第6回 『89 大峰・八剣山』 奈良県 大峰山系(吉野熊野国立公園)
1915m コース難度 ★★ 体力度 ★★
枯木が輝く時・・
大峰・八剣山の頂にて
我がメインサイトより抜粋
女人禁制”で知られる大峰山は、古くから修験道の道場として栄えた山である。 山の名前にも、大普賢岳 1780メートル や釈迦ヶ岳 1800メートル など、仏教の意味合いから名づけられているものが見受けられる。
さて、景観で優れているのは、八剣山 1915メートル (この山は“仏教ヶ岳”または“八経ヶ岳”とも呼ばれている)をおいて他にないだろう。 山頂までトウヒなどの原生林が続き、枯れ立木の林立する景観が素晴らしく、特に朝日がこの木立より昇り輝くさまは深い感銘を覚える事だろう。 また、山頂からの眺望もアルプスに引けを取らず、大峰の個性豊かな山なみをはじめ、大台・日出ヶ岳を中心とする台高山系、果ては御岳山までも望む事ができる。
樹氷と大台ケ原の山なみ
近年に世界遺産登録された大峰山は、入山者が増えるに従って、山稜部へのショートカット道が整備され、そしてそれにアプローチする道も整備され始めている。 従って、登山者からすれば、安易に登山が楽しめる山となった。 でも、同じ山に登るなら、あまり人のいない方が情景を独り占めした気分となって良い。 従って、長い距離の車道を歩く苦難はあれど、アプローチ道が閉鎖された12月に登ってみる事にしよう。
夜明けの展望
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 天川村・河合バス停(4:00)→行者還トンネル西口登山口(1:20)→石休場宿跡
《1日目》 天川村・河合バス停(4:00)→行者還トンネル西口登山口(1:20)→石休場宿跡
(1:00)→聖宝ノ宿跡(1:00)→弥山小屋
《2日目》 弥山小屋(0:40)→大峰・八剣山(0:30)→弥山小屋(0:55)→狼平
《2日目》 弥山小屋(0:40)→大峰・八剣山(0:30)→弥山小屋(0:55)→狼平
(2:20)→栃尾辻(2:00)→天川村・河合バス停
《1日目》 大峰・弥山へ
西日本の近畿地方といえども、〔厳冬期〕に登山をするのである。 当然、様々な制限が課されてくるのである。 さし当たって問題となり得るのは、アプローチについてであろう。 本行程で設定した登山口は、国道309号線の《行者還トンネル西口》のすぐ脇にある。
だが、この国道309号線は冬季閉鎖となり、途中のゲートに施錠がなされる。 これで、マイカーや車を利用したアプローチは完全に不能となる。 後に残るは、“さぁ、歩け!”のみである。 登山口に一番最寄りのバス停・《天川・河合バス停》で下車して、後は登山口まで14.5km・・、所要時間にして4時間の延々たる国(酷!?)道歩きである。
タクシーを利用したとしても、結局はゲートから先の残り7km・・、2時間は歩かねばならない。
西日本の近畿地方といえども、〔厳冬期〕に登山をするのである。 当然、様々な制限が課されてくるのである。 さし当たって問題となり得るのは、アプローチについてであろう。 本行程で設定した登山口は、国道309号線の《行者還トンネル西口》のすぐ脇にある。
だが、この国道309号線は冬季閉鎖となり、途中のゲートに施錠がなされる。 これで、マイカーや車を利用したアプローチは完全に不能となる。 後に残るは、“さぁ、歩け!”のみである。 登山口に一番最寄りのバス停・《天川・河合バス停》で下車して、後は登山口まで14.5km・・、所要時間にして4時間の延々たる国(酷!?)道歩きである。
タクシーを利用したとしても、結局はゲートから先の残り7km・・、2時間は歩かねばならない。
《天川・河合》よりの道は舗装されて単調な道だが、横に《ミタライ渓谷》や《川迫川渓流》を魅せていて、これらの景色を眺めながら行くといい気分転換となりそうだ。 道の途中で《弥山川出合》では大峰随一の名渓・『白川八丁』と《双門滝》をめぐるコースが分かれている。 このルートはまた別の機会に御紹介しよう。
なお、車止めのゲートは、《川迫ダム》の奥から《神童子谷出合》の途中に設けられている。
ゲート閉鎖期間は12/15~4/30である。 所々、落石が転がる国道を4時間余り歩き抜くと、延長600m位の《行者還トンネル》が視界に入ってくるだろう。
・・朝、始発で大阪を出発したとしても、この《トンネル西口》に着く頃には日光が西方に傾き始める・・、冬の短い1日が終わりに近づいた時間帯となっている事であろう。
これから
この情景に会いにいくのだ
登山口で夜間歩行に備えて、カンテラを取り出しやすい所にパッキングし直してから出発だ。
水は、登山口から少し入った所で渡る沢で汲むといいだろう。 冷たくて清らかな沢水は、今日の登山の大きな力添えとなるだろう。 この沢を渡ると、雪着きの急登が始まる。 登山口の《トンネル西口》で見上げたあの稜線の高みまで、高低差500mの“バカ登り”である。
登っていく内に、若く背丈の低い樹木の枝にカマボコ板にマジックで書いたようなプラカードがぶら下がっているのを発見できるだろう。 そのプラカードには『まだまだ、あと400m』とか、『あと半分!200m』、『ガンバレ!もうひと息・・50m』など、残りの標高差と率直!?な一言(捉えようによっては、余計なお世話かもしれないが・・)が記してある。
急登につぐ急登を約1時間少々耐え凌ぐと稜線上に這い上がり、大峰山系きっての縦走路である『奥駈道』との合流点・《一ノ垰》に出る。 この《一ノ垰》付近は樹木に囲まれて展望はないが、少し歩いて《石休場宿跡》付近まで進むと北側の展望が開けてくる。
水は、登山口から少し入った所で渡る沢で汲むといいだろう。 冷たくて清らかな沢水は、今日の登山の大きな力添えとなるだろう。 この沢を渡ると、雪着きの急登が始まる。 登山口の《トンネル西口》で見上げたあの稜線の高みまで、高低差500mの“バカ登り”である。
登っていく内に、若く背丈の低い樹木の枝にカマボコ板にマジックで書いたようなプラカードがぶら下がっているのを発見できるだろう。 そのプラカードには『まだまだ、あと400m』とか、『あと半分!200m』、『ガンバレ!もうひと息・・50m』など、残りの標高差と率直!?な一言(捉えようによっては、余計なお世話かもしれないが・・)が記してある。
急登につぐ急登を約1時間少々耐え凌ぐと稜線上に這い上がり、大峰山系きっての縦走路である『奥駈道』との合流点・《一ノ垰》に出る。 この《一ノ垰》付近は樹木に囲まれて展望はないが、少し歩いて《石休場宿跡》付近まで進むと北側の展望が開けてくる。
大峰山系は奥深い
途切れることなく続く山なみ
夕暮れのほのかにピンク色に染まりゆく空に、烏帽子頭のような大普賢岳 1780メートル や深い原生樹氷林に覆われた山上ヶ岳 1719メートル 、《大日キレット》を魅せる稲村ヶ岳 1726メートル などの大峰山系の特徴ある山なみ、またその背後に台高の山なみも伺える。 昔の修験者の宿場跡であった《石休場宿跡》は、今や三角点標柱と雪に埋もれたベンチがあるのみの侘しい所だ。
この三角点の丘からは、ルートは緩やかに下り始める。 下っていくと前方の眺めを遮っていた樹林も消えて、目指す大峰・八剣山と弥山が肩を並べてそそり立っているのが望まれる。 やがて、この下りも途切れ、八剣山に向けて徐々に登り返していく。 登り基調になって30分程進んでいくと、樹林に囲まれた《聖宝ノ宿跡》である。
ここからは、頂上直下の激しい急登となる。 この急坂は別名“胸突八丁”と呼ばれているそうだが、距離が短いので鍛えて山慣れした体であれば、難なく乗りきることができるだろう。 だが、時間的には登っている最中に空がドップリと暮れて、登山口で取り出しやすいように準備しておいたカンテラの“出番”となるだろう。 とにかく、この登りを乗りきったなら、弥山の山荘前の広場に出る。
今日はここで宿泊としよう。 行程に余裕があって夕日に間に合ったならば、弥山の展望台《国見八方覗》で1日の終わりを美しい落日の情景で締めればいい。 まぁ、相当な健脚でなけれは、大峰・八剣山での夕日は間に合いそうにないだろうから。 今日の所は、《国見八方覗》の眺めを味わえたなら“良し”としよう。
普通に健脚といわれる人でも
暗くならない内に弥山に着くのは難しいかも
ここは明日の情景に思いを馳せよう
朝の大台ケ原山を望む
さて、宿泊の事であるが、《弥山小屋》は冬小屋のみ使用可能であり、シュラフと食事用具は持参せねばならない。 また有料でもある。 もし、あなたか“強者”ならば、ここで耐寒幕営をするのも一興!?である。 明日は近畿最高峰の大峰・八剣山で、美しい朝日と原生樹氷林のおりなすファンタジーを心ゆくまで堪能したいと思う。
空がスペクトルに彩る瞬間
《2日目》 大峰・八剣山で御来光を眺めて下山
朝は夜明け前に行動しよう。 何と言ったって、目的は山頂よりの御来光なのだから。 《弥山小屋》の側面から、真っすぐに樹氷林の中へ入っていく。 樹氷にかぎろい色の光が当たり美しい。
朝は夜明け前に行動しよう。 何と言ったって、目的は山頂よりの御来光なのだから。 《弥山小屋》の側面から、真っすぐに樹氷林の中へ入っていく。 樹氷にかぎろい色の光が当たり美しい。
朝の光は何故こんなにも
美しく辺りを染め上げるのだろう
一度、弥山との鞍部まで下って岩と原生林の根が絡んだ登りを30分ほど登っていくと、“近畿最高峰”大峰・八剣山 1915メートル の頂上だ。 辺りには、樹氷となった美しい原生林が山麓に向けて林立している。
樹氷もほのかに色づく
とっておきの御来光
登り着いた頂上には修験道に通ずる山らしく、釈丈が一つ地面に突き刺さっていた。 その釈丈に向かって御来光が・・、また空がスペクトルの輪と条を描いていた。 そして、その背後に枯木が一本。
これが御来光やスペクトルの空とあいまって、言葉では語れない素晴らしい情景を魅せてくれる。
山岳信仰
釈丈と光のおりなす神々しき気配
また、山岳風景も魅力いっぱいだ。 南方には、美しいピラミタルな山容の釈迦ヶ岳 1800メートル に続く《奥駈》の山なみが連なっている。 ピンク色の空と雲海に浮かぶ果無の山なみも美しい。
振り返ると、大普賢岳 1780メートル や、山上ヶ岳 1719メートル といった“表”大峰をつかさどる山が独特な山容でそびえている。 その背後には台高山系の盟主・日出ヶ岳 1695メートル 、そしてその背後が透き通ったピンク色の空であれば、うっすらと台形の山が雲海に浮かんでいるのが望めるだろう。
大峰・八剣山より
望む奥駈の山なみ
山なみを刻む雲の河
みきった空ならば
遠く御岳山も望める
朝日を浴びて
熊野灘が黄金色に輝く
この台形の山こそ、木曽の御岳である。 関西の山に登って中央高地の山なみが望めるとは、大峰・八剣山の魅力は底知れない。 「あの雲海の山へいってみたい」という湧きあがる願望を振り払って、今日の所はおとなしく《弥山小屋》まで往路を戻ろう。
弥山まで戻って帰り支度を整えたなら、弥山頂上(弥山のすぐ先)にある《弥山神社》の脇から延びる登山道を下っていこう。 この下山路は《天川村・河合》への道である。 下っていくと、原生林に囲まれた大峰・八剣山の全容が見渡せるようになる。 今、下っている弥山の尾根道は、樹齢の浅く低い原生林帯なので展望はバッチリだ。
大峰南部の名峰・釈迦ヶ岳
やがて、原生林の樹林帯に突入して傾斜が徐々にキツくなっていく。 この坂を下りきると、《弥山川》の源頭にある河原に出る。 《狼平》である。 この河原の上には、《狼平避難小屋》が建っている。
以前は政治犯の収容所のような造りで使用は厳しかったが、現在は建替えられて立派なログハウスとなっている。
狼平避難小屋
今は建替えられているが
なぜかトイレはない
前を流れる沢で気合を入れて先に進もう。 なお、この沢は冒頭で述べた『名瀑百選』・《双門滝》と《白川八丁》に連なる沢である。
《天川村・河合》への道はこの沢を吊橋で渡り、頂仙岳からの尾根筋に移って、この山を巻きながら下っていく。 ここからは、樹林帯の中を徹底的に下っていく。 大峰の山は下れば下る程に同じような景色が連なり、方向感覚を大いに惑わせる山域だ。 下っても下っても同じような樹木と同じようなテラスの風景が繰り返し現れ、気分も大いに萎えてくる。 そしてこの風景は、この急坂の終点・《栃尾辻》の避難小屋の建つテラスの情景にそっくりなので、淡い期待を抱かされる分だけその落胆も大きい。
約2時間半・・、このようなまどろっこしい坂とテラスを数度乗り越えると、ようやく《栃尾辻避難小屋》のトタン屋根が見えてくる。 この小屋はトタンの波板で囲ってある上にトタン板が“屋根”として乗っかっているだけ・・の造りで、筆者なみの無頓着でなければ利用は適うまい。
約2時間半・・、このようなまどろっこしい坂とテラスを数度乗り越えると、ようやく《栃尾辻避難小屋》のトタン屋根が見えてくる。 この小屋はトタンの波板で囲ってある上にトタン板が“屋根”として乗っかっているだけ・・の造りで、筆者なみの無頓着でなければ利用は適うまい。
トタン壁に波板屋根
床はなく雪解け水でぬかるむ
:
これほど悪条件が揃った小屋に
泊るのはワテ位?
ここからは、林道も視界に入ってくる安全な道を下っていく。 しばらく、伐採されてハゲ山状となった所を鉄塔に沿って下っていくと、下に《天川村・河合》の集落が見えてくる。 集落が見えてきたなら、石段に鉄網を被せた階段で標高差200mほど下り、用水路の土手のような所から下界に下り立つ。
バスは1日数本程度の運行なので、時間は予め調べておいた方が無難である。 もし、時間が有り余ることになったなら、約4km先の《天ノ川温泉》でひと風呂浴びるのもいいだろう。
『<1>行者還トンネル西口より大峰・八剣山へ・・』をどうぞ
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