風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰次選の山々 第30回  忠別岳・化雲岳

名峰次選の山々 第30回  『108 忠別岳 ・ 109 化雲岳』  北海道
大雪山系(大雪山国立公園) 忠別岳 1963m、化雲岳 1954m コース難度 ★★ 体力度 ★★★
 

非対称にストンと切れ落ちる忠別岳と奥大雪の山なみ
 
     行程表                駐車場・トイレ・山小屋情報                 
  《1日目》 層雲峡温泉よりタクシー利用 (0:50)→銀泉台 (3:00)→赤岳 (0:30)→小泉岳
        (0:50)→白雲岳 (0:30)→白雲岳分岐 (0:30)→白雲岳避難小屋
  《2日目》 白雲岳避難小屋 (0:40)→高根ヶ原・大雪高原温泉分岐 (2:30)→忠別岳 
        (1:30)→五色岳 (1:10)→化雲岳分岐 (0:40)→ヒサゴ沼避難小屋
  《3日目》 
ヒサゴ沼避難小屋 (0:35)→ヒサゴ沼分岐 (0:30)→トムラウシ・日本庭園
        (1:25)→北沼 (0:30)→トムラウシ山 (1:30)→トムラウシ・日本庭園
        (0:20)→ヒサゴ沼分岐 (0:45)→化雲岳 (0:50)→小化雲岳 (1:30)→第一公園
        (1:20)→滝見台 (0:45)→天人峡温泉よりバス (1:05)→JR旭川駅
    ※ 斜字部分は、『名峰百選』のトムラウシ山の項目で御紹介します。
      

裏大雪縦走 行程図
 
     ※ 『名峰百選 第29回 白雲岳』 《2日目》途中からの続き
 
高根ヶ原の広い大地の隅々がこの光に照らされて、背丈の低い花々が足元に次々と現れてくる。  リシリリンドウ・エゾノツガザクラ・チングルマなどが、次々と現れて楽しませてくれる。 またこの辺りも、“土の花”『構造土』があちらこちらに点在している。 辺り一面に花、そして大地の“土”までもが花となっている大平原を、朝の散歩気分を味わいながら歩いていこう。
 

朝日を浴びて
ほのかに色気づくエゾコザクラ 
 
やがて、辺りが砂礫地から草地に変わり、花の種がコマクサからエゾノハクサンイチゲやエゾコザクラに変わると、花と緑と雪縞模様の山なみが限りなく続く、さしも広い大平原も終わりとなる。
 

コマクサを借景に旭岳の勇姿を望む 
 
エゾノコザクラの“ピンクのじゅうたんやエゾノハクサンイチゲの群落を見ながら進むと足元が急に開け、今自分が小高い丘の上に立っているのがわかる。 そして足元には、《忠別沼》がコバルトブルーに輝いている。 道は《忠別沼》に向って緩やかに下っていく。
 

高原のオアシス”忠別沼と
『表大雪』の山なみ
 
左手には、黒くいかつい稜線を魅せる石狩連峰や、濃い緑の大地を延ばす《五色ヶ原》などが見渡せる。
左手の眺めは、日差しを背後に受けてシャドウ気味だ。 一方、右手は雪の縞模様を抱く旭岳と、特異な岩塊をもたげる白雲岳、そして冠の形をした頂を魅せる“盟主”トムラウシ山と、その裾野に広がる《化雲平》のまだら模様の雪渓など、明るい山岳風景が広がる。
 

高根ヶ原のお花畑と石狩連峰
 
こんなのみつけた・・
白いエゾコザクラ

また、《忠別沼》の静かな水面に影を落とす大雪の山々も魅惑的だ。 この《忠別沼》付近、以前は歩くのが困難な湿地帯であったが、最近では木道が敷設されて“文字通り”絶好のオアシスとなっている。 沼のアクセントをつけての好展望を満喫したなら、先に進もう。
 
《忠別沼》からは、忠別岳に向って緩やかな稜線を登り返していく。 ハイマツ帯を登って忠別岳の稜線に出ると、砂礫地の砂礫地のだたっ広い道となる。 忠別岳の頂上に続くこの道はとても緩やかで、山に登るというよりも丘を歩くといった感じだ。 


忠別岳の切れ落ちた南面が近づくと
さしも広い高根ヶ原も終わりを告げる
 
途中、コマクサ・ハクサンチドリといった花が漠然とした砂礫地の眺めに潤いを与えてくれる。
歩いていく内に限りなく緩やかな道がやや傾斜を増して、岩が乱立した所を縫うように登っていくと、忠別岳 1963メートル 頂上だ。
 

忠別岳直下の
エゾノハクサンイチゲ大群落とトムラウシ山

頂上からの眺めは雄大で、360°山なみの大展望が広がる。 ある程度離れてそびえ立つ旭岳と白雲岳、そしてそこから広がる《高根ヶ原》の大平原と、今まで歩いてきた道程が見渡せて感慨深い。 
 
また、まだ遠きトムラウシ山の眺めにも、これからの道程にときめきを覚える。 そして何より素晴らしいのが、エゾノハクサンイチゲの大群落越しにトムラウシ山がそびえ立つ風景である。 

忠別岳での雄大な眺めを味わったなら、そろそろ先に進もう。 さて、忠別岳からは、先程の登りとは打って変わって滑りやすいガレ場の急下降となり、膝が笑い出す。 この忠別岳は典型的な非対称の山で、登り返した五色岳から眺めると、《高根ヶ原》の大平原の果てがそのままストンと切れ落ちているように見える。
 

なだらかに迫上がり
ストンと落ちる山容を魅せる忠別岳
 
滑りやすいガレ場を下りきると、忠別岳避難小屋への道を分け、再び五色岳に向っての高低差150mの登りとなる。 ハイマツ漕ぎをしながら登っていき、ひと汗ふた汗とかいた頃に五色岳 1868メートル の頂上広場に出る。
 

五色岳頂上道標とトムラウシ

五色岳は山容自体はあまりパッとしないが、『表大雪』の山なみと旭岳から続く緩やかな大平原が忠別岳でスパッと切れ落ちる、アクセントの効いた味のある風景を魅せてくれる。 また、五色岳は大雪の大きな分岐点となっていて、左への道は《五色ヶ原》から《沼ノ原》・石狩連峰への東大雪縦走路となっている。 《五色ヶ原》・《沼ノ原》・石狩連峰については次回に譲るとして、今回はトムラウシ山に向って進路を右に取ろう。
 

化雲平のお花畑とトムラウシ
 
ハイマツの茂る中を歩いていくと、いつの間にか広々とした平原に出る。 ここは《化雲平》と呼ばれる所で、眺めの“売り”は池塘とホソバウルップソウ越しに望むトムラウシ山の眺めである。
また、庭園状の盛り土に群落を成すチングルマや、エゾノハクサンイチゲのお花畑も見せてくれる。
2回ほど大きな雪渓をトラバースしていくと、《化雲岳分岐》に出る。 化雲岳は“デベソ岩”などひと癖のある山であるが、この山は翌日に登る事にして、ここは先を急ごう。

化雲平に咲く花々
リシリリンドウ       ホソバウルップソウ

化雲岳の裾を巻いて山の反対側へ越えると、“神遊びの庭”と呼ばれる庭園状のお花畑に出る。 
ここが今夜の宿泊地・《ヒサゴ沼避難小屋》への分岐である。 分岐からは、《ヒサゴ沼》への水源となる巨大な雪渓を下っていく。 ここは、濃いガスの発生時、方向感覚を失って違った方向へ下ってしまいかねないので充分注意しよう。
 

大雪の絶好のオアシス・ヒサゴ沼
 
長い雪渓を下りきると、《ヒサゴ沼》と避難小屋が見えてきてホッとする。 雪渓下部の草地を下って《ヒサゴ沼》の湖畔に出ると、《ヒサゴ沼避難小屋》は近い。 この《ヒサゴ沼避難小屋》はトムラウシ山への絶好の位置にあり、夏のシーズンは常時“すし詰め”の満員で、“三角座り”で寝るハメとなろう。
そのような訳で、ここではテント泊を絶対的にお薦めする。 いよいよ明日は、盟主・トムラウシ山への登山である。
 

化雲岳より望むトムラウシ
 
 《3日目》 トムラウシ山往復と下山
トムラウシ山 2141メートル 往復の詳細は、『名峰百選 第30回 トムラウシ山』で紹介するとして、ここは簡単に述べたいと思う。 トムラウシ山へは、《ヒサゴ沼》の右側の雪渓を登っていくのだが、かなり急な雪渓で滑落の危険を伴うので慎重に登ろう。 

《ヒサゴ沼》からトムラウシ山までの道程を一言で言うと、“楽園”そのものだ。 自然の創造力に改めて敬意の念を感じる。 トムラウシ山までは思った以上に時間がかかるので、“早出”は絶対の条件だ。
 

トムラウシ・日本庭園にて
今回はこれだけ 続きはトムラウシの項目で・・
 
トムラウシ・『日本庭園』や《ロックガーデン》、《北沼》などのお花畑、そしてトムラウシ山の眺望など、“聖地”として岳人が憧憬を抱く素晴らしい景色を魅せてくれる。 時を忘れていつまでも眺めていたいが、今日中に《天人峡》まで下りて行かねばならないので、あまり時間の余裕はない。 

《ヒサゴ沼》から、トムラウシ山を往復して《ヒサゴ沼分岐》まで戻ってくるのに、山頂での滞在時間も含めて6時間近くかかるので、そのことを念頭においておこう。 この際荷物は、《ヒサゴ沼分岐》にデポしていくのが妥当だろう。 そして、日程にゆとりがあるならば、是非ともヒサゴ沼で連泊してゆっくりとトムラウシを味わってもらいたい・・とも思う。
 

トムラウシはゆっくりと味わいたいものだ
 
さて、“楽園”を充分に味わってきたなら、下山に取りかかろう。 《ヒサゴ沼分岐》から、《天人峡》まで12.5kmある。 道が良くても4時間はかかるだろう。 道は《ヒサゴ沼分岐》より、化雲岳へ向けての登りとなる。 ガレ場をジグザグ登りで乗りきると、『神遊びの庭』と呼ばれる庭園状のお花畑に出る。
 

『神遊びの庭』で愛しむ
  
『神遊びの庭』の眺めを楽しみながら、緩やかな丘を登っていこう。 目指す指標は、化雲岳 1954メートル 頂上にある《デベソ岩》だ。 この《デベソ岩》は、トムラウシ・『日本庭園』からも確認できる。
 

見事なデベソ岩を魅せる化雲岳
 
障害物のない丸い丘の中心に、まぁ・・これほど見事に“デベソ”が立っているのは、滑稽を通り越して神秘的でさえある。 この自然の創造力に、改めて敬白の念を感じる。 

《デベソ岩》でくつろいだなら、《天人峡》へ下っていこう。 化雲岳の稜線を緩やかに下っていくのだが、広い稜線上は『神遊びの庭』から続く庭園状のお花畑で、ミヤマアズマギク・チングルマ・エゾコザクラなどが盛り土ごとに整然と群落を成し、その整った美しさにまた足止めを食らいそうである。
そして振り返ると、トムラウシ山が盟主として毅然とそびえ立っている。
 

雨露に濡れるコマクサ
 
やがて、庭園状のお花畑が途切れて、砂礫地をひと登りすると、小化雲岳 1925メートル 山頂に着く。 小化雲岳からは、旭岳がまるで屏風絵のようにそびえ立つのが見える。 今、その《屏風絵》の右端にいるようなものである。 ここから、《屏風絵》の左端まで移動しなければならない。
言い返せば、目の前にそびえる旭岳が“振り返って見る位置”まで歩かねばならないという事だ。
 

この山屏風が背後に位置するまで
歩き続けねばならない

これから、ダケカンバ林の中を延々と下っていくのである。 全くといっていい程に単調で、しかもジリジリと日が照りつけて暑い。 この辛さゆえ、旭岳が早く“振り返って見る位置”に移動して欲しい・・と願うが、これを意識する内はなかなか着かない。 ダケカンバ林が途切れると、針葉樹林帯に突入する。
ここは《第二公園》と呼ばれているが特に何もなく、強いていえば旭岳の眺めがいいという事だけであろう。 だが、旭岳が真正面に見えるようになり、今までの移動を実感できるだろう。 

ここからも、ササを刈り分けた道を黙々と歩かねばならない。 やがてササが途切れて《第一公園》と呼ばれる広場に出る。 ここまで下るともはや高山的な雰囲気は消えて小高い丘や野原のようである。
 

タカネナデシコ
 
ここからは樹林帯を急降下していくのだが、針葉樹林の根をつかみながら下る急下降で、しかも『天人峡まで4.5km』の看板に“大雪はそんなに甘くない”という事を実感できるだろう。 あまりの単調さにいささか気が滅入ってきて疲れがピークに達した頃、ようやく《滝見台》に着く。
 

羽衣ノ滝
 
ここからは、つづら折りの急坂をくどい程こなして《天人峡温泉》へ下っていく。
やがて、ホテルの屋根が目に入ってくると、『裏大雪』の山上楽園めぐりもフィナーレを迎える。
 

下りでもたっぷり5時間かかります
 
    ※ 詳細は、メインサイトより『裏大雪』をご覧下さい。


 
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No title * by ake*ono**14yus*n
こんばんは。

ご苦労様です。なんか一緒に登山した気分で疲れました。

貴重な山並みとわかりやすい解説が心に響きました。

高山植物は現地で見るのが一番ですね。

生き生きとしていますし、登山しなければ写せない時間帯での撮影、

いいですねー。

傑作大ポチを

No title * by 風来梨
ゆう様、こんばんは。

傑作ありがとうございます。
10数年前の現役時代は難なく行けたこの行程も、今年登ってみると、荷物は肩に食い込むは・・、足は動かないは・・、時間はかかるは・・、でかなり疲れました。

でも、こんなに疲れてでも、また行きたいと思うのが山の魅力なんですね。

No title * by yamanbou
こんばんは。
デベソはインパクトというか良い標になりますねぇ。
全国あちこちにチク○岩はよくありますが・・・
北海道はデカいですねぇ。
青空が最高です。

No title * by 風来梨
yamanbou様、こんばんは。

トムラウシの頂上からも視認できる立派な「デベソ」です。
この岩は、遠くから眺めるのが乙です。

次回の名峰百選は、いよいよトムラウシ山です。
五色ヶ原も歩きますので、乞う御期待。

コメント






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No title

こんばんは。

ご苦労様です。なんか一緒に登山した気分で疲れました。

貴重な山並みとわかりやすい解説が心に響きました。

高山植物は現地で見るのが一番ですね。

生き生きとしていますし、登山しなければ写せない時間帯での撮影、

いいですねー。

傑作大ポチを
2011-08-22 * ake*ono**14yus*n [ 編集 ]

No title

ゆう様、こんばんは。

傑作ありがとうございます。
10数年前の現役時代は難なく行けたこの行程も、今年登ってみると、荷物は肩に食い込むは・・、足は動かないは・・、時間はかかるは・・、でかなり疲れました。

でも、こんなに疲れてでも、また行きたいと思うのが山の魅力なんですね。
2011-08-22 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

こんばんは。
デベソはインパクトというか良い標になりますねぇ。
全国あちこちにチク○岩はよくありますが・・・
北海道はデカいですねぇ。
青空が最高です。
2011-08-22 * yamanbou [ 編集 ]

No title

yamanbou様、こんばんは。

トムラウシの頂上からも視認できる立派な「デベソ」です。
この岩は、遠くから眺めるのが乙です。

次回の名峰百選は、いよいよトムラウシ山です。
五色ヶ原も歩きますので、乞う御期待。
2011-08-22 * 風来梨 [ 編集 ]