風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰百選の山々 第43回  甲斐駒ヶ岳 その1・act 1

名峰百選の山々 第43回  『70 甲斐駒ヶ岳』 その1・act 1  山梨県・長野県
甲斐駒山系(南アルプス国立公園) 2967m  コース難度 ★★★  体力度 ★★
 

雪をまとった美しい姿
でも、乗った雪は
踏跡がないだけに厄介だ
 
 《メインサイトより抜粋》
南アルプスを語る上で忘れてはならないのが、甲斐駒ヶ岳と鳳凰三山であろう。 南アルプスの山は緑豊かで花多き峰は多いものの、荒々しい稜線美や岩のオブジェを魅せる山はこの山域をおいて他にない。
また甲斐駒ヶ岳 2967メートル は、その姿が勇猛な武田軍団を彷彿させ、古くから甲斐国の“守護神”として崇められてきた山だ。
 

今回の(行くつもり)を含めた行程図
 
   行程表              駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 広河原よりバス(0:30)→北沢峠(0:35)→仙水小屋(0:35)→仙水峠
     (1:40)→駒津峰(1:45)→甲斐駒ヶ岳
《2日目》 甲斐駒ヶ岳(2:20)→駒津峰(2:00)→仙水峠(1:00)→北沢峠よりバス
     (1:05)→戸台よりバス(0:35)→高遠バス停
 
 《1日目》 鋸岳まで行くハズが・・
今日は、全国に散らばる“駒ヶ岳”の中で最も標高が高く、最も誇らしい山体を成している甲斐駒ヶ岳に登ってみよう。 だが今回も、全盛期より月日が経って『ヘタレ満開』の時の山行記録である。
従って、オチャラケ満開の内容であるのは、“然るべく”である事を留意してね。
 
甲斐駒ヶ岳へは一般ルートが3つあるが、最も登頂が楽で水場のある《仙水小屋》経由の道を取る。
なぜなら、今日の宿泊予定である《六合石室》は水がないからである。 そして、最初の登山口から3リットルの水を持つよりも、30分でも3リットル=3㎏を軽くしたい・・との腹づもりである。
 

“既に使い果たした”貯金のみをアテにした
タワケの今回の目標はコレ
見るからにキツそうですねぇ

始めは沢に沿った平坦な道で、これが《仙水小屋》まで続く。 ここまでは約30分。 
たった30分・・、獲得の標高差ほとんどナシで、これより+3㎏の『十字架』を背負わされる訳である。
そして、ここを境にペースがドンと落ちていく。 《仙水小屋》からは溶岩帯の縁を伝って、また30分程で《仙水峠》へ。

この《仙水峠》では、甲斐駒ヶ岳の支峰である摩利支天峰が一枚岩盤の姿を魅せていた。
もちろん、秋色に飾られた美しい姿で。 でも、曇っていてくすんでいたが。 ザックを下ろし、この山行でのファースト・ショットを撮る。 でもここは、ほんとに『峠』を実感できる所である。
 

往きは(これから頂上で吹雪くので)
雲ってくすんでいたよ
本当の秋色は復路でお魅せします 
 
これから向かう駒津峰へは急登の坂が連なっている。 そして対面を向けば、鳳凰三山の前衛峰となる栗沢山からアサヨ峰へのラインがこれまた急激な傾斜を魅せいる。 この情景を目にして中学の国語の教科書で『峠』という詩があった事を思い出したが、正にこの状況を描いていたのである。
 
そう、どちらにしても行き詰まり・・、そしてどちらかに向けて急登をこなして行かねばならぬ事が課せられた場所なのだ。 そしてこの苦難を拒否したくば、来た道を退く以外にはないという事も。
まぁ、少々オーバー目な表現であるが。

摩利支天峰を撮って、さぁ・・登高開始。 一度降ろした水3㎏入りのザックは『重い』。
なにせ、ポリタンで水持ったり、鉄とプラスチックとガラスで構成されて、ザックにつめると歪な形にならざるを得ない“余計なモノ”約4㎏を、ザックの上部に爆発させる形で詰めなければならないからだ。
今まで、こんな状態でバリエーションルートや沢登りをやってきたんだなと思うと、『なかなかやるジャン』と自分を褒めてみたりしたくなるですと。
 
まぁ、こんな風に“寝言”をほざいても解決しないので、とにかく登る。 始めの標高差300m位はノンストップで一気に登る。 ここまでは前と同じ。 でも、ここから続かないのが今のワテ。
だが、『脂肪まみれの上半身』っていっても、以前より痩せているのだが。 やはり、ここでも『過ぎたる脂肪は力なり』という、我が持論の正しさが証明された訳である。
 
まぁ、こんな『寝言』をブツブツいいながら、2分歩いては2分立ち止まる・・といった事を繰り返す。
疲れとヘバリが増していくと、これが1分になり、50歩になり30歩になる。 
立ち止まる時間の変化はないが。
 

北岳と仙丈ヶ岳の勇姿
晴れていれば・・というか
余裕があれば好展望を
欲しいままにできるのデス


でも、今のワテは『ヘロヘロヘロ』になって
写真を撮る余裕がありませんでした
 
そして、立ち止まる毎に対面にそびえる栗沢山との位置を確認する。 なぜなら、栗沢山の頂が2714mで、この山の頂付近までくれば標高2752mの駒津峰も“もうすぐ”という訳だ。 山の高さの差が埋まる事だけを心の頼りに、ヘロヘロヘロと登っていく。
 
やがて、森林限界を越えて稜線に出たのか風がやたらと強くなり、程なく駒津峰に着く。 12:15。
もう、下山し始めている人が大半だ。 “天気も崩れ出したしィ”と思えば霙から雪が降ってきた。
まぁ、ここでこの時間であれば下り始める人かまともで、これより登る者はセオリーに反しているのである。
 

駒津峰から六方岩までが
甲斐駒ヶ岳への最も
デンジャラスゾーンだったりする
 
まぁ、雪も降ってきたし、これより誰もいないだろうし、カッパ着て持ってきたオニギリをほうばってからノタクタと出発。 甲斐駒ヶ岳へのルートで最もデンジャラスな《六方石》への吊り尾根を伝って、直登ルートと巻道ルートの分岐の取付へ。
 

六方岩と中央アルプス
 
前に鋸岳へ行った『全盛期』は“喜んで”直登コースを行った(もちろん、今日と変わらぬ荷物の量で)が、今は“スンマセン、勘弁してください”と巻道を選択する。 その巻道ルートでは、いよいよ風は『木枯らし一号』を凌ぐ暴風一歩手前まで吹き付けてきて、また『ヘロヘロヘロ』から一段と成長(退化)した『ヘロヘロヨロヨロッピ』になった我が身体は、風に煽られて千鳥足で右往左往する。
 

甲斐駒ヶ岳への直登コースを見上げる

かつては“喜んで
”直登コースを行ったっけ
 
また、雪は吹き溜まってきて、比較的安全なザラ場とは言えども雪が踏跡を完全に埋めて雪庇状に『進化』して、風に煽られるまま千鳥足の今の自分にはデンジャラスな状況となってきた。
砂礫に切られた幅30cm程のトラバースの踏跡が雪で埋まった所などは、安易に千鳥足で右往左往と“ふて腐れる”事はできない。 そんな事をすれば滑り落ちてしまう。
 

甲斐駒ヶ岳本峰と摩利支天
雪をまとった姿は

見ている分にはいいんだけどね



雪の乗ったザラ場は
更に滑りやすく


見た目は簡単そうだけど
雪のザラ場のトラバースって
結構キビしいよ
※ 3枚とも下り時の写真です
 
でも、疲れでヘロヘロとなった我が身体は変えようのない事実だから、ここはピッケルを突いて立ち止まる以外に回避策はない。 ・・という訳で、この砂礫の坂で30回以上は立ち止まったかな。
誰もいなくて、醜態を見られなくて済んで良かったね。

それで、漸く頂上に着いたのが14:30。 頂上の祠の前で腰を下ろす。 
でも、まだ今日の宿泊地である《六合石室》は、ここからコースタイムで1:30先だ。 ヘロヘロで下りが遅い私なら、2時間は見ておいた方がいいだろう。 となると、到着は16:30。 秋という季節を考えれば限界かもしれない。
で、疲れを背負ったまま出発。
 

季節は秋だが
標高2967m地点は冬景色だった
 
頂上は風雪が暴風一歩手前の様相で巻いており、その中を岩場下りで下っていく。 ちょっと下ると、本格的なガリガリの岩場となってきた。 そして、その岩は凍っている。 かなり、躊躇する眺めであった。
 

これは翌日の朝の映像ですが
下降路はこの岩のように
パリバリに凍っていますた
 
下るのに躊躇していると、学生と思しきパーティが登ってきた。 話を交わすと、《赤河原》へ下ろうとしたらしいが雪で断念したとの事。 最も体力がある学生(女の子もいたが)がダメで引き返した・・というモノを、『ヘロヘロヨロヨロッピ』のワテが行くのはちょっと無謀だろう。 という事で、最初の大岩を下った所で引き返す。 この事で、この先の鋸岳へは断念と相成った。

・・で、残ったのは、登りでヘタって『ヘロヘロヨロヨロッピ』となった我が身体と、テントと水一式をパッキングして爆発したアタッカー・ザックのみである。 そして、頂上付近でタムろった為に時間も15:30と、下るにはタイムオーバーになっていた。 これより下まで下っていくという『無謀』を回避するには、別の『無謀』を実行する以外にないねぇ・・という事で、別の『無謀』をするべく場所探し。
 

デカイ岩が乱立する間は
少しでも風が防げると
考えたのだが・・ 甘かった
 
頂上は風雪が吹雪一歩手前ではあったが、背が高く幅の広い天然の岩小屋のような岩が乱立していて、その岩に囲まれた中にテントを張ると、何とか凌げそうだ。 風が強い中でテントを設営するが、ペグを打つような余裕はなかったので、テントを設営してすぐさま荷物と自身をテントの中に“放り込む”。
そうしなければ飛ばされるからである。
 
まぁ、自分の体重はテントを支える『重し』代わり・・という訳だ。 疲れていたし、腹も減っていなかったので、「ここは寝るか」と寝に入る。 去年の教訓で、プープークッション(エアーマット)は装備しているし、湯たんぽも持ってきた。 時計にある温度計を見れば+2℃位だ。

風は強くテントはバタついているが、状況的には去年の剱沢と同じようなものだ。 
いや、最初にプープークッションを用意した分、前よりも条件はいい・・と思い込む事にしよう。
 

明日は吹雪が止んで
こんな情景が魅れるといいな
 
・・で、すっかり暗くなる19時前まで、ぐっすりと寝れたよ。 この点、ノーテンキって身を助ける才能だなって思う。 目覚めてからすぐの二度寝も厳しいので、腹は特段減ってはいなかった(最初は食う気はなかった)が、メシを食う事にする。 腹を満たすというよりも、コンロで暖を撮るのが第一の目的といっていいだろう。 ついでに、湯たんぽもこしらえる。

メシを食って、8時頃にまた寝入る。 相変わらずテントはバタついて、隙間から外を覗くと完全な吹雪模様だった。 その後、湯たんぽの効果が切れる12時前と3時過ぎに湯たんぽを仕立て直す為に起きたとはいえ、割と睡眠は取れた。 計算するとコマ切れだが、7時間以上寝てたりして。 
あぁ、『天然』『無思考』っていう器量は、ほんと身を助けるね。 ちなみに、テント内の最低気温は-4℃だった。

   続き《2日目》は、次回の『名峰百選 第44回 甲斐駒ヶ岳 その1・act 2』にて・・ 
   この頂上雪中ビバークというオチャメ満開に対する天の裁きは如何に・・ 乞う、ご期待!(爆)
 
   ※ 詳細は、メインサイトの『撮影旅行記』より『秋を訪ねに行けば冬だった・・』を御覧下さい。
     また、行程ガイドは、『甲斐駒ヶ岳・鳳凰三山』でも掲載しております。
 
 
 
 
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No title * by オータ
こんばんは。
ヤマケイの古いガイドブックを何度も熟読していた 南アルプス。然れども憧れのままで…足を向けたコトは一度もありません。
鋸岳は岩場が多くてかなりマイナーらしいですね。それにしても初冬の甲斐駒山頂直下でのビバークも興味をそそります。もっとも、こうして書かれているのだから、無事生還されたとわかっていながら読めるので、安心はしています。続きを待ちますね。 傑作!

No title * by 風来梨
こんばんは。

10年位前の体力のある時なら、この2/3の時間で行って帰ってこれたと思いますが、最近は山に登る毎に何らかのオチャメを招いてしまいます。 お恥ずかしながら・・。 でも、こうやって文章を書く分には筆が進んで喜ばしい!?事です。

鋸岳も大いにお笑い山行きをしたので、また夏の時に公開しようかと思います。

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No title

こんばんは。
ヤマケイの古いガイドブックを何度も熟読していた 南アルプス。然れども憧れのままで…足を向けたコトは一度もありません。
鋸岳は岩場が多くてかなりマイナーらしいですね。それにしても初冬の甲斐駒山頂直下でのビバークも興味をそそります。もっとも、こうして書かれているのだから、無事生還されたとわかっていながら読めるので、安心はしています。続きを待ちますね。 傑作!
2011-12-12 * オータ [ 編集 ]

No title

こんばんは。

10年位前の体力のある時なら、この2/3の時間で行って帰ってこれたと思いますが、最近は山に登る毎に何らかのオチャメを招いてしまいます。 お恥ずかしながら・・。 でも、こうやって文章を書く分には筆が進んで喜ばしい!?事です。

鋸岳も大いにお笑い山行きをしたので、また夏の時に公開しようかと思います。
2011-12-12 * 風来梨 [ 編集 ]