風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰次選の山々 第4回  六甲山・摩耶山

名峰次選の山々 第4回 『193 六甲山・194 摩耶山』 兵庫県・六甲山系(瀬戸内海国立公園) 
六甲山 931m ・ 摩耶山 702m  コース難度 ★ 体力度 ★★★★★(全山縦走)
 

写真がないと寂しいので
六甲からの夜景でもどうぞ
 
さて、名峰次選の山々の第4回目は、山岳的な魅力はさて置いて、達成感と根性を要する別の視点で見た山を御紹介しよう。 それは、我が関西圏の山・六甲山である。 標高は最高峰の六甲山でも931mと1000mにも満たなく、頂上には巨大な人工物であるパラボナアンテナが立ち、車道が頂上点の100m手前まで通じていて、六甲山牧場という牧場ステーションが営業し、そしてロープウェイで難なく頂上に立てる山である。 即ち、山岳的な魅力は皆無といっていいだろう。
 
だが、この山を山裾を広げる海辺より、山塊が途切れる所まで延々と伝うとなると、また違った魅力が湧き出てくるのだ。 そう、困難な事を達成する達成感という魅力が・・。 それでは、この六甲全山を山裾である須磨海岸から、山塊の途切れる宝塚市の市街地まで、総延長54kmをイッキに縦走する『業』を行おう。
 
先程も述べたが如く、『山の縦走』ではなく『業』そのものであるから掲載写真はほとんどなく、そして山とは思えない所を黙々と歩き、最後は時間に追われて山を駆け下る事も有り得るのだ。
だから、途中断念となっても、一向に恥じる事はない。 むしろ、完遂する事の方が稀なのである。
そして、この『業』の完遂は、ある程度若い頃でないと無理ではないか・・という気もする。
 
実は、ワテもこれを完遂したのは高校のワンゲル部に所属していた時で、成人の時にもう一度チャレンジしたが、いずれも断念と相成っているのである。 それでは、その概要を記していこう。
 

赤線で引いた所を伝っていきます
 
    行程表              駐車場・トイレ・山小屋情報
須磨浦の海岸(3:30)→鵯越駅(0:30)→菊水山駅(1:40)→鍋蓋山(2:30)→摩耶山 
(3:00)→六甲山(2:00)→大谷乗越(0:50)→塩尾寺(0:40)→宝塚駅
 
このコースを歩くに当たって、“あること”を頭の中に入れておこう。 それは、このコースは“何の楽しみもない”という事、そしてこのコースを歩くということは、己の忍耐力を試す“行”であるという事である。 

つまり、“景色なんぞに目もくれずに、ひたすら歩け”という事なのである。 しかし、この“行”をやり遂げたなら、それによって得られる充実感と自信は、きっと今後の生活での“糧”となり“力”となるだろう。
さぁ、今から自らの忍耐力を試すべく、この長大な《六甲全山完全縦走》にチャレンジしてみよう。

行程を組むにあたってアプローチは鉄道利用としたが、できれば有志を募って車で《須磨浦公園》まで送ってもらうのが望ましいだろう。 それは、鉄道の始発に乗車したとしても、縦走開始時間は6時過ぎとなるだろう。 それでは、ゴールの《宝塚》に着く時刻が“真夜中”となる可能性が高い。 
これを避けるためにも、有志による“運転手”が欲しいのだ。 もちろん、須磨浦公園の登山口までは、ひたすら睡眠を取らしてもらおう。

・・さて、このルートを歩き始める前に、このコースの概要を数値で示してみよう。 歩行距離は約54km・所要時間は標準で15時間近く。 まず、これを聞いただけで半数の人は、気持ちが萎えて“断念”してしまうだろう。 そしてトドメは、縦走コースを行く上での“獲得標高差”は2000m強・・と、半端ではないのである。 

また、登山靴で長い長い住宅地の舗装道を歩かされる“神経戦”や、山上遊園地を行き交う車や行楽客を横目に歩き続ける“虚しさ”、日没時間に追われて駆け下ることを迫られる《塩尾寺》への急傾斜、これら全てが厳しい試練となるのだ。 これを踏まえた上で歩いていこう。 
もちろん、途中で断念しても一向に恥じることはない。 このコースを完破する・・という事は、それ程に難しいのである。 

さて、コースガイドにあたっては、これだけ長大なコースであることから、くどくど説明を連ねても長くなるだけなので、できる限り簡素にまとめたいと思う。 前半の《須磨浦公園》~《鵯越》の区間は、『須磨総合団地』と標高250~300mの山ともいえない高みを、交互に何度も越えていかねばならない。
すでに“神経戦”は始まっているのだ。 
 
中には、『須磨総合団地』のスーパーマーケットの前を歩かなければならないこともある。 
そして、次に困るのはルートを見つける事、すなわち“ルートファインディング(もどき!?)”の事である。 住宅街の舗装道を縫うように歩いていくので、所々の電柱に貼ってある『縦走路』のプラカードだけを頼りに右往左往せねばならない。 

こうなると、時間も心配になり心細くなってくる。 “断念”の第一の発生地点は、多分このあたりであろう・・。 “山”らしき高みへの登りはほとんどがコンクリートの階段で、革の登山靴では足回りがキツいかもしれない。 しかし、長い行程での足の保護を考えれば、丈夫な靴であればそれに越した事はない。 

前半部分での際立った足場の変化としては、途中で住宅地を歩くのを避けるべく風化花崗岩の砂礫の丘を伝う所位であろうか。 いや、普通なら、『登山道』と指定された所を歩いてスーパーマーケットの前を通ることの方が“異常”と考えるべきなのだろうが。 

長々と歩いていくと、日も高くなった頃にようやく《鵯越》の高台の上にたどり着く。 この《鵯越》は、言うまでもなく『源平合戦・一ノ谷の戦』における源義経ゆかりの地である。 舗装された今でも足がガクガクする程の急坂で、当時の偉業を偲ばせる。 下りきると、狭い谷の隙間に神戸電鉄・《鵯越駅》がある。 縦走を断念するならば、この《鵯越》がその第一地点となろう。 

ここから引き返すと“傷”もまだ浅く、まだ疲労もさほどなく戻る事ができる。 これより先は、進む前に完破できるかどうかを判断して歩いていく事が肝要となる。 そして、《鵯越駅》から次の《菊水山駅》まで歩くのだが、道が入りくんでいて判り辛いのである。 踏切を渡って、貯水池の縁をかすめていくのが正しい道のようである。 これを直進してしまうと、《鈴蘭台》の方へ抜けてしまって、最終的に縦走“断念”となってしまうだろう。

《菊水山駅》からは、幾分登山道らしくなった道を菊水山 459メートル ・鍋蓋山 487メートル と越えていく。 ここからは、《トゥエンティークロス》から《徳川道》を行くのもいいし、摩耶山 702メートル を経ていくのもいいだろう。 やや、摩耶山経由の方が時間がかかるが、途中で断念する場合には摩耶山頂にロープウェイが通じているので、“悩んでいる場合”はこちらを行こう。 

ここからは、“アゴを出す程”の急坂だ・・とか、英語訳で“すごく苦しい坂”という意味からだとか伝えられている《アゴニー坂》を登っていく。 しかし、実際は大したことはなく、これでヘバっているようでは到底、この全山縦走はおぼつかないことだろう。 この《アゴニー坂》を乗りきると、《六甲ドライブウェイ》と《山陽自然歩道》を交互に交えながら歩いていく。 途中の景色!?は、遊園地や《六甲山ホテル》・ゴルフのカントリークラブなど、とにかく目が落ち着くような眺めではない。

延々と歩いていくと、巨大なパラボラアンテナが2つ見えてくるだろう。 このパラボラアンテナの建っている所が、六甲連山最高峰・六甲山 931メートル の頂上である。 最高峰の頂上までも車で行く事のできるこの山を自らの足で登ることに“喜び”があるのかどうか、ワテには解からない。 
でも、根性は随分と必要な事は確かである。

頂上から少し車道を伝ってから、『東六甲縦走路』に入っていく。 後は、緩い下り坂を“走って”いこう。 のんびりしすぎると、その日の内に帰れなくなるかもしれない。 とにかく、走っていこう。 
今に思えば、これはトライアスロンよりキツいかもしれないのである。

《塩尾寺》への急坂を駆け下る頃には、たぶん陽も落ちてどっぷりと暗くなっているだろう。 
文頭でこそ言いそびれたが、カンテラは絶対に必要である。 また、真剣にこの完全縦走を目指すならば、これが必要なこと位はおのずとから解かる事である。

・・《宝塚》の街の灯火が見える頃には健脚の人でも8時過ぎ、普通のペースで9時過ぎ、下手すれば11時前後という事になろう。 体も精神もクタクタとなって、ヘロヘロの千鳥足で帰りのキップを握りしめ、駅そばで汁気の多いうどんをかっ込む時、“やり遂げた!”“終わったんだ!”という満足感で体が熱く火照ってくる事だろう。 今回は、この思いを遂げる為だけに頑張ったのだ。 存分に、この湧き上がる充足感に身を委ねよう。
 
  ※ 詳細はメインサイトより『六甲全山完全縦走』をどうぞ
 
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