風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰百選の山々 第36回  杓子岳

名峰百選の山々 第36回  『49 杓子岳』 富山県・長野県 
後立山山系(中部山岳国立公園) 2812m コース難度 ★★★  体力度 ★★★★
 

天に鋭く突き出す杓子岳天狗菱
 
今回の杓子岳を取り上げるに当っては、白馬三山をめぐって鑓温泉をめぐるルートを歩いてみよう。
そこで今回のガイド内容というか雰囲気というかは、かつての体力を失い、筋肉がメタボ脂肪に変ったダメダメちゃんの筆者の観点から記述しているものなので、その点は割り引いて頂けると有り難い。
 

白馬三山~鑓温泉ルート 行程図
 
   行程表
《1日目》 JR白馬駅よりバス(0:30)→猿倉(0:55)→白馬尻
《2日目》 白馬尻(2:00)→葱平(2:00)→白馬岳キャンプ場
《3日目》 白馬岳キャンプ場(0:30)→白馬岳(2:20)→白馬鑓ヶ岳(0:40)→大出原 
     (2:40)→鑓温泉(2:30)→小日向ノコル(2:10)→猿倉よりバス
     (0:30)→JR白馬駅
 
なお、白馬岳の頂上までは、前回の『名峰百選 第35回 白馬岳』を参照して頂きたい。
行程ガイドは、《3日目》の《白馬岳キャンプ場》から始めようと思う。
 

白馬岳の朝日は
山のない方向から昇るので少し物足りない
 
  《3日目》 白馬三山・鑓温泉を経て下山
空身で白馬岳まで30分位。 始めは“白夢”であったが、明るくなっていくと共に上の《白馬山荘》や杓子岳 2812メートル 、白馬旭岳 2867メートル が黄金の光を浴びて浮かび上がってくる。
これを目にして、はやる心に足を早めて白馬岳 2932メートルの頂上へ。 だが、この日の白馬山頂は、人の姿はあれど“白夢”の世界。 ちょうど、山頂部分だけが厚いガス雲に覆われていたみたいである。
 

杓子岳に掛かる信州おろし
コレが見たかったんだけど・・
 

 朝日を浴びて眩く輝くキンポウゲ

そんな状況だったので、頂上に置かれた展望盤を眺めて方向を確認しただけで足早と立ち去る。
 頂上へは、僅か5分位の滞在だったろう。 
 
だが、頂上から来た道を戻るにつれて雲は晴れていき、村営山荘手前のお花畑では、朝の日差しが黄金色にキンポウゲを染め上げる姿やほのかに染まる白馬旭岳、逆光に黒光りした“ツン”と角を突き出す白馬岳、黄金色の山おろしをまとう杓子岳など、目にしたかった朝の風景が目白押しだ。
 

急に霧が晴れて
幻想的な山風景が視界に入ってきた
 

白馬旭岳とキンポウゲのおりなす
素晴らしき情景を魅せてくれた
 

厚く覆うガス雲が晴れて
朝日が花々を輝かせ始めた
 
しばし、この黄金色に輝く情景をカメラ片手に楽しもう。 だが、今日は10時間ルートなので、出発時間には気をつけよう。 それでは、デポッた荷物を回収して出発しよう。
 

杓子岳と白馬鑓ヶ岳
 
山荘を出ると小さな隆起である白馬丸山 2768メートル を越える。 この辺りでは、ホソバウルップソウが濃い紫色を実にまぶしていた。 最低鞍部を抜けると、杓子岳の山腹部分に取り付くようになる。
杓子岳の事であるが、以前は杓子岳はほとんど無視されていたような気がする。
頂上への踏跡も明瞭ではなかったような・・。

だが今は、頂上を通るルートがメインルートとなっているようだ。 そして、わざわざ頂上を踏むべくジグザグに道が設けられたみたいだ。 昔は木のプラカード一つだった杓子岳の頂上は、スタンダードの大きな頂上標が立てられていた。 時代の移り変わりを肌で感じる光景である。
 

粗末な扱いであった
かつての杓子岳の頂上標

杓子岳の頂上からは、巻き道と合流した後に《杓子沢ノコル》へ下る。 このコルから下を眺めると、白馬大雪渓を登ってくる登山者がゴマ粒のように見える。 これを目にすると、“今自分は稜線上にいるのだ”と高揚する事だろう。 このコルを越えると、白馬鑓ヶ岳の登りとなる。
 

白馬鑓ヶ岳の頂を目指して
 
見た目はかなりの高度差が感じられるが、登ってみるとほんの30分程で登りきる事ができるだろう。
登り道の傍らには、ミヤマオダマキの群落が魅惑的な紫を魅せていた。
 

登路の傍らはミヤマオダマキの紫で染められていた
 
こうして、20㎏の装備一式を持っている割には、『脂肪まみれの上半身』の割には、コースタイムより幾分アンダーで白馬鑓ヶ岳 2903メートル の頂上に着く。 ここまでは、まずまずの結果だったのだ。
 

淡い紫を実にまぶす
ホソバウルップソウと白馬旭岳
 
だが、これ以降で大いに時間を食うハメとなるのである。 白馬鑓ヶ岳からザラザラしたザラ場を20分程下ると、天狗平から唐松岳 2696メートル に抜ける縦走路と《鑓温泉ルート》との分岐に差しかかる。
 

振り返れば白馬鑓ヶ岳の勇姿が・・
 

天狗尾根がおりなす立て屏風
 
ここから下に広がるカール状の窪みまで、一気に300m下っていく。 下ったカール地形の所が、この山行最大の魅せ場である《大出原 おいでっぱら》である。
 

稜線直下は豊富な雪が残っていた
 

大出原への降り口の雪渓
ともすれば大雪渓より急かも・・
 
カール地形の『立て屏風』となる白馬鑓ヶ岳の南山稜と縦走路となる天狗背稜が燐とそびえ立ち、その広大な坪庭にチングルマやハクサンイチゲ、キンポウゲ・アオノツガザクラ・ハクサンコザクラなどのお花畑のコロニーがそよ風になびいている。
 

白馬鑓ヶ岳の山屏風とチングルマのコロニー
 

             アオノツガザクラ             ホソバウルップソウ
 

白馬鑓ヶ岳の南山稜にかこまれた別天地・大出原
 
山と花をパンフォーカスで撮るもよし、花にピントを合わせて山を浮かして“夢のひととき”を演出するもよし、白く輝く雪渓にインパクトを求めるもよしである。 そうこうしカメラ片手に戯れていると、時間などあっという間に過ぎ去ってしまう。
 

ハクサンコザクラ
 

ハクサンコザクラを前に添えてみました
 

ミヤマキンバイ
 

天狗尾根の突き出した岩を背景に描いてみた

カールの器すべてに広がる別天地を縦断すると、さしも広い《大出原》も終わりを迎える。
お花畑の端までくると、木段の階段となって再び急下降していく。 やかて森の中に入り、沢筋も見えてくる。 沢の水は心なしか温かく、“温泉近し”の希望を抱いてしまうが、ここからが結構長いのである。

そして、もう一つの“予想外”は鎖場が地図上に示されているのだが、この鎖場が結構ハードなのである。 高度感ある絶壁のトラバースで、しかも2ヶ所に区切られているが、後半の鎖トラバースがかなり長いのである。 また、何か逆手に追い込まれるような足場の切り方がされていたように感じたのである。
ついでに、崖の草付から樹が枝を伸ばし、行く手を阻害している所もある。

最悪は、鎖と鎖のつなぎ目が枝に巻きつけたゼブラロープとなっている所だろうか。
枝が高く手を掛け辛いのである。 また、重心を低く保っての三点支持歩行が基本の鎖場で“手を伸ばして樹の枝をつかむ”って事は、この基本に真っ向から背く事なのである。

たぶん・・であるが、唐松岳への縦走路上にある《不帰ノ嶮》より厳しいんじゃないか・・と。
そういえばアルペンガイドの難路評定で、《不帰ノ嶮》越えルートの『2つ星』に対して、この鑓温泉ルートは『3つ星』をつけられていたような・・。 
 
とにかく、温泉小屋の建物が見えてからも、大きく張り出した崖を鎖やゼブラロープを片手に下っていかねばならないのでなかなか着かない。 崖を降りて雪渓上を伝う“チョンボルート”は、『雪渓崩落の危険がある為、通行禁止』となっていた。

そうして11:30過ぎ、ようやく《鑓温泉小屋》に到着。 《大出原》のお花畑で時間を浪費したとはいえ、予想より1時間半近く遅くなったのである。 それでも、「この先に難路はなく、ただ下るだけ」の楽観論が、この能天気のアタマを支配していたのである。 「せっかくこんな温泉があるんだから、入らない手はない」と、ひと風呂浴びて更に時間を浪費して、この小屋を出発したのが12:30。 
 

湯の花浮かぶ鑓温泉の露天風呂
 
しかし、ここでも『ルート案内板』に、「猿倉まで通常の登山者で5時間はかかります。
午後からの下山開始はなるべく避けるように」との警告文が張り出されていた。
 
だが、「渓谷沿いの水平道で地図上では標高差もさほどにない」とタカを括ったこの下山路は、この警告文の通りに“とんでもなく難儀するルート”だったのである。 まずは、差し込む沢のほとんどが雪渓として埋まり、その斜面を上下にトラバースしていかねばならないのだ。 また、沢筋を下る所に雪が残ると雪渓の下りとなり、思うようにペースを維持できないのである。 

雪が消えたら消えたで、かなりの高巻きを強いられるのである。 それが、5~6本続くのである。 
もちろん、『土砂崩れ』という“生まれたての沢筋”もあり、こういう沢筋では不安定なガラ場の上下や、草付き土砂崖を草をつかんでの高巻きを強いられるのだ。

更に振り向けば、歩けど歩けど一向に離れていかない温泉小屋の建物も心理的な負荷となろう。
“こんなに歩いたのにまだ見えてるよ、小屋が・・”ってな具合で。 高巻きにふくら脛が悲鳴を上げ、疲れてペースがカクンと落ちた頃に、ようやく峠らしき地形が視界に入ってくる。 
だが、ゴールの《猿倉》は、この《鑓温泉ルート》を流れる《鑓沢》ではなく、大雪渓を擁する《雪渓沢》なのである。 従って、この峠地形は完全に乗り越えなければいけないって事になる。

そして、この峠の登りは短いながらもかなり急な土砂崖で、まるで沢筋の高巻きのようであった。
徐々に沢から離れ、背後に池塘を見るまでに森の中に分け入ると《小日向ノコル》である。 
辺りは薄暗い湿地帯で、休憩場所としては今イチである。 
 
ここよりは、ほんの数分先にあるニッコウキスゲの群落地の広場の方が休憩には適しているだろう。 
私の通過した時はもう午後3時前で日が陰り始めていたが、朝方だと白馬三山の山屏風が展開される好展望地だ。 ただ、蚊は多いみたいだが・・。
 

小日向ノコルを少し越えた所は
ニッコウキスゲの群落地であった
 
ここを越えると一般的な山道となり、まず危険な所はなくなるが、ただひたすらダラダラと長い。
歩けど歩けど、次の目標点である《1本ブナの跡》は現れない。 しかし時は刻々と過ぎ去り、《長走沢再接近点》という訳の判らぬ目標点を通過した頃はもう午後4時を越えていた。  
 
20㎏の荷物が肩に食い込み、登山靴のミットソールが剥がれるなどのアクシデントもあり更に疲れを呼び起こし、筆者の『脂肪まみれの上半身』が嘆きのメロディを奏でまくる。 そうして、ようやく何の道標もない《1本ブナの跡》に着く。 周囲は大木を1m程に切っただけの《簡易ベンチ》と、横倒しとなったブナらしき大木があるだけの所。

ここからは、地図ではあと20分だ。 ここから10分程で森の中に続く登山道を抜けて、《猿倉》から《白馬尻》へ続く砂利道に合流する。 コレを見た時の素直な感想は、「やっと着いた」である。
とにかく長かった。 時計を見ると5時過ぎ。 実に11時間近くに及ぶ大周回コースであった。
始めにオメデタさ一杯に予想した2時過ぎの下山は、まさに『午後2時の神話』となってしまった。
 
なお、猿倉の最終バスは16時なので、筆者のように体力がメタボ脂肪に変った御仁は大人しくタクシーを呼ぶか、筆者のようにヒッチハイクを目論み悪足掻くかの努力が必要だ。 他にも勤めを1日休んで猿倉に泊るって手もあるが、民主党がさらに経済を悪化させたデフレスパイラルの不景気&就職難ゆえにその翌日に机がなくなっている事もあるので、実行するかは考え物だろう。
 
無事に白馬駅まで降りる事ができたら、山の汗を落とすべく温泉へ向かうとしよう。
 
 
      ※ 詳細はメインサイトより『後立山連峰<1>』と
         撮影旅行記より『白馬三山・鑓温泉周遊』を御覧下さい。



  
 
 
 
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No title * by yama
TBありがとうございました。
こちらからもよろしくお願いします。
お花の種類が違う季節なのですね。

No title * by 風来梨
yama様こんばんは。

こちらこそ、有り難うございます。
精力的に山に行かれていますね。
立山・大日・五竜・北八ッ・・ 羨ましいですね。

私も、明日から朝日に行ってこようかと・・。

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No title

TBありがとうございました。
こちらからもよろしくお願いします。
お花の種類が違う季節なのですね。
2011-10-17 * yama [ 編集 ]

No title

yama様こんばんは。

こちらこそ、有り難うございます。
精力的に山に行かれていますね。
立山・大日・五竜・北八ッ・・ 羨ましいですね。

私も、明日から朝日に行ってこようかと・・。
2011-10-17 * 風来梨 [ 編集 ]