2010-12-18 (Sat)✎
名峰百選の山々 第5回 『7 石狩岳』 北海道 大雪山系(大雪山国立公園)
1967m コース難度 ★★★ 体力度 ★★★★
我がメインサイトの『東大雪』の冒頭より
奥大雪より更に深く位置する東大雪・・。 登山客で賑わう『表大雪』と違って、人もあまり入山せず静かな山旅を味わえる事だろう。 また山容も、『表大雪』にはない切りたった岩稜を示し、登山的な魅力を大いに引き立てている。 展望も『奥大雪』の絶好の展望台として、雄大な景色を魅せてくれる事だろう。 もちろん花も豊富で、今や大雪の中でも最も原始の香りが漂う山域ではないだろうか。
こう記するように、秘境の名を欲しいままとする峰が、この石狩岳である。 もちろん、秘境の峰だけあって、通常の山で揃う事は何一つ期待してはいけない。 テントから食料から、全てを担ぎ上げなければならぬのだ。 つまり、通常のハイキング登山では対応できない原始の香り漂う山域なのだ。
それでは、原始の香り漂う山旅を体験してみよう。
アルプスばりの
美しい姿を魅せるニペソツ山
ブヨ沢の頭より
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 上士幌町・糠平より車(1:20)→ユニ石狩岳登山口(1:40)→十石峠
(1:10)→ブヨ沼幕営地
《2日目》 ブヨ沼幕営地(1:50)→音更山(0:50)→シュナイダーコース分岐
《2日目》 ブヨ沼幕営地(1:50)→音更山(0:50)→シュナイダーコース分岐
(0:40)→石狩岳(1:10)→音更山(1:20)→ブヨ沼幕営地(1:00)→十石峠
(1:10)→ユニ石狩岳登山口より車(1:20)→上士幌町・糠平
《1日目》 ユニ石狩沢からブヨ沼へ
糠平より国道273号線を進んでいく。 《三国峠》を越えて、ユニ石狩川のたもとから延びている『由仁石狩林道』に入っていく。 林道入口には南京錠が掛かっており、事前に管轄の上川営林署に連絡して開錠番号を聞いておくとよい。
林道は、約6km先で猫の額のように狭い荒地となって途切れている。 車をこの荒地に置いて、登山開始しよう。 登山口には案内板が設置されて整備されている・・と思いきや、洪水によって河原と化した不明瞭な林道の残骸を歩く事になる。
途中2~3度、林道を分断するユニ石狩沢を徒渉しながら、道ともつかぬ河原の中を歩いていく。
糠平より国道273号線を進んでいく。 《三国峠》を越えて、ユニ石狩川のたもとから延びている『由仁石狩林道』に入っていく。 林道入口には南京錠が掛かっており、事前に管轄の上川営林署に連絡して開錠番号を聞いておくとよい。
林道は、約6km先で猫の額のように狭い荒地となって途切れている。 車をこの荒地に置いて、登山開始しよう。 登山口には案内板が設置されて整備されている・・と思いきや、洪水によって河原と化した不明瞭な林道の残骸を歩く事になる。
途中2~3度、林道を分断するユニ石狩沢を徒渉しながら、道ともつかぬ河原の中を歩いていく。
すると、左手の土手に笹に覆われた獣道と見まがう小径がある。 この下に、朽ち果てた『ユニ石狩岳登山口』の道標が転がっている。 どうやら、ここが登山道入口のようだ。
・・とりあえず、進むべき道が判ったので登っていこう。 だが、案の定、猛烈なクマザサに覆われた道で、足元どころか目の前も見えない。 それよりも、もっと気になるのはヒグマなどの猛獣の事だ。
・・とりあえず、進むべき道が判ったので登っていこう。 だが、案の定、猛烈なクマザサに覆われた道で、足元どころか目の前も見えない。 それよりも、もっと気になるのはヒグマなどの猛獣の事だ。
こういう見通しの利かない所では、羽ばたく野鳥の羽音やエゾシカの飛び跳ねる音が響いただけでもビクッとくる。
約30~40分のクマザサの洗礼を受けると、笹地を抜けてダケカンバの樹林帯の中を行くようになる。
ダケカンバからハイマツ帯に変わる頃、小さな巣穴が無数に空く狭い庭園状の岩場に出る。
約30~40分のクマザサの洗礼を受けると、笹地を抜けてダケカンバの樹林帯の中を行くようになる。
ダケカンバからハイマツ帯に変わる頃、小さな巣穴が無数に空く狭い庭園状の岩場に出る。
ここは『鳴兎園』と呼ばれる所で、この小さな巣穴は“氷河時代の生き残り”と言われる彼らの棲だ。
この巣穴のどこからか、彼らのかん高い鳴き声がこだまする。
『鳴兎園』を越えると道は沢に出て、その右岸を歩くようになるが、通称・“大崩れ”という呼び名の通り大規模な土砂崩れを起こしている。 この崩れそうな浮いた岩ガレの上を延々とトラバース気味に伝っていく。 このトラバースは、崩れそうな岩だけでなく、その上に乗っかっている倒木にも手を焼く。
跨ごうとすると引っ掛かるし、その上に乗って力をかけ過ぎると、地すべり的に落下するのである。
そのような訳で、倒木は極力避けながら、所々の岩にあるペンキ印を手掛かりに沢をつめていく。
この“大崩れ”の土砂崩れを越えると、岩ガレ帯も少しおとなしくなる。 岩ガレの中腹を歩いていくと、再び“小崩れ”という土砂崩れを越えて、ユニ石狩岳の山腹を大きく巻くように横切って、稜線上のやや低い“峠”と思しき所へ直登していく。
この辺りからチラホラと、チシマギキョウやキジムシロなどが花を開いてくる。 そして、最後まで土砂崩れのような岩ガレ帯を登りきると、《十石峠》に着く。 この《十石峠》は石狩岳本コースと合流し、なおかつ左手にはユニ石狩岳、右手には音更山・石狩岳という石狩連峰の要害である。
この巣穴のどこからか、彼らのかん高い鳴き声がこだまする。
『鳴兎園』を越えると道は沢に出て、その右岸を歩くようになるが、通称・“大崩れ”という呼び名の通り大規模な土砂崩れを起こしている。 この崩れそうな浮いた岩ガレの上を延々とトラバース気味に伝っていく。 このトラバースは、崩れそうな岩だけでなく、その上に乗っかっている倒木にも手を焼く。
跨ごうとすると引っ掛かるし、その上に乗って力をかけ過ぎると、地すべり的に落下するのである。
そのような訳で、倒木は極力避けながら、所々の岩にあるペンキ印を手掛かりに沢をつめていく。
この“大崩れ”の土砂崩れを越えると、岩ガレ帯も少しおとなしくなる。 岩ガレの中腹を歩いていくと、再び“小崩れ”という土砂崩れを越えて、ユニ石狩岳の山腹を大きく巻くように横切って、稜線上のやや低い“峠”と思しき所へ直登していく。
この辺りからチラホラと、チシマギキョウやキジムシロなどが花を開いてくる。 そして、最後まで土砂崩れのような岩ガレ帯を登りきると、《十石峠》に着く。 この《十石峠》は石狩岳本コースと合流し、なおかつ左手にはユニ石狩岳、右手には音更山・石狩岳という石狩連峰の要害である。
石狩連峰稜線上の要害・十石峠 十石峠より望む音更山
ここからの眺めは、ニペソツ山がアルプスばりのゴツゴツした容姿を裾野より魅せて壮観だ。
また、明日に目指す石狩岳も、緑の盾のようにそびえている。 《十石峠》でそよ風に吹かれて、体を休めたなら先に進もう。
《十石峠》からは進路を右手に取り、稜線上の起伏を確実にこなしていく。 しかし、途中からは猛烈なハイマツのブッシュとなっていて、体に荷物に引っ掛かって小さな起伏を1つ越えるだけで15分はかかる。 これを3~4回繰り返すと、ブヨ沢の源頭の峰に立つ。 ここからぬかるんだ黒土帯を下っていくと、その名の通りブヨが飛び回る濁った小さな沼が現れる。
この沼はお世辞にもきれいとはいえず、もちろん沼の水も飲めたものではない。 早々にこの沼を過ぎて50mほど歩くと、テント5張りほど可能な手狭い平地に出る。 ここが《ブヨ沼幕営地》で、その名の通りブヨが飛び回る“ハッパむしむし!?”状態である。 そして、水場も約10分下ったブヨ沢でしか得ることができず、お世辞にもいい展場とはいえない。
また、眺めも、ユニ石狩岳の山腹が見えるだけの貧相なものである。 それゆえに、明日の石狩岳には大いなる期待を抱いてしまう。 明日は、石狩岳に登ってユニ石狩沢に下山する長丁場だ。
明日に備えて、今日はゆっくり休もう。
イワブクロ
《2日目》 石狩岳を踏んで下山
今回の下山は往路をたどるので、テントは撤収せずにそのままデポして軽身でいこう。 さて、道は展場を出ると、途中に雪渓を抱くコブへの急登となる。
小さな雪渓を越えて、笹ヤブの中を笹をつかみたくなる程の急登で乗り越えると、展望が開けたコブの頭に立つ。 ここからは、『東大雪』の山々が一望できる。 しかし、展望が開けて朝の爽快な気分を味わえるのはここだけで、この先音更山の頂上付近に登り着くまで延々とブッシュ漕ぎとなるのだ。
朝の東大雪の山なみ
明けの空を白鳥雲が優雅に翼を広げていた
・・朝の爽快感を満喫したら、名残惜しいが先に進もう。 このコブからは、ハイマツや潅木林の森に向かって急下降していく。 先程も述べたように、当然ブッシュ漕ぎだ。 コブの上から眺めた通り、緑濃く薄暗い“樹海”の中を最低鞍部まで下っていく。 下りきると当然、音更山への“跳ね返し”の急登が待っている。 ハイマツのブッシュにつかまりながら、約300m登っていく事になる。
ブッシュに手こずりながらも、中腹までくると岩の突き出た砂礫地帯となり、ひとまずハイマツのブッシュも収まってくる。 しかし、相変わらずの急登で、汗を搾り取られる事には変わりはない。
この砂礫地の急坂で振り返ると、先程通った樹海が盛り上がって“ラクダの背”のようになっている。
ここから見る限り、相当深い密林地帯だったようである。
砂礫地から、再びハイマツのブッシュの急斜面をよじ登る。 これを乗り越えて、再び背後にニペソツ山が美しい姿を現しだすと、音更山の頂上へはあとひと息だ。 最後は、岩ガレを直登気味に登りつめると、お花畑の点在するただっ広い音更山の頂上丘に着く。
砂礫地から、再びハイマツのブッシュの急斜面をよじ登る。 これを乗り越えて、再び背後にニペソツ山が美しい姿を現しだすと、音更山の頂上へはあとひと息だ。 最後は、岩ガレを直登気味に登りつめると、お花畑の点在するただっ広い音更山の頂上丘に着く。
音更山は『表大雪』と
高根ヶ原の絶好の展望台だ
ここからの眺めは、正に雄大だ。 旭岳・白雲岳の大雪の山なみ、それに続き雪渓を乗せて幾筋もの縞模様を白く輝かせた平坦な丘が眼前に広がっている。 そう・・、《高根ヶ原》の大平原だ。
向こうには、《五色ヶ原》の緩やかな傾斜台地も見える。 そして、その奥に独特な冠を乗せた“聖なる山”・トムラウシ山も頭を覗かせる。 それに、辺り一面のお花畑、これらを全て我一人で味わえるのだ。
この周り、足元全てに素晴らしい景色を楽しみながら、頂上丘を歩いていこう。 やがて、最も西寄りの岩レキで一段盛り上がった丘にたどり着くだろう。 この上が、音更山 1932メートル 頂上だ。
この周り、足元全てに素晴らしい景色を楽しみながら、頂上丘を歩いていこう。 やがて、最も西寄りの岩レキで一段盛り上がった丘にたどり着くだろう。 この上が、音更山 1932メートル 頂上だ。
ケルンが積んである頂上で、変わらぬ雄大な景色を楽しみながらひと息入れよう。
朝日に光る
チングルマの群落
花々が咲き乱れる音更山の頂上からは、左手にそびえ立つ石狩岳を正面に見据えるべく進路を左手に変えて、ロックガーデン状の岩ガレの積み重なりを急下降していく。 途中、花や眼前にそびえる石狩岳の勇姿に気を魅かれがちだが、この岩ガレは浮石が多いので踏み外す事のないように注意していこう。
このロックガーデンを下りきると、ハイマツのブッシュ地帯をくぐり抜けて、石狩岳に続くなだらかな稜線の鞍部に出る。 ここが《シュナイダーコース》の分岐である。 この《シュナイダーコース》は、“一番近いが、一番しんどい”といういわく付きのコースである。
アオノツガザクラ
花々が咲き乱れる音更山の頂上からは、左手にそびえ立つ石狩岳を正面に見据えるべく進路を左手に変えて、ロックガーデン状の岩ガレの積み重なりを急下降していく。 途中、花や眼前にそびえる石狩岳の勇姿に気を魅かれがちだが、この岩ガレは浮石が多いので踏み外す事のないように注意していこう。
このロックガーデンを下りきると、ハイマツのブッシュ地帯をくぐり抜けて、石狩岳に続くなだらかな稜線の鞍部に出る。 ここが《シュナイダーコース》の分岐である。 この《シュナイダーコース》は、“一番近いが、一番しんどい”といういわく付きのコースである。
花に見とれて石に躓かぬように
ミヤマキンバイの群落
この分岐からは、石狩岳の急峻な岩場を高低差150m・・、文字通りよじ登っていく。 中腹の辺りからキンバイソウが斜面に黄色を染め上げて、他にも色とりどりの花々が、それぞれ群落をなして斜面を輝かせている。 これらを見ながら登っていくと、下から見上げた眺めに反してあっさりと岩の裂け目につけられた登路から頂上に踊り出る。 『東大雪』の盟主・石狩岳 1967メートル の頂上だ。
石狩岳頂上標と
『表大雪』の山なみ
頂上からの展望は『盟主』の名の通り、何一つ遮るもののない雄大で味わい深いものであった。
先程に音更山で見た絶景が、今度は雲海越しに広がっている。 そして、石狩岳から続く稜線は、“ニペの耳”の独特な突起を連ね、《五色ヶ原》の大平原に向かって大きく弧を描いて続いている。
先程に音更山で見た絶景が、今度は雲海越しに広がっている。 そして、石狩岳から続く稜線は、“ニペの耳”の独特な突起を連ね、《五色ヶ原》の大平原に向かって大きく弧を描いて続いている。
シルエット美しきニペソツ山
振り返ると、ニペソツ山が秀麗な山岳風景を魅せてそびえている。 その山麓は、濃い原生林となって遙か彼方に続いている。 原生林の濃緑、残雪の輝く白銀、大地のライトグリーン、雲海の綿白色、素晴らしき色彩の調和が目を虜にする。 時を忘れ、この極上のひとときを全身で味わおう。 この素晴らしい風景に対して、落ち着きを取り戻せたなら、最高点の石狩岳・南峰に行ってみよう。
石狩岳の三角点から200mほど先に行った所で、最高点といってもその差は僅か1mだ。
しかし、より《五色ヶ原》の大平原とそれに続く石狩連峰の稜線がはっきりと見えてくるので、行ってみる価値はあるだろう。 何遮るもののない静寂な山頂でのひとときを満喫したなら、往路を忠実に戻ろう。
エゾノハクサンイチゲの
群落の中を下っていこう
・・帰りは下山口までの長丁場で3つの登り返しがあり、しかも猛烈なブッシュや笹漕きが控えていので、かなり疲れるである。 ヘバらぬようにペース配分を考えて下っていこう。 下山の後は、野趣溢れる《幌加温泉》や、《糠平温泉》で山の疲れを癒そう。
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