風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰次選の山々 第36回  雪倉岳

名峰次選の山々 第36回  『151 雪倉岳』  富山県・新潟県 
後立山山系(中部山岳国立公園) 2611m  コース難度 ★★★  体力度 ★★★
 

後立山北部(雪倉岳・白馬朝日岳)縦走ルート 行程図
 
   行程表             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR白馬駅よりバス(0:30)→猿倉(0:55)→白馬尻(1:40)→葱平 
     (2:00)→白馬山荘(0:15)→白馬岳(0:25)→白馬岳キャンプ場
《2日目》 白馬岳キャンプ場(0:40)→白馬岳(0:30)→三国境(2:00)→雪倉岳避難小屋
     (0:50)→雪倉岳(1:30)→小桜ヶ原(0:30)→白馬水平道分岐(1:45)→朝日平

《3日目》 朝日平(1:00)→白馬朝日岳(0:30)→千代ノ吹上(1:40)→五輪ノ森 
     (0:40)→花園三角点(1:20)→白高地沢徒渉点(1:30)→兵馬ノ平 
     (0:50)→蓮華温泉よりタクシー(0:40)→JR平岩駅
 

白馬大雪渓を登る
 
  《1日目》  白馬大雪渓から白馬岳へ
本日の行程は、『名峰百選の山々 第35回 白馬岳』の行程と全く同一である。 ただ違う所は、今回はシーズンオフで小屋が営業を終える頃に訪れたという事である。 だが、賑わいが消えるだけでこうも違うものなのか・・と、ギャップからの戸惑いさえ感じる登りであった。 今日は明日の稜線を伝う長い歩行に備えて、早く就寝するようにしよう。
 

シーズンオフは
こんな感動的な情景を独り占めできる
 
  《2日目》 白馬岳より後立山連峰北部の峰々へ
今日の行程は距離にして13.5kmとかなりのロングランだ。 しかも、もう小屋が営業を終えて閉鎖している時期にいくので、否応でもテント一式を担がねばならない。 従って、空身よりも20~30%は所要時間を必要とするのである。 これだけ記述すればもうお解かりの事と思うが、早朝出発はこの設定では“義務”となるであろう。 それでは、出発しよう。 

この時期、10月の下旬であるが、日の出は6時少し過ぎ位であろう。 もう日の出時には、白馬岳 2932メートル の頂上に立っていたいものである。 日の出に関してだが、前項目でも述べた通り、あの感動的な夕景に比べると今イチの感がある。 だが、杓子岳天狗菱に吹き降ろす信州下ろしは朝だけの特権だ。 これを望んで気合を入れて出発しよう。
 

杓子岳天狗菱より吹き降ろす信州下ろし
 
白馬岳を越えて越中・越後・信濃の国境となる《三国境》までは、前項目の小蓮華山と同じルートを伝う。 朝のバックライトに輝く妙高の山なみを見ながら進んでいこう。 30分程下って、振り返り見る白馬岳の全体が見える頃、《三国境》に着く。 ここには道標があり、右手は前述の小蓮華山のルートである。
 

朝の白馬岳より望む剱の勇姿
 
今回の回遊ルートは進路を左に取って、岩屑の斜面を斜めに切るように下り、下に広がる砂礫の稜線を伝っていく。 この下りは緩やかながら250mも下降するので、下りきった地点から白馬岳を振り返ると、もう別の山系の山のように山屏風としてそそり立っている。 この砂礫の下り坂が落ち着くとだたっ広い砂礫の鞍部に出て、前方にそびえる鉢ヶ岳に向かってほぼ水平に進んでいく。 その途中、足元に目立たぬ道標があり道を2つに分ける。
 

振り返り見る白馬旭岳は
入道のような巨大な岩峰をもたげている
 
これは『鉱山道』という《蓮華温泉》を短絡するルートとの分岐であるが、この『鉱山道』ルートは人があまり通らぬ為に道が荒れてきて、エスケープルートとしても不適当となってきているようだ。
また、エスケープをするにしても、この場所から遙か遠くの《蓮華温泉》まで伝うのは余り意味がなく、その点でも利用価値は少ないであろう。 
 
ただ、注意して頂きたいのは、この分岐を直進する踏跡に入っていくと、この『鉱山道』となるという事だ。 回遊コースはつづら折り状に左へそれているので、道標を見落とさぬようにして頂きたい。
 
さて、この分岐を過ぎると左下方に《長池》という氷河湖が見えてくる。 《長池》へは踏跡もついている。 晴れていて視界が良好な時はいいのだが、荒天でガスに巻かれた時などは、変な踏み跡に入り込まぬように注意したい。 道は、前方左にまろやかにそびえる鉢ヶ岳の東側山腹をほぼ水平に巻いていく。 

鉢ヶ岳の中央辺りから、待望の雪倉岳が迫力を持って迫り出す。 山肌に縦の縞模様を描く、真に美しい山だ。 やがて、この水平トラバースを越えると鉢ヶ岳から延びる稜線に戻り、少し下って《雪倉岳避難小屋》に着く。
 

今日はこの山までの
13.5kmのロングラン行だ
 
さて、ここまでで約3時間少々歩いたので、避難小屋の中に入り休憩をしよう。 小屋は建て替えられたのか真新しく、想像していたものより段違いに立派な小屋だ。 土間に高床式の床もあり、また中にトイレもあるなど、十分宿泊に耐え得る造りである。 ただ“玉にキズ”はあるもので、ここには水場がないのである。 利用するなら、水を持って白馬岳を越えねばならない。 小屋内にある落書き帳を見ると、稜線上での天候悪化でよく使われているようだ。
 

美しい斜め縞模様のラインを魅せる雪倉岳

・・十分休憩したなら、これより眼前にそびえる雪倉岳の直登にチャレンジしよう。 小屋の建つ鞍部より頂上までは、約250mの直登だ。 迫り上がって頂上部が見えなくなるなど見た目はかなりキツそうであるが、実際登ってみると素直な傾斜で割りとテンポ良く登っていけるのである。 それでは、雪倉岳の登りを記述してみよう。 

まず小屋を出ると、“見上げる頂上”に向かって草付きの坂を同じテンポで登っていく。 脇目も振らずイッキに登っていくと、この“見上げる頂上”に予想以上早く登り着く。 そこで、ある答えが判るだろう。
この山は二重山陵を示していて、先程の頂上は二重山陵の下の頂だと。
 

雪倉岳より白馬岳を望む
 
だが、ここまで登ってしまうと、あとはもう一投足だ。 この“見上げる頂上”の上まで登ると見える2つのコブを乗り越えると、縦に長い砂礫の丘に出る。 その先には黒い墓石のような標柱がある。
雪倉岳 2611メートル の頂上である。
 

雪倉岳山頂からは贅沢な展望が広がる
 
雪倉岳の頂上からは、360°の大パノラマが広がる。 右手を望むと妙高・火打・雨飾といった頚城の山なみが望まれる。 そして左手は、岳人の憧れの峰・剱岳が鋭い鋭角の頂を空に衝き上げている。 
また振り返ると、今朝から歩いてきた道が白馬岳に連なるのが確認できて、感慨もいっそう高まる事だろう。
 

この稜線からは
いつでも剱の勇姿が望まれる
 
これより進む前方には白馬朝日岳が丸っこい峰を大きく張り出して、その左肩に《朝日平》の小屋が望む事ができる。 だがそれはまだ点景で、まだまだ道程の半分である事を再認識させられる。 
思う存分この贅沢な風景を望んだなら、雪倉岳を後にしよう。 

さて、雪倉岳の頂上からは、越中側の広い主稜線を緩やかに下っていく。 主稜線が砂礫から岩稜へと変わると越後側に移り、先程とは逆に岩崖の急斜面を下っていく。 右手を望むと、カール地形が広がり(これほど立派な圏谷地形なのに、カールではないようだ)、その中央に《雪倉池》などの池塘が点在する絶景が展開される。
 

雪倉池と頚城の山なみ
 
やがて、越後側に張り出してきた岩稜を避けるかのようにジグザグに下り、左にもあるカール地形(こちらはそれほど顕著なカール地形ではない)のカールバンドの中をトラバースで渡って、再び県境の主稜線に戻る。 背後の大ガレに追い立てられるように下った所が《ツバメ平》である。 

ここは小湿地帯となっていて、ササヤブの中に細い水流が確認できる。 
そろそろ水も欲しくなってきたころであるが、ここは我慢した方がいい。 その理由は追って説明しよう。 ここから主稜線を左に外れて、オオシラビソなどの樹林帯を抜けるとガチャガチャの岩ガレ場に出る。 眼前には《燕岩》が迫力を持って迫り出してくる。 

《燕岩》の岩崩れの下を横切って赤男山の裾を抜けると、樹林帯を経て水量豊富な沢の前に出る。 
喉を潤すなら、こちらの方が断然いい。 冷たい水が疲れ始めた体に染み透る事だろう。 
この沢を渡ると、辺りが開けて《小桜ヶ原》に出る。
 
《小桜ヶ原》は夏になると一斉に高山植物が咲き誇る。 夏の素晴らしいお花畑の大群落は、この回遊コースの事を『花の回遊ルート』と呼ばわしめるに十分な理由であろう。 《小桜ヶ原》には木道が敷設されているので、踏み外したりしないようにしたい。 なぜなら、人の足で踏まれると、そこからは永年に渡って花が咲かないからだ。 このルートを、いつまでも『花の回遊コース』と呼び続けたい。
その為にも、湿原にダメージを与える事は避けて頂きたい。
 

小桜ヶ原より望む白馬朝日岳
 
大迫力で迫り立つ白馬朝日岳を真正面に望みながら進んでいくと、《小桜ヶ原》を越えて浅い樹林帯に入る。 これを少しつめると、白馬朝日岳への直登ルート分岐である。 木道はここまで続いている。 
この分岐には道標が立っていて、この道標を見ると二重のショック!?を受ける。 それは、『←白馬岳9km・白馬朝日岳3.5km↑・朝日平4.5km→』と記してある事である。 この時の心理はたぶんお解かりであろう。 “9kmも歩いて、まだ4.5kmもあるのか”という事である。

いい加減疲れてきた頃なので、この道標を見ると大なり小なり誰でも思う事であろう。 
とりあえず、白馬朝日岳は明日の楽しみに取っておいて(というより、疲れるから回避したかった!?)、名前の響きのいい!?『白馬水平道』を行く事にしよう。 

さて、この道であるが、“水平道”とは名ばかりのアップダウンの激しい道である。 始めは樹林帯の中を行くが、次第に展望が開けてこのルートが激しいアップダウン道である事が視覚によって明らかになる。
先に続く道を見ると、白馬朝日岳の山腹の100m上部に刻まれている。 もちろん、視覚に入った分だけ登らねばならないのである。 数えただけで4度の登りと3度の下り(いずれも100m前後のオーダー)があるのだ。 ハシゴあり、簡易ロープあり、桟道ありと、かなり嶮しいルートである。 

なお、このルートは、夏の早い時期は雪で埋もれるので通行不可になるとの事。 
この事を少しつめて考えると、このルートが嶮しい事を予想できたかもしれない。 
唯一、このルートのいい所は、終わり近くになると素晴らしい水場がある事であろうか。 

この水場を過ぎて白馬朝日岳の山腹を大きく右周りに周り込むと、上に朝日小屋の三角屋根が見えてくるだろう。 これが見えると、程なく《水谷ノコル》という白馬朝日岳からの道と合流する。
後は約30m上にある小屋の建つ《朝日平》まで、疲れきった体を持ち運ぶだけだ。 階段の整備された道を足どりも重く登りつめると、フィールドアスレチックのような施設のある丘に出る。 今日の宿泊地となる《朝日平》だ。 
 

ほのかに染まりゆく朝日平
 
シーズン中ならばトイレあり、小屋あり、水場施設あり、山岳指導センターありの後立山北部の山岳基地であるのだが、今は全て入口が木の板によって封ぜられ、全ての物が使用不可である。 地図には“《山岳指導センター》の建物は『冬季小屋』として使用可”とあったので淡い期待を抱いてはみたが、やはり今日も耐寒訓練!?をせねばならぬようだ。
 

朝日平より望む
白馬岳・雪倉岳のシルエット
 
自らの趣味で自らが選んだ事とはいえ、やはり氷点下前後のテントは寒い。 
この季節にこのスタイルで山行をするならば、“湯たんぽ”用のシグボトルは必需品であろう。 
今日は長く歩いた事だし、暮れなずむ《朝日平》よりの情景を望んだなら、早めに就寝しよう。

   続きは、次回『名峰次選 第37回 白馬朝日岳』を御覧下さい。
     
   ※ 詳細はメインサイトより『後立山連峰<2>』を御覧下さい。
 
 
 

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