2011-10-30 (Sun)✎
名峰次選の山々 第38回 『139 巻機山』 新潟県
越後山系(魚沼連峰県立自然公園) 1967m コース難度 ★★ 体力度 ★★
なだらかな容姿を魅せる巻機山
今回取り上げる巻機山には、2度訪れている。 1度目はコース難度の少し高い『沢コース』から登って、初心者コースの井戸尾根を下山するルートだ。 巻機山の登山ルートを1回で説明するなら、このルートをめぐる設定とするのが適切であろう・・と思う。
だが、1度めに訪れた時は登り時が曇天から大雨に変わる天候で、山上は大雨の中でタッチして戻っただけであったし、その大雨は翌日大雪となり、とても初心者コースとしてのガイドができる状況ではなくなってしまったのである。 従って、次に訪れた秋の豪華絢爛な情景を、皆が楽しめる初心者ルートの井戸尾根の往復で語ろうと思う。 それと、1度目の時の大雨から大雪の情景は、また次回に取り上げる事にしよう・・と考えている。 それでは、豪華絢爛たる秋の巻機山を訪ねてみよう。
巻機山登山ルート行程図
※ 沢ルートの解説もあります
今回の秋ルート行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR六日町駅よりバス(0:45)→清水バス停(0:40)→桜坂駐車場〔登山口〕
(1:30)→五合目・焼松(1:10)→六合目展望所(1:40)→前巻機
(0:10)→巻機山避難小屋・巻機山の山頂部へは所要30分〕
《2日目》 巻機山避難小屋より巻機山稜線への往復と周遊・所要4時間(0:20)→前巻機
《2日目》 巻機山避難小屋より巻機山稜線への往復と周遊・所要4時間(0:20)→前巻機
(1:00)→六合目展望所(0:50)→焼松〔五合目〕(1:00)→桜坂駐車場〔登山口〕
(0:40)→清水バス停よりバス(0:45)→JR六日町駅
巻機山域に広がる
素晴らしき紅葉風景
《1日目》 井戸尾根を登って巻機山頂へ
登山口へのアプローチの日は雨だった。 それでも、テント幕営以外に宿営する手を持ち合わせていないので、仕方なく雨の中テントを張る。 雨は夜半過ぎから本降りとなって、テントの中が浸水してくる始末。 それでも、ゴキブリ並の精神力でぐっすり8時間寝る。 翌朝、目覚めてテントより這い出たなら、降るとも降らないとも予想がつかぬ重苦しい曇天であった。
“今回もハズレか?”と思いながら、とにかくテントを撤収して出発。 上の駐車場に止まっている車の数、即ち登山者の数は前回よりやや多いみたいである。 登山口に入ってすぐにある沢コースとの分岐は、迷わず“初心者ルート”の《井戸尾根》に向かう右手の道を選択する。
このルートは前回に下山ルートで歩いているので、“どこに何があるか”をある程度把握している。
登山口へのアプローチの日は雨だった。 それでも、テント幕営以外に宿営する手を持ち合わせていないので、仕方なく雨の中テントを張る。 雨は夜半過ぎから本降りとなって、テントの中が浸水してくる始末。 それでも、ゴキブリ並の精神力でぐっすり8時間寝る。 翌朝、目覚めてテントより這い出たなら、降るとも降らないとも予想がつかぬ重苦しい曇天であった。
“今回もハズレか?”と思いながら、とにかくテントを撤収して出発。 上の駐車場に止まっている車の数、即ち登山者の数は前回よりやや多いみたいである。 登山口に入ってすぐにある沢コースとの分岐は、迷わず“初心者ルート”の《井戸尾根》に向かう右手の道を選択する。
七合目付近は紅葉に染まる
尾根を見ながらの楽しい道程だ
確か、5合目の《焼松》という滝見台までは、鬱蒼とした樹林帯を進んでいった記憶がある。
勾配は急過ぎず、さりとて緩過ぎず・・と言った按配で、最盛期の体力を遠の昔に失ったワテがテント一式を担いだ状態で、コースタイムの4:30より30分オーバーの5:00で小屋まで登りついたのである。
かつてのコースタイム6:30のルートを4:15で登りきるようなブリバリ体力は消えうせたものの、登高に関しては良好な結果だと思う。 途中、七合目付近の展望の利く場所では、尾根全体が赤く染まった秋風景を堪能しながら登ってゆける。 惜しむべくは、この日が重苦しい曇天だったという事である。
ちなみに写真は、下り時の絶好の天気の下で撮ったものである。 《井戸尾根》は初心者ルートというだけあって、八合目付近からは丸太の階段が敷設されていた。 前回は、この丸太の階段が全て雪で埋まる程のドカ雪が1日で降り積もったのである。
ニセ巻機(前巻機山)から望む
割引岳と巻機山への道程
八合目からの丸太の段をつめていくと、程なく“ニセ巻機”と呼ばれる前巻機山 1861メートル の頂に出る。 この頂の上に立ては、巻機山本峰 1967メートル は元より巻機山塊を成す割引岳 1931メートル や、山塊の端に牛が寝そべるようにノッペリと横たわる牛ヶ岳 1962メートル など山岳パノラマ風景を目にする事ができる。 そして、この頂より少し下れば、今日の宿となる《巻機山避難小屋》である。
この小屋はバイオトイレ付の近代的な小屋で、収容人員も40名位はいけるだろう。 前回は“雨から吹雪”というどうしょうもない天候だった事もあり利用者は私ひとりであったが、今回は午後になると徐々に利用者が到着して二階が満杯となる盛況ぶりだった。
この小屋はバイオトイレ付の近代的な小屋で、収容人員も40名位はいけるだろう。 前回は“雨から吹雪”というどうしょうもない天候だった事もあり利用者は私ひとりであったが、今回は午後になると徐々に利用者が到着して二階が満杯となる盛況ぶりだった。
そして、前回の懸案だった水の入手(前回はナベに雨水を溜めて使った)も、テント場の先の踏跡を下ると《焼松》で滝となっていた米子沢の源頭が流れていたのである。 これで、宿泊の全てのアイテムが揃った訳である。
巻機山域に広がる素晴らしき紅葉風景
をほんの一つまみ
小屋で昼寝をしてから巻機山上に登り、牛ヶ岳までの散策路を周遊したのだが、これらのレポートは絶好の日和となった明日に全てを語ろうと思う。 後の心配は、小屋の同宿者が騒いだりする連中ではないだろうか・・という事だけである。 まぁ、酒盛りして騒ぐような連中だったとしても、最悪外に出てテント幕営をすればいいだけなので、それ程に煮詰まってもいなかったが。
小屋で昼寝をしてから巻機山上に登り、牛ヶ岳までの散策路を周遊したのだが、これらのレポートは絶好の日和となった明日に全てを語ろうと思う。 後の心配は、小屋の同宿者が騒いだりする連中ではないだろうか・・という事だけである。 まぁ、酒盛りして騒ぐような連中だったとしても、最悪外に出てテント幕営をすればいいだけなので、それ程に煮詰まってもいなかったが。
キリがモヤとなり
それが途切れると
山が赤く染まり出して
《2日目》 巻機山頂に遊び下山
昨日、薄っすらと日差しが差した事もあり、また天気予報でも“天候が回復傾向”との事で、密かに期待を抱いていた。 朝起きたら、濃いキリの真っ只中・・。 “やはり甘かったか”と落胆しながら、昨日登った頂上までの木道を伝う。 だが、登っていく内にキリが薄くなり、幻想的な朝もやへと変わってきた。
昨日、薄っすらと日差しが差した事もあり、また天気予報でも“天候が回復傾向”との事で、密かに期待を抱いていた。 朝起きたら、濃いキリの真っ只中・・。 “やはり甘かったか”と落胆しながら、昨日登った頂上までの木道を伝う。 だが、登っていく内にキリが薄くなり、幻想的な朝もやへと変わってきた。
「これは逃してはならぬ」と必死になって丸太の段を駆け上って、山頂直下にある池塘の前に立つ。
ほのかに染まる空と朝もやと
山肌が赤く染まって
濃いキリから幻想的な朝もやに変わり、そしてそれが途切れると山が赤く染まりだす。 贅沢極まる極上の山の朝を堪能できそうである。 朝露が周囲の草木に潤いを与え、そして朝が来たのを祝うが如く、ほのかに染まるかぎろい色の光が秋の山肌を包み込む。 この光に誘われて、頂へと登りつめる。
そこには、言葉で表現しきれない絶景が広がっていた。
少しずつ影が光に変わってゆき
木段を登りつめると、『百名山』用の頂上である《御機屋》に出る。 ここはアリバイ写真用の頂上で、山名を記す道標が多く立てかけられるなど、この素晴らしい朝風景に水を差す所だ。 ここは素早く通り過ぎて、山上湿原に遊びにいこう。 《御機屋》を出て進路を右手に取ると、緩やかに登って巻機山の最高点を通過する。
朝の山風景と秋の情景と
今まで大地を閉ざしていた濃いキリが
瞬く間に散ってゆき
まるで獣の毛並みのように
美しく流れる大地
なぜ“通過する”と記したかというと、あれだけ多くの山名標が立ち並んだ《御機屋》に比べて最高点は道標すらなく、これ見よがしにケルンが1つ積まれているだけであった。 何とも寂しい“最高点”である。
この粗末な扱いの“最高点”を越えると、いよいよ山上湿原の代名詞・池塘がポツポツと現れだす。
この粗末な扱いの“最高点”を越えると、いよいよ山上湿原の代名詞・池塘がポツポツと現れだす。
心を惑わすが如く
濃い蒼の水鏡が
色々な情景を映しだして
宝石が無造作に散りばめられ
山の贅沢 ここに極めたり
吸い込まれかねないような幻想的で危険な濃紺の水を湛え、風景にマッチした不思議な池が宝石のように散りばめられているのである。 山を映し、たなびく朝もやを水面にたなびかせる濃紺の水鏡の撮影に夢中となる。 やはりこれは、この“濃紺の水鏡”に心を吸い込まれてしまったからなのだろうか。
ミルク色の朝の下に広がる
雄大な谷川連峰
この山上湿原は歩いて40分程度の牛ヶ岳 1962メートル まで続いており、周遊範囲としては“長すぎず短すぎず”の最適なる範囲であろう。 取り敢えず牛ヶ岳まで散策して、今度は反対側の割引岳方向を歩いてみよう。
朝もやに包まれる牛ヶ岳
ノッペリとした山容から
ノッペリとした山容から
牛と名づけられたのだろう
ちなみに牛ヶ岳は、半分以上判読不能な位にボロボロに朽ちた山名標の“棒きれ”が、サークルに一本立てかけられているだけの所である。 その先は《裏巻機》へ続く旧道らしく、通る者もなく荒れ果てていた。
早朝は誰一人おらず
絶好の“我一人のパラダイス”となる
池塘などを楽しみつつ、往路を戻っていく。 《御機屋》に戻り、今度は左手に進路を取る。
木段のアップダウンをこなすと、見た目の距離ほど時間も食わずに割引岳の山域に入る。 《御機屋》から20分少々って所だろう。 割引岳直下の鞍部には前回に通った沢ルートが、谷底から這い上がるように合流する。 合流口には、『下山禁止』を記した立札がある。
木段のアップダウンをこなすと、見た目の距離ほど時間も食わずに割引岳の山域に入る。 《御機屋》から20分少々って所だろう。 割引岳直下の鞍部には前回に通った沢ルートが、谷底から這い上がるように合流する。 合流口には、『下山禁止』を記した立札がある。
下の沢へ目をやると、割引岳から《ヌクビ沢》の谷底へ向かって紅葉が一気に駆け下りているのが望まれる。 “前回はこの沢を喘ぎ登ったのだな”と、回想から思い出に変わって蘇る。 しかし、去年の紅葉は限りなく貧相だったのだな・・とも思う。
左を望むとピラミタルな
割引岳に向かって
一筋の道が刻まれている
前回もほぼ同じ時期(10/20頃)に訪れたのだが、前回は全く紅葉の記憶がないのである。
あるのは、雨が吹雪に変わり、一夜にして50cm以上の雪が積もってラッセルするハメとなった事と、色づきの悪い紅葉に雪が乗って『雪紅葉』となっていた事くらいである。
谷に向かって
紅葉が駆け下っていた
ピラミタルな山容の割引岳に
向かって一筋の道が連なる
割引岳 1931メートル へは、やや不安定なガラ場を10分少々直登すればいい。 美しいピラミタルの山容で、山塊から離れた所にあるこの峰の展望は、山域随一であるといっても過言ではないだろう。
360°遮るもののない欲しいままの展望を持つこの峰は、この山域になくてはならぬ峰であろう。
割引岳頂上より
雲海が尾根を越えて
新たなるシーンを創り出す
新たなるシーンを創り出す
欲しいままの展望に時を忘れていつまでもたたずんでいたい所だが、程よく切り上げて帰路に向かうとしよう。 “あぁ、あの先はどのような景色が広がっているのだろう”と、引き返す自らと反対方向にある『未知なる道の険しさを警告する』立て札に後ろ髪を引かれる感情を抱きつつ。
『この先は玄人向け』と
宣言する小さな立て札
下りは、もちろん往路を戻ろう。 山の頂から自らの辿ってきたルートが一望できるのは壮観だ。
これが一望できる位だから、今日は滅多にない程に最高の天気に恵まれたようだ。 こういう時、下るのが苦手(すごぶる遅い)な自らが得した気になる。 長い間、この素晴らしい情景を見下ろしながら下れるのだから。
宣言する小さな立て札
下りは、もちろん往路を戻ろう。 山の頂から自らの辿ってきたルートが一望できるのは壮観だ。
これが一望できる位だから、今日は滅多にない程に最高の天気に恵まれたようだ。 こういう時、下るのが苦手(すごぶる遅い)な自らが得した気になる。 長い間、この素晴らしい情景を見下ろしながら下れるのだから。
朝もやが立った
あの池塘を見下ろして
昨日お世話になった
小屋が小さく見えて
そして下りの道中も、豪華絢爛たる絵巻模様が下りの苦行を癒してくれるだろう。 ともすれば、下山後の予定が頭から消し飛んでしまう程に。 確かにあの時は、時を忘れてカメラ片手にはしゃぐ自分がいたと思う。 これだから、山はやめられない。 それでは最後に、豪華絢爛たる絵巻模様の一端をごろうじろ。
シャドーと順光の帯が連なって
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No title * by 風来梨
yamanbouさん、こんばんは。
沢コースは、アイガメの滝の辺が一枚岩で滑りやすく、私の行った秋は鎖が取り外されたのかなかったので、少しデンジャラスでした。
それよりも雨から大雪となって、一晩で50~70の積雪になってたのはたまげました。 その時の状況は、『越後の名峰めぐり<3>』のリンク先を御覧頂ければ・・。
沢コースは、アイガメの滝の辺が一枚岩で滑りやすく、私の行った秋は鎖が取り外されたのかなかったので、少しデンジャラスでした。
それよりも雨から大雪となって、一晩で50~70の積雪になってたのはたまげました。 その時の状況は、『越後の名峰めぐり<3>』のリンク先を御覧頂ければ・・。
割引山が本峰よりキレイだったのを思い出します。
今度、登るときは沢のコースをと思いました。
小屋前の雪解け水が美味しかった。(6月)