2021-09-28 (Tue)✎
『日本百景』 秋 第491回 始めての剱岳 〔富山県〕
アルピニスト憧れの剱の切っ先へ
剱 岳 つるぎだけ (中部山岳国立公園)
飛騨山脈(北アルプス)北部の立山連峰にある標高2,998 mの富山県の上市町と立山町にまたがる位置にそびえる岩峰で、槍ヶ岳と並んでアルピニスト憧れの山である。 中部山岳国立公園内にあり、山域はその特別保護地区になっている。 立山・鹿島槍ヶ岳・唐松岳と並んで、氷河が現存する日本で数少ない山である。
この山の一般ルートの内の一服剱~前剱~剱岳本峰の区間で、「カニのヨコバイ」「カニのタテバイ」と呼ばれる鎖場を始めとする、岩稜伝いの鎖場やハシゴのルートが続く難所が続くからである。
だが実際には、より容易な稜線で滑落事故などが発生しているとの事である。
剱のいい写真が撮れるまでは
もうちょっと時間がかかったかな?
:
但し『写真床』のウデを勘案しての事だけど
飛騨系の閃緑岩と斑れい岩の硬い岩から構成され、それを輝緑岩が貫いている。 また、最終氷期に発達した氷河に削り取られた氷食尖峰で、その峻険な山容は訪れる者を圧倒し、登山を志す者からは『岩と雪の殿堂」と呼ばれている。
北から東の方角には、大窓をはじめとする『窓』と呼ばれる懸垂氷食谷が発達し、うち、『三ノ窓』と『小窓』の両谷には、日本では数少ない現存氷河である《三ノ窓氷河》と《小窓氷河》を擁する。
南東の方角には日本三大雪渓の1つとして知られる《剱沢雪渓》があるが、こちらは氷体を伴わないので氷河とは認められていない。 山の上部は森林限界のハイマツ帯で、ライチョウの生息地であり、アオノツガザクラやハクサンイチゲなどの高山植物が自生している。
剱岳・別山尾根 登山ルート 行程図
(0:25)→雷鳥平(1:40)→剱御前小屋(0:50)→剱山荘
《2日目》 剱山荘(1:30)→前剱(1:30)→剱岳(2:30)→剱山荘 (0:50)→剱御前小屋
《2日目》 剱山荘(1:30)→前剱(1:30)→剱岳(2:30)→剱山荘 (0:50)→剱御前小屋
(1:15)→雷鳥平(0:35)→室堂よりケーブルとバス(1:00)→立山駅より鉄道利用
(1:05)→JR富山駅
あの頃はスゴかった
:
背後に見える登山者は上りで
ワテは早くも登頂を終えた帰りで
前剱をも越えていた
《1日目》 劔へのアプローチ
今回は憧れの岩峰・剱岳に初めて挑んだ時の事を思い返して記事を書いていこうと思う。 山などの記事では、その大半がかつての『奇跡の体力』を有した若かりし時の事を書き記すのであるが、その時の山行記録や『行程表』を目にすると、毎回のように自我が崩壊しかけるよ。そそれは、それらの山行記録や『行程表』を見て、「何でそんなに早く登れるの?」、「もしかして別人!?」って思えるからである。
『行程表』の数値は、メインサイトである『日本百景』の行程データとの整合性を取る為に少し調整を加えたモノなのだが、その『元データ』では《雷鳥平》から《剱御前小屋》までの登りを1時間3分で登りきっているのであった。 この時点で既にコースタイムより47分も早い超アンダーだったのである。
あぁ・・、また今夜も枕を涙で濡らさねばならないよ。
それでは、「初めてのアコム」じゃなかった、「初めての剱」をいってみようか。 上で記した様にコレだけ足が早ければ、剱岳は日帰りで踏破できそうなものだが、「これだけの峰を日帰りで駆けるのは勿体ない」というのは建前で、本当はどんなに足が速くても剱岳の日帰り登頂はほぼ無理な事なのである。
シーズンに突入した
立山ケーブルはこんな感じ
※ 『立山ケーブル・立山駅』より
それは立山駅に朝6時前に着いたとしても、立山ケーブルの始発がシーズン中でも朝7:00と遅く、しかもその7時の便は旅行会社主催の団体客が押さえており、一般客はほとんど乗れないのである。
なぜなら、団体客は全ての旅行参加者を同時に捌かないといけないので、「次の便回し」にはできないからである。 まぁ、シーズン中は「着いたら乗客を詰め込んですぐ折り返し」の頻発運転で、立山ケーブルの運行限界の20分毎の運行となっているけど。
でも、それを見越した団体客の行動のトロい事、トロい事。 若気の至りだったこの頃は、このトロい団体客に小さな殺意さえ芽生えたよ。 そして、その次の便も団体客がやってきたら乗れないのである。
要するに朝の2便は、一般客の乗車機会は5人から10人未満なのである。 そして、先程も述べたように、ケーブルをフル稼働しても20分に1便が限界なのである。 従って一般の客が乗れるのは、最速でも7:40って事になるのである。
朝早く稜線の上に立って
望む山々の絶景
:
室堂周辺で金を落とさない登山者より
財布のヒモが緩い観光客優先なのは
世の常なのです・・ハイ
・・6時から並んで7:40のに乗れたらすごぶる幸運で、その後もやってくる団体客優先の対応は変わらないので、シーズン中などは下手したら3時間から4時間近く待たされるのである。 一説によると、この団体客優先主義の裏には、旅行会社からの多額の『袖の下』がケーブルカーの運行元に渡っているとかいないとか。
もう8時半を周ると、ケーブル運行元もさすがに「マズい」と思うのか、《美女平》までバス輸送に切り替えて、蛇行の帯と化して並ぶ待ち客をバスに誘導するようである。 立山の時に次いで2度目でケーブルの混み様を知っていたワテは、前日に駐車場で車寝して朝5時から並んでいたので8:40の便ケーブルに乗る事ができたが、この行程表通りに富山駅から電車で来ようものなら、立山駅からケーブル乗場のフロアに上ってきた時は、既に長蛇の列で4時間待ちは確定だろうね。
ヘタすれば4時間待たされ
かねない怒りと殺意を
トリカブトで表現してみますた
まぁ、立山に登った初めての時は何も知らなかったので、3時間待ちだったけど・・ね。
それ以来この地域に訪れる時は、極力シーズン中を避ける様にしているよ。 でも、シーズン中を外すと山小屋は全て閉って、テント必須となるけど・・ね。
話は脱線したが、ケーブル程ではないが《美女平》でも高原バスに乗るのに2~30分待たされて、室堂に着くのは10時前後になっちゃうのである。 ・・という訳で、「いくら足が早くても剱の日帰りはムリ」って事が言えるのである。
さて、この頃のワテは、まだヤマはかけ出し期で山荘泊のスタイルでの山行であった。 だから『奇跡の体力』の最盛期に近づきつつあった頃で足も早く、上に記した「コースタイム47分アンダー」を叩き出して、ケーブル乗場のフロアで「小さな殺意を抱いた」トロい団体登山客のツアーに、《剱御前小屋》の手前で追いついたよ。
この団体客ツアー部隊は《剱御前小屋》で昼食を取るらしく、《剱御前小屋》でタムロっていた。
それを横目に追い抜いて、一路《剱山荘》に向かって下っていく。 ・・で、今日泊る《剱山荘》に着いたのは13時をちょっと回った位のトップ到着だったよ。 トップで着いた御褒美かどうかは知らないが、先着50人位までが入れる風呂に入れたよ。 もちろん、浸かるだけの風呂だったけど。
今日泊る剱山荘と剱岳
:
今日泊まる兼山壮は
黒潰れしてしまったよ
そして、案内された部屋もワテ一人だったよ。 でも、徐々に到着した山荘の泊り客が入ってきて、最後はワテが着いた1時間半後に《剱御前小屋》で追い抜いたツアー団体客の部隊が入り込んできて、途端に「布団1枚で2人」のスペースになっちまったよ。
・・明日は夜明け前に山荘を出て、一服剱で御来光を迎えるプランで剱岳に登るとしようか。
これから登る
剱の峰を見上げて
《2日目》 憧れの剱へ
北アの山荘は総じて朝食が遅いので、持ってきたパンで朝飯は凌ぐ事にして、夜明け前の空が明るくなり出した5時前に山荘を出る。 小屋からイッキ登りで20分程登ると一服剱だ。 『奇跡の体力』にリーチの足で、目論見通りに御来光が昇る前に一服剱に登り着く。 今なら40分はかかって、御来光には間に合わないだろうけど。
ここから望む鹿島槍が
最も魅せられる
:
ワテ取っておきの鹿島槍展望場所だ
一服剱からは、かぎいろの空に染まる鹿島槍の双耳峰が望まれる。 双耳峰を鋭角でスライドしながら突き上げる様は、カッコイイの一言に尽きる。 この一服剱でかぎろい色に染まる鹿島槍を目にしてからは、ここで見る鹿島槍が一番のお気に入りとなったよ。
時が経つにつれて空が
かぎろい色から白く眩くなっていく
一服剱からは、前剱との鞍部に向かって下っていく。 この下りきった所は《武蔵ノコル》と呼ばれていて、ここから垂直に天を衝くかのようにそびえる前剱へと取り付いていく。 前剱は実際に登ってみると見た目ほど急でもなく、割とあっさりと登っていける。 ただ、浮石が多い上に人の行き交いが多いので、常に落石に対する警戒が必要だろう。
朝日に輝く別山尾根と剱沢
この急登を乗りきって前剱 2813m の頂上へ出ると、ハイマツの茂った想像以上に広い山頂広場から、剱本峰の『カニノタテバイ・ヨコバイ』と呼ばれる岩峰が立屏風のようにそびえ立っているのが見える。
下山時に振り返ると、この『カニノタテバイ・ヨコバイ』に挑む登山者の姿が望めて、いいシャッターチャンスとなるかも。
前剱発「絶景かな」
前剱より望む剱岳本峰
剱の八ッ峰越しに
鹿島槍の双耳峰が望めた
その鋭角的な双耳峰が
カックイイので
ズームで引き寄せて「もう一丁!」
この頂上を越えて痩せた山稜を下ると、最初の鎖場・《前剱ノ門》である。 ここは上りと下りの通路が分けられていて、足場もしっかりしているので安心して通過できる。 問題はこの次の鎖場だろう。
僅か20m程の岩場のトラバースなのだが、真下に垂直傾斜のような《平蔵谷》の雪渓が口を開いていて高度感があるのだ。
平蔵谷が口開くその上を渡る
コース最大の難所より
剱沢を挟んで立山山塊を望む
この鎖場を恐々乗り越えると、岩の間にあるテラス状の高台の上に出る。 この高台の上には落石の為だろうか、屋根のコンクリートブロックが粉々になった《平蔵ノコル避難小屋》の廃墟(現在は屋根は取り払われて囲いだけとなっている)がたたずんでいる。 この避難小屋の廃墟の下を周り込むと、ボルトや鎖・アングルなどが打ち込んである大きな岩壁にぶつかる。 これが、このコースの名物・『カニノタテバイ』である。
剱名物『カニノタテバイ』と
『カニノヨコバイ』
:
『カニノタテバイ』が上り専用で
『カニノヨコバイ』が下り専用となっている
※ 写真は『カニノヨコバイ』
だが、後込みする程に難しい事はなかった。 最初の第一歩が大股開きになる事(足が短いので厄介ですね)を除けば、「痒い所に手が届く」が如く欲しい位置にアングルやボルト・鎖がかましてあり、ジャングルジムを上る要領で簡単に這い上がっていける。 この『カニノタテバイ』は、上り専用ルートで行き違いに気遣う必要がないのもいい点である。
『カニノタテバイ』を越えると右にトラバースして、下りルートとなる『カニノヨコバイ』への取付と合流する。 ここまでくれば難路も終わり、ゴロゴロした岩屑の小峰を越えて一投足で標高2998mの鋭い『剱』の上に立てる。 小さな祠のある頂上からは、360°の大展望が望めるであろう。
『カニノタテバイ』を越えると右にトラバースして、下りルートとなる『カニノヨコバイ』への取付と合流する。 ここまでくれば難路も終わり、ゴロゴロした岩屑の小峰を越えて一投足で標高2998mの鋭い『剱』の上に立てる。 小さな祠のある頂上からは、360°の大展望が望めるであろう。
始めて剱を踏んだあの頃は若かった
思い返しては今日も枕を涙で濡らす
:
肌もツヤツヤとして張りがあって
アリバイ写真を撮る
動作もキビキビしてたよ
後立山の山なみ、そして雲海の合間より突き出す槍ヶ岳。 これが目に入ると、北アルプスの高峰を極めた実感がひしひしと湧いてくる。 また、眺めて美しい富士山も見渡せる事だろう。 思う存分『剱』の切っ先からの絶景を見渡したなら、往路を下山する。
剱岳本峰発「絶景かな」
鹿島槍・八峰キレット・五竜岳
揃い踏み
頂上の絶景はほんのひと時
この後は急速にガスに覆われて
「白無の世界」となった
下りは先程も紹介した通り、下山専用のルート『カニノヨコバイ』を下っていく。 この『カニノヨコバイ』の傾斜はそれ程でもないが、1ヶ所足元が見え辛いオーバーハングの一枚岩を下る所がある。
ここは慎重に通過しよう。 この難所を越えて長い鉄ハシゴを下っていくと、《平蔵ノコル避難小屋》の前に下り着く。 後は、ペンキ印の通りに忠実に下っていく。
今日は剱御前の
あの山屏風を越えて
室堂まで下りきらねばならない
一服剱で朝に登ってきた《剱山荘》への分岐があって、山荘で腰に手を当ててジュースの一杯でも飲みたい衝動に駆られるが、これを振り切って尾根通しの短絡道をゆく。 なぜなら、今日はイッキに室堂まで下って帰阪する予定で、グズグスしていたら室堂からの高原バスの最終に間に合わなくなるからである。
行きの立山ケーブルの如く、室堂の高原バスもバスを待つ下山客で長蛇の列となっているからである。
下山に手間取って
室堂到着が遅くなると
行きと同じく長蛇の列に
巻き込まれてしまう
※ ウィキペディア画像を拝借
後は《剱御前小屋》も飛ばして、《雷鳥坂》を下って(でも・・登りより8分遅かった)、室堂への登り返しを30分を切る速さで駆け上って、室堂に戻り着いたのは14時ちょっと前。 下山客で込み合い始める前だったよ。 後は拠所ない事情により、(財布が痩せ細る)お土産は買わずに高原バスに乗り込む。
去年の10/17~20に
立山の裏側で
『スーパーオチャメ』をカマすまでは
自分でいうのも何だが『無敵』だったよ
現にヘリで担ぎ込まれた病院では
「よく生きてたね」「普通なら骨9本折ってたら
痛くてうずくまってそのまま死んでるよ」
って変な感心されたしィ
っていうか『骨9本バキバキに折れ』+
『十二指腸潰瘍』+手足指全ての一度凍傷+
脱水症状でテント一式20㎏担いで
ヤマを彷徨い歩いていたのだしィ
でもこの入院時のCTスキャンで
甲状腺がオチャメッているのが発見され
その前に親父が死んで葬式代で
散財したのに摘出手術+入院で更に散財
更に勤め先のブラックなクソ会社が
手術して弱ったワテを
新入社員が1ヶ月で逃げ出す
キツい部署に配置する人道を無視した
嫌がらせをしてきやがったよ
この疲労で兆候があった左目の白内障が
悪化してついでに右目も進行しだして
取り敢えず左目の手術確定
でも目が見えにくいと辛いね
ブログ書くのもかなり手間取ったよ
・・で10/5の手術で必ずや復活予定
たぶん老眼鏡デビューとなるけど
新たな世界がワテを待っている・・よね たぶん
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Re: No Subject * by 風来梨
hanagonさん、こんばんは。
私も北アでは一番思い入れりある山域ですね。
でも、頂上はこの山行と長次郎雪渓の時と北方稜線を伝った3回しかないのですね、
もっぱら、剱沢雪渓を下って仙人池や黒部ダム方面へ抜けてます。 もう10回以上あるかな。 特に秋は最高ですね。 紅葉は涸沢カールを凌ぎますね。 そして、去年は別ルート(内蔵助カール)で、ハデにオチャメりました。
でも、また行きたい・・。 普通は死にかけたらもうコリゴリとなるのに、更に行きたい気持ちが募ります。
私も北アでは一番思い入れりある山域ですね。
でも、頂上はこの山行と長次郎雪渓の時と北方稜線を伝った3回しかないのですね、
もっぱら、剱沢雪渓を下って仙人池や黒部ダム方面へ抜けてます。 もう10回以上あるかな。 特に秋は最高ですね。 紅葉は涸沢カールを凌ぎますね。 そして、去年は別ルート(内蔵助カール)で、ハデにオチャメりました。
でも、また行きたい・・。 普通は死にかけたらもうコリゴリとなるのに、更に行きたい気持ちが募ります。
私はこの山には思い入れがある事もあって都合3度登っています。
親友が天に召されたのもこの山でした。
好きな山なのですが、おそらく剱に登ることはもうないでしょう。。