2011-12-07 (Wed)✎
『私の訪ねた路線』 第70回 秋田内陸縦貫鉄道 その1 旧国鉄阿仁合線区間 〔秋田県〕
《路線データ》
営業区間と営業キロ
鷹ノ巣~角館 94.2km 鷹ノ巣~比立内は旧国鉄・阿仁合線、松葉~角館は旧国鉄・角館線
からの第三セクター移管線 比立内~松葉は移管後の開業線
運行本数(’06)
鷹ノ巣~角館 下り10本(内 2本 急行)、上り5本(内 1本 急行)
鷹ノ巣~阿仁合 下り5本、上り9本
阿仁合~角館 下り1本、上り6本
鷹ノ巣~比立内 上り1本
阿仁合~比立内 下り1本
《路線史》
日本三大銅山の1つである阿仁銅山の鉱石産出の為に建設された路線。 建設路線名は、鷹ノ巣と角館を結ぶべく『鷹角線』と呼ばれていた。 その両端の既存線である阿仁合線と角館線が国鉄再建法により廃止転換対象の候補に挙がり、未通区間の建設も凍結された。 これを受けて未開通区間の建設再開を条件に、地元自治体主導の第三セクター方式により1986年11月経営移管された。
転換時は、旧阿仁合線区間を北線、旧角館線区間を南線として旧国鉄より車輌(キハ22)を借り受け運行していたが、1989年4月の未通区間の完成で鷹ノ巣~角館が全通し、同時期に新型車輌に置き換えられて現況の姿となる。
路線経営は御多分にもれず厳しく、県議会の議題で常にこの路線の存廃が取り挙げられるとの事。
元来、鉱山のある山奥で沿線人口も鉄道を必要とする程に多いとは言えず、鉱山の閉山後は過疎化が進み、並走道路も整備されて鉄道の存在意義が失われつつあるからである。
運行の特徴としては、料金が必要の急行列車が運行されている事である。 専用のロマンスカーを投入して、シーズン時には女性添乗員も同行するとの事。 また、沿線観光地に祭などのイベントがあると、観光客を誘致すべく急行・イベント様式車輌を使っての臨時列車が運行される。
沿線は“マタギの里”として有名で、また自然の宝庫でもある。 森吉山の高山植物や『安ノ滝』など、周囲の渓谷に掛かる名瀑は是非とも訪れたい所である。
山里の無人駅に
一番列車がやってきた
:
願わくば樹の枝に
雪が乗っていて欲しかった
萱草駅にて
《乗車記》
この路線は前述の通り、旧国鉄の特定地方交通線の第二次廃止対象に挙げられた阿仁合線と、同じく一次廃止対象の角館線の第3セクター移管路線である。 始発駅は県都・秋田からかなり離れた鷹ノ巣である。 県都から離れたこの状況は、到底利用客を見込めるものではないだろう。
第3セクターに移管されてからは、東能代寄りの阿仁合線発着ホーム側に駅舎母屋が設けられ、一応は独立路線の形は整えられているが、駅構内からも外からもスルーなのは不正乗車防止の点で気になる。
ちなみに、JR駅の表記は『鷹ノ巣』で、秋田内陸は『鷹巣』との事である。
また、鷹巣駅は1面1線の突端駅で、この駅での列車の留置は不可能だ。 次の西鷹巣は、阿仁合線沿線町村が合併して面積だけは秋田第二の都市となった北秋田市の郊外にある駅だ。 国鉄時代には駅はなく、秋田内陸線の開業と同時に開業した駅だ。 同意しデザイン化した待合室は、新規開業駅の証であろう。
次の小ヶ田は国鉄時代からの駅だ。 前駅の西鷹巣の待合所と比べて、モルタルの旧態依然の待合所を見ると一目瞭然である。 一応、秋田空港最寄り駅だが、空港まで3km離れていて、しかも棒線無人駅なので、当たり前ではあるが接続駅とはなっていない。
鉄橋を下から狙ってみる
次の大野台は、前駅の小ヶ田の待合所を更にボロボロにした感じの待合室がホームに乗る棒線駅。
この駅より、北秋田市の合川町エリアに入る。 次の合川は、前述でも述べた旧合川町の中心駅。
国鉄時代は乗降客が線内最大だったとの事である。 今現在は北秋田市の委託駅で、列車交換も可能な駅である。 急行【もりよし】の停車駅だ。 なお、始発駅の鷹巣が1面1線の駅なので、この駅が列車交換の基点駅(閉塞点)となる。
次の上杉は駅ホームや待合室は国鉄時代と変わらないが、隣接して建てられた『上杉あいターミナル』(複合型の町施設)へとスロープでつながっている為、一見は真新しく建て直された様に見える。
次の米内沢は、合併前の旧森吉町の中心駅。 国鉄時代は2面3線のホームがあり、交換可能設備のある運行上の重要駅であったが、第3セクター移管後は母屋寄りのホーム以外は廃棄され、島式ホームは設備が撤去された上に放置状態で荒れ果てている。
次の桂瀬は駅舎が建て替えられたようで、小公園のような感じにまとまっている。 以前は石炭の積み出しもあったという駅務室付の木造駅舎であったが、老朽化には抗しきれなかったようだ。
次の阿仁前田は、最もドラスティクに変換した駅であろう。 元々は有人駅ではあるものの棒線駅であったが、今はクアハウス『クウィンクス森吉』が建てられた温泉駅となっている。 駅も相対式2面2線の交換駅となっている。 駅前には100台程度駐車できる駐車場が設けられ、いつも車で埋まっている。
だが、この車の所有者の大半はクアハウス利用客との事である。 実際、太平湖などの自然を満喫できる森吉山山麓の景勝地へ行くには、とても都合の良い温泉休憩施設である。
次の前田南と小渕は、待合室があるだけの棒線駅。 どちらも路線開業からの駅で、待合室も老朽化してボロボロである。 なお、小渕駅の駅前は地元有志の方々によりミニ庭園が造園されている。
次の阿仁合は、旧国鉄の路線名となった沿線の中心駅である。 そもそも過疎区域に路線が建設された理由は、この場所に『阿仁銅山』という国内有数の銅山鉱脈があったからである。 しかし、1978年の閉山を皮切りに人口の流失が下げ止らず、過疎化した一町村となってしまった。 今は、旧阿仁町が阿仁合線沿線町村と合併して北秋田市となっている。
阿仁マタギの山々が白銀に輝いて
萱草~笑内にて
また駅舎も、鉱山の町の駅から豊かな自然を満喫するリゾート地域へと変わるべく、お洒落な三角駅舎に建て直されている。 この駅には車庫と本社が設けられていて、列車運用の中心駅となっているようだ。
枝に雪が乗ってたらなぁ
そして、国鉄阿仁合線時代の終点の比立内に着く。 駅は交換可能の島式ホームで、駅舎は建て直されて、JA(農協)の営業所管轄の無人駅となっている。 駅での切符の販売は廃止されたが、すぐ近くの『道の駅・あに』で企画乗車券『ホリデーキップ』(土・日・休日利用可)の販売が行われている。
駅舎管理はJAに、駅の営業活動は『道の駅・あに』に委ねているようだ。 比立内より先であるが、長くなりそうなので以降は次回に掲載するとしよう。
で記しています。 宜しければどうぞ。
- 関連記事
スポンサーサイト
No title * by オータ
行ったことはないのですが、イメージからよく残った鉄道だと思っています。特に角館線は一日三往復でしたからね… 傑作!
No title * by 風来梨
こんばんは。
当時の第三セクターブームに乗っかったから残った感じがありますね。 沿線の町構成度は、北海道のちほく高原鉄道以下といっていいかもしれないし。 でも、自然の豊かさという『売り』もあるので、それを活かして頑張って欲しいな・・と。
当時の第三セクターブームに乗っかったから残った感じがありますね。 沿線の町構成度は、北海道のちほく高原鉄道以下といっていいかもしれないし。 でも、自然の豊かさという『売り』もあるので、それを活かして頑張って欲しいな・・と。