2021-11-17 (Wed)✎
よも”ヤマ”話 第159話 平ヶ岳 〔新潟県・群馬県〕 '96・8
下台倉山 1604m、台倉山 1695m、平ヶ岳 2141m【名峰百選 64峰目】
急峻な尾根上りからは
思いもよらない程に頂上部は
穏やかな山容を魅せる平ヶ岳
平ヶ岳 ひらがたけ (越後三山只見国定公園)
新潟県魚沼市と群馬県みなかみ町の境界に跨る標高2,141mの峰で、頂上部が高層湿原を形成した平坦な山容を魅せる為に『平ヶ岳』と名付けられている。 山名の通りに山頂はなだらかで池塘があって、周辺は草原となっている。 山頂付近の池塘保護のため木道が整備されている。
平ヶ岳頂上丘にある
最大の池塘・姫ノ池
山頂の北東約0.2kmに二等三角点(標高2,139.6m)が設置されているが、最高点は高層湿原の入口付近で2141mと、標高が2mほど高い。 当初は国の公園指定地域には含まれていなかったが、国定公園の指定範囲拡大により、新潟県側の山域が越後三山只見国定公園に属する事となった。
頂上からは分水嶺域に
そびえる山々が見渡せる
新潟県側は阿賀野川の支流・只見川の流域、群馬県側は利根川の源流地帯で、日本の中央分水嶺となっている。 山頂の南側は傾斜が急であるが、北側は平坦面となっており、ここに池塘が発達し高層湿原や雪田草原が形成されている。 この湿地は、平ヶ岳~巻機山~朝日岳の山域にかけて、『利根川源流山稜高層湿原群』として『日本の重要湿地500』の一つに選定されている。
タテヤマリンドウ
これによると、湿地のタイプは『高層湿原』と『雪田草原』とされ、選定理由を「ミヤマミズゴケ・イボミズゴケなどで特徴づけられる高層湿原、エゾホソイ群落などの小池塘の植生およびイワイチョウ・タテヤマリンドウ・ハクサンコザクラなどの生育する雪田草原が発達している」とされている。
平ヶ岳で魅られる希少種
ミツバノバイカオウレン
山頂にある池塘付近の草原の植生は、主にミツバノバイカオウレンやオノエラン・チングルマなどの草本植物となっている。 池塘周囲には種子植物のモウセンゴケが繁茂し、湿原の大きな特徴であるミズゴケ類の繁茂は見られない。 泥炭層は約20cmと薄く、湿地としては発展途上の中層湿原か、湿原ではなく原野や単なる湿地の特徴が強く見られる。
平ヶ岳の頂上湿原から
望む尾瀬の山々
この山の登山ルートは、魚沼市鷹ノ巣地区の国道352号線にある登山口から、下台倉山などを経て平ヶ岳山頂に至るルートのみで、上り7時間と行程が長い上に山中に山小屋はなく、頂上以外でのキャンプも禁止されている為、健脚者向けの山である。
頂上湿原からの絶景は
正規ルートを登ってきた者のみが
享受できる景色だと思うけど
だが、登山ブームとなって楽を求める中高年登山者の要望が高まり、奥只見の山荘・民宿経営者が中ノ岐林道から平ヶ岳へ通常の半分以下の上り3時間で登れるルートを開削したが、初心者登山者が殺到して自然保持の問題も浮上している。 なお、この中ノ岐林道からのルートは、奥只見の民宿組合の入会地の為に一般車両の乗り入れが禁止されていて、このルートを使うには会員民宿に最低2泊する事が必要となっている。
平ヶ岳・鷹ノ巣登山ルート 行程詳細図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 桧枝岐村・村落街より車(1:00)→鷹ノ巣・平ヶ岳登山口(2:20)→下台倉山
(1:00)→台倉清水(1:50)→姫ノ池(0:30)→平ヶ岳
(0:20)→平ヶ岳沢源頭キャンプ指定地
《2日目》 平ヶ岳沢源頭キャンプ指定地(0:30)→たまご石(0:45)→姫ノ池
(1:30)→台倉清水(0:50)→下台倉山(1:40)→鷹ノ巣・平ヶ岳登山口より車
(2:00)→小出町市街
下台倉山より望む
平ヶ岳はまだまだ遠く
《1日目》 鷹ノ巣登山口より台倉山を経て平ヶ岳へ
《鷹ノ巣登山口》から平ヶ岳までは、延々12km。 標準のコースタイムで登り7時間と、かなりの長大コースだ。 そして、正規に認められた平ヶ岳への登山ルートは、このコースしかないのである。
このような訳でこの山に登るならば、前日までに必ず《鷹ノ巣登山口》までアプローチする必要がある。 そして、できれば行程表の通り、テント利用での山中1泊の山行としたい。 なぜなら、日帰りで往復24kmというのはかなりの強行軍で、山頂での余裕がほとんどなく、またその下りがかなりの急下降となるので、この下りを時間に追われて焦って通過する事となる。
往復12時間超の強行軍では余裕がなく
ただ歩くのみで山の思い出はほとんどなく
下手すればケガという代償も貰いかねない
:
燧ヶ岳の好展望も
ほとんど魅ずに登るハメとなろう
そうなると転倒や滑落の危険が高くなり、また足にも負担がかかり足首などを痛めやすくなる。
山を楽しむ為にやってきて、楽しむどころかケガを持ち帰っては何にもならないのである。
現にこのルートを『日帰り』でシュミレートしても、空身でもコースタイム通りに歩けるのは体力のある若い時か、身体を造った山の猛者以外には不可能で、中高年世代の登山初心者ならば『日帰り』は実質的に不可能だろう。
・・せっかく行くのである。 それもあまりガイドで紹介されていない所に行くのである。
是非とも、「楽しい山の思い出」を持ち帰りたいモノである。
平ヶ岳唯一の登山ルートは長大で
平ヶ岳に登るなら日の出前から
登り始めなければなるまい
さて、『まえおき』が長くなったが、秘峰・平ヶ岳に向かって登っていこう。 登山口からしばらく砂利道が続くが、『下台倉山3.0km』の道標が立つ《下台倉沢出合》から、いよいよ急登が始まる。
《前坂》と呼ばれる標高差700mの尾根登りだ。 この急登は下台倉山までイッキに登りきる強烈なもので、ひとことで言い表すと『バカ登り』である。 また、途中にかなりの痩せ尾根部分があり、下りでは厄介なモノとなりそうだ。
標高差700mに及ぶ
強烈な前坂の登り
:
奥にそびえる山が下台倉山だ
強烈な登りで汗を搾り取られる急坂なのだが、登りがいのある坂でもある。←こう思えるのは、『奇跡の体力』のホルダーであった証で、今は考えにも及ばない事だな。 それは、尾根筋全般に渡って眺めがいい事にある。 特に燧ヶ岳の姿が素晴らしい。
平ヶ岳の登山ルートは
燧ヶ岳の絶好の展望台だ
登っていくごとに朝の光を受け、かぎろい色から七変化する空と燧ヶ岳のシルエット。
これを見ながらだと、滴り落ちる汗も心地よいものとなる。 疲れたなら、尾根の節目ごとにある鞍部でひと息ついて、燧ヶ岳の絶景に心を癒すといいだろう。
このキツい登りの清涼剤は
朝日に光る燧ヶ岳の雄姿だろう
尾根の節目にある鞍部を5~6ヶ所乗り越えた辺りから、この急坂でも最大の傾斜となっていく。
もはや、岩角や木の根につかまりながらでないと登りきれない。 更に登りがキツくなってから鞍部を3~4ヶ所乗り越えると、ツガの原生林が樹立する下台倉山に登り着く。
ここまででも、充分1つの山行をやり遂げた位のボリュームを感じるが、距離に直すとまだ全体の1/3を過ぎた辺りである。 下台倉山からは、稜線上につけられた道をひたすら歩いていく。 眺めも、周囲の樹林に遮られてほとんどなくなる。 小さな登降を数回こなすと、三角点だけがあり山名表示が全くない台倉山 1695メートル がある。
ここからは、深いコメツガの樹海の中にもぐり込み、燧ヶ岳の勇姿とは平ヶ岳の山頂付近までお別れとなる。 樹林帯に突入してしばらく歩くと、《台倉清水》の広場に着く。 この広場から20mほど下りた所に清水が湧いている。 水量は少ないが、なかなかの清水である。
《台倉清水》を過ぎると、更にコメツガの樹海の中深くに入り込み、緩やかな登降を繰り返しながら進む。 ここからは登る分には大した事はないのだが、樹海の中の木漏れ日一つ差し込まぬ環境のせいで水はけが悪く、ぬかるみ化した道ともいえぬ所を進まねばならない。 ここを歩くには、少しでもマシな所を見つける『ルートファインディング』が必要だ。
ぬかるみの端を伝ったり、木の枝が転がっている所を伝ったり、ついには周りのササヤブの上を漕いだりしながら歩いていく。 このような歩き方を余儀なくされるので、時間も思った以上にかかってしまう。
ぬかるみの中のピーク・標高1751m地点を越えるとひたすら緩やかな下りとなり、これを下りきった所が《白沢清水》だ。 この清水は少しよどみ気味で、あまり水場としては活用せぬ方がいいだろう。
この清水を越えてしばらく歩くと、平ヶ岳が樹木の隙間より見えてきて、やがてこの樹海を抜け出る。
ここで、ようやく「ぬかるみ歩き」より解放されるのだ。 樹海を抜け出ると進路を右に変えて、右側そびえる池ノ岳に取り付いて、そのままイッキに登っていく。
米粒のような花を束ねる
イソツツジ
池ノ岳へは、ササのブッシュの中に埋もれた急坂を、ササを掻き分けながら登っていく。
このササのブッシュを乗りきると池ノ岳の肩に出て、再び平ヶ岳の丸く穏やかな姿を見ながら登っていく。 ここは砂礫地のお花畑となっていて、穏やかな平ヶ岳の山容と可憐な花々がキツい登りや悪路に滅入った心を潤してくれる。
肩から続くガレた岩場を登りつめると、木道が現れる。 ようやく、池ノ岳山頂だ。
キツい登りに思わず腰を下ろしたくなる所だが、ここはグッとこらえてあとひと踏ん張り木道を歩いく。
姫ノ池と平ヶ岳
辛く長い登りを乗り越えると
山は素晴らしき風景を魅せてくれる
なぜなら、この木道の僅か100m先に絶好の憩いの場・《姫ノ池》があるからだ。 《姫ノ池》からは、緩やかな起伏に続いて膨らむ平ヶ岳の姿や風になびく草原、空をたなびく雲を映す池塘など、いつまでも眺めていたい穏やかで心なごむ情景が広がる。 しばらく休んで、この優しき風景に疲れを取り払おう。
頂上大平原を予感させる
平ヶ岳の頂上丘
心ゆくまでくつろいだなら、平ヶ岳の山頂を目指して登っていこう。 ここからは、平ヶ岳のなだらかな山容が示す通り緩やかに下って、乳房のように膨らんだ山頂に向かってひと登りするだけだ。
山頂への道は豊富な雪が形成した
雪田草原となっていて
路傍は花回廊となっている
:
盆も過ぎて花は
リンドウなど秋の花となっていた
登り着いた山頂付近は、池塘を無造作に散りばめた大湿原が広がっており、その先に燧ヶ岳や至仏山が見渡せる。 この穏やかな大湿原を見ながら進んでいくと、丸い丘の中心に着く。 ここが平ヶ岳 2141メートル の最高点だ。
平ヶ岳頂上湿原にて
平ヶ岳の頂上には
空の青を映す池塘が
無造作に散りばめられていた
池塘群の畔から山上湿原へ
木道が敷設されている
その木道を辿っていくと
越後三山の山々が望めた
振り返ると至仏山が
姿を魅せていた
木道は360°全てを見渡せる
草原の中央で途切れていた
木道が途切れた地点から望む
奥只見の山々
同じく日光や那須の山群
至仏山に向かって
美しくも天候を崩す
前兆の雲がたなびいていた
最高点からの眺めは北側の眺望が一段と良くなり、越後駒ヶ岳 2003m を盟主とした越後三山や、荒々しく突き出た荒沢岳 1969m 、そして《奥只見湖》の蒼く輝く湖水を挟んで浅草岳 1586m の穏やかな姿など絶景が広がる。 また、周囲に無造作に散りばむ池塘はたなびく雲や周囲にそびえる山々を映し、さながらアストロビジョンの画面を見ているようである。 花も、イワイチョウ・タテヤマリンドウ・ハクサンチドリなどが池塘の周りを飾っている。
池塘の周囲に白い光を放つ
イワイチョウ
ちなみに平ヶ岳の三角点はこれより2m低く、また潅木に囲まれた中にあり、あまり見通しが良くないので、湿原が広がり平ヶ岳の魅力を押し出している最高点を山頂とした。
平ヶ岳の三角点頂上は
肥え太ったタワケ同様冴えない
:
だがこのブクブク太っていた時が
『奇跡の体力』のホルダーだったのよ
頂上でのひとときを満喫したなら、今日の宿泊地・《平ヶ岳沢源頭》にあるキャンプ場に向かおう。
豊富な雪から生まれた水が
雪渓の下より湧き出る
絶好のキャンプ地へ
キャンプ場の分岐は平ヶ岳と池ノ岳の鞍部にあり、ここから平ヶ岳沢源頭にある雪渓に向かって10分程歩いていくと着く(早い時期は雪に埋もれて判り辛いので注意が必要)。 ここは、《平ヶ岳沢》の生まれたての水が雪渓の下より湧き出る絶好のキャンプ地である。 今日は、ここで大自然に抱かれよう。
※ 続きは、次話『第160話 たまご石』にて
東京五輪開催による
武漢ウイルスの蔓延・感染爆発で
テレワークが促進されたが
そのバーチャル会議のシーンや
やり取りのシーンを紹介する
番組が放映されていたのを
病院の診察待ちの時に目にしたのだが
それを見た感想はハッキリ言って
気持ち悪くて仕方なかったよ
コレはワテがバーチャルなど
PC通信に全く興味がなく
PC関連に疎いローテクだからであろうが
人形化した自身のコマンドが
バーチャル化された空間を走り回り
コマンド同士が出会う毎に
顔以上にデカくなった手のひらを大きくブン回す
挨拶(コレが挨拶の表現らしい)を繰り返す
こんなゲームみたいな操作で
重要な業務の取引をやってるみたいだ
ワテならその会社の業務に信頼が置けないし
不安に思えて仕方がないよ
こうやって顔を見ない取引が一般化して
ウソを見抜けぬまま大損を
コカされる事が日常茶飯事となるだろうね
他にもバーチャルで世界一周旅行とか
バーチャル空間の渋谷の交差点前を訪れて
街頭ライブをタダ見したりと
「そんな事する位なら旅に出ないわ!」
と心の中で叫んだよ
こんなのが普遍化すると
文化が廃れると同時に足腰が退化して
ロクに歩けなくなってしまうかもよ
まぁバーチャル全盛まで
あと15年位かかりそうだから
その時はワテも60台も後半に差し掛かり
そんな気持ち悪い世界に
関わる事なく済むだろうけどね
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Re: No Subject * by 風来梨
hanagonさん、こんばんは。
他の方のヤマレコによると、平ヶ岳沢源頭のキャンプ場に限り、テントの設営OKだそうです。 ただ、トイレはないです。 でも、次回訪れた時にはテント設営台とか設けられてました。
あの長大ルートを日帰りの方がかえって危ないですね。 特に時間に追われた下山での下りとか。
それよりも、平ヶ岳の環境を守るなら、中ノ岐沢のルートを閉鎖(元々廃道だった)して、安易な登山を防ぐべきかと。 中ノ岐沢から登ってきた者が、たまご石の湿原内を踏み荒らすケースが報告されてますし・・ね。 平ヶ岳の源頭にトイレブースと汚物処理のバッカンを設ける方が、中ノ岐沢の整備よりよぼど安上がりですし。
他の方のヤマレコによると、平ヶ岳沢源頭のキャンプ場に限り、テントの設営OKだそうです。 ただ、トイレはないです。 でも、次回訪れた時にはテント設営台とか設けられてました。
あの長大ルートを日帰りの方がかえって危ないですね。 特に時間に追われた下山での下りとか。
それよりも、平ヶ岳の環境を守るなら、中ノ岐沢のルートを閉鎖(元々廃道だった)して、安易な登山を防ぐべきかと。 中ノ岐沢から登ってきた者が、たまご石の湿原内を踏み荒らすケースが報告されてますし・・ね。 平ヶ岳の源頭にトイレブースと汚物処理のバッカンを設ける方が、中ノ岐沢の整備よりよぼど安上がりですし。
これを日帰りなんて本当にもったいない。しかし現在は最初からテント泊を目的としての幕営は禁止のようですねぇ。残念です。
仙台、千葉赴任時から気になっていた山なのに、結局未訪のままになっています。。