風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第516回  祖母・傾山 その2(三ッ坊主越え)

『日本百景』 春  第516回  祖母・傾山 その2(三ッ坊主越え)〔大分県・宮崎県〕

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二つの岩峰を突き出す
独特な様相を魅せる傾山

   傾山 かたむきやま (祖母傾国定公園)
大分県と宮崎県の県境に跨る祖母傾山系の山で、山頂は大分県豊後大野市に位置する。 標高1,605m(以前は1602mだった)で祖母傾国定公園に指定されており、我が〔名峰次選〕に名を連ねる山でもある。 山頂は3つの岩峰からなり、南から後傾・本傾・前傾と呼ばれる。 伝承『吉作落とし』の舞台でもある。

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祖母傾山系の東の雄の人気の秘密は
春に山肌をピンクの斑点で染める
アケボノツツジの花だろう

祖母傾山系の東の雄で、南面は宮崎県境となっている。 そそり立つ岩峰群はこの山のシンボルでもあり、西に君臨する山群の盟主の祖母山と人気を分ける。 地質的には秩父古生層で、新第三紀の火山活動による祖母山火山岩類を主としているが、一部には見立礫岩層など古第三紀のものも見られ、更には阿蘇火山の噴出物の堆積もあって全体的に複雑な地質構造となっている。

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祖母傾縦走路より
アケボノツツ越しに傾山を望む

山頂からの展望は見事で、祖母山へと走る縦走コースの稜線や九重・由布などの名峰を一望できる。
山名の由来は、北側から見る頂上部が斜めに傾いている為といわれる。 また四皇子峰(しおうじみね)の別名もある。

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深い原生林と切り立った岩が
深い渓谷の源流を育む

山地の大部分が祖母傾国定公園と祖母傾県立自然公園に指定されており、深くえぐられた渓谷や、針・広葉樹の原生林が濃密な美しさを創り出している。 九折(つづら)登山口から九折越(つづらごえ)ルートが一般的で、山頂までの所要は4時間。 三ツ尾経由は5時間かかる。



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祖母・傾山縦走路ルートの行程詳細図

   行程表          駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR豊後竹田駅よりタクシー(0:40)→神原登山口(0:40)→五合目避難小屋 
      (2:30)→祖母山(0:20)→祖母山九合目小屋
《2日目》 祖母山九合目小屋(0:25)→祖母山(1:30)→障子岳(1:10)→古祖母山
      (1:30)→尾平トンネル上〔尾平越〕(0:20)→キャンプ場〔水場〕
      (2:00)→本谷山(2:00)→九折越避難小屋
《3日目》 九折越避難小屋(1:20)→傾山より三ッ坊主経由(2:30)→三ッ尾
      (1:30)→観音滝(0:30)→九折鉱山・傾山登山口
      (0:50)→上畑バス停よりバス〔途中乗換あり〕(1:10)→JR緒方駅
 ※ 冬季や雨天の場合は滑落の危険がある為、一般ルートで下山

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アケボノツツジが
山々にビンクの斑点を描いていた

  《3日目》 三ッ坊主コースを通って下山
今日は、祖母傾山塊のもう一つの盟主・傾山の頂を踏んで下山する行程であるが、一般ルートを下るのは少々物足りない。 この『日本百景』という文集のコンセプトに従って、その項目の景勝地の魅力を最も味わえるルートを選んでいこう。 特異な岩峰を2つ突き出して奇怪あまりある姿を魅せる傾山を最も楽しむには、この特異な岩峰を巻き、そしてヘツるルートがいいだろう。

そこで選んだのが、『三ッ坊主ルート』である。 この『三ッ坊主ルート』は地図上では『難路』と示される手強いルートではあるが、最も傾山の魅力を味わえるルートでもある。 それでは、このルートを歩いてみよう。

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九俺越小屋
土間が仕切られた快適な
小屋なのだがトイレがない

《九折越小屋》より傾山まで、空身でも1時間20分はかかる。 「縦走装備を含めた重い荷物を担いだ」となると、10~20分は余計にかかるだろう。 そして、できれば山頂で御来光を拝みたい。
これらの事を踏まえると、日の出の1時間半前には小屋を出たいものだ。

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九折越のテント場に立つ
十字路道標

《九折越小屋》をから下のテント場に出ると、大分県側の《九折鉱山》からの登路と宮崎県側の《見立》からの登路が十字にクロスする《九折越》に着く。 休日ともなると、傾山での御来光目当てに両側から登山者が夜道をやってくる。 聞く所によると、宮崎県側の《見立》からだと、林道終点に車を置いたなら僅か40分でこの峠までやってこれるとの事である。 あまり安易に登れるルートは、環境面や山の魅力の維持の面、そして登山者のモラルの面など全てにおいてマイナスだと思うのだが・・。 

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子湯を出てしばらくは
森林シャワーの道が続く
※ 別の機会に撮影

さて、峠を越えると、樹木に囲まれた中をさしたる登りもなく進んでいく。 峠より少し進むと『標高1300m』のプラカードが現れるが、次の『標高1400m』はなかなか現れない。 それは傾山本峰の取付まで、ほとんど登りらしい登りがないからである。 これを伝って歩いていくと、やがて樹林の中より抜け出る。

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夜明け前の空の
摩訶不思議な情景に魅せられる

周りを遮るものがなくなり、うっすらと空が白んできた中を特異な『岩坊主』二つが、ぼんやりと浮き出してくる情景が目に入ってくるだろう。 本傾と後傾の岩峰群である。 ここは思い荷物を下ろして、是非カメラを覗いて頂きたい。 きっと、思いもよらぬシーンがファインダーに現れるだろう。
この幻想的な情景をカメラに収めたならば、いよいよ傾山本峰への取付だ。

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『杖落とし』のイッキ登り

本峰に取り付くと標高差にして250m、その風貌どおり『杖落とし』などのルンゼ状の岩場が続くイッキ登りとなる。 朝っぱらからの強烈な急登に、山慣れしていない身体が大いに悶える事だろう。
だが、グズグズしていると御来光には間に合わず、夜明け前の出発の苦労が水の泡となる。 
これを乗りきると、『二ッ角』の右の角である後傾の頂上だ。

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後傾より朝日に染まる祖母山を望む

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後傾よりアケボノツツジの
斑点を魅せる本傾を望む

この後傾は本峰より位置的に良く、展望と御来光はこちらがお薦めだ。 霧島山や市房山など九州南部の山々が、朝日と共に出迎えてくれる事だろう。 この後傾から『二ッ角』の左の角で、三角点のある本傾までは小さな上下を含めて5分程だ。

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本傾の山頂は岩塊と
ヒメコマツとアケボノツツジが
織りなす庭園となっていた

傾山の頂上である本傾 1602m(2004年に1605mに修正)の頂上は、大きな岩が品良く折り重なってヒメコマツの枝ぶりも良く、立ち枯れの白骸木のアクセントも効いているなど、ちょっとした庭園のようだ。

傾山発・・絶景かな
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後傾をアケボノツツジが
ビンクの斑点で染めていた

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オッパイ山・由布岳を望む

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可憐な花びらを魅せる
アケボノツツジの花

もちろん、アケボノツツジも枝狭しと咲き競っている。 そして、遠くに霞む祖母山の勇姿を望むと、感慨深い思いが込み上げる事だろう。 しばし、頂上で長かった縦走の思い出を顧みよう。 

さて、下山であるが、始めに述べた通りに《三ッ坊主》越えの難路を下っていこう。 全体としてはそれ程難しくない岩場の下りではあるが、縦走装備の大きな荷物を担いでの切り立った岩場の下りいう事で、普段より神経を使うだろう。

頂上より10m程戻ると、『大白谷へ』と示す道標がある。 その下に『坊主ルート(難路)』と小さなプラカードが差してある。 その指示通りに下っていくと、本傾を成す大岩壁の裏手をヘツるように下っていく。 途中に一ヶ所両面がツルツルの大岩があり、この通過はかなり厄介だ。 しかし本番は、これ以上に高度感が伴うのだ。 やがて、前傾の岩塊に乗り移ってこれを急登する。 《五葉坂》の急登だ。 

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難路での最初の難関
バンド付きの懸垂下降・三連発

このコブを越えると、いよいよ“本番”への分岐に差しかかる。 道標には、『坊主ルート・・危険 一般登山者は〔水場〕ルートを行く事』とある。 分岐から50m程は何でもない獣道であるが、それは《坊主岩》の縁に出るまでの事で、岩壁の縁に出るとバンド付の懸垂下降が三連発でやってくる。

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深く刻まれた谷に向けて
直下降で下っていく

最初の下降はホールド点が目で確認できるので大した事はないが、2つ目はルンゼ状に切られていてホールド点が視認し辛い。 だが、周りの至る所にアケボノツツジが、淡いピンクの斑点を彩っている。

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山々をピンクに染める
アケボノツツジの花

岩壁に吹き寄せる涼風にアケボノツツジがチラチラと舞い降る、詩人ならばたちまち詩歌を詠んでしまうような情景がそこらかしこに広がっている。 キツい下りに冷汗をかいて、素晴らしい情景にホッと一息着く、これを《坊主岩》崖の直下降の間で繰り返す。

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緊張する岩場の直下降の癒しは
チラホラとピンク色を魅せる
アケボノツツジだろう

「ずっとこのような感じが続くのか」と思った矢先、いきなり樹林帯に入り込んで、しかも思いもよらない急登が始まる。 先程下った分を吐き出すが如く、つめるように登っていく。 これを登りきると《三ッ坊主ノ頭》だ。

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アケボノツツジはシャクナゲと
同じく撮るのが難しい花だね

別称・『前傾』の文字通り、前に傾いた大きな岩峰がエラを張り出している。 そして、そこらかしこにピンクの斑点を散りばめるアケボノツツジと、深い谷を刻み込む《山手谷渓谷》の絶景が広がる。

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振り返ると本傾の坊主岩が
アケボノツツジの衣を掛けて
悠然とそびえていた

振り返れば、《吉作坊主》や《二ッ坊主》などの岩峰など、このルートでしか望めぬ絶景が360°の大展望で味わえるのだ。 素晴らしい情景を前にして立ち去るのは、後髪をひかれる思いである。

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ここからは三ッ坊主から
吉作坊主へ乗り移りする
坊主越え最大の難所となる

さて、《三ッ坊主ノ頭》からは、一度大きくたわんでから向かいにそびえる《吉作坊主》の岩峰へ移っていく。 おそらく、《吉作坊主》の頭へのアプローチが、このルート最大の難所となるであろう。

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この2つ岩塔は奥で
ナイフリッジで伝っていて
岩塔を巻くようにトラバースする
鎖ナシの最大の難所だろう

鋭角に積み重なった一枚岩群の上を巻くようによじ登り、その上に形成されたナイフリッジを跨ぐようにトラバースする所がある。 もちろん、ロープや鎖は一切ない。 一枚岩は登りにくく、この岩上にやっとの思いで這い上がっても背後が完全に切れ落ちていて、その高度感に足が竦む事だろう。 距離的には短いのだが、一枚岩群を巻いて登り、その上を跨いで伝うまでの間、延々と切れ落ちた谷底をまの当たりにするのだ。

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この尖った岩峰の内側を
巻くようにして越えると
最大の難所は終わる

これを越えると、樹木に囲まれて眺望が今イチの《吉作坊主》の頭を越えて、その直下にある10m位の大岩を懸垂下降(バンド付)する。 進路はこれを境に内々の樹林帯の中に入り込むようになり、つづら折り急下降していく。 《二ッ坊主》との鞍部にある《アオスズ谷》の源頭まで下ると、行く手を阻むかの如く《二ッ坊主》の『本体』が立ちはばかる。

「土砂崩れでも起こしたのか」と見まがうツルツルの岩崖をよじ登って斜め右手に抜けていくのだが、見た目は左側が正しいルートのように見えるので厄介だ。 事実、間違えた人の踏跡が多数残っていた(ワテも、新たなる踏跡をつけてしまった)。 これを間違えると、15mの土砂崩れ壁上をトラバースで戻り返すハメとなるので御注意頂きたい。

これを越えると難所はなくなり、後は《二ッ坊主》の肩口までの急登と、そこから下るつづら折りの急坂があるだけだ。 飽きる程のつづら折りを経ると、森の中で一枚の木切れ道標が落葉に埋もれているのが発見できるだろう。 ここが一般〔水場〕ルートとの合流点だ。 この少し先が、《三ッ尾》と呼ばれる尾根の縁である。 標高は1150m。 『坊主ルート』の分岐点より僅か400m程しか下っていない事実に驚かされる。

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全く何もない林間の中に
一般ルートと坊主ルートの分岐がある

『坊主ルート』はコース自体の難度はともかく、度重なるアップダウンによる体力度が問われるルートのようである。 さぁ、後は落葉に埋もれた森の中を延々と下るだけだ。 だが、下るといっても、標高差750mに及ぶダダ下りだ。 難所を踏ん張って歩いたツケも手伝って、足取りはかなり重たいだろう。 

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観音滝上部の沢を渡る
この5m先で落差80mの
観音滝となって落ちている

この足取りで地図上のコースタイムを維持するのは難しく、県道7号線の《上畑》集落より出る12時過ぎのバス便には到底間に合いそうもないだろう。 覚悟!?を決めてゆっくりと下ろう。 単調な下りの中で数少ない見せ場というと、樹間に垣間見える《坊主岩》に今日の体験を思い返す事、そして落差75mの《観音滝》位であろうか。

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落差80mの観音滝
この滝前はヘツリになっていて
乗り出すと80m真っ逆さまで
恐らく転落死するだろうね

なお、《観音滝》の周辺は滝を囲む様に馬蹄形に切れ立っていて、滝を覗き込んでバランスを失い転落する事故が多発しているとの事。 ゴールも近く、疲れも手伝って気が緩みがちだが、最後まで気を引き締めていこう。 『事故』という落とし穴は、こういう所で手ぐすねを引いているのだから。 

《観音滝》を越えて少し行くと、鉱山跡の赤茶けた水路とトロッコ跡の鉄橋が見えてくるだろう。
この鉄橋を渡って《カンカケ谷》から《九折越》への登路を併せると、トロ道跡の高台から急降下して鉱山跡の登山口に着く。 30台は駐車できる駐車場を備えた立派な登山基点だ。 そして、大半の登山者がここまで車でやってくる。

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長かったなぁ
そしてキツかったよ
幕営装備一式担いでの岩場下り
それを成し得た
『奇跡の体力』の残り香に乾杯!

だが、祖母傾の縦走を志す者には、これより最後の使命が待ち受けている。 それは、炎天下の中、県道7号まで4kmの舗装道歩きだ。 しかも、バスの時刻に到底間に合わない(ワテが登った時の事であるが、上畑12:16発のバスを逃すとその日の内に緒方町へ出る便がない)という心理的な退廃感が加わると、より辛くなる事だろう。 下山後のひと風呂も夢と化するのだ。 この山系の難点といえば、ズバリこの事であろう。

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廃校となった小学校を利用した
山間体験館・『やまびこ塾』
ワイルドな宿泊施設で
坊主越えの興奮の後には打ってつけ

なお、この日の宿泊は、廃校となった小学校の校舎を利用した『やまびこ塾』という山間体験館があり、テント泊又は教室跡に敷かれた畳の間での宿泊が可能だ。 だが、トイレは全面ボットンで、水のシャワーがあるのみである。 もちろん、食事は自炊だ。 でも、普通の山行では体験できない一拍となるだろう。


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前回の続き・・
最もプーチンも死など
恐れてないと思うし
反逆にあって討たれる事も
覚悟の上だろうし

ロシアが勝ち残って
プーチンが生きながらえる・・
つまりロシアが現状のまま存在する
シナリオはまず有り得ないしィ

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そしてワテら外野の野次馬根性は
プーチンの最後の事はどうでもよく
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亡き後のロシアだろうね

恐らくアメリカが推挙した
指導者による傀儡政権が擁立され
ロシア政府の現支持層が
反政府ゲリラに回るという
図式になるだろうね

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下手すればロシアの国が瓦解して
都市小国家に分裂するが
内線状態になるかもね

そうなると政治的な内戦に加えて
資源の奪い合いも発生し
民族紛争が絡んで収集不能となるかもね

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恐らくロシアの世情は
半世紀・50年は後退するよ
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