風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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よも”ヤマ”話  第135話  羊蹄山

よも”ヤマ”話  第135話  羊蹄山 〔北海道〕 '96・7
羊蹄山 1898m【名峰百選 54峰目】

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『蝦夷富士』と呼ばれる
美しき容姿の山の頂へ

  羊蹄山 ようていざん (支笏洞爺国立公園)
道南で“ピカ一”の名所といえば、この羊蹄山 1898メートル であろう。 その姿の美しさから、『蝦夷富士』とも呼ばれているコニーデ型の火山である。 またこの山は、北海道では珍しい独立主峰で、山頂からの展望は最高。 

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初夏の山の花は
薄く淡い色の花から咲き始める

また、山のもう一つの魅力・高山植物も垂直分布を成して咲いており、頂上付近は天然記念物に指定される程豊富である。



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羊蹄山・比羅夫ルート 詳細図

   行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 倶知安町市街より車(0:20)→羊蹄山・半月湖登山口(3:40)→九合目・お花畑
     (0:15)→八合目避難小屋
《2日目》 八合目避難小屋(0:45)→羊蹄山・最高峰(喜茂別ピーク)(0:25)→九合目・お花畑
     (3:00)→羊蹄山・半月湖登山口より車(0:20)→倶知安町市街

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羊蹄山のシンボルである
巨大な爆裂火口・父釜
※ ウィキペディア画像を拝借

  《1日目》 バテて避難小屋でバタンキュー
登山口の半月湖は、僅か標高350m(今は登山口の移動で標高400m位と、以前よりマシになってる)。 ここから、羊蹄山頂上までの標高差1550mを登っていかねばならない。 山岳ガイドでは、星マーク一つの「手軽な山」として紹介されているが、実際に登ってみると結構な急登が延々と続いて。かなりキツいのである。 だが、登山者が多い事もあり、登山道はしっかりと整備されている。 

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溶岩ドームにより半月状に仕切られた
半月湖畔が羊蹄山の比羅夫登山口だ

半月湖登山口にある立て看板(各合目とその標高が記してある)を見て、“ギョッ”として出発。
なぜ『奇跡の体力』保持の最盛期なのに“ギョッ”としたのかというと、この年の放浪山旅の最初のヤマであり、また放浪山旅に出る前の都会潜伏期!?はロクな運動をせずにメタボッティが悪化して体重80㎏まで「oneパット」という状況になっていたからである。 いつも、ヤマに登っていくうちに痩せて身体を作っていたからね。

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登りの道中はバテた記憶しかないのだが
こういう「虫と花」を撮ってたのね

だから、この羊蹄山の記憶はバテた事以外に、ほとんど山行の記憶が残っていないのである。 
登山口からの登山道のしばらくは、エゾマツ林に覆われた平坦な広い道を歩いていく。 しかし、この平坦な道も20分ほどで終わり、やがて土砂利の急登へと変わる。 その変わり目が『一合半』と書かれた石ころである。 九合目避難小屋までの道中で、確かな記憶があるのはこの『一合半』とかかれた石ころだけである。

ここからは、ひたすらの急登だ。 合目の道標が現れる事だけが心の拠り所の辛い登りが延々と続く。
道中、景色でも見えたなら少しは気がまぎれるのであろうが、あいにくこの日はガスに巻かれて何も見えず、黙々と登っていかねばならない。 だからヘバったよ。 いい加減ヘバった頃、《8合目道標》を過ぎる。

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森林限界を越えると
視界が開けて花も現れてくる

これを見て、あと標高差にして100m登りつめると、森林が途切れて視界がパッと開けてくる。
ここから火山砂礫帯となり、待望のお花畑が広がってくる。 ワテの登った時はまだ開花時期には少し早く、チョコチョコと咲いていただけであった。

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ハート型の花びらの黄色い花
キジムシロ

ここから山頂へ直接行くコースもあるが、バテて寝転がりたかったのでとりあえず九合目避難小屋に向かう。 

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ワテの登った時は
まだ初夏で6月下旬の花
キバナシャクナゲが咲いていた

避難小屋までは外輪山の裾を巻くように道がつけられ、その脇にはチシマフウロ・キバナシャクナゲ・ウコンウツギなどの花が咲いていた。 この花の小道を15分程歩くと、羊蹄山九合目避難小屋に着く。

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ワテが泊った思い出の小屋は
解体された旧避難小屋
※ 倶知安町の羊蹄山紹介サイトより

ここは夏のシーズンのみ管理人が入り、寝袋も借りる事ができるので、ビバーク小屋としては最適だ。
但し、食事の提供はない。 水場も雪渓の融雪水が豊富にあり、8月中旬位までは大丈夫であろう。
なお、2013年に旧小屋は解体され、新しい避難小屋に建て替えられている。

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現在は最新の設備を備えた
新しい小屋に建替えられている
※ 倶知安町の羊蹄山紹介サイトより

その避難小屋に着いたのは10時過ぎ・・。 バテてもメタボっても『奇跡の体力』のホルダーだったこの時は、標準コースタイムの4時間半を15分切っていたよ。 たぶん、今なら6時間くらいかかってるだろうね。

この時は7月の初めで小屋には管理人がいたが、登ってくる者も宿泊者もワテ一人で、避難小屋の管理人も小屋の宿泊料だけ取って、後はワテをガン無視していたよ。 だからシュラフも借りれないまま、小屋の床に寝転がる。 寝転がりながら小屋内を見渡すと毛布がたたんであって、小屋の管理人に聞くとコックリと頷いたので毛布を被って寝に入る。

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この日の頂上は
1日ガスに巻かれていた

起きたら15時を過ぎていた。 予定では日帰りだったけど、天気もドン曇りだった事だし、なにより山頂に行ってないので、今日はこの避難小屋に泊る事にする。 なので、今日と明日の行動水を雪渓の融雪水の水場へ汲みに行く。

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夕方になるとヤマが
夕日に染まるのが望めた

持ってきた食糧は、日帰り予定だったので昼飯用の菓子パンのみだったが、昼間に寝て食わなかったので夜飯に回せたよ。 何もする事もなく管理人にもガン無視された状態だったので、まだ日も沈まない頃から寝に入る。 でも、若さってすごいね。 昼間にあれだけ寝たのに、夜もキッチリ爆睡できたよ。
寝るのも体力いるからね。 歳食った今は、あまり眠れずに常に寝不足状態だよ。



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避難小屋を背後に登っていく

  《2日目》 羊蹄山山頂をめぐって下山
あれだけ寝たので、4時には目が覚める。 今日は昨日バテて果たせなかった山頂にアタックしよう。
空が明るくなった5時に出発する。 小屋から外輪山に直接登り、外輪山を半周して頂上に至るコースと、9合目・お花畑まで戻って《子釜》や《母釜》を見ながら山頂に至るコースとある。 ここは、楽な後者を取る。

昨日バテて正解!?
とっておきの羊蹄山の御来光
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昨日日帰りだったら
魅れなかった情景

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それは感動の御来光シーン

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昨日視界を閉ざしたドン曇りの雲も
今日は湧き立つ雲海の波となり

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空を描く雲は
天使の羽根のようだった
極上の御来光シーン

上る途中で、御来光を望みつつ登っていく。 結果から言うと昨日ダレて避難小屋に止ったのは大正解だったね。 御来光が魅れたのだし。 小屋からお花畑の小道を望むと途中に山頂へ短絡する道があり、登っていくと案外あっさりと外輪山の稜線に出る。

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三角点はあるものの登山者に頂上とは
認められていない《京極ピーク》
※ ウィキペディア画像を拝借

稜線上の砂礫混じりの砂利道を約15分で、三角点山頂の《京極ピーク》に着く。 ここの標高は1893メートル。 昭和時代の山頂である。 なお。本当の頂上はここから150mほど進むと岩の塊があり、この岩塊が《喜茂別ピーク》と呼ばれる最高点である。 標高1898メートルと三角点峰より5m高い。 

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登山者の誰もが羊蹄山の頂上と認める
最高点の《喜茂別ピーク》
※ ウィキペディア画像を拝借

頂上の上空の天気はまぁまぁだったものの、《父釜》はガスが溜まって全く見えず、下界の風景も昨日のドン曇りの雲が残っていて、視界は全くゼロだったよ。 下りは、往路を忠実にたどっていく。

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昨日のドン曇りの雲が残っていて
下界はほぼ見えなかったよ

羊蹄山は山頂部以外はあまり見るべき所がなく、タッタカ下ると10時過ぎには下れたよ。
この頃も今と同じく下りが上りより遅かったのだが、『奇跡の体力』のホルダー時は上りがケタ外れに早く、常にコースタイムより1時間以上早かったから、より遅い下りもコースタイムと同じ位だったしィ。

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朝露に濡れた花が
朝の光にキラキラと輝いて

さて、ここで羊蹄山の山名について一言。 『日本百名山』で有名な深田久弥は、この山の事を『後方羊蹄山 (しりべしやま) 』と称している。 何でも、「『羊蹄山』だけでは“し山”としか称せないので、是非とも『後方』をつけて欲しい」との事である。 しかし、ワテはこの説に疑問を感じている。
第一に、漢字2文字で“し”としか読まない事は日本語として『禁則』であるし、また“しりべし”という地名は北海道に存在し、漢字では『後志』と表すのである。 

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山は自然が創り大観であり
自然の抱く魅力を語るべきで
ある史実の一部で語るべきではない

日本の山で日本語の禁則を犯し、なおかつ、そこにある地名にも逆らう事は容認できない。 
山の名称とは、その土地の風土がつけたものである。 もちろん、地名も同じである。 ある一つの歴史的出来事(アイヌ語で『羊蹄』=“し”の後にある山の事)を取り上げて、今までに培ってきた風土を無視する事は容認できないのである。

・・人が山の歴史を作ったのではなく、人が勝手に山に歴史をなすりつけているだけなのだ。 
こういう理由からしても、歴史的価値を名山の選出基準にしている深田久弥の『日本百名山』にワテは賛同できない。 他にも、賛同しかねる事柄は多々あるが。 長々と文を連ねたが、ワテはやはり、この山を『羊蹄山 (ようていざん)』と呼んでいる。 これが、地名や風土に逆らわぬ呼び方だと思うからである。


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No Subject * by 鳳山
羊蹄山って名前だけは知っていたんですが、こういう山だったんですね。勉強になりました。

Re: No Subject * by  風来梨
鳳山さん、こんばんは。

羊蹄山は『蝦夷富士』と呼ばれる美しい三角錐を示した独立孤嶺で、頂上部に富士山のような噴火口の釜()大釜があるなど、北海道・後志地方の「心の山」的な存在な山ですね。

コメント






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No Subject

羊蹄山って名前だけは知っていたんですが、こういう山だったんですね。勉強になりました。
2021-03-06 * 鳳山 [ 編集 ]

Re: No Subject

鳳山さん、こんばんは。

羊蹄山は『蝦夷富士』と呼ばれる美しい三角錐を示した独立孤嶺で、頂上部に富士山のような噴火口の釜()大釜があるなど、北海道・後志地方の「心の山」的な存在な山ですね。
2021-03-07 *  風来梨 [ 編集 ]