2023-01-19 (Thu)✎
『日本百景』 冬 第541回 赤目四十八滝・冬 〔三重県〕
完全に氷結した
赤目五瀑の一つ・不動滝
赤目四十八滝 あかめしじゅうはったき (室生赤目青山国定公園)
『四十八滝』と総称される滝群の一つで、三重県名張市赤目町を流れる滝川の渓谷にある一連の滝の総称である。 また、谷は赤目四十八滝渓谷(あかめしじゅうはちたき けいこく)と称される。
赤目五瀑で
もっとも豪勢な千手滝
滝のある渓谷はおよそ4kmにわたって続き、峠を挟んで香落渓(かおちだに)へとつながっている。
渓谷は四季折々に楽しめるハイキングコースとなっており、紅葉の名所としても知られていて、秋には関西・中京方面などから多くの観光客で賑わいを見せる。 年間に15万人以上の行楽客が訪れる我が国有数の渓谷観光名所となっている。
赤目五瀑の中で
随一の景観と云われる荷担滝
中でも、渓谷内でも規模が大きく秀麗な5つの滝(不動滝・千手滝・布曳滝・荷担滝・琵琶滝)は『赤目五瀑』とよばれている。
不動滝のエメラルドの釜が
滝飛沫と光でキラキラと輝いて
また伊勢と平城の都の中間に位置する事から、当地は古より山岳信仰の聖地であり、不動明王を奉る滝不動尊の御神体が不動滝で、これを参りに赴く『滝参り』という呼び方・考え方が今も残っている。
また、奈良時代には、修験道の開祖である役行者(役小角)の修行場ともなった。
布曳滝が落とす釜淵には
陽の光の宝石がキラキラと輝いていた
地名としての『赤目』の由来は、役行者が修行中に赤い目の牛に乗った不動明王に出会ったとの言い伝えにあるとされる。 また、役行者および修験道と関連するが、忍者の修行場であったとも伝えられている。
古の楽器の琵琶を描く
琵琶滝の流れは雛壇へと続く
また、渓谷とその周辺地域は、野生動物と植生の宝庫である。 特に渓谷内は、世界最大級の両生類の一つであるオオサンショウウオの棲息地として知られ、滝への入り口付近には飼育・展示施設の日本サンショウウオセンターがある。
絵葉書のハッケージにあった
渓谷内案内図
大阪・上本町駅より鉄道(1:00)→赤目口(1:00)→日本サンショウウオセンター〔渓谷起点〕
※ 渓谷起点の《行者滝》から最奥の《岩窟滝》まで約4km・所要約1時間40分→落合
落合(1:00)→日本サンショウウオセンター(1:00)→赤目口駅より鉄道(1:00)→大阪・上本町駅
※ 落合からは県道を歩いて渓谷起点に戻る
完全氷結する氷点下-5℃以下なれど
陽の光が暖かさを感じさせてくれた
さて、今回は数ある『四十八滝』の中でも、ひときわ景観の秀でたる《赤目四十八滝》を真冬に探勝してみよう。 三重県内は近鉄線が路線網を充実させているので、この渓谷へのアプローチは至って容易である。 一応、アプローチの概要を挙げておく事にしよう。
今や無人駅となった赤目口駅
※ ウィキペディア画像を拝借
最近は伊勢までの長距離急行でも
ロンシー(ロングシート)だよ
※ ウィキペディア画像を拝借
大阪・上本町駅から赤目口駅まで、快速急行か急行で約1時間である。 駅から《四十八滝》行のバスが出ているが、ここはハイキングも兼ねて歩いていこう。 道程は約4km、所要は約1時間位である。
赤目渓谷の入口となる
日本オオサンショウウオセンター
※『観光・みえ』より
店屋街とバスセンターを越えると、車道より下がった所に建っている《日本サンショウウオセンター》がある。 ここが、《赤目四十八滝》の起点となっている。
世界最大の両生類と云われる
オオサンショウウオ
※ ウィキペディア画像を拝借
入場料を払って、サンショウウオの水槽が大小100程ある建物内を通り抜けるとテラス状の所に出て、それに続く遊歩道を沢沿いに進んでいく。
滝というよりは早瀬の行者滝
まず、最初に出会う滝が《行者滝》である。 早瀬の妙を魅せる滝である。 滝を見下ろしながら緩やかに階段を上り、赤い橋を渡ると《霊蛇滝》である。
氷を嚙む早瀬の妙に
魅せられながら渓谷を遡っていく
この辺りから、《屏風岩》や《衣掛岩》などの立岩が両側より迫り立ってきて、いよいよ幽谷の趣を増してくる。
エメラルドに光る不動滝の淵が
完全に氷結して
氷が織りなすラムネ色を魅せていた
少し下って、あずま屋が建っている広い淵の畔に出る。 このエメラルドグリーンの淵に、美しい白布を落としている滝がある。 これこそ、『赤目五瀑』の一つ・《不動滝》である。
これほどの氷結は近年の
暖冬傾向では極めて稀である
嬉しくなって
アップで氷瀑を撮ってみる
エメラルドグリーンの淵と調和された眺めは、四季折々の情景によってより引き立てられる。
中でも、冬の氷瀑の姿は素晴らしい。 真に“氷のオブジェ”、滝しぶきの宝石である。
氷瀑となる目安は
氷柱が魅られる事だろうね
《不動滝》からは階段で滝の上に出て、橋を渡ってヘツり気味となった探勝路を伝っていく。
探勝路全体では、この辺りが一番急な上り坂であろう。
不動滝からは少し急な階段を昇り
滝の落ち口の前に出る
これを越えると畳敷きのような《八畳岩》や《処女滝》を経て、『赤目五瀑』の《千手滝》と《布曳滝》と続いていく。
滝の釜が函状の
大岩で囲まれた千手滝
垂直の函には雪が乗らず
氷瀑となった千手滝との
コントラストが際立っていた
まとまりのある岩段に幾条もの白布を掛ける《千手滝》、滝つぼに陽だまりを宝石のように輝かせる一条の白布《布曳滝》。
布曳滝の淵は陽がよく当たって
氷結はしないようだ
布曳滝の落ち口を
覗き込んでみる
どちらも、四季を通じて魅力いっぱいの情景を魅せてくれるだろう。 渓谷の遊歩道は30mと落差最大の布曳滝の左岸(右側)を、ジグザグの階段坂で昇って布曳滝の落ち口の上に抜けるが、階段や坂道は日影が凍ってツルツルとなっているので、滑っての転倒には注意したい。
岩に貼りついた氷と
冷たい水の流れと光が
得も言えぬアートを魅せてくれる
この2つの名瀑を越えると、ひとまず落ち着いた眺めが続くようになる。 早瀬に落葉が叙情的な《竜ヶ壷》や《縋藤滝》を越えると、深くよどんだ《釜ヶ淵》や広々とした一枚岩の中洲である《百畳岩》などが、少し単調になりかけた気持ちに涼風を吹きかけてくれる。 《百畳岩》の脇には休憩茶屋があり、シーズン中ならば飲物などを売っていて、ひと休みするにはちょうどいい頃合だろう。
滝の氷結も素晴らしいが
陽の光にクリスタルな輝きを魅せる
沢の流れの妙にも惹かれる
茶屋でひと休みしたなら、先に進もう。 茶屋から先は、《百畳岩》の広がりが嘘のように幽谷を帯びてくる。 《柿窪滝》・《斜滝》と小さな滝を越えると、いよいよ《赤目四十八滝》でも『大観』といわれる《荷担滝》だ。
赤目渓谷随一の景観の荷担滝は
氷瀑姿も魅せられる
荷担滝の片方を
スローシャッターで
繊細な白絹糸に仕立ててみる
二条の白糸のような流れを“担う”この滝は、スローシャッターで狙うとひときわ繊細な映像を魅せてくれるだろう。 遊歩道化しているのはこの《荷担滝》までで、ここからは行き交う人もめっきり少ないか細い道となる。
雛壇滝は春に撮ったモノで
:
荷担滝を過ぎると遊歩道が細くなって
めっきりと人の往来が少なくなる
2つ目の雛壇滝の先には
赤目五瀑の琵琶滝が控えている
※ 春に撮ったモノです
スライドした一枚岩の川床を嘗めるように流れる《雛段滝》や《夫婦滝》を過ぎると、『赤目五瀑』の最後に控える《琵琶滝》だ。
琵琶滝は両端が氷結していた
冬の琵琶滝は雛壇滝と併せずに
氷結した滝つぼと
撮る方が引き締まるようだ
しっとりした白布と、なだらかな滝つぼが妙に艶かしい姿を魅せる滝であった。 ここから、《赤目四十八滝》最後の滝・《岩窟滝》までは500mほど離れている。
赤目渓谷最後の滝
岩窟滝を越えると
対岸の土手を上がって県道に出る
※ 春に撮ったモノです
《岩窟滝》を越えると、沢を渡って土手につけられたスロープをジグザグに上がっていく。
これを上りきると、奥を通る車道と合流する。 この道は《香落渓》に向かう道で、この地点は《落合》という地名との事である。 ここからは往路を戻るも良し、この車道を下っていくも良しである。
時間的には、車道を歩く方が30分ほど短縮できる。
前回の続き
:
閑散線区をゆく廃止ローカル線は
赤字を生む轍として1980年台の中頃に
国鉄再建法で廃止対象路線として
挙げられて路線廃止となって淘汰された
だがこの廃止となった路線は全て
必要とされたから敷設されたのであって
それは石炭や硫黄などの鉱物輸送に
森林資源や北海道のように
土地への入植開拓など多岐に渡る
そしてその産業が栄えた頃は
全路線が大きな利益を生み出す
黒字路線であったのだ
だが石炭から石油に転換する
エネルギー革命や鉱山の枯渇と
それを引っ括めての鉱山の閉山に加え
地域開拓も開拓事業の完遂で
役目を終える事となったのである
またコストと手間のかかる鉄道貨物から
トラックへの輸送手段の切り替え
道路の整備によるモータリゼーションで
運ぶ貨客を忽然と失うに至ったのだ
要するに赤字を槍玉に挙げられて
廃止となった廃止ローカル線は
時代の必要に応じて建設され
建設費の元を取って余りあるほどに
利益を生み出したのである
だが時代の流れには逆らえず
時代の移り変わりと共に建設された
目的が消失して『役目を終えた路線』
として廃止になったのである
だが整備シンカンセンは違うのである
:
次回の7回目に続く
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