風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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日本の滝を訪ねて 第37回  黒部渓谷に潜む滝 その1

日本の滝を訪ねて  第37回  黒部渓谷に潜む滝 その1  〔富山県〕
 

剱沢と棒小屋沢が
ぴったり十字に合流する十字峡
 
  《メインサイトより抜粋》
雲ノ平ではまだ源流であったあの優しい小川が、このような大渓谷を創るとは想像もしえない事である。
立山連峰と後立山連峰を2つに裂くこの壮大なV字谷は、最大の所で水面標高差2000mを越えるという。 しかし、数値で示した所でピンとはこないであろうから、実際に探勝してみるのがいいだろう。 

さて、この探勝路であるが、《黒部ダム》より上流は文字通り川を遡行せねばならず、相当な知識と体力・技術を持ってしても難しい所である。 だが、ダムより下流は、『日電歩道』というダム建設調査路の跡がそのまま残っていて、これを伝っての探勝は可能だ。 しかし、川面まで200mの崖をヘツった道がほとんどで、これはもう登山者の領域だ。

・・最後に、主な景勝ポイントとして、“幻ノ大滝”・剱大滝を要する剱沢と鹿島槍ヶ岳を源とする棒小屋沢がひったりと十文字に交差する十字峡、新越沢が断崖から直落下する新越ノ滝、流れの妙が魅力のS字峡、幽谷の魅力あふれる白龍峡などがある。
 

 黒部渓谷遡行ルート行程図

   行程表            駐車場・トイレ・山小屋情報 
《1日目》 JR信濃大町駅よりバス(0:40)→扇沢よりトロリーバス(0:20)→黒部ダム 
     (2:20)→新越ノ滝(2:40)→十字峡(1:50)→仙人谷ダム(0:45)→阿曽原温泉
 
《2日目》 阿曽原温泉(2:15)→折尾沢ノ無名滝(2:15)→欅平より渓谷鉄道利用
     (1:20)→宇奈月温泉駅より鉄道利用(1:30)→JR富山駅

  《1日目》 黒部ダムより十字峡を経て阿曽原温泉へ
日本屈指の壮大な渓谷・『黒部渓谷』。 この『黒部渓谷』の《下ノ廊下》を流れに沿って歩いてみよう。 通路は、ダム建設の調査道として崖を刳り貫いた旧『日電歩道』を歩いていく。 
これは、《黒部ダム》を起点にして《欅平》に至るまでの延長30.5kmの超ロングランコースだ。 
それも、道のほとんどが断崖を刳り貫いた“へつり”で、これを針金を片手に伝っていくのである。 

ハイキング気分で気軽に入渓する所ではない。 ともすれば、転落事故も起こりかねない所なのだ。 
そして、転落事故は確実に“死”である。 ここは冒頭の紹介でも述べたように、装備と体力と気構えを備えた“登山者”の領域なのである。 そのことを踏まえた上で、この渓谷探勝を楽しんで頂きたい。 
では、探勝ガイドに入っていこう。
 
《扇沢》からの『関電トロリーバス』に乗り、20分程で渓谷探勝のスタート地点・《黒部ダム》に着く。 半地下ターミナルとなっているバス乗場からダムサイトに向かう観光客の流れと別れて、“内蔵助出合へ”との指示が掲げてある出口に向かう。 この指示のある出口からは坑道より外に出るが如く、ダムより続く砂利道に直接飛び出る。 

この砂利道をダムの真下に向かって、つづら折りに下っていく。 途中に照明の全くない真っ暗なトンネルを通るので、ヘットライトは取り出しやすい所に入れておこう。 下っていくうちに、沢が徐々に近づいてきて傾斜が急になると、《黒部ダム》の巨大なコンクリート壁が現れる。 そのまま沢まで下って、桟橋でダムから放流したての黒部川を渡る。
 

そびえ立つ大タテガビンと
黒部川渓流
出発直後は大タテガビンが
真正面に立ちはばかる
 
これより、旧『日電歩道』と呼ばれる探勝路を歩いていくのだが、これは30kmに渡ってずっと渓谷の左岸を伝っていく。 ここから《内蔵助出合》までは、沢の水面ともそう離れぬ高さで伝っていく。 
《内蔵助出合》の分岐を越えてからが、《黒部渓谷》の本番だ。 次第に嶮しくヘツってくる探勝路、岩を食む渓流、どこからともなく白布を掛ける無名滝、剱の《大タテガビン》と呼ばれる垂直標高1500m以上の大岩壁と、何もかもがケタ外れの景色が次々と現れて目を楽しませてくれる。
 

振り返れば
秋色に染まった針ノ木の尖峰が
 
歩き始めて約1時間半で、名称のある最初の景勝地・《鳴沢小沢ノ滝》に着く。 ここから一度沢のそばまで下って、河原の縁を歩いてから再び崖上に斜上して高度を上げていく。 探勝路も鋭い“ヘツリ”となり、高さ1m・道幅70cm位の岩盤を刳り貫いたヘツリ道を針金片手に伝っていく事となる。
 

新越ノ滝 
ヘツリにリュックが引っ掛かり
滝上部は望みにくい
 
程なく、大岩壁を4段に分けて落下する《新越ノ滝》が現れる。 落差が150mとも200mともいわれる滝がこちら側に飛沫を飛ばし、轟音をとどろかせながら直接岩を食む渓流に落とす様は迫力満点だ。
この先10kmに渡って、針金片手のヘツリ道を歩いていく。 やがて、《別山沢出合》の沢滝を徒渉する。
 

黒部渓谷に掛かる無名滝
裕に70~80メートルの落差があった
 
この沢は黒部別山の稜線直下から大きな雪渓がでばっていて、早い時期だとこの雪渓が道を覆い隠したり、スノーブリッジを架けていたりして通行困難となる所だ。 秋本番ともなると、この雪渓も大部分が消えて歩き良くなるが、それでも冷え込みがキツくなると凍結したり降雪したりするので、軽アイゼン程度は持参すべきであろう。
 

黒部川渓流と風穴
 
一度下って沢を渡ってから、針金片手にボルトで刻んだ岩壁を登り返す。 この沢滝を越えても、なお《白竜峡》が続く。 これを針金片手になおもヘツっていくと、《タル沢》の沢滝が落ちるたもとを伝う。
滝のシャワーを浴びてから程なく谷が広がり、さしも長い《白竜峡》も終わりを告げる。
 

白竜峡・遠望
写真集のようなドアップは
歩きながらだと無理!
 
この広河原から再び高巻き気味に登っていくと《神潭》というよどんだ淵を通り、黒部別山の裾の樹林帯を巻くように歩いていく。 延々と歩いていくと、やがて《黒部渓谷》のクラスマックス・《十字峡》に差しかかる。 “幻ノ大滝”・『剱大滝』を擁する《剱沢》が左手より豊富な水を落とす滝を掛け、右手は鹿島槍からの《棒小屋沢》がぴったりと十文字に合流している。 黒部本流の岩を食む流れと《剱沢》の瀑布、そして《棒小屋沢》の流れが、それぞれのベクトルで水流を描いて幾何学的な水紋を魅せてくれる。 

《十字峡》は《剱沢》に架かる探勝路の吊橋からも眺める事ができるが、ここまできたなら是非とも直に見たいものである。 この《十字峡》を直に見るには、吊橋の前の広場より《剱沢》の滝の前の大岩に下り立つ事ができる。 ここからだと、《十字峡》の合流点が手に取るように見えて迫力満点だ。
 

色めきづく秋の十字峡
ここは絶好のカメラスポットだ
 
とどろく轟音と迫力満点のシーンに、シャッターを押す指もついつい力が入る。 次々に現れる情景にアングルを色々と思い描きたい所だが、この先も距離が結構あり時間もかかるので、頃合を見て引き上げよう。
 

剱沢の流れ
 
《十字峡》からは、先程の吊橋で《剱沢》を渡って対岸の岩を高巻きした後に、《水平歩道》(旧『日電歩道』)に戻る。 『水平歩道』は《黒部川》の水面よりどんどん離れて、標高差200mはあろうか・・という大岩壁の上に続いている。 これを伝うと、《黒部川》の渓流が半月状に蛇行する《半月峡》の上に出る。 だが、水面まで200mの奈落の底では、状況ははっきりとは見渡せない。 またカメラも、超望遠レンズがなければ苦しい所である。
 

写真集と事実は異なり
遙か遠望するS字峡
 
続いて、《黒部渓谷》の情景の代名詞・《S字峡》が現れる。 《S字峡》も先程と同じく標高差200mの崖の上からで、どうやら写真集などを飾る《S字峡》は超望遠レンズで狙ったものであろう。
これを越えてしばらく歩くと、対岸となる右岸に送電線の引き出し口が2つ見えてくる。 そして、その入口に、『関西電力』『黒四発電所』と書かれてある。 これがあの有名な、『黒部川第四地下発電所』・通称《クロヨン発電所》である。 

仙人池からのルートが合流してくる
※ 写真はかなり上方で撮ったものです

《クロヨン発電所》を通り過ぎると山肌をジグザグに切って急下降して、《黒部川》本流を立派な吊橋で渡る。 渡り終えると、《高熱隧道》の残骸であろうか、コンクリートの廃墟が建ち、その中は岩壁からの漏水でぬかるみとなっていた。 
 
ここからはトラックも通れるような幅の広い砂利道となり、長いスノーガードトンネルと黒部川治水工事の飯場を越えて、ようやく《仙人谷ダム》の堰堤にたどり着く。 《黒部渓谷》の要注意道はここまでで、ここからは地図でも一般道と同じ実線で示してある。
 
《仙人谷ダム》の堰堤を通り、ダム内を地下通路のように掘られた宿舎通路を『阿曽原へ』の指示通りに歩いていく。 やがて、外に出て白い蒸気を噴き上げる『関電上部軌道』の引込み線を越えて、《人見平》の『関電宿舎』の前を通る。 

ここからしばらく樹林帯の中を歩き、やがて急激に高度を稼いで元の『水平歩道』に戻る。 これを登りきると、一度《黒部川》から別れて樹林帯の中深くを行くようになる。 後は、《阿曽原温泉小屋》の建物が見えるまで歩いていけばいい。 

最後に《仙人池》からの道と合流して100mばかり下っていくと、《阿曽原温泉小屋》の前に出る。 
名前の如くこの小屋では温泉に浸かれるのであるが、小屋の開設期間中はいつでも超満員との事である。 《黒部渓谷》を探勝するならここで宿泊するしか手がないのだから仕方がないが、それでも尋常な込み方ではないらしい。 

何でも、50名の定員に250名が押し寄せるとの事。 これでは、寝ることもおぼつかないだろう。 
以上のことから、ワテはテント泊をお薦めしたい。 長い距離を歩いて疲れた足を延ばして寝る事ができるのは、テントの特権である。 但し、防寒着は忘れずに。

   続き《2日目》は、次回『黒部渓谷に潜む滝 その2』をどうぞ。
 
   ※ 詳しくはメインサイトより『黒部渓谷』をどうぞ。
 
 
 

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No title * by bell
って、コレ自分で撮った写真なの~~、って、相当、時間が、無ければ

No title * by 風来梨
べるさん、こんばんは。

良い時代(今のように売国奴が政権を握っているのではなく、まともな政権があって経済が周っていた頃)は、夏になると放浪してましたから時間はたっぷり有りました。

だからこそ、こんな写真も撮れたんですね。 秋も、3日位撮っても何ともなかったですし。 今はそんな事したら、職場の机がなくなりますものね。

No title * by オータ
まさに息を呑む絶景ですね…ダム建設の壮絶な話も読んではいますが… 傑作!

No title * by 風来梨
こんばんは。

すごいスケールの渓谷です。 でも、残雪が多く、秋以外は通れない事が多いようで・・。 うっかり飛ばしちゃいましたけど、後半に乞う御期待・・。

コメント






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No title

って、コレ自分で撮った写真なの~~、って、相当、時間が、無ければ
2011-10-06 * bell [ 編集 ]

No title

べるさん、こんばんは。

良い時代(今のように売国奴が政権を握っているのではなく、まともな政権があって経済が周っていた頃)は、夏になると放浪してましたから時間はたっぷり有りました。

だからこそ、こんな写真も撮れたんですね。 秋も、3日位撮っても何ともなかったですし。 今はそんな事したら、職場の机がなくなりますものね。
2011-10-06 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

まさに息を呑む絶景ですね…ダム建設の壮絶な話も読んではいますが… 傑作!
2011-10-14 * オータ [ 編集 ]

No title

こんばんは。

すごいスケールの渓谷です。 でも、残雪が多く、秋以外は通れない事が多いようで・・。 うっかり飛ばしちゃいましたけど、後半に乞う御期待・・。
2011-10-14 * 風来梨 [ 編集 ]