2011-09-03 (Sat)✎
名峰次選の山々 第31回 『110 オプタテシケ山』 その1 〔双子池へ〕 北海道
十勝山系(大雪山国立公園) 2013m コース難度 ★★★ 体力度 ★★★★
トムラウシから望む
オプタテシケ山と大地のうねり
行程表 駐車場・山小屋・トイレ情報
《1日目》 層雲峡温泉よりタクシー(1:00)→沼ノ原登山口(1:40)→沼ノ原・大沼
《1日目》 層雲峡温泉よりタクシー(1:00)→沼ノ原登山口(1:40)→沼ノ原・大沼
(3:00)→五色ヶ原(0:20)→五色岳(1:10)→化雲岳分岐
(0:40)→ヒサゴ沼避難小屋
《2日目》 ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
《2日目》 ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
(1:25)→北沼(0:30)→トムラウシ山(0:25)→トムラウシ・南沼
《3日目》 トムラウシ・南沼(2:00)→黄金ヶ原(0:30)→三川台(1:30)→ツリガネ山
《3日目》 トムラウシ・南沼(2:00)→黄金ヶ原(0:30)→三川台(1:30)→ツリガネ山
(1:30)→コスマヌプリ(1:00)→双子池
《4日目》 双子池(2:00)→オプタテシケ山(2:00)→美瑛富士避難小屋
《4日目》 双子池(2:00)→オプタテシケ山(2:00)→美瑛富士避難小屋
(0:30)→美瑛岳分岐(2:30)→十勝岳避難小屋
《5日目》 十勝岳避難小屋(0:50)→望岳台よりタクシー利用(0:20)→十勝岳温泉よりバス
《5日目》 十勝岳避難小屋(0:50)→望岳台よりタクシー利用(0:20)→十勝岳温泉よりバス
(0:35)→JR上富良野駅
トムラウシ~十勝連峰縦走路 行程図
《3日目》 黄金ヶ原を経て双子沼へ
大雪・十勝連峰縦走路を十勝連峰へ向けて歩いていこう。 但し、この縦走路は随分と長いので2日行程となる。 今日は、スッキリとした美しい三角錐を魅せる、オプタテシケ山の麓にあるキャンプ地・《双子池》までの行程となる。 《双子池》までの歩行距離は12kmとかなりの長丁場なので、早朝出発を心掛けたい。
朝、晴れていたなら、オブタテシケ山がスラリと美しき三角錐を示しているのが望まれる。
そして、オプタテシケ山との間にある平原が、白い光を放っているのも目に入ってくる。
朝、晴れていたなら、オブタテシケ山がスラリと美しき三角錐を示しているのが望まれる。
そして、オプタテシケ山との間にある平原が、白い光を放っているのも目に入ってくる。
何と魅惑的な光景だろう。 早く、その光が何なのか確かめたい。
その思いを抱いて、《トムラウシ・南沼》のキャンプ場を出発する。
《トムラウシ・南沼》の庭園状のハイマツを越えると、土砂崩れのような土崖を急下降する。
約150mほど下って、お花畑が両端を挟む小道を進んでいく。 ふと振り返ると、トムラウシ山が二段の丘を従えてそびえ立っている。 まるで、城壁に囲まれた天守閣のようだ。 ここから見ると、トムラウシ山のトロイデ型火山・円頂丘の特徴がよくわかる。 お花畑が両端を飾る小道を歩いていくと、やがて緩やかな起伏を繰り返す砂礫帯に変わっていく。
《トムラウシ・南沼》の庭園状のハイマツを越えると、土砂崩れのような土崖を急下降する。
約150mほど下って、お花畑が両端を挟む小道を進んでいく。 ふと振り返ると、トムラウシ山が二段の丘を従えてそびえ立っている。 まるで、城壁に囲まれた天守閣のようだ。 ここから見ると、トムラウシ山のトロイデ型火山・円頂丘の特徴がよくわかる。 お花畑が両端を飾る小道を歩いていくと、やがて緩やかな起伏を繰り返す砂礫帯に変わっていく。
タカネナデシコ
花も、エゾノハクサンイチゲやチシマフウロの群落が途切れ、チシマギキョウ・タカネナデシコ・ミヤマリンドウなど、砂礫地に咲く花々が見られるようになる。 しかし、あの“光放つ大地”は、この緩やかな砂礫の丘に隠されて見えない。 だが、隠されると、より見たくなるのが人情だ。 こんな緩やかな小道ならカメラ片手にのんびりと歩くのだが、“光放つ大地”が頭から離れない。 それが何なのか、一刻も早く確かめたい。 その思いを更に強めて先を急ぐ。
道はハイマツのブッシュを乗り越えて、この丘の頂につながっている。 このハイマツ帯を乗り越えて、丘の頂に立とう。 すると、“白い光を放つ大地”の正体が明らかになる。 下に広がる大平原一面、エゾノハクサンイチゲの花・花・花・・。 言葉も失う光景がそこにあった。 あの光りは、エゾノハクサンイチゲの白い花が一つ一つ合わさったものであったのだ。
道はハイマツのブッシュを乗り越えて、この丘の頂につながっている。 このハイマツ帯を乗り越えて、丘の頂に立とう。 すると、“白い光を放つ大地”の正体が明らかになる。 下に広がる大平原一面、エゾノハクサンイチゲの花・花・花・・。 言葉も失う光景がそこにあった。 あの光りは、エゾノハクサンイチゲの白い花が一つ一つ合わさったものであったのだ。
大地の果てを白く輝かせていたもの
それは大地を埋め尽くす
それは大地を埋め尽くす
エゾノハクサンイチゲであった
これは、《五色ヶ原》を凌ぐ“花の楽園”である。 あまりにも凄すぎて、写真を撮るのもおごがましいような気がした。 後の言い訳になるかもしれないが、この偉大な“花の楽園”をカメラで表現することは不可能ではないだろうか。
そして、この“楽園”のすざましさは、エゾノハクサンイチゲ以外の花がほとんど見られない事だ。
そして、この“楽園”のすざましさは、エゾノハクサンイチゲ以外の花がほとんど見られない事だ。
だからこそ、大地から光放つ事ができるのだろう。 このため息さえ出る“楽園”の中に、一筋つけられた道を歩いていく。
道は左手の崖の方向に延びていて、やがて“楽園”を離れ、崖に沿うようになる。 この崖の下はユウトムラウシ川源流のカール地形となっていて、カールの底は森や雪渓、沼や小川など、“森”のイメージをそのままの風景が広がる。 そして、オプタテシケ山の三角錐が、カール端に裾野を延ばしているのが望まれる。
道は左手の崖の方向に延びていて、やがて“楽園”を離れ、崖に沿うようになる。 この崖の下はユウトムラウシ川源流のカール地形となっていて、カールの底は森や雪渓、沼や小川など、“森”のイメージをそのままの風景が広がる。 そして、オプタテシケ山の三角錐が、カール端に裾野を延ばしているのが望まれる。
黄金ヶ原より望む
ユウトムラウシ沢のカール地形
このカール地形を半周巻くように歩いていくと、カール壁の端にある《三川台》にたどり着く。
ここはかつて、《硫黄沼》を経由して《白金温泉》へ下るコースへの分岐だった所だが、今は廃道となって“通行止”と書かれたバリケードで進入を防いでいる。 何でも、途中の美瑛川に架かる橋が崩落したとの事である。 ここからは、カール壁の縁を急下降していく。
この急下降を下りきると、カール地形の底だ。 道はカール底の右側にある土手の上についていて、カール底の景色を眺めながら歩くようになる。 カール全体に広がる“森”が視野に広がってきて歩くには楽しい道であるが、所々にヒグマの糞が落ちていたり、獣の足跡が鮮明に残っていたり、すぐ目の前をキツネらしき獣が通り過ぎたりと、なかなかにワイルドな状況も味わえる。
原始の香り漂う
ユウトムラウシ沢源流カール
やがて道は、笹が頭まで覆い隠す“笹のトンネル”地帯を通るようになる。 この間に方向を右に変えて、カール地形と離れていく。 この“笹のトンネル”を通り抜けると視界がぐっと広がり、十勝まで続く縦走路が稜線上に続いているのが見渡せる。 これから、この見渡した稜線上の起伏を忠実に登降していくことになる。 まずは、ツリガネ山の急登だ。
高低差は大した事はないが、“てっぺん”までの距離が短い、いわゆる直登なのである。
また、滑りやすい粘土質の道で、最後のひと登りは鎖がついていて、この鎖やハイマツの根をつかんでのよじ登りとなる。 この登りを喘ぎながら乗りきってもそこは頂上ではなく、いささかガッカリする。
ツリガネ山の本当の頂はコース外にある岩崖で、どうやら登頂は無理みたいである。
この頂上“もどき”を越えると、ハイマツが両脇を固める限りなく緩やかな下り坂となる。
この頂上“もどき”を越えると、ハイマツが両脇を固める限りなく緩やかな下り坂となる。
登りのキツさと下りの単調さで、思った以上に疲れが溜まっていく。 これを下りきると、今度は無名峰の200mに及ぶ急登となる。 この急登は先程のハイマツ帯の中と違って、太陽が照りつける草地の中でとなる。
これは暑い。 しかも、ボロボロと崩れる黒土の崩壊地を踏ん張りながら登るので、汗をたっぷりと搾り取られる事となろう。 そして辛い登りでもお花畑があれば心が紛れるのだが、花はとても登れぬ土砂の崩壊地の上に咲いていて見ることも叶わない。 唯一の救いは振り向けば、先程通ったカール地形とトムラウシ山が見渡せる事だ。
汗をかきかきこの登りを乗りきると、またもやだらだらと続く潅木帯の緩やかな下りである。
どうやらこの辺りの地形は、両側の侵食差が激しく異なる非対称の山なみとなっているようだ。
そして、大雪側から歩くのはいわゆる“逆ルート”で、体力的に不利のようである。
そういえば他の山岳ガイドでは、こぞって十勝側を出発点にしているみたいだ。
下りきると予想通り、またコスマヌプリへの200mの急登となる。 このコースの“逆”は、緩やかな坂を下りきる事に対する“登り返し”が、かなりキツいのである。 この登りも御多分にもれず草地の大登りで、このようなのが3発も続くと、さすがに疲れが溜まるのである。
汗をかきかきこの登りを乗りきると、またもやだらだらと続く潅木帯の緩やかな下りである。
どうやらこの辺りの地形は、両側の侵食差が激しく異なる非対称の山なみとなっているようだ。
そして、大雪側から歩くのはいわゆる“逆ルート”で、体力的に不利のようである。
そういえば他の山岳ガイドでは、こぞって十勝側を出発点にしているみたいだ。
下りきると予想通り、またコスマヌプリへの200mの急登となる。 このコースの“逆”は、緩やかな坂を下りきる事に対する“登り返し”が、かなりキツいのである。 この登りも御多分にもれず草地の大登りで、このようなのが3発も続くと、さすがに疲れが溜まるのである。
コスマヌプリより眺める
トムラウシ山
そして、この山もツリガネ山と同様に頂上を通らないので、苦労した割に“実”の少ない登山道である事を実感する。 登りきったコスマヌプリの“てっぺん”は眺めは申し分ないものの、目指す《双子池》はまだ見えず、その方向にはただっ広い草原が地平線に向ってずっと広がっているだけである。
この眺めも、心理的な疲れを増す一因となろう。 見た通り、もはや坂ともいえぬ緩やかな草原を下っていく。 心理的な疲れも溜まって、何でもない道であってもかなり足が重たい事であろう。
この眺めも、心理的な疲れを増す一因となろう。 見た通り、もはや坂ともいえぬ緩やかな草原を下っていく。 心理的な疲れも溜まって、何でもない道であってもかなり足が重たい事であろう。
そしてこの草原は、地平線に立つ大岩まで延々と続く事となる。 強い日照りの中、地平線に立つ大岩を目指して、遮るものが何もない草原を歩き続ける。 歩き続けて、ようやくにこの大岩にたどり着いたなら、あまりの暑さにきっとヘタリ込む事であろう。 ワテもヘタリ込んだのだから。
この付近で、ようやく下に《双子池》の二つの池がある草原を見渡せるようになる。 だが、“もう近い”と思っても、意に反してまだまだ遠くに離れている事がよくある。 ここもそれが当てはまり、笹や潅木帯の長い長いトンネルを下り続け、着かぬ“苛立ち”が“諦め”に変わる頃、ようやく《双子池》の湿地帯に下り着く。
この付近で、ようやく下に《双子池》の二つの池がある草原を見渡せるようになる。 だが、“もう近い”と思っても、意に反してまだまだ遠くに離れている事がよくある。 ここもそれが当てはまり、笹や潅木帯の長い長いトンネルを下り続け、着かぬ“苛立ち”が“諦め”に変わる頃、ようやく《双子池》の湿地帯に下り着く。
大雪の思い出・・
双子池付近の湿地帯
しかし、下り着いた所は泥炭層のぬかるみ地帯で、到底テントなど張れそうにない。 やや不安が頭を過るが、とにかく前に進んでみよう。 もはや、壁となって立ちはばかるオプタテシケ山の裾野まで登り返してみると、沢が流れ、お花畑が咲く段々畑のようなキャンプ地に出る。
ここが、《双子池キャンプ指定地》のようである。 しかし、『キャンプ指定地』とはいうものの、施設は一切なく、山奥のまた山奥で泊る雰囲気を味わえるだろう。 明日は、眼前にそびえたつオプタテシケ山に向って、600mの直登である。 明日もキツい行程なので、充分に休息を取ろう。
文字数5000文字をオーバーしてしまいましたので、続き《4日目》は
「名峰次選 第32回 オプタテシケ山 その2」にて記載します。
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No title * by 風来梨
tmisatojp様、こんばんは。
いつも、登山の時は単独ですね。 私のペースブローカー振りは半端でないので、一緒に登ると他の人もバテちゃうかもです。
それにしんどくなれば、適当にテントを張ってバタンキューも有り得るので、規則正しく登山する人からは敬遠されています。
いつも、登山の時は単独ですね。 私のペースブローカー振りは半端でないので、一緒に登ると他の人もバテちゃうかもです。
それにしんどくなれば、適当にテントを張ってバタンキューも有り得るので、規則正しく登山する人からは敬遠されています。
ハクサンイチゲの花が一面に観られる・・これ独り占めするなんて贅沢の限りですね。
自分の目では見れないでしょうが、こうして魅せていただけて幸せなご縁に感謝です・・ポチ☆