風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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私の訪ねた路線  第52回  銚子電気鉄道

『私の訪ねた路線』  第52回  銚子電気鉄道  〔千葉県〕
 

古き良き港町の駅のたたずまい
外川駅にて
 
《路線データ》
      営業区間と営業キロ                          運行本数     
     銚子~外川 6.4km               銚子~外川 35往復、仲ノ町~外川 1往復

 

犬吠駅発行の
外川行乗車硬券
 
  《路線史》
経営や路線運営に対して、多くの“いわく”がまとわりつく事で有名な路線である。 経営悪化の主因が、経営者による会社資金の横領と、それに伴う補助金の停止と金融機関による融資凍結とくるから本末転倒である。

この経営危機を乗り切る為、地元銚子市の名産品である醤油を使っての『ぬれ煎餅』の販売を手掛けるようになる。 駅構内は元より、通信販売でも大々的に取り扱っている。

煎餅の販売促進をすべく、会社案内のホームページに載せた“電車の修理費の為に煎餅を買って下さい”とのキャッチフレーズがインターネット界などで受け、某巨大掲示板などの呼びかけによって強力なサポート団体が立ち上げられ、販売促進を呼びかけ話題となった。 この収益で、電車の修理・検査代を賄ったとの事である。
 

ぬれ煎餅の代金で
修理できた車輌と
できなかった車輌の揃い踏み
外川駅にて

また2006年秋には、あまりの保線状況の悪さが国土交通省の保安監査で指摘され、『路線の安全運行を確保すべくの改修命令』が発せられた。 改善がなされないと運行の停止処分が科せられる事もあり、前述のサポート団体などが全国的に呼びかけて保線工事資金の寄付を募り、何とか2007年の正月運行を確保した・・というエピソードもある。

仲ノ町の車庫にはドイツ製の“時代もの”の凸型電気機関車が在籍するが、資金不足で長年公的検査を受けておらず、またブレーキなどが特殊で営業運行に就く事も不可能で、見学有料の展示車輌と化している。

沿線が抱く観光資源は、“本州で最も日の出が早い”とされる犬吠崎や、古くからの漁師町でTVドラマ『澪つくし』の舞台となった外川の港、そして“東洋のドーバー”と称される『屏風ヶ浦』やマリンスポーツの基点である『銚子マリーナ』など事欠かない。
 

 
  《沿線景勝地めぐり》
屏風ヶ浦や犬吠埼といった素晴らしい景勝地があるのに、鉄道だけ・・というのももったいない。
なので、今回は《沿線景勝地》をめぐる旅をしてみよう。
 
   行程表         駐車場・トイレ・山小屋情報
JR銚子駅よりバス利用(0:20)→千葉科学大学前バス停下車 
※ 千葉科学大学前の向側に銚子マリーナがあり、海水浴場を挟んで西方に屏風ヶ浦海岸が続く
屏風ヶ浦より徒歩(0:35)→外川駅・銚子電気鉄道利用(0:05)→犬吠駅
※ 犬吠駅より『犬吠埼』へは片道・徒歩10分、『地球の丸く見える丘展望館』へは片道・徒歩15分
犬吠駅(0:20)→JR銚子駅
 

屏風ヶ浦“大陸”の上は
まだ眠りから覚めぬ
まどろみの時だった
 

素晴らしい情景が
最も美しく感じる時
 
この地での“最高の情景”は、やはり夜明けの情景だろう。 夕日も捨て難いが、誰もおらずその情景を独り占めできる夜明け時こそが、最高の情景ではないだろうかと思う。 だが、この夜明け時をこの地で迎えるなら、夜が明けるまでの長い時を耐えねばならないのだ。 夜を明かす方法論に関しては各自の手法に任せるとするが、この苦労は“最高の情景”を目にする事で大いに癒される事だろう。 それでは、ワテが目にした夜明け時の“最高の情景”を御披露したい。
 

かぎろいに染まる空の下
蒼き穏やかな海に浮かぶ
“屏風ヶ浦”大陸

朝の“最も贅沢なひととき”を心ゆくまで堪能したなら、《屏風ヶ浦》がおりなす波と風の雄大な造形を間近に見てみよう。 《銚子マリーナ》の海水浴場を端まで伝うと、立ち屏風が連なるが如く《屏風ヶ浦》の関東ローム層が西に向かって連なっているのが見えるだろう。 その袂に立ち、じっくりとこの潮風がおりなす雄大な立て屏風を観察してみよう。
 

この上に海鳥が
巣を構えているのだろうか
 
眺めていると、西洋の城郭のように凛とそびえ立った断層の生い立ちや歴史、そしてどのような月日を経てきたのかが、おぼろげに解ってくるだろう。 草に帯のように連なる断層は幾何学な美を魅せるだけでなく、その歴史や“なせそのようになったのか”という知識をも目にした者に授けてくれる。 
 

潮と風が永い時を経て
創造した造形美

そして、その断層に営巣する海鳥達が、巣繕いや羽休めをすべくやってくる。 
これを望遠鏡などで覗くのも面白い。 海鳥達の生態がハイビジョンのような感覚で望めるのだ。 羽休めをしつつも警戒を怠らない厳しい表情、海鳥のしぐさや飛び立つ瞬間の勇ましさ、海鳥の生活の様子・・等々。 これらを目にすると、“野生を生きる”という事の雄大さを感じ取る事ができるのである。 
 

海鳥の飛来
鋭角的な動きに
野生を生き抜く本質を見た
 
動物園や鳥かごの中の鳥では、決して見ることができない『鳥』という生き物の本来の姿を目がそこにあるのだ。 これこそ、目にする感動であると思うのだ。 このように素晴らしい情景を魅せる《屏風ヶ浦》なのだが、一つだけ残念な事があった。 それは、潮風による関東ローム層の侵食を防ぐべく作られた防波堤である。 これは、この脆い地層を守る為には致し方ない事なのかもしれないが、自然の造形である《屏風ヶ浦》に人工物の防波堤はどうしても浮き立ってしまうのだ。
 

自然の情景を守る為に
そして人の暮らしと共存させる為に
 
極力岩を積み重ねる形でコンクリートが目立たぬように造ってはいるようだが、侵食という歴史を示してその美を魅せる《屏風ヶ浦》と、造成されたばかりで歴史が皆無の防波堤のミスマッチである。
だが、その脆い地質でできた陸の上には、既に動かし難い“人の生活”があるのだから止むを得ないのである。 
 

脆い陸の上には
守るべき“人の生活”があるのだから
 
これを否定すると、人間の生活を否定する事になるのだから。 自然を守る努力と方策、それに相反する人による利用の為の陸地の開拓。 決して交わる事のないベクトルを抱えた人の苦悩が、できるだけ自然造形の形を模写したこのような防波堤に表れているのだと思う。 

我々にできる事は、この相反するベクトルを如何にして両立させる手立てはないものかと模索する事である。 『考える葦である』人間が知恵を絞って、最良と思われる方法を取り決めてそれを遵守しようと啓蒙していく事は、一部の下らぬ人間が声高に叫ぶ“自然に対しての人の奢り”などではない。
 
むしろ、取り決めに従えぬからといって、“利便の為に自然を破壊してきた人類が『自然を守ろう』とは笑止”などと屁理屈を捏ねたり、“自然保護を唱えるのは人の奢り”と難癖をつける輩こそ、この場(自然環境)から立ち去るべきだと強く思う。

このような事を口にする輩は、そのほとんどが物事の本質を見極める事ができないようなので、何をいってもムダなのだと理解しつつ。 そして、このような事を口にする輩は、自らの欲求を満たしたいが為に、欲求と相反する取り決めを否定しているのだという事実も把握しつつ。 
それでは脱線した話を元に戻し、旅ガイドを再開しよう。

《屏風ヶ浦》で朝の情景を満喫したなら、近くにある犬吠崎へ行ってみよう。 《屏風ヶ浦》の広がる《銚子マリーナ》から、《犬吠崎》へは3kmちょっと。 歩けない距離ではない。 そして、《犬吠崎》や銚子の街をめぐってカタコト走る、『銚子電鉄』という名物電車も(個人的希望として!?)押えておきたい。 
『銚子電鉄』の終点である《外川駅》へは、2km位である。 このガイドでは、この《外川駅》まで歩いていく行程を組んでみたのだが。

《銚子マリーナ》から漁師町である《外川漁港》を眺めつつ歩いていくと、早朝からの港仕事を終えて長閑さを取り戻した漁師町の風情を感じ取れるだろう。 派手な大漁旗を掲げた漁船を見るのも面白いし、街中に漂う海の幸の香りに空腹を満たすのもいいだろう。 
 
また、長閑な漁師町を見渡すと、街の掲示版にはドサ周りっぽい劇団のポスターなどが掲げられたり、風情のある石畳みの坂や路傍の石などノスタルジックな趣もある。 このノスタルジックな雰囲気は、TVの朝のドラマの舞台にもなったそうである。 そうこうしていると2kmなどあっという間に過ぎ去り、港から丘へ一段上がった所にある《外川駅》に着く。 この《外川駅》の駅舎は、『古き良き時代の駅舎』のたたずまいを魅せてくれる。 時間が許せば、カタコト走るローカル電車を狙ってみたい。
 

レタス畑と無人駅
西海鹿島駅にて

このローカル電車に乗って、《外川駅》の次が《犬吠崎》の玄関口である《犬吠駅》である。
その距離は僅か900m。 歩いてでも十分な距離で、この距離で電車に乗るのはもったいないと思われるかもしれないが、話題作りの為にも乗車をお勧めしたいと思う。

僅か3分で次の駅《犬吠駅》に着く。 この《犬吠駅》は先程の《外川駅》と違って、観光アピールの為か西洋風の建物であった。 でも、言葉は悪いが『身分不相応』というか何と言うか、この路線の抱く雰囲気とは合わず浮いているように感じたのだか。 それでは、この駅から《犬吠崎》や『地球の丸く見える丘展望館』などに立ち寄ってみよう。

《犬吠駅》近辺のスポットである『地球の丸く見える丘展望館』と《犬吠崎》は正反対の方向に位置するので、より遠め(駅から徒歩15分程)の『地球の丸く見える丘展望館』から訪れる事にしよう。
この展望館はこの近辺の丘地である愛宕山(標高73.6m 三角点もあるらしい)の山頂に設けられ、西の屏風ヶ浦の全景や九十九里浜に始まり、太平洋の大海原を経て北の筑波山や鹿島灘までを一望できるとの事である。
 

岩礁に砕け散る
波濤を望む
 
先程の展望館とは逆に海の方へ向けて10分程歩くと、“本州で最も日の出が早い”と云われる《犬吠崎》だ。 この岬の灯台見学は有料だが、日本の灯台では珍しく灯台上まで開放しているのでお勧めのスポットとなろう。
 

青空に映える
白亜の犬吠崎灯台
 
また、併設の灯台資料館には、当該の《犬吠崎灯台》は元より日本海図上の主要灯台(写真付)の資料も展示しているので、海運に興味のある方には見逃せないスポットである。 それでは、灯台上からの展望をもって、この項目のガイドを終えたいと思う。
 

海と共に生きる
銚子の町を望む
 

大海原を逆光で
印象づけてみた
 

南側は港の観光都市の
装いを魅せて

   ※ 詳細は『魅惑の鉄道写真集』より『銚子電気鉄道』を御覧下さい。
     また犬吠崎への旅は、メインサイトより『屏風ヶ浦』と
     『冬の東北・房総 鉄道旅』の《7日目》をご覧下さい。
 
 
 
 
 
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No title * by オータ
このところ、知り合いがずっと記事を書いていたので懐かしさにひたりつつ読んでいたところです。 昭和49年の正月に家族旅行で行きました。ボロなデハ201が二両で走っていましたね。
屏風ヶ浦…この画像はよく出ていますが、そんな名前が付いていたのも思い出しました。 傑作!

No title * by 風来梨
オータ様、こんばんは。

普段は海の風景はあまり立ち寄らないのですが、この屏風ヶ浦は三陸海岸の北山崎、北長門の竜宮の潮吹きと並んでオススメの所です。

また銚子電気鉄道は、お騒がせを起こしてから、より強力なサポーターにより復活してますね。 そう考えると、お騒がせは経営にプラスに働いたのかも・・。

でも、地方私鉄のほとんどが、これからを乗り切る事が困難とされてます。 信じられない事に、神戸電鉄の三木線でさえ廃止諮問が成されたと言いますから・・。 鉄道事業って、事業としては割に合わないのかもしれませんね。

コメント






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No title

このところ、知り合いがずっと記事を書いていたので懐かしさにひたりつつ読んでいたところです。 昭和49年の正月に家族旅行で行きました。ボロなデハ201が二両で走っていましたね。
屏風ヶ浦…この画像はよく出ていますが、そんな名前が付いていたのも思い出しました。 傑作!
2011-09-18 * オータ [ 編集 ]

No title

オータ様、こんばんは。

普段は海の風景はあまり立ち寄らないのですが、この屏風ヶ浦は三陸海岸の北山崎、北長門の竜宮の潮吹きと並んでオススメの所です。

また銚子電気鉄道は、お騒がせを起こしてから、より強力なサポーターにより復活してますね。 そう考えると、お騒がせは経営にプラスに働いたのかも・・。

でも、地方私鉄のほとんどが、これからを乗り切る事が困難とされてます。 信じられない事に、神戸電鉄の三木線でさえ廃止諮問が成されたと言いますから・・。 鉄道事業って、事業としては割に合わないのかもしれませんね。
2011-09-18 * 風来梨 [ 編集 ]