2021-01-14 (Thu)✎
『日本百景』 冬 第463回 厳冬期の北八ヶ岳縦走路 その2(縞枯山~高見石)〔長野県〕
高見石の上に立ち
上州の山々の暮れ情景を望む
北八ヶ岳 きたやつがたけ (八ヶ岳中信高原国定公園)
フォッサマグナの中央部を占める大規模複成火山体である八ヶ岳火山列の北側を指す山域で、「北八ッ」と略される。 全域が長野県に属し、一般的には大河原峠から南の夏沢峠までの八ヶ岳連峰北部山域の事をいう。
蓼科山や横岳などの溶岩ドームや、成層火山からなる標高2,000 m台の山々で構成され、ハイキングから本格登山まで楽しめる山域である。 南八ヶ岳に比べて斜面がなだらかで。岩場が少なく森も多いので、山スキーの適地となっている。
北八ヶ岳縦走路より
八千穂高原を望む
北八ヶ岳火山列は初期にソレアイト系の玄武岩を噴出し、その後安山岩質の成層火山を形成し、更新世後期に蓼科溶岩円頂を形成した。 最新のマグマ活動は800年前の八丁平溶岩流と云われ、888年6月20日には水蒸気爆発による岩宵なだれ(大月川岩宵なだれ)が発生した記録がある。 なお、その過程で形成されたのが松原湖である。
北八ヶ岳には多くの池があり、「お池めぐり」として多くの登山客に親しまれており、1年を通して楽しめる。 冬はスノーシューを履いて凍った池の上を歩いたり、なだらかな丘状の稜線を伝って南八ヶ岳山域までの縦走も面白い。 雪が解けると鮮やかな緑に囲まれ、池が多種多様な変化に富んだ景色を魅せてくれる。
北八ヶ岳縦走路 縞枯山~高見石 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR茅野駅よりバス(1:00)→ピラタス山麓駅よりロープウェイ(0:10)→山頂駅
(1:20)→北横岳ヒュッテ(0:25)→北横岳(1:00)→坪庭(0:20)→縞枯山荘
《2日目》 縞枯山荘(0:05)→雨池峠(1:00)→縞枯山(0:45)→茶臼山(1:20)→麦草峠
(1:20)→丸山(0:20)→高見石
《3日目》 高見石(2:00)→中山峠(0:10)→黒百合平(1:30)→天狗岳
※西天狗までは往復1時間10分(1:30)→黒百合平
《4日目》 黒百合平(1:50)→渋ノ湯よりバス(0:50)→JR茅野駅
※ 前回『第462回 厳冬の北八ヶ岳・・ その1』からの続き
縞枯山の頂上は
樹氷に囲まれて見通しが悪いが
登り着いた縞枯山 2403メートル の山頂は、周りを樹林に囲まれて見通しが悪い。 従って展望を望むならば、頂上から10分程先にある《肩の展望台》までいこう。 この展望台からは、360°の大マノラマが広がる。
肩の展望台では
庭園状になった岩が凍る姿を魅せてくれる
《麦草峠》へ連なる稜線に刻まれた縦走路、南八ヶ岳の峻嶮な山なみ、蓼科の丘陵に向けて広がる深い樹氷原・・と、とびきりに贅沢な風景が望めるだろう。 しばし、大自然が創造した素晴らしい風景に酔おう。
少し先に行くと絶好の展望台に出る
:
北八ッの最南端にそびえる
天狗岳(2646m)がひときわ高い
素晴らしい景色に感動を得れたならば、広大な樹氷原を南に下っていこう。 《肩の展望台》からは方向を90°右に変えてそびえたつ南八ヶ岳の方へ進んでいく。
北八ヶ岳の縦走路は
差し当たって困難な所はないが
積雪量は半端ではなく
常にラッセルを強いられる
まずは、すぐ前にそびえる茶臼山への高低差100mのアップダウンだ。 夏ならば30分程でこなせるこのアップダウンも、積雪の深い厳冬期は45分はかかってしまう。 樹氷原の中を一筋に切られた道を緩やか過ぎずキツ過ぎずで上下して茶臼山 2384メートル の頂上へ。
踏み跡を伝うと展望の利く
露岩の上に出る
だが、頂上は樹林に囲まれて眺望はなく、ただの通過点然としているが、西に切られた踏跡を伝うと展望の開けた露岩の上に出る。
露岩の上からは
八千穂高原が一望できる
同様に蓼科高原と
南アルプスも望める
八ヶ岳のハイライトである
南八ッの主峰群が頂を突き立て
鎮座する姿を望む事ができる
そこからは扇状に広がる蓼科高原が一望でき、その奥には南八ヶ岳の主稜線が凛々しくそびえ立っている。 また振り返ると、縞枯山の樹氷原が白銀の芸術を魅せている。
振り返ると縞枯山の
『縞枯樹氷林』が望める
白銀のキャンパス湧き立つ水蒸気雲が縞の影を落とし、それが動画の如く樹々に表情を与える。
ワテのつたない写真でこれを表現する事は叶わないが、瞼の奥にはその素晴らしい情景が焼きついている。 それにしても風が強い。 また、この露岩の上は雪がなく岩肌が露出している。
恐らく、この風に雪が吹き飛ばされたのだろう。 この展望地に滞在する最中、常に顔に雹が当たる痛みを感じていたのだから。
さて、この展望台から戻って、再び縦走を再開しよう。 道は茶臼山で左に方向を変えて、明るく開けた傾斜を下っていく。 《麦草峠》までの縦走路では、最も勾配がキツい下りだ。 これを下りきると、少し登り返して《中小場》という露岩の上に立つ。
中小場の展望地より望む蓼科高原
茅野の町を挟んで対峙する南アルプス
凍結してスケートリンクとなった白駒池
やや標高が下がった分は割り引かれるがここも展望がよく、《麦草峠》と真っ白な氷を張った《白駒池》、《麦草ヒュッテ》の赤い屋根、そして背後に君臨する南八ヶ岳の山々が印象的だ。
展望を楽しんだら
麦草峠に向かって下っていこう
これより、今見えた赤い屋根まで下っていく。 緩やかに坂を下ってもはや地名だけとなった《大石峠》を過ぎ、《五辻》へ抜ける北八ヶ岳遊歩道に至る道を分ければ、程なく『国道299号線』の看板が見えてくる。 《麦草峠》である。
麦草ヒュッテ撮るの忘れちゃった
なので北八ッの山小屋紹介ウェブより
峠で雪に埋もれた国道299号線をラッセルで、“対岸”に建つ《麦草ヒュッテ》に渡る。 そこには、スノーモービルの跡が無数に着いていた。 どうやら冬は、スノーモービルで行き来しているようだ。
ヒュッテの前で軽く腹こしらえをして(寒いが、いちいちアイゼンを外すのが面倒である)、再び登高を開始しよう。
さてこれよりが、測らずもこのルートの最大の悪場となる。 だが、岩は全くなく、夏ならばほんの5分で通過できるところである。 これがなぜ“悪場”なのかというと、ここからはテレマークスキーのゲレンデを200m程伝うのだが、スキー場ゆえに全く雪が踏み固められておらず、足を踏み出す事に股下までズッポリとはまるのである。 僅か200mを行くのに20~30分かけて雪のふきだまりを渡り抜いて、丸山の山腹に分け入っていく。
テレマークスキーのゲレンデを抜けて
写真が撮れる足場になって
ようやく撮れた1枚
:
だがこの後も樹林帯で視界が利かず
次に撮れたのは高見石に着いてから
道が登山道となり人の足で踏まれると、途端に踏ん張りが利いて歩きやすくなる。 まるで、川から這い上がって陸を歩くような感覚だ。 この事からも感じる。 スキーのゲレンデを造る事によって、雪上で人が人らしく立って歩く事が叶わなくなる。 「スキーをする事によって、”歩く”という人の基本を放棄しているのだ」と。 「何と愚かな行為なのか」と考えるのは、ワテが偏屈だからであろうか。
さて、話は脱線してしまったが、登山道は傾斜を増して樹林帯を縫うようにつめていき、樹林帯に囲まれてどこが頂上か判らぬ丸山 2329メートル を越えて一投足で《高見石小屋》に着く。 やや短い行程かもしれないが、雪面のラッセルが多く疲れた事と、ある事の為にここでストップとしよう。
その「ある事」とは、真っ先に朝日を望む事である。
上州の山が夕日に輝く最中に
”耐寒訓練”を実施する
その為に、今日はここでテントを張ろうと思う。 「今後のワテの体験談を豊かにする」というより自慢話(聞いてる方はアホのヨタ話としか思えないだろうが)がしたいが為に、これを敢行したいと思う。
・・であるから、これはマネをせぬように。 それでは、これより耐寒訓練を開始しよう。
耐寒訓練で見た情景
上州の山々が夕日に照らされて
1日の終わりと耐寒訓練の始まりを告げる
やがて西日が山に沈み始める
この瞬間・・高見石は
月面の世界に変る
:
その月面のクレータのような
情景から本物の“月”を魅る
そして楽しかった冬山の1日が暮れて
耐寒訓練モードとなる
:
ちなみに氷点下15度だったよ
※ 続きは次回の『第464回』の《その3》にて
引き続き写真ネタおば・・
ワテは『撮り鉄』において
《3ナイ運動》を実施している
その《3ナイ運動》とは
事前の下調べやロケハンをしない
三脚は重く据付けが面倒なので持っていかない
時刻表は重く嵩張るので持っていかない
という本気で撮影に取り組む
『撮り鉄』さんが聞いたら
張り倒したくなる運動である
でも遠方地での撮影そのものを
旅として捉えてその『旅先』でおこる
様々なハプニングを体験できるよ
それはただ単に
「鉄道を完璧に撮る」だけより
ずっと心に残る1枚を撮る事ができるから
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No Subject * by 根室大喜
寒々した風景にブルブルします><;よく見る風景やし
No Subject * by 朝弁
おはようございます。
自らの脚で登り
俯瞰するお写真
何よりの嬉しさがありますね。
休みほど早起きな津軽衆
本日はカメラとどこ歩くか検討中です。
自らの脚で登り
俯瞰するお写真
何よりの嬉しさがありますね。
休みほど早起きな津軽衆
本日はカメラとどこ歩くか検討中です。
Re: No Subject * by 風来梨
根室大喜さん、こんばんは。
私の住む関西圏では、雪は2年に1度薄っすら程度なので純粋に憧れますね。
でも、本当の雪の凄さと怖さを知らない無責任な憧れですけど。
私の住む関西圏では、雪は2年に1度薄っすら程度なので純粋に憧れますね。
でも、本当の雪の凄さと怖さを知らない無責任な憧れですけど。
Re: No Subject * by 風来梨
朝弁さん、こんばんは。
写真で魅せる力のあるレンズって、広角だと思いますね。
広角は被写体まで歩いて近づかないと、点でしか映らないけど、
被写体と風景を同時に取り入れる事ができると思いますから・・。
それにピント合せなくていいし、手ブレの危険も少ない・・という
私の都合にも合致してますし。
写真で魅せる力のあるレンズって、広角だと思いますね。
広角は被写体まで歩いて近づかないと、点でしか映らないけど、
被写体と風景を同時に取り入れる事ができると思いますから・・。
それにピント合せなくていいし、手ブレの危険も少ない・・という
私の都合にも合致してますし。