風来梨のブログ

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名峰百選の山々 第37回  剱岳 その1 紅葉めぐり act 1

名峰百選の山々 第37回  『52 剱岳 その1 紅葉めぐり act 1』 富山県 
立山山系(中部山岳国立公園) 2998m コース難度 ★★★  体力度 ★★★
 

豪華絢爛たる秋絵巻へ

立山連峰の中でひときわ嶮しく、氷河地形を顕著に示しているのが剱岳である。 山頂は氷食尖峰で、氷河が永い時をかけて多くの嶮しき谷を創りだしている。 これらの谷は、《長次郎谷》・《平蔵谷》など、これらの谷を世に広めた先駆者達の名前がつけられている。

剱岳の魅力は、何といっても“奥の深い”楽しみ方にある。 初心者のピークハントから、中級者の八ッ峰や仙人池など『眺める』ルート、そして上級者の長次郎谷や北方稜線など“直に観る”など、どのレベルの登山者でも楽しめるのが、この剱岳である。
 

今回歩いた絢爛豪華な秋ルート 行程図
 
   行程表              駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 富山地鉄・立山駅よりケーブルカーと高原バス利用(1:10)→室堂(2:40)→剱沢
《2日目》 剱沢(2:20)→真砂沢小屋前
《3日目》 真砂沢小屋前(1:40)→ハシゴ谷乗越(1:40)→内蔵助平(2:20)→内蔵助谷出合
     (1:40)→黒部第四ダムよりトロリーバス利用(0:15)→扇沢よりバス 
     (0:35)→JR・信濃大町駅
 

 錦の衣をまとった剱本峰
 
さて、今回は山を志す者なら誰しも憧れる剱岳を取り上げよう。 そして、この剱岳であるが、冒頭で記したように初心者からアルピニストまでの全てが楽しめる様々なルートが存在する。 これを1回コッキリの登頂記で終わらすのは口惜しくて仕方がない。 
 
従って、季節に合わせて素人から玄人向けまで、いろいろと歩きめぐってみようと思う。
それでは、栄えある剱岳の最初の御紹介ルートは、『剱岳の紅葉に魅せられる』とっておきのルートを歩いてみよう。 

 《1日目》 剱沢まで・・
紅葉シーズンに、《黒部・立山アルペンルート》の起点である立山駅へ。 
しかし、予想に反して大して人混みはない。 だが、この人の空き具合は、『平日だから』という理由ではなかったのである。
乗客を見渡してみても軽装の観光客ばかりで、どうもザックを担いでいる“山ヤ”さんは見当たらなかったし。
 

秋色満開なのに
人っ子1人おらず

バスで室堂に着いたのは14:00。 さて、これからが旅の始まりだ。 今日は剱沢までの短い行程なので、水は行動水の500mlのみを《雷鳥沢》で汲んで行く。 
 
さて、ルートは《雷鳥沢》を渡って剱御前の山体に取り付くのだが、シーズン中には架かっているはずの橋は落とされていた。 これは、「シーズンを終えるとどうなっているか」を如実に予告しているのである。
沢を渡ると剱御前への登りとなる。 これをこなして剱御前に着くと、いよいよ異様に空いていた答えが明かされる。
 

今やヘタレ全開のメタボ(前から)の身
キャンプ地の剱沢へ
辿り着けるかどうかも怪しいものだ
 
それは、この登りを乗り切って《剱御前小屋》の前に立った瞬間であった。 小屋の窓に掲示された注意書きを見てア然。 何と、剱沢小屋を始めとしたこの先にある小屋全てが、先週の『体育の日』限りで今シーズンの営業を終えて閉鎖されていると記されてあったのだ。 オマケに、《仙人池》への途中にある《剱沢》に架かる橋も落とされているとの事である。

目当てとしていた《剱沢小屋》が閉鎖であったなら、トイレや水場の対応も考え直さねばならなくなる。 「取り敢えず情報収集」という事で、山域で唯一明後日まで営業している《剱御前小屋》に入って《剱沢》の状況を聞いてみる。 小屋番の兄さんによると、「キャンプ場前では、水が出ているかどうかは解らない・・ 下の雪渓まで行けば水は取れると思いますが」との事。
 

素晴らしき剱の情景は
裏剱にある
 
これを聞いて選択肢は2つとなる。 1つは、この《剱御前小屋》に泊るという事である。
もう一つは水をここで確保(買う)して、予定通り《剱沢》でキャンプを張るかである。
さすがに、「《剱沢》に水がある!」という博打は打てないしね。 しかし『小屋に泊る』という選択肢は、財布を開けた瞬間に『ボツ』となってしまった。 ・・で、否応無しに、予定通り《剱沢》でキャンプを張らざるを得なくなる。

方向性が決まったので、水を購入しようと小屋番の兄さんにお願いすると、小屋番の兄さんは「要煮沸の雨水の汲み置きなら、分けてあげますよ」との御厚意を示してくれた。 
水を(タダで)補給できた事だし、後は暗くなる前にテントを設営すべく《剱沢》へ向かうだけである。
 
でも、気が急くとなかなか着かないものである。 30分程で着けると思ったのに、この道程の長い事。
「こんなに長かったっけ?」と思いながら、時を追うように暮れていく空を見ながら真下に見える《剱沢》のテント場へ向かう。 到着は16:45だった。 辛うじて、陽は落ちていなかったよ。
着いて即効にテントを設営して、トイレの偵察(やっはり封鎖されていた)をして飯食って寝る(つもり)。
 

こんなに美しく山が染まるのを
目にしたのはいつの日以来か
 
 《2日目》 剱沢雪渓と真砂沢で紅葉狩り・・
昨日の最後に「寝る(つもり)」としたのは、まだ続きがあるからである。 
それは、この場所で寝る事がかなりの『重大ミッション』となってしまったからだ。 

テントを設営して、炊事の最中に暮れゆく剱本峰を撮って、飯食って、シュラフを出した所までは通常であった。 そして、テント内温度も許容範囲内の7~8℃であった。 これを見て、何気なしに銀マットの上にシュラフマットを敷いたテント床に、シュラフを敷いてこの中に潜る。 
だが、2時間程経ったPM8時半頃に、強烈な寒さに叩き起こされる。 

時計の温度計を見ると、+1℃まで下がっているではないか。 「これはたまらん!」と、シュラフから出てコンロに火を点けて水を沸かす。 『湯たんぽ』を作る為だ。 シグボトル(鉄ボトル)に沸騰した湯を入れて『湯たんぽ』を作り、これをシュラフの中に放り込んで足元を温める。 
「取り敢えずこれで寝れるだろう」と再び就寝。

始めの1時間程はウツラウツラできたものの、『湯たんぽ』が冷めてくる3時間後にまた猛烈な寒さが襲い掛かってくる。 時間はPM11時過ぎ。 温度は氷点下の-3℃まで下がってやがる。

「これまた、たまらん!」とシュラフから飛び出して、再びコンロに火を点ける。 
『湯たんぽ』を作り直す為だ。 そして、「これだけではこの寒さぱ乗り切れない」と直感的に感じたので、『湯たんぽ』を作った後にエァーマットを必死の形相で膨らます。
 
だが、一度寒さで目覚めたなら、なかなかに寝着く事も叶わず、次の『湯たんぽ』タイムのAM4時前まで寒さに震えながらまどろんでいた。 それに着ていた防寒着も、寒さを見込んだダウンジャケットと、何も考えずに羽織ってきた秋用ジャンバーという決定的な『自業自得の業』もあったのだし。
夜間の下らぬテント内奮闘記を書き記したが、とどのつまりの『結論』は「秋の山をナメんじゃねぇ!」である。

夜半の寝着けぬ間は「今日はどうするか、《剱岳》を往復して帰ろうか、それとも計画通りに《仙人池》まで行こうか」などと考えていたが、AM4時過ぎとなって周囲のテントがガサゴソと出発の準備を始める。
これを聞いて何故だか安心して、6時前まで寝着く事ができた。
 

今日はまたとない好天
雲一つない空で放射冷却の効果絶大だ
 
そんなこんなで朝6時に目覚めて、テントより外を見るとまたとない快晴の天気。 この好天を目にしたなら、「これは《仙人池》まで行くしかないだろう」という答えしか出ないよな。 だが、通算したら3~4時間は寝たものの、寝不足感は否めないのである。
 

広大な山肌のキャンパスを
染め上げて
 
テントを畳んで6:45に《剱沢》を出発。 他の2組は引き返したようで、《剱沢》の雪渓へ下るのは私だけのようである。 テント一式を担いでノタノタと下っていく。 秋口の雪渓はクレバスだらけで、道のほとんどが右岸につけられた高巻き道である。 岩コロがゴツゴツして歩き辛い。
 

ともなるとクレバスで
いっぱいとなる剱沢雪渓
 
ダラダラと歩いていくと、昨日の夜半に考えていたものとはまた違った『ヘタレ全開』の案が頭を支配してくるようになる。 それは、「寝不足だしィ、真砂沢でストップして寝ようかなァ」という妙案である。
約1時間程下って《平蔵谷》を見送った後に、下から3名の登山者とすれ違う。

この登山者達と対面してちょっと立ち話に興じたのだが、その中で《真砂沢出合》の先の橋が落とされている事などを確認できた。 何でも《別山谷》で雪渓が残っていて、今年は《下ノ廊下》の大半が通行止となっているとの事。
 

ダラダラと時間をかけて
歩けば歩くほどに
素晴らしい景色を長い時間
堪能する事ができるのデス・・ ハイ
 
コレで決まった。 《仙人池》まで行っても、《下ノ廊下》が通行止では《欅平》へ抜ける事は叶わない、即ち“帰れない”のである。 これは、先程の『ヘタレ案』が『正規の案』に昇格する“渡りに船”の情報だ。 しかも、有り難い事に『ヘタレ案』を充実したものに変更するべくの下山路も教えてくれた。
それは、「《黒部ダム》に抜ける道を下山に使えばいい」との事だった。
 

かつての栄光!?
バリエーションルートの長次郎谷出合

ついでに《真砂沢》のテント場の状況も聞いて、その状況の良さにルンルン気分となり、さらに『ヘタレ』に磨きをかけてダラダラと下っていく。 かつての栄光だった長次郎谷(かつては、こういう所も行ったのよ 今の自分を見ると到底信じられないけど)を眺めて写真を撮ったりしながら、下りのコースタイム1時間半の所を2時間半近くかけて《真砂沢ロッジ》前に下り着く。
 

まるで山城の址のような
真砂沢ヒュッテ
 
閉鎖された小屋の周りをグルリと偵察して、先程に仕入れた“美味しい”情報である『テントを張れる板敷き』を探す。 板敷きはすぐに見つかり、“喜んで!”その上にテントを張る。 テントを張り終えてひと息着いた後に時計を見ると、まだ9時半をまわった所だった。
 

完全に“店じまい”だったよ
「冬眠中デス」だって
 
だが、周囲を見渡せば、この“おフザケ行程”も許されるだろうと思う。 この情景の前では、何を言っても言葉とならない。 それでは、こんな“おフザケ”行程をしてまで見たかった情景、豪華絢爛・錦絵巻を梳くとごろうじろ。
 

剱の峰と雪渓と煌びやかな紅葉と
剱の魅力が凝縮されていた


錦に染まる山肌と剱の本峰


源次郎尾根が羽織る衣は
十二単だった


秋に染まる
剱の谷と鹿島槍ヶ岳


ダケカンバの白い幹枝が
造形美を魅せて


あまりの鮮やかさに
コメントする言葉にも窮して


深まる秋の嶮谷に夏の名残が
 

寒暖差がおりなす魔可不思議
夏の花々が野原を彩っていた


幾重にも重なる錦の帯
大自然は予想もし得ない
情景を魅せてくれた


夏と秋
錦のような秋絵巻に
可憐な夏の息吹が同居していた


源次郎尾根の頂より
錦の衣が幾重にも重ねられて


秋色は何故にこうも
彩のバランスが絶妙なのだろうか
 
豪華絢爛たる錦絵巻は如何だったでしょうか? この日は、写真撮って寝るだけの怠惰な1日であったが、かなり充実していました・・ハイ。
 

清らかな水の流れに憩い
ただなすがままに身を委ねる至高の贅沢
 
ちなみに、テント内の最高気温が30.5℃まで上がってやんの。 《剱沢》との温度差は33.5℃だったりする。 最高気温の時はさすがにテント内で昼寝できる状況ではなく、沢へ逃げて水辺で写真撮ってたよ。 でも、日が山に隠れて陰りだすと途端に気温が落ちてきた。 夜半過ぎの最低気温は5.5℃。
だが、昨日の教訓が活きて、エァーマットを仕立てて快適に眠れたよ。
 
   ※ 続き《3日目》は、次回の『名峰百選 第38回 剱岳 その1 紅葉めぐり act 2
     をご覧下さい。
 
   ※ 詳細はメインサイト撮影旅行記より『剱の谷へ紅葉狩り』を御覧下さい。
 
 
 
 
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No title * by yamanbou
こんばんは。
スゴイとかキレイとか言葉も似合わない、まさに絶景です。
今年ですか?

No title * by 風来梨
こんばんは。

お返事が遅くなってスミマセン。 大朝日に行ってたものですから・・。 これは3年前の10月18~20の事です。 もう、最高でした。 特に、夏と秋の情景が見れたのは嬉しい限りです。

こんなにすごい絶景なのに、シーズンオフで小屋は閉鎖され、橋は落とされ誰もいなかったです。

さて、今回行ってきた朝日連峰の秋は、追々公開していきますね。

コメント






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No title

こんばんは。
スゴイとかキレイとか言葉も似合わない、まさに絶景です。
今年ですか?
2011-10-18 * yamanbou [ 編集 ]

No title

こんばんは。

お返事が遅くなってスミマセン。 大朝日に行ってたものですから・・。 これは3年前の10月18~20の事です。 もう、最高でした。 特に、夏と秋の情景が見れたのは嬉しい限りです。

こんなにすごい絶景なのに、シーズンオフで小屋は閉鎖され、橋は落とされ誰もいなかったです。

さて、今回行ってきた朝日連峰の秋は、追々公開していきますね。
2011-10-22 * 風来梨 [ 編集 ]