2021-11-11 (Thu)✎
『路線の思い出』 第466回 神岡鉄道・秋の漆山駅 〔岐阜県〕
廃線間近となった秋の漆山駅
:
あとひと月半で
路線と共に駅廃止となるのだ
《路線データ》
営業区間と営業キロ 廃止年月日 廃止転換処置
猪谷~奥飛騨温泉口 19.9km. ’06・12・1 濃飛乗合自動車バス
富山地方鉄道バス
移管先廃止時運行本数
猪谷~神岡(奥飛騨温泉口)6往復
神岡(奥飛騨温泉口~神岡口(神岡鉱山前)3往復
漆山駅(うるしやまえき)は、かつて岐阜県飛騨市神岡町西漆山にあった神岡鉄道・神岡線の駅である。 2006年12月1日に、神岡鉄道線の路線廃止に伴って駅廃止となった。
単式ホーム1面1線の駅で無人駅となっており、ホーム上には小さな待合所と寿老人の木像を奉った祠が設置されていた。 開業当初は、駅名標のうち照明に取り付けられていた縦型ホーロー版のモノは、国鉄時代の「にしうるしやま」の「にし」を取っただけのモノとなっていた。
この情景豊かな川が
イタイイタイ病を引き起こした
鉱毒の川だったんだな
高原川沿いにあった駅で対岸を国道41号が通り、駅とは鉄橋で結ばれている。 駅の周りには西漆山の集落が開けていて、正眼寺や白山神社がある。 駅の対岸の国道側にも東漆山と牧というに集落があるが、西漆山ほど規模は大きくない。
駅の北東1キロメートルほどの土(ど)という場所で、高原川に跡津川が合流している。
当駅と茂住駅の間の神岡線はほとんどが茂住トンネルの中であった。
廃止後の駅跡は
待合室が撤去されただけで
長らく放置されていた
神岡鉄道の廃止後はホーム上の待合所が撤去され、しばらくホームだけが放置されたが、観光町おこしの資源として飛騨市の支援を受けたNPO法人『神岡・町づくりネットワーク』によって、旧神岡鉄道の廃線跡を利用したレールバイクが運営され、『渓谷コース』の出発地点に当駅跡が当てがわれる事となり、レールバイクの保管庫を始め、待合所・乗車手続きの為の簡易事務所が設置されている。
「情景が素晴らしい所には
民家がない」の典型事例ですね
旧国鉄時代も北海道の廃止転換路線なみの輸送実績しかなかった事から、勢いだけで始めたに等しい第三セクター移管に疑問符がついていた路線の神岡鉄道。 この『偉大なるローカル線』の神岡鉄道も、案の定2006年の12月に廃止となった。
沿線は川と国道だけで
民家らしきモノはほとんどなかった
それもそのはずで、神岡の街中である神岡(神岡鉄道時代は奥飛騨温泉口)から飛騨船津(同じく飛騨神岡)以外に周囲に民家らしきものが稀薄で、全ての区間に鉱毒で有名な神通川の支流の高原川と国道41号線がぴったり寄り添っていただけで、利用客の増加が全く見込めない状況だったのである。
「三井神岡鉱山跡で濃硫酸の貨物輸送があったから」という理由で第三セクターに移管したのであるが、『第三セクター・神岡鉄道』の最大出資先で事実上の『親会社』である三井神岡鉱業自身が、「鉄道貨物輸送はコスト高で割が合わない」と『泣き』を入れたのである。 まぁ、こんな経営判断の甘い会社が『親会社』なのだから仕方がないと言えない事もないが・・。
ちなみにこの駅でも
駅寝体験があったりして
この路線が『第三セクター』に移管された以降は、追っかけるターゲットを『廃止ローカル線』から『ヤマ』へと変えて、この神岡鉄道も北アルプスの登山口である『新穂高温泉』に下山した際には富山に出るバスに乗り、敢えて奥飛騨温泉口でバスを降りて鉄道で帰っていたのである。
一度足を洗った『撮り鉄』
だから撮影枚数も『鉄』の
比率は1/5程度だったよ
何故にこんな面倒臭い事をしてたのかと言うと、「かつては鉄道を追っかけていた」という事もあるが、ちょうどヤマから『新穂高温泉』に下り着く時刻が10時半から11時前後(今はヘタれて到底ムリ)で、タダの共同浴場でひと風呂浴びた後に出発する12時ちょうど発車のバスが神岡経由の富山行きであった事と、旧神岡駅にテナントで入っていた喫茶店に大量のマンガ本が置いてあって、それに味をしめていた真に持ってしょうもない理由からである。
『撮り鉄』に戻ったといっても
細々で『ナンチャって』なので
後半は『撮り鉄』そっちのけで
川面の妙を撮っていたよ
でも、それもこの鉄道の廃止によって終わる事となり、またこの頃からそろそろに『山旅放浪』を卒業して、社会復帰しだした頃であったのである。 社会復帰によりヤマへ行く頻度も減り、同時に歳食ってきて『奇跡の体力』も失ってきて、再びナンチャってな『撮り鉄』を細々と復活させていた時だったのである。
そこに入ってきたのが神岡鉄道が廃止となる一報だった訳である。 でも、かつてのように、『撮り鉄』に対して執念をもって追いかけるような情熱も気力もなかったのである。 なので、廃止の報を聞いて神岡鉄道を訪れた夏は、今イチ成果が上がらなかった。
夏の失敗より秋の情景が
こんなに素晴らしいと
知らなかった事が知識不足だぁね
夏の失敗は、何と言っても偵察不足に尽きるのである。 それは、国道41号より列車が見える所で適当に撮っただけだったので、変化に乏しい情景しか撮れなかったのである。 この失敗を踏まえて、「色々なシーンを撮ってみるのもいいのでは?」と想定を変えて挑んでみた。
まずは、かつても全くしていなかった『駅撮り』である。 そうなのだ・・、都会の人だかりの駅ならともかく、田舎の駅はその全てが「絵になる」という事を忘れていたよ。 取り敢えず1枚目は、《西漆山》の駅ホームよりアンダー気味に狙ってみたのだが・・。
元々山峡の薄暗い駅で
適正露出は開放(F4)で
1/8秒しか稼げなかった
駅のホーム端に三脚を立てて望遠で覗いてみると、元々薄暗いロケーションの駅ではあるのだが、適正露出は開放(F4)で、1/8秒しか稼げない。 さすがに1/8秒では、走ってくる列車が流れてしまう。
仕方がないので、2段アンダー承知で流れない限界の1/30まで引き上げる。 後は、列車の灯だけが頼りである。 「列車の灯で1段くらいはごまかせるかな」と踏んだのであるが・・。 結果はこのようになりました。 個人的には、「雰囲気が出ていいかな~」って思っているけど。
1/8秒では流れるので
アンダー承知で2段シャッター
速度を上げてみた
:
その結果は
「雰囲気が出ていいかな~」って事で
「次は上から俯瞰してみよう」と思って、駅の裏手に延びる道路を奥まで突いてみる。 道路は崖にへばりつくように点在している《漆山》の集落で途切れ、その先は犬走り程度の小径となっていた。
「俯瞰できる位置はないものか」と、この小径もそのまま奥へ探索してみる。 だが、次の列車まで、僅か45分程しかない。
撮影地が見つけられなかったとしても
この紅葉でお腹一杯になれたかも
取り敢えず10~15分ほどこの小径の奥を散策したが、開けた所がなさそうだったので引き返す。
即刻駅前まで戻って、駅付近の《茂住》側の土手によじ登って狙ってみる。 でも、このショットは大失敗。 何と、「うれしはづかし」(巻き上げをせずにシャッターを押す事)をやっちまったのである。
従って、2番列車は、列車が写ったショットがなかったりする。
3番列車までは1時間15分ほどあるので、国道を伝って対岸からのスポットを探してみる。
橋を渡って国道41号線に出ると、色々な風景が見えてきた。 対岸の崖にへばりつくように点在する《漆山》の集落と、列車の取り合わせもいいかもしれない。 川岸をへばりつくように伝う神岡鉄道の路線も、幾つか狙えそうな場所がありそうだ。 線路に沿って歩いてみると、車の中からは見えない風景と情報が次々と目に入ってくる。
歩いて周ると
いいスポットが見つかるモノですね
:
でもまだ日が浅く
周囲が影っていたのが残念
3番列車は、《漆山》から約25分ほど先に進んだ所にある俯瞰場所を撮影地に選んでみた。
手前に無粋な銀の柵があり、これをゴマかすのに苦労したが、取り敢えず上の写真のようなものが撮れた。 残念な事といえば、まだ日が浅くて列車に光が差し込まなかった事であろうか。 そして、勝負の4番列車である。
カーブする鉄橋の架かる
河原に出ると秋の絶景が広がっていた
3番列車のスポットに向かう途中で、発電施設と思しき施設とそれに続いて川床方向へ下っていく小径を目にしていたのである。 「これは行ってみる価値があるな」と、この小径を探索してみる。
時間的な余裕は45分位だ。 この発電施設までは所要約7~8分で、あと40分近くある。
最悪は4番列車を逃す事も想定しながら、この小径を下まで下ってみる。 この小径を5~6分ほど下ると、神岡鉄道の線路前に出たのである。
「これはいける!」と、線路を渡って奥のブッシュ帯に分け入る。 すると、カーブを描いた鉄橋があった。 だが、その前には猛烈な雑木林が立ち阻み、到底狙えるような所はなかった。 雑木林を掻き分けてみたのだが、どうも開けた所はなさそうだ。 目の前に餌がぶら下がっている状態(絶好のスポットが雑木林の背後にある)のジレンマに陥るが、雑木林から戻って周囲を見渡すと、川の畔に下る踏跡があった。
もう、ほとんど崖崩れのような踏跡ではあったが・・。
もちろん、これを下ってみる。 すると、あったよ、絶好の撮影スポットが! 周囲は豪華絢爛に彩られた秋風景、そして川の水面にその絢爛絵巻を映し、線路は弧を描いた鉄橋で川を横切っている。
「もう、ここ以外に撮影地はないだろう」と断言できたよ。 それでは、その場所での写真をごろうじろ。
色着く紅葉とカーブの絶景
:
敢えて前面に河原の石を入れて
この撮影地にたどり着くまでの
困難度を示したりして
鉄道の撮影だけでなく、周囲を見渡せば函状を成した川面に映る風景や秋を彩る絢爛たる錦絵巻など、列車を待っている間も退屈はない。 寧ろ、「風景の撮影に夢中になりすぎて、列車を逃してしまうかも」という心配さえある位だ。
5番列車は偏光フィルターを使って
紅葉が影ってしまう大失敗
:
2番列車の「うれしはずかし」といい
後1ヶ月半で廃止となり
失敗ができない場面で
堂々と連続的にシクじるワテ
予定を変更して、5番列車も同じ所で狙ってみた。 撮影をした後での感想だが、光線状態としては午後となると光がくすんでしまって沈んでしまうかもしれない。 狙い時は、3番列車から4番列車であろうと思う。 最後は、周囲を彩る秋風景で締める事にしよう。
撮り鉄そっちのけで
川面の妙を撮ってたけど
今考えれば廃止となり
2度と撮れない『鉄』にも
真剣に取り組むべきでしたね
でもこんな情景を魅せられると
そっちのけにもなるよ
最後は『撮り鉄』より
河原で紅葉狩りだったよ
吸い込まれるような川面の
深緑のキャンバスに
周囲の紅葉が映し出され
この紅葉に魅せられて
ヤマも秋に行くようになったかも
最後は川面に映る
彫刻模様で締めようか
今年の冬は3年ぶりに冬の北海道の
『撮り鉄』&道東での『野鳥撮影』
を目論んでいたが
去年に『残念』の手術を受けて
ヘタリきった身体では
真冬の北海道の駅寝や
雪原ラッセル突破などの激しい
『サバ鉄』はムリっぽそうですねぇ
という訳で方針を少し変えて
『ぬるサバ鉄』に変更する事にしますた
それは『撮り鉄』の方面を
温暖な九州に変更して
指宿枕崎線や吉都線など
旧国鉄型が残る線区を攻めようかと
そしてここまで鉄道が
旅に不向きとなった御時世に
レンタカーは一切使わず鉄道だけで周る
禁断の果実な旅を敢えて食そうかと
でも今に『乗り鉄&撮り鉄』を試みると
必ず駅寝は必須となるんだものね
非電化ローカル区間での『撮り鉄』は
車が無ければ駅寝して
始発から追わなきゃならんしィ
そして『サバ鉄』にはタブーな
というかワテ個人的に
乗るのが嫌なシンカンセンも
駆使しないといけないしィ
という訳でヤマでは秋並みの
+2~3℃での駅寝とシンカンセンという
『ヌルい』要素を取り入れてみますた
おかげで初乗り区間がかなり増えるよ
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