風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰百選の山々 第44回  甲斐駒ヶ岳 その1・act 2

名峰百選の山々 第44回  『70 甲斐駒ヶ岳』 その1・act 2  山梨県・長野県
甲斐駒山系(南アルプス国立公園) 2967m  コース難度 ★★★  体力度 ★★
 

頂上での極限(ノーテンキ)な一夜を過すと
素晴らしい情景が待っているのデス
 
さて、今回は『初冬の山頂ビバーク』という大タワケをしたにも拘らず、天の裁きを受けるどころか嵐一過の好天に恵まれた『悪運長者』ぶり満開の筆者が描く、オチャメな甲斐駒ヶ岳山行記・下り編を始めようか・・。
 

今回のオチャメいっぱいの行程図
 
   行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 広河原よりバス(0:30)→北沢峠(0:35)→仙水小屋(0:35)→仙水峠
     (1:40)→駒津峰(1:45)→甲斐駒ヶ岳
《2日目》 甲斐駒ヶ岳(2:20)→駒津峰(2:00)→仙水峠(1:00)→北沢峠よりバス
     (1:05)→戸台よりバス(0:35)→高遠バス停
   ※ 『名峰百選 第43回 甲斐駒ヶ岳 その1・act 1』《1日目》からの続き
 
 《2日目》 冬から秋へ戻っていこう・・
3度目の湯たんぽが切れる6時前に目覚める。 コリは、いつもよりもよく寝れたんでないかい。
たが、6時前という事はとっくに陽が昇っていたりして。 という事は、こんな事(頂上でのビバーク)までして、朝日を撮り逃したりした事実(醜聞)が明らかになったりして。
 

『天然』は明日の朝の天気を
御気楽に考えていました

でも、昨日からの吹雪の様相を呈した風雪は収まっている。 多少の風はあって、テントは揺らいではいたが。 そして、テントはパリパリ凍ってるよ。 こりゃぁ、撤収する時にかさ張るかもね。
 
さて、朝日を撮り逃したのだから、時間はたっぷりある。 そして、中途半端に『重し』である我が身体をテント外に出すと、テントが飛ばされかねないしィ。 という訳で、贅沢にティータイムを取る。
湯たんぽをこしらえながら。
 

冷気のもやが晴れていくと
昨日断念と相成った鋸岳が勇姿を現した
 
で、テント撤収は7時前。 テントの撤収だけは慎重を期さねばならない。 油断するとテントが飛ばされてしまうから・・。 特に、中の荷物を出して『重し』がなくなった時がデンジャラスである。
凍ってパリパリになったフライシートを剥ぎ取って、手前に荷物を置いて、風の抵抗を極力避けるようにポールを抜く。 抜いたポールは凍って抜けなくなってたよ。
 

パリパリに凍った岩が
昨日の判断を正しいものだと思わせる
 
仕方がないので、接続口の凍った部位を口で咥えて解かし、1ヶ所づつ引き抜いて袋に入れていく。
これは手間がかかる。 全部の接続口を解凍するのに10分位かかったよ。 ポールを抜きペシャったテントから荷物を抜いてたたむ。 凍ったテント布はかさ張り、丸めて袋に入れるのが精一杯。
フライまで入らなかったよ。
 

でも、心の底には
「やっぱり行けたかなぁ」
なんて思いもチラホラ

そして、フライの凍り方は『爆発』状態で、ザックの別のポケットに押し込む以外に手はなかった。
その状態はパリパリとなって「♪降ろしたてみたいぃ~ キーピング」の様相であったが、普段の2倍強にかさ張って「とっても着心地の悪い布」と化していたよ。

まぁ、何とかパッキングをして荷物が飛ばされぬ『担保』を確保したなら、遅まきながらの撮影タイムだ。
空は、荒天が過ぎ去った後の雲一つない好天であった。 朝日に輝く頂上の祠や、風雪にシバれた岩や、昨日まで目指した鋸岳の勇姿、白銀をまとった北岳や仙丈ケ岳を撮りまくる。
 

雪山には
ギラギラが良く似合う


雪と氷に囲まれた
氷点下の楽園


北岳と間ノ岳が角を突き合わせた
山岳風景も欲しいままに
 
案の定、大した写真は撮れなかったが、まぁ昨日から今日にかけての体験は何かの糧になるだろう。
いや、「なってくれるんじゃないかなぁ」と淡い期待を抱いてみるデスと。
 

凍てつく頂上の祠を印象深く
朝日は寝坊したのでこれが今回の一番星
 

 昨日の寒気で凍れた樹枝

それでは下っていこう。 下に広がるこれから歩くルートを見下ろすと、摩利支天峰の下位までが雪が被さっていた。 あそこが冬と秋の境目のようだ。 だが、あの秋の所まで行くのが、ちょっとコワい。
全く踏み跡のない雪庇状態で、ルート上に吹き溜まっているからだ。
 
踏跡がついて踏み固められた状態ならさして怖くはないが、全く踏み跡のない状態は結構“来る”ものがある。 ピッケルを土手に突き刺して、トラバースそのままの3点確保で下っていく。 時間がかかっても、滑り落ちるよりはマシだろう。 そして、頂上直下の七丈尾根との分岐点まで下る。


頂上から樹氷を見ながら下る


氷とブリザードは
翌日に宝石を創造してくれた
 
上を見上げると凍った枝がツララ状に下がり、それが陽の光を浴びてキラキラと輝くいいシーンがあったので、また余計に時間を食う。 でも、カメラを首にぶら下げながら下っていく、山に登っていて最も楽しいひとときだ。
 

枯れた枝がいっとき宝石となる
触れたら消える儚き宝石たち
 
あまりにも時間をかけ過ぎて、《六方岩》で早くも下から登ってきたトップ組の下りに抜かれる始末だった。 「写真撮りながら下ってるんだから、いいんだもぉぉ~ん」と強がってはいたが、内心はかなりダメージがあった。 でも、すれ違う登山者からは、「足速いですねぇ」と声を掛けられる。
 
「いや、頂上に泊ったのに、下からの先頭グループに抜かれる位に遅いのですよ」というのが、正しい答だったりして。 そして、その真相を明かすと、大概が呆れ声を上げていた。
 

摩利支天より下まで下ると
秋色が広がっていた


標高2685mの鋸岳は
まだ秋色だった


駒津峰とカールを抱く仙丈ヶ岳
 
《六方岩》を過ぎると、完全に冬から秋へ移行していた。 往路でも記したが、ここから駒津峰までは痩せた吊り尾根を伝うコース唯一のデンジャラスゾーンで、昨日の霙が所々で残っていて滑る。
また、凍ったテントでゴワついて更に丈長となったザックが、ふらつかせて足元が甘くなる。
そして、ついに駒津峰手前で岩を昇り損ねて仰向けにコケる。

このコケ方は、生涯山行で1~2を争うヤバさであった。 背中の半分位が岩よりはみ出て宙ぶらりんになったから。 下の谷間が視野に入ったしィ。 必死になって、退化した腹筋をフル動員して起き上がる。 この時ばかりは、ヘタしたら“死んだ”と思ったよ。

洒落にもならない事さえ
ネタにするこの筆者って・・

腹筋で起きた後も足がガクガクと震え上がり、駒津峰までの僅か150m位が異常に長く感じた。
着いた駒津峰では、さすがにクールダウンに時間を割く。 そして下山路も早く下山したかった気持ちはあったのだか、通った事のない近回りの《双児山》ルートはパスして、往路に通った《仙水峠》ルートを取る事にする。
 

北岳バットレスに
雲が掛かり


オベリスクの尖りを示す
鳳凰三山の背後に霊峰・富士が
 
この選択は、これらの事情以上に『正解』だった。 秋色に彩られた山々が広がっていたのだ。
これで、更に余計に時間がかかる。 この情景を目にすると、「バスの時間など今更どうでもいいか」との考えになっていた。 大胆に20分も、ひと所で撮影に興じたりしながら下っていく。
 

カールを抱く

仙丈ヶ岳と彩づく山肌



秋色に彩る樹木と仙丈ヶ岳
 
その如くノタクタと下って、《仙水峠》に下り着いたのは11:30。 ここまで4時間半もかかってるよ。
この後も《仙水峠》の溶岩帯で写真を撮りまくって、《北沢峠》に着いたのは13時10分前。 
最後の林道はヘロヘロに疲れて、400mの林道で何度も立ち止まってヘバっていたよ。
 

仙水峠より望む

摩利支天の秋模様



やや勢力はないが
赤く染まる秋もあった


仙水峠の溶岩滞も
秋色に染まっていた
 
《北沢峠》では、運良くバス発車の15分位前だった。 後はバスの中から、今回断念と相成った鋸岳の秋模様を見る。 でも、南アルプス林道から見る鋸岳の《角兵衛沢》のガレはそそるなぁ。
前はアレを下ったのね・・っていうか、アレを下るつもりだったのね。
 

コレを下るつもりだっのね
 
まぁ、今回は頂上ビバークという違う『無謀』を体験したが、この体力でアレを行こうと考えるのも『無謀』だったかもしれない。 でも、決して褒められたものではないが、ワテは今まで何度も『無謀』をして、その都度で知恵を使って何とか乗り越えてきた。 そして、それらが『ワテの体験力を豊かにしている』という事だけは『その通りだ』と思うし、そう信じたい。
 

頂上の冬
 

峠の晩秋
 

車窓の秋
今回は3つの季節を足早に駆け抜ける
山々の姿を味わえた旅だったなぁ

   ※ 詳細は、メインサイトの『撮影旅行記』より『秋を訪ねに行けば冬だった・・』を御覧下さい。
     また、行程ガイドは、『甲斐駒ヶ岳・鳳凰三山』でも掲載しております。





 

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No title * by エメラルド
こんにちは。
命がけの素晴らしい写真を見せていただき
心より感謝申しあげます。
ありがとうございました。

No title * by 風来梨
エメラルドさん、こんばんは。

後先考えずにした結果なので自業自得なのですが・・。
運良く印象深いモノが撮れています。

一つだけこんな自分を擁護するとしたなら、『虎穴に入らずんば虎児を得ず』でして・・。 ちょっと厳しい所に行かねば、「コレだ!」と思うモノはなかなか得れないかな?と。

それはさておき、御覧頂きまして有り難うございます。

No title * by オータ
何はともあれ、無事下界へ生還されてよかったです。

そして素晴らしい山の写真、冬の写真、拝見しました。ありがとうございます。傑作!

No title * by 風来梨
こんばんは。
見て頂いて有り難うございます。

オチャメな行動とはいえ、私にとってはかなり印象深い山紀行の一つ
となっています。 そして、偶然とはいえ、結構お気に入りも撮れましたので、私的には大いに成果のある山行でした。

コメント






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No title

こんにちは。
命がけの素晴らしい写真を見せていただき
心より感謝申しあげます。
ありがとうございました。
2011-12-16 * エメラルド [ 編集 ]

No title

エメラルドさん、こんばんは。

後先考えずにした結果なので自業自得なのですが・・。
運良く印象深いモノが撮れています。

一つだけこんな自分を擁護するとしたなら、『虎穴に入らずんば虎児を得ず』でして・・。 ちょっと厳しい所に行かねば、「コレだ!」と思うモノはなかなか得れないかな?と。

それはさておき、御覧頂きまして有り難うございます。
2011-12-16 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

何はともあれ、無事下界へ生還されてよかったです。

そして素晴らしい山の写真、冬の写真、拝見しました。ありがとうございます。傑作!
2011-12-25 * オータ [ 編集 ]

No title

こんばんは。
見て頂いて有り難うございます。

オチャメな行動とはいえ、私にとってはかなり印象深い山紀行の一つ
となっています。 そして、偶然とはいえ、結構お気に入りも撮れましたので、私的には大いに成果のある山行でした。
2011-12-25 * 風来梨 [ 編集 ]