2022-09-15 (Thu)✎
よも”ヤマ”話 第180話 南ア・最南部縦走 その1 (上河内岳)〔山梨県・長野県〕 '97・ 8
上河内・南岳 2702m(2度目の登頂)、上河内岳 2803m(2度目の登頂)
地名『お花畑』の
亀甲壌土とガス煙る上河内岳
上河内岳 かみこうちたけ (南アルプス国立公園)
静岡市葵区と長野県飯田市の境界に位置する標高2,803 mの山で、赤石山脈南部の南アルプス国立公園内にあって、大井川の支流の上河内沢の源流部の山である。 山頂の南西方向に周氷河地形の名残である窪地状の亀甲状土の地形が見られる。 また、この周辺のハイマツ帯には雷鳥が生息している。
『土壌が魅せる土の花』
亀甲壌土もみられる
山頂の南西側には、国土地理院にも記載された地名の『御花畑』という高山植物の群生地があり、花期には一斉に花開くパラダイスとなる。 また、山頂の北側の南岳との間にも高山植物の群生地がある。
山頂部は森林限界を越えた岩場で、360度の展望が得られる。
上河内岳からは聖岳や
赤石岳・荒川三山など
南ア南部の山々が一望できる
だが、この山へのアクセスは辛く、静岡の畑薙側からも長野の遠山郷からも最低1泊2日で都合10時間を要し、山小屋も以前は食事提供がない山小屋が主で食料・自炊用具の持参が必須となるなど、最南端である事も含めて登山者からは遠い存在の山であった。 だが、現在は聖平と茶臼の小屋が、食事提供などを行っていてその限りではない。
南ア・最南部縦走ルート行程詳細図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 飯田市街より車(2:00)→便ヶ島(1:00)→西沢渡(5:00)→聖岳分岐
(0:20)→聖平小屋
《2日目》 聖平(2:20)→上河内岳(1:50)→茶臼岳(1:10)→希望峰分岐・分岐
分岐より仁田岳まで往復40分(1:30)→易老岳(2:10)→センジヶ原露営地
センジヶ原露営地より光岳へは往復30分
《3日目》 センジヶ原露営地よりイザルヶ岳往復・所要30分(1:50)→易老岳(3:20)→易老渡
(0:40)→便ヶ島より車(2:00)→飯田市街
上河内岳から望む
南ア南部の山々
《1日目》 遠山川を渡って聖平へ
登山口となる《便ヶ島》までは、南信濃村(現在は飯田市に編入)の木沢集落より23km。
これはとてつもなく長い。 到底、車がないとアプローチは難しいだろう。 もちろん《便ヶ島》までは、全て幅2.5mの行き違い困難な道路、そして《北沢渡ダム》より先は道悪惨たるダート道・・。
この道は『愛車党』には敬遠されるだろう。 当然、木沢集落より車でも1時間近くかかる。
河岸が崩れてこうなると
全面通行止となって
登山口も閉鎖状態となる
※『信州・遠山郷』のウェフサイトより
この林道は遠山川の護岸工事が現在も続けられているが、河岸崩壊に悩まされて一向に工事が進展しない暴れ川だそうで、河岸崩壊は酷いものだと林道も巻き増に陥没崩壊して1年通じて通行止めとなる年もあるらしいので、通行の際には役所の道路管理課に問い合わせておいたが無難だろうね。
登山口は『日本のチロル』と
呼ばれる徹底的に店屋のない里から
悪路と名高い遠山川林道を奥に
23km進んだ行き止まりにある
※『遠山郷・下栗の里』より
また、食料などの必需品も商店が南信濃村の中心にあるのみで、飯田市街よりの道すがら通る上村(コチラも飯田市に編入)に至っては、『日本のチロル』を謳い文句にする極めつけの「何にもない所」である。 このような状況なので、飯田市街をいくら朝早く出てもその日のうちに登山を始めるのは無理であろう。 従ってこのコースは、飯田市街で十分買い出しを済ませた後、《便ヶ島》へアプローチをして翌朝登山以外の設定は不可能であろう。
それにつけても、《便ヶ島》にあった登山小屋の閉鎖は惜しまれる。 前述のように、“とんでもない”条件の登山口にあった《便ヶ島登山小屋》の利用価値はかなり高かったのだが・・。 まぁ、「無許可営業で摘発を食らった」という事なので仕方あるまい。
今は駐車場・山小屋・キャンプ場が
整備された園地となっている便ヶ島
※『南アルプス・エコバーク』より
なお、この記事の内容はこのルートを通った四半世紀前の状況で、現在は『便ヶ島森林公園』として整備され、予約がある時にだけ営業する聖宝小屋と予約不要のキャンプ場、そして登山者駐車場が整備されている。 ・・時代は変わったものだ。
便ヶ島の登山口は
こんな感じで薄暗い
:
以前は朽ちた道標以外に
何もなかったけど
※『登山口ナビ』より
それでは、この『秘境』より南アルプスの最南部に登ってみよう。 《便ヶ島登山小屋》が無断で使っていたという、治水工事飯場跡のプレハブ小屋の斜め脇にある登山口より登っていく。 登山口より土手に上がってプレハブ小屋の周りを半周すると、山肌に斜めに上がる登り口があって、これを上まで上がると森林軌道跡をそのまま使った登山道が森の中へと分け入っていく。
トロッコ道沿いは
沢奥に咲く花が見られた
既に路盤も取り外されてその名残はほとんど残ってはいないが、時折トロッコ幅のトンネルや、もはや朽ちるだけ朽ち果てた木造の橋梁など、かつて鉄道が通っていた“証”を見る事ができる。 だが、“鉄砲”沢が軌道跡を浸食したり、路盤が《遠山川》へ大きく崩落したり・・と、「よくぞまぁ、鉄道を通したな」と思える光景でもある。 この軌道跡を約1時間程歩くと森の中から抜け出して、《遠山川》の河原に下りていく。
ここは《西沢渡》といい、これからこの沢を地名の通り“渡る”のであるが、この渡り方がユニークなのである。 その渡り方とは、沢の両岸に張ったロープに篭がついてあって、この篭に乗って『お猿の篭屋』の如く手でロープを手繰って渡るのである。
興奮のるつぼと化す
西沢渡しの『おサルの篭屋』
この『渡し』に登山客が集まると、「キャーキャー、ワーワー」と大歓声のるつぼと化するのである。
大歓声!?を受けて沢を渡ると、愉快な気分も一瞬のうちに吹っ飛んでしまう猛烈な登りが待ち受けている。 もう、息着く暇もない連続的な急登に、体中の全ての水分が搾り取られる程の汗が吹き出る事だろう。 これこそ、南アルプスの証である『バカ急登』なのである。
国立公園境界の案内板より上からは
チラホラと山の花が見受けられる
薄暗い樹林帯の中をジグザグに、あるいは倒木を跨いだりくぐったりしながら標高1830m道標の所まで登っていく。 この標高1830m地点は特段に何もない所だが、地図によるとここが国立公園の境界との事である。 ここからはやや傾斜が緩くなるものの、相変わらずの急登で樹林帯を登っていく。
この森の中の急登は単調に次ぐ単調で、疲れがどんどん溜まっていく感じである。 しかし、標高差150m位の登りを乗りきると、いきなり樹林帯から飛び出して崩壊状のザラ地に出る。 これを巻くようにトラバースすると、“突然”という言葉がそのままに《薊畑》の分岐に登り着く。 ここから、『日本最南端の3000m峰』の聖岳への登山道が分かれているが、標高差が700mと、もうとても続けて登る気にはなれないだろう。 ここは、おとなしく《聖平》で明日の為に備えるのがベターであろう。
もう夏も終わって
花も秋の様相を呈していた
小屋のある《聖平》へは、《薊畑》のお花畑の中を下ること30分でたどり着くだろう。
余談ではあるが、《聖平》について「ある事」に驚かされた。 それは、あの『堅い』運営方針の《聖平小屋》で食事付の宿泊ができるようになった事である。 「テメエの食いぶち位は担いで来い」という、山の精神論では成り立たなくなったのであろうか。 驚くと同時に、情勢の変化に一抹の寂しさを感じるのである。
「テメエの食いぶち位は担いで来い」
という根性論の山小屋だったのが
建て替えられて北ア並みの
山荘となった聖平小屋
※『山小屋info』より
新築でピカピカの《聖平小屋》(折しも、この時の1997年が小屋完成オープンの年だった)の前にあるテント場でキャンプを張って、今夜はストップとしよう。 なお、水場はキャンプ場奥の小沢で、涸れる事もあるというが見た目はそんな心配はなさそうな沢である。 この山行での聖岳は、以前に荒川三山からの縦走山行で登った事があるのでパスとしたが、高低差700m超で片道3時間以上かかる聖岳に登るとしたなら、日程を1日を伸ばす必要があるだろうね。
覆っていた朝霧が急速に晴れて
赤石岳が姿を現した
《2日目》 南アルプス最南部主稜線を縦走して光岳へ
《聖平》は聖岳や上河内岳を経て、光岳へ縦走がてきる絶好の位置にある宿泊地である。
日程や体力に余裕があるならば、聖岳へ往復して《茶臼小屋》へ向かうのも可能である。
朝早く行動するって事は
時間を稼ぐ以上に朝の絶景に
魅せられる贅沢を味わえる
しかし、「標高差800m近くもある聖岳を往復して、なお上河内岳を越えていく」というのは、前述でも述べた通りにかなりの無茶だし、翌日の体調への影響を考えたならあまりお薦めはできない。
どうしても・・と言うなら、《聖平》で連泊して日程を1日増やす以外にないだろうね。
夜明け光を浴びたガスが
得も言えぬ美しき色合いに変わって
ガスが茜色から戻ったなら
登り始めよう
行程表では今日の内に光岳までゆくので、《聖平》は夜明けと同時に出発したいものだ。
《聖平》より100m程歩くと、主稜線の縦走路との分岐に出る。 右に進むと聖岳、左に進むと上河内岳である。 どちらへ向かっても、猛烈な急登が待ち受けているのは言うまでもない。 さて、これより光岳へ向かうべく左へ進路を取ろう。
左に進路を取るとすぐに深い樹林帯の中に入り、木の根を踏みしめての急登となる。 この急登でひと汗、ふた汗とかくと、樹林帯を抜け出して聖岳の展望の利く丘の上に出る。 晴れていたなら爽やかな朝の空の下、樹林帯の林を前景に聖岳の勇姿を望む事ができるだろう。
この時は『奇跡の体力』のホルダーで
聖岳が早朝の雰囲気を魅せている内に
森林限界まで登り着く事が出来た
赤石岳も雲海の奥にそびえていた
上河内岳に登っていくに従って、聖岳が徐々に大きく、そして凛々しくそびえ立って壮観だ。 これが朝の光を浴びて輝くと、より魅せられるのである。
信濃側にはスッキリしない
今日の空模様をもたらした
鰯雲がたなびき始めていた
この丘から再び樹林帯の中に分け入り、小さい上下をこなして小さな鞍部に出る。 この鞍部を境にシラベ林からダケカンバ、やがてハイマツ帯へと変わっていく。 上を覆っていた樹木が背丈の低いハイマツに変わると、視界がパッと開けて、聖岳を背に仰ぎながらの爽快な稜線歩きとなる。
南岳の頂上より望む
聖岳はとにかくデカい
この稜線を緩やかに登りつめると上河内岳の前衛峰・南岳 2702m の頂上に出るが、途中に1ヶ所右手に大きく崩れ落ちたガレの縁を通るので注意が必要だ。
南岳の前後で信濃側が
大きく崩れた
薙を通るので注意が必要だ
この大きな崩壊地はかなりの高度感があり、それを見ながらトラバース気味に登っていくので、多少の恐怖感を味わうはずだ。 登りきった南岳からは、真正面に美しくそびえ立つ聖岳を望めるだろう。
南ア・深南部の山々の方角は
快晴の空模様だった
キツい登りを乗りきった上河内・南岳からは、富士山が雲海越しに浮かんで稜線歩きの趣を大いに味わえるのである。 南岳は両面非対称の山容のようで、この頂上からは草原の丘を下るかのように緩やかに下っていく。
二重山稜のハイマツ帯から聖岳を望む
天然の石畳みが敷きつめられた二重山陵の窪みまで下ると緩やかな下りは終わり、上河内岳の肩に向けての登り返しとなる。 徐々に傾斜を増し、最後はお花畑の斜面をジグザグ登りで乗りきると、二重山陵の一方の頂点である上河内岳の肩に出る。
上河内岳の頂に登り着いた時
霧雨が降り出したが強風が
霧雨を吹き飛ばして
雲海湧き立つ絶景となっていた
ここから砂礫帯を登る事10分で、南アルプスの中でも“シブい”魅力を持つ名峰・上河内岳 2803m の頂上だ。
髪の毛が逆立つ位の強風が吹きつけ
寒い位だった上河内岳の頂上にて
【名峰百選】に選ばれし名峰・上河内岳 2803m の頂上に登りつめると、魅力あふれる名峰の群れが雲海に悠然と浮かんでいるのが望まれる。
鰯雲の隙間から時折光が差して
雲海を白く輝かせるなど
変化に富んだ情景を魅せてくれた
富士も覆った雲に光が当たって
崇高な姿を雲海に浮かべていた
デジタル画像製造機が人間の能力を蝕んでいく
撮影する本物の情景を見ずに
機械が造り出したモニター画像ばかりを見る事で
本物の状況を目にして確認し判断する
機会を失いその能力が著しく低下する
撮った後すぐにモニターを見る事で
創作に必要な想像力や空想力が
使われずに枯渇していき
「失敗はその場で即消去」が常習となり
「失敗から学ぶ」機会を失い成長がなくなる
また「失敗から学ぶ」機会を失うと
「なぜ失敗したのか?」という
分析力も同時に枯れていく
「撮れば全て成功」は困難に直面した時に
対処能力がなく為す術なく凍ってしまうのだ
ファインダーを見ずに1秒で
100コマ以上の撮影が可能な為に
イザという時のタイミングを
取る能力も廃れていく
また「どうすればいいか?」と
考察する機会がなくなり
徐々に判断力や危険予知や回避能力も失う
これはあらゆる事で能力低下による
フリーズ状態に陥る危険な兆候となる
そして皆ネットという同じ情報に
群がるのでオリジナリティを喪失する
その中でオリジナリティを
出そうと他人の迷惑や顰蹙を
省みなくなる自己中の塊となる
そんな奴が同じ場所で群がり
同じターゲットを狙うようになると
些細な事でキレあって大ケンカとなる
またルールは無視するし
他人に譲るという心を一切持たなくなる
自身の邪魔になる者は職員であれ乗客であれ
所かまわず罵声を浴びせて排除したり
業務を妨害したりする犯罪を犯す
それで上がった画像は皆同じ横並びで
車両が画像の7割以上の面積を占める
情報量が極小で何の価値もない写真を量産する
またデジタルに記憶した画像を
パソコンで偽造して
暗闇でのビタ止めなど相対性理論に
反した気味の悪い画像を量産する
こんな人間の持つ大切な
能力を失って破滅に一直線の
怖いモノは絶対に使いたくないよ
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