2021-01-17 (Sun)✎
よも”ヤマ”話 第131話 甲斐駒・鳳凰三山縦走 その1(甲斐駒ヶ岳)〔山梨県・長野県〕'95・8
駒津峰 2752m、甲斐駒ヶ岳 2967m【名峰百選 52峰目】、甲斐駒・摩利支天 2840m
凛々しい三角錐を示す甲斐駒ヶ岳は
真に甲斐国の守護神となる峰だ
甲斐駒ヶ岳・鳳凰三山 かいこまがたけ・ほうおうさんざん (南アルプス国立公園)
南アルプスを語る上で忘れてはならないのが、甲斐駒ヶ岳と鳳凰三山であろう。 南アルプスの山は緑豊かで花多き峰は多いものの、荒々しい稜線美や岩のオブジェを魅せる山はこの山域をおいて他にない。
また甲斐駒ヶ岳 2967メートル は、その姿が勇猛な武田軍団を彷彿させ、古くから甲斐国の“守護神”として崇められてきた山だ。
鳳凰三山は北岳・間ノ岳・農鳥岳からなる白峰三山の前衛をつかさどる山域で、山岳信仰の深い事でも知られている。 それぞれの峰に地蔵岳 2764メートル ・観音岳 2840メートル ・薬師岳 2780メートル と、念仏にちなんだ名がつけられている事からも解かるだろう。
またこの山域は、南アルプスの展望台としても素晴らしい。 優雅な姿の“美人”・仙丈ヶ岳や、白竜が天に昇るかの如く光る北岳の大樺沢雪渓、鋸岳のささくれ立った岩峰群、地蔵岳のオベリスク(地蔵仏)と、尽きる事なく山岳美を魅せてくれる。
甲斐駒・鳳凰三山縦走ルート《1~3日目》行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR甲府駅よりバス(2:05)→広河原よりバス(0:25)→北沢峠
《2日目》 北沢峠(1:10)→仙水峠(1:20)→駒津峰(1:30)→甲斐駒ヶ岳
(0:40)→摩利支天峰(0:50)→駒津峰(1:05)→仙水峠(1:00)→北沢峠
《3日目》 北沢峠(2:00)→栗沢山(1:25)→アサヨ峰(2:20)→早川尾根小屋
《4日目》 早川尾根小屋(2:30)→高嶺(0:45)→赤抜沢ノ頭・地蔵岳まで往復1時間
(1:15)→観音岳(0:40)→薬師岳(1:15)→南御室小屋
《5日目》 南御室小屋(0:40)→苺平(1:15)→杖立峠(1:20)→夜叉神峠
(0:45)→夜叉神峠よりバス(1:15)→JR甲府駅
仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳登山の
基点となる北沢峠へ
※ ウィキペディア画像を拝借
《1日目》 北沢峠へ
今日はアプローチのみの行程だ。 従って、前夜までに北沢峠までアプローチしておこう。
北沢峠の南アルプス林道は周知の通りマイカー進入禁止で、長野県側なら伊那市長谷の戸台(現在は《仙流荘》前)より『伊那市営・南アルプス林道バス』、山梨県側なら芦安温泉の駐車場から広河原行のマイカー代行バスで広河原に出て、広河原より『南アメプス市営・南アルプス林道バス』に乗り継いで北沢峠までやってくる。
この記事の当時の’95年は芦安温泉~広河原のマイカー規制はまだ導入されておらず、マイカーで広河原までは入れた。 広河原は河原を埋め立てた広大な駐車場があったが、広河原一帯の治水事業と増え続ける登山者マイカーによる環境への影響から、2001年頃よりマイカー規制が行われている。
山梨・長野の県境となる北沢峠は
林道バスの乗り継ぎ地点ともなる
※ 南アルプス林道バスネットより
ちなみにワテは、前述の通り広河原までのマイカー規制が行われる前だったので、広河原へはマイカーで乗り付けて、広河原から林道バスに乗って北沢峠までアプローチしている。
古より甲斐の守護神
として崇められた峰へ
《2日目》 北沢峠から甲斐駒ヶ岳を往復
今日は、全国に散らばる『駒ヶ岳』の中で最も標高が高く、最も誇らしい山体を成している甲斐駒ヶ岳に登ってみよう。 甲斐駒ヶ岳へは一般ルートが3つあるが、最も登頂が楽な『仙水峠ルート』を使っていこう。 さて、出発だ。 今日も《北沢峠》に泊るのだからテントはデポっておいて、余計な荷物はテントに全てしまい込んでいこう。 持ち物は水筒・カメラ・雨合羽・タオル・カンテラ、そして食料はパンでもあれば十分だ。
テント場の先で栗沢山から鳳凰三山のコースを分けて、《北沢》の流れに沿って歩いていく。
やがて、砂防ダムを越えていくようになる。 ここから桟橋で沢を数回渡るが、沢沿いの道は概ね左岸についている。 台風などで崩れた沢岸をヘツったり、荒れた沢に転がる岩をロープ片手に高巻きしたり・・と、目まぐるしくバリエーションを連ねると、右岸へ架かる桟橋で沢を渡って樹林帯の中を急登していく。
美味い水のある小屋・仙水小屋
※ 山小屋ネットより
登っていくと、程なく《仙水小屋》の建物が見えてくるだろう。 まだ、疲れている程でもないが、「ある事」の為に休憩しよう。 この「ある事」とは、《仙水小屋》前に流れている水はとても冷たく美味いからである。 持ってきた水を捨てて汲みなおしても、十分“元”は取れるだろう。
この小屋を出ると樹林帯の中に深く分け入り、ほとんど傾斜のない道を歩いていく。 30~40分歩いていくと右側から徐々に樹林が薄れていき、これに変わって黒光りした溶岩の積み重なったガラ場が迫ってくる。 やがて、道はこれに乗り上げて、このガラ場をトラバース状に伝っていく。 ある程度伝って、ガラ場の間からハイマツが伸び出すと《仙水峠》は近い。
仙水峠より望む
朝の甲斐駒・摩利支天峰
《仙水峠》は正面が行き止まり、道は右も左も急傾斜で両側の山へ突き上げている。 この《仙水峠》ほど、如実に“峠”を示す地形はそうはないだろう。 この道を左へ進むと甲斐駒の前衛峰・駒津峰への登路だ。 なお、右へ進む道は鳳凰三山への縦走路である。 峠からは、甲斐駒の次峰・摩利支天峰が威風堂々とそびえ立っている。 これを見て、気合を入れて進んでいく。
登路に取り付くと、駒津峰の樹林帯をジグザグと縫うように登っていく。 1時間程登ると辺りをハイマツが囲み出し、道も甲斐駒の山系らしい白い砂岩の登りとなる。 この登りでどれ位登ったかを測る目安としては、背後にそびえる栗沢山が最適であろう。 なぜなら、栗沢山の標高は2714mと、駒津峰と40m程しか変わらないからである。
駒津峰の手前まで登ると
白竜の如く突き上げる大樺沢雪渓
を魅せる北岳がそびえ立ってくる
目線が栗沢山の頂上付近を指すようになったなら、「目指す駒津峰の頂上は近い」という事だ。
やがて、白亜の大峰・甲斐駒の本峰と重厚なる北岳の山体が見えはじめて、それを頼りにつめていくと駒津峰 2752メートル の頂上だ。
駒津峰では豊かな山岳風景が広がる
駒津峰頂上からは白亜の菱をもたげる甲斐駒・本峰、深い緑の重厚な山塊・北岳、《薮沢カール》を大きく広げて優雅にたたずむ仙丈ヶ岳、振り返れば栗沢山からアサヨ峰・鳳凰三山と続く山なみと、稜線上に角のように突き出すオベリスクが見事だ。 素晴らしい山の景色を眺めてひと息着こう。
駒津峰より名峰を望む
藪沢カールを魅せる
優雅な峰・仙丈ヶ岳
鋭角な尖がりを魅せる北岳と
それに続く南アルプスの名峰群
後日目指す鳳凰三山のシンボル
オベリスク(地蔵仏)も望める
駒津峰からは、甲斐駒ヶ岳に向かって痩せた岩稜上を伝っていく。 距離は僅かなのだが切り立った岩の登降が数回あり、鎖片手のトラバースもあるので結構厄介だ。 岩峰を伝っていくと途中で岩峰を直接伝うルートと、下を巻くルートとに分かれる地点がある。
これは、この岩峰で遭難事故が相次いで発生した為に、下の樹林帯を巻くルートが設けられたからである。 上のルートも何とか通過できるが、右側がスッパリと切れ落ちて高度感があり、しかも鎖が破損したまま復旧されていないのでここは巻道を通った方が無難だろう。
高度を稼ぐと共に
北岳が更に鋭い姿を魅せてくる
この岩稜を通過すると、《六方石》という噴出した花崗岩の大岩が見えてくる。 この岩の立つ地点が甲斐駒ヶ岳の取付となる。 《六方石》の背後にある営巣のように刳り貫かれた岩小屋が多く見られる岩壁を、右に巻くように登っていく。 ここから甲斐駒の岩尾根の先に突き出したリッジの上に登り、ザラザラの砂礫帯を斜めに突っ切って主稜線に出る。 ここで、砂礫帯をジグザグに切りながら大きく迂回するルートと、主稜線の岩峰を直接登るルートに分かれる。
主稜線の分岐より直登ルートと
一般ルートの巻き道ルートに分かれる
今回は、『甲斐駒』の峰に登る雰囲気を味わう為に直登ルートに進路を取ろう(メインルートは迂回ルートである)。 踏跡に沿ってリッジ通しに登っていく。 少し行くと右に迂回ルートへの連絡道を分け、ルンゼ状に迫ったリッジの大岩を乗っ越す。 この乗っ越しは、最初の踏み出しが全てであろう。
できるだけ足を高く振り上げて、いいポジションを確保しなければズリ下がって「やり直し」となるだろう。 この直登ルートに似ていると言えば、剱の『カニノタテバイ』だろうか。
直登ルートは始めは剱の『カニノタテバイ』
のような岩の直登だが上部は岩が
敷き詰まった中を突き上げていく感じた
これを越えると小さな岩の突き出しを伝っていくが、岩の突き出し加減からルートに行き詰まる事もある。 もし行き詰ったなら、“稜線通し”を意識して進むといい。 伝っていくと、やがて砂礫の平坦な尾根上に出て、《戸台川》本谷の深いツメを見ながら本峰に向かって突き上げていく。 後は、広い砂礫の傾斜のどこをルートに取っても、甲斐駒ヶ岳 2967メートル の頂上に建つ石祠の背後に飛び出る事ができる。
甲斐駒ヶ岳にて
甲斐駒ヶ岳頂上の白亜の岩越しに
望むカールの峰・仙丈ヶ岳
数年後に熱中して通う事となる
南ア随一のバリエーションルート・鋸岳
甲斐駒ヶ岳の頂上からは、威風堂々とした北岳が正面にそびえ、背後には秩父や八ヶ岳・富士山が美しいシルエットを魅せる。 でも、一番目を引くのは、鋸岳から甲斐駒本峰に連なるノコギリ刃のような岩峰群であろう。 ただ、仙丈ヶ岳はノッペリとし過ぎて、思った程に高さは感じられない。
陽が高くなってくると
気温が上昇して雲が湧き立ってくる
仙丈ヶ岳も湧き立つ雲に
巻かれ始める
頂上直下の祠群にも
雲が湧き立ってきた
この先は鋸岳へのバリエーションルートとなるが、それはもうちょっと先に縦走山行を行ったので、その時の『よも”ヤマ”話』に御期待頂きたい。 また、「すぐにでも・・」という奇特な読者がいるとしたなら、コチラをどうぞ。 見て頂ければ、このタワケが大いに喜びます。
『アリバイ写真』を撮ってから
下山に取りかかろうか
いい眺めと涼風を心ゆくまで楽しんだなら、下山に取りかかろう。 下りは砂礫帯を大きく迂回するルートを取って、途中で摩利支天峰に立ち寄っていこう。 なお、下りに使った『巻き道ルート』が甲斐駒ヶ岳へのメインルートとなっている。 この『巻き道ルート』は広い砂礫の道で、全般的にザラザラでスリップしやすいので注意していこう。
20分程下ると摩利支天峰への分岐(道標なし)が分かれ、縦走路から一段下に下りて張り出した岩壁をトラバースで伝っていく。 1ヶ所大岩の基部のへつりがあるので、ここの通過は注意したい。
15分程歩くと、ガレキの盛り上がりの上に宝剣や玉串・鉾などが突き立てられた摩利支天峰 2840メートル の頂上に出る。
岩峰に神々が宿った
神々しい姿を魅せる摩利支天峰
ここから望む甲斐駒本峰は、白亜の切り立った一枚岩が直立してそそる眺めだ。 摩利支天峰で神々しい姿を魅せる摩利支天峰の写真を“ゲット”して下山しよう。
下りも北岳から続く
南アの山なみを
眺めながら下っていこう
仙丈ヶ岳の優雅なカールは
いつも登山者を見護り続けている
下りは《六方石》まで砂礫の急傾斜を下り、後は直登ルートと合流して往路を下る。 下山途中で、《仙水小屋》の流水がとっておきの優しさで出迎えてくれるはずだ。 この水が美味しければ美味しい程、この山行が充実していた事を実感できるだろう。
※ 続きは、次回の『第132回』の《その2》にて
過去に書いた日記を
見返してみるとワテのFC2での
軌跡が垣間見れて結構面白いね
過去日記を見るとFC2では
名の売れたテンプレート作製士が
自分の考えに沿わない
ブログ主を散々貶しまくっていた
それは移転したFC2の
多彩過ぎる機能に戸惑い
Yahoo!の方式を懐かしむ移転者を
「PCが何たるかを知らない無能」呼ばわりし
自分の考えに沿わない
『写真ブログ』というジャンルを
「重い写真をベタベタ貼りつける
閲覧者に迷惑な存在」と貶していた
そしてGoogleの指針に合せて
ブログを製作する事が
PCに携わる者の責務と説いていたよ
:
この呆れかえるまでのバカの
取った顛末は次のバナー下で
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No Subject * by 根室大喜
摩周湖の伏流水でも汲みに行こうかな^^)苦労いらずやし
Re: No Subject * by 風来梨
根室大喜さん、こんばんは。
摩周湖・・ 行ってみたいなぁ
(以外や以外 摩周湖は訪れた事がありません。 行こうとした4年前の冬は暴風雪で通行止で、美幌峠のドライブインで味噌ラーメン食いました。 美味かったです。)
摩周湖・・ 行ってみたいなぁ
(以外や以外 摩周湖は訪れた事がありません。 行こうとした4年前の冬は暴風雪で通行止で、美幌峠のドライブインで味噌ラーメン食いました。 美味かったです。)
No Subject * by 朝弁
こんばんは。
水の美味しさ
こればっかりは加齢と
運動が一番の役目を果たすような。
本日は
帰宅後の除雪作業で
北国に暮らす宿命を味わっており
明日はご訪問お休みとなるかも。。。。。
水の美味しさ
こればっかりは加齢と
運動が一番の役目を果たすような。
本日は
帰宅後の除雪作業で
北国に暮らす宿命を味わっており
明日はご訪問お休みとなるかも。。。。。
No Subject * by 鳳山
甲斐駒ヶ岳、神々しい山ですね。2000mから3000mに近い山々が林立する長野とその周辺はまさに日本の屋根という感じです。
Re: No Subject * by 風来梨
朝弁さん、こんばんは。
水の美味さは、湧水である事が必須ですね。 雪解け水が花崗岩の濾過でより一層美味になります。 そして、汗をかいて喉が乾いている時というシチュエーションがあれば完璧です。
水の美味さは、湧水である事が必須ですね。 雪解け水が花崗岩の濾過でより一層美味になります。 そして、汗をかいて喉が乾いている時というシチュエーションがあれば完璧です。
Re: No Subject * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。
古より甲斐ノ国の守護神を司る峰で、我が国でも選ばれし峰が名乗る事を許される『駒ヶ岳』を名乗っている峰なので、崇高なオーラを放っています。
花崗岩の山塊は『南アルプス天然水』の本場です。 この花崗岩で濾過された極上の湧水が、記事中に書いてある仙水峠の沢水ですね。
古より甲斐ノ国の守護神を司る峰で、我が国でも選ばれし峰が名乗る事を許される『駒ヶ岳』を名乗っている峰なので、崇高なオーラを放っています。
花崗岩の山塊は『南アルプス天然水』の本場です。 この花崗岩で濾過された極上の湧水が、記事中に書いてある仙水峠の沢水ですね。