2010-12-14 (Tue)✎
名峰百選の山々 第3回 『29 奥白根山』 栃木県・群馬県 日光山系(日光国立公園) 2578m
コース難度 ★★ 体力度 ★★
静かにたたずむ
五色沼と奥白根山
首都圏から即日のアプローチが可能な国際観光地・《日光》。 湖あり、温泉あり、名瀑あり、そして我ら山好きが目指す“名峰”もある。 だが、著名な観光地だけに、自然破壊の痛ましい姿を目にしてしまうのである。 それが、スキー場などで乱開発された跡地である。
冬ならば白一色の世界になるので解らないかもしれないが、無雪期は縦横に敷かれたキャタピラーの軋轢跡やスキー場の障害物のない平原を造る為に伐採された禿げた丘山と無数につきたてられた土砂崩れ防止の土盛りなどに、土壌がスキーなどという下らぬ娯楽の為に壊されている痛ましい姿が垣間見られるのである。
その心に窮する眺めが、登山口から白出沢出合まで続く。 だから、実質の登山口はホテルが立ち並びバス停のある湯元温泉かもしれないが、本当の登山口はこの白出沢出合といってもいいだろう。
それでは、行程表を示そう。
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 湯元温泉(0:40)→白根沢出合〔本当の登山口〕(2:00)→前白根山
(0:35)→五色沼避難小屋〔小屋より水場の五色沼畔までは下り10分〕
《2日目》 五色沼避難小屋(0:55)→奥白根山(0:40)→五色沼避難小屋(0:10)→五色沼
(0:30)→弥陀ヶ池(1:40)→菅沼登山口
(0:35)→五色沼避難小屋〔小屋より水場の五色沼畔までは下り10分〕
《2日目》 五色沼避難小屋(0:55)→奥白根山(0:40)→五色沼避難小屋(0:10)→五色沼
(0:30)→弥陀ヶ池(1:40)→菅沼登山口
《1日目》 五色沼へ
さて、この白出沢出合より山の方へ分け入っていくのだが、これより水場は五色沼の沼の水以外にないので、この白出沢で今日と明日の分を担ぎ上げるのが理想となる。 2日分で約3リットルという所だろう。
ここからは木の根をつかみ、そして踏みしめての急登だ。 辺りを見渡すと、スキー場の為に削られた山肌から土砂崩壊が発生していて、それを防ぐべく土盛りの柵が山肌に数多く突き立てられている。
何と身勝手な事だろう。 山を傷つけて、その“見返り”は拒絶する。 そのエゴが“土盛り”として代替されているのだ。
それも、山を壊す“ガン細胞”であるスキー場を守るべくのみ、山肌に突き立てられているのだ。
その辺が、どうも納得できないのである。 その土盛りに、最近被害をもたらした台風の業だろうか。
それも、山を壊す“ガン細胞”であるスキー場を守るべくのみ、山肌に突き立てられているのだ。
その辺が、どうも納得できないのである。 その土盛りに、最近被害をもたらした台風の業だろうか。
倒れた木々が引っ掛かっている。 登山道でも倒木があちらこちらに見えて、かなり道は荒れているようだ。
倒木帯を過ぎると、土砂が流失してルンゼ状になった粘土質の道を行くようになる。 これは踏ん張りが利かない。 ふくら脛の大いに突っ張る登りだ。 この辛い急登に1時間半程耐えると、前白根山の鞍部・《天狗平》に着く。 周りは樹木に囲まれて展望はなく、せいぜい腰を下ろして休憩する位の所だ。
倒木帯を過ぎると、土砂が流失してルンゼ状になった粘土質の道を行くようになる。 これは踏ん張りが利かない。 ふくら脛の大いに突っ張る登りだ。 この辛い急登に1時間半程耐えると、前白根山の鞍部・《天狗平》に着く。 周りは樹木に囲まれて展望はなく、せいぜい腰を下ろして休憩する位の所だ。
《天狗平》から少しばかり登ると、樹林帯を越えてこんもりと盛り上がる岩屑の峰が見えてくるだろう。
前白根山 2373メートルである。 今日の行程のほぼ全てが、この前白根山への標高差800mの登りである。 登りが急でキツかった分、この山の頂に登り着いた時の感慨は深い。
秋色めく五色沼
そしてこれより先は、奥白根山と風光明媚な《五色沼》を見ながらの広潤な山歩きだ。 だが、前白根山の下りは少しばかりガレているので、景色に見とれてばかりいると転倒もあるので程々に。
後は、今日の宿泊地・《五色沼避難小屋》に向かうだけだが、《五色沼》を経ていくも良し、《五色沼》を囲む火口壁を伝っての最短コースをいくも良し・・である。 なお、この《五色沼避難小屋》は、辺りに水場がないのである。 たぶん、初夏の内は雪渓の融雪水を利用するのであろうが、秋ともなるとこれは期待できない。 従って、《五色沼》の水を煮沸して利用するしかないだろう。
・・水の件とトイレがないのを除けば、《五色沼避難小屋》は建付けも立派で毛布などの備品も備わっており、快適な一夜を過せるだろう。 明日は、夜明けと共に奥白根山へ登り、山の朝を満喫しよう。
《2日目》 奥白根の頂へ
朝、できるだけ早く出発しよう。 早く出れば出る程、夜明けの美しい山の風景を眺めることができるのだ。 頂上経由で直接下山もできるが、この際は小屋に荷物をデポって空身の楽なスタイルでいこう。
避難小屋からの登路は、ガレた地肌を魅せる奥白根山で最も歩き良い道のようである。 背丈の低いカンバ林の間を縫うように登っていくと、そろそろ日の出の頃合だろう。
避難小屋からの登路は、ガレた地肌を魅せる奥白根山で最も歩き良い道のようである。 背丈の低いカンバ林の間を縫うように登っていくと、そろそろ日の出の頃合だろう。
登っている最中に 朝もやにけむる
夜明けを迎えた 奥日光の山なみ
皇海山系の《白錫尾根》から昇る日の出は、これから登る奥白根山の山肌をほのかに赤く染め上げてくれる。 やがてカンバ林を抜けて、ガレた砂利石をジグザグに登っていくようになる。
この砕石帯は深く傾斜も急なので、踏み出すごとにズリ滑って歩き辛い。 この砕石帯のジグザグを数度こなすと、奥白根山のピークを形成する岩屏風と《五色沼》が見えてくる。
夜明けを迎えた 奥日光の山なみ
皇海山系の《白錫尾根》から昇る日の出は、これから登る奥白根山の山肌をほのかに赤く染め上げてくれる。 やがてカンバ林を抜けて、ガレた砂利石をジグザグに登っていくようになる。
この砕石帯は深く傾斜も急なので、踏み出すごとにズリ滑って歩き辛い。 この砕石帯のジグザグを数度こなすと、奥白根山のピークを形成する岩屏風と《五色沼》が見えてくる。
頂上は月面の世界のようだ
後は、眼前に立ちはばかる見事な岩屏風を大きく右に巻きながらつめていくと、奥白根山・奥宮の祠を経て関東以北の最高峰・奥白根山 2578メートル の頂上だ。 頂上は岩屑の積み重なりでかなり狭く、10人も立つと身動きを取り辛くなる。
頂上からは《尾瀬》の燧ケ岳と至仏山、上州武尊山、波打つようなうねりを示す《白錫尾根》と皇海山、男体山と女峰山、そして瞳の如く深き蒼を魅せる《五色沼》と、360°全てに山屏風が展開する。
関東以北で最も高い峰の最も高い岩屑の上に立ち、そこから見下ろす絶景の数々。 感動と興奮がそこにある。 心ゆくまで朝の山の絶景を味わおう。
皇海山へ続く両毛国境稜線
燧ケ岳の勇姿が
“尾瀬近し”を思わせる
山上を守護する“山ノ神”
深い蒼をたたえる
神秘の湖・五色沼
奥白根山からの下りは往路を戻るが、足場が安定しているので、カメラ片手に下っても40分位で小屋前に戻ることができるだろう。 小屋に戻り着いたなら、デポッった荷物を回収して《五色沼》の湖畔を経由して《菅沼》へ下っていこう。
避難小屋より緩やかな下り10分で、コバルトブルーに輝く《五色沼》の湖畔に着く。 湖畔の波打ち際から見上げる奥白根山は、火山ドームを天に突き上げて悠然と構えて壮観だ。 コバルトブルーの水面がおりなす波紋とあいまって、絶好のカメラアングルとなること請け合いである。
晩秋の彩りと五色沼の“蒼”
《五色沼》畔からは、沼を半周して五色山方向の一番低い火口壁に向かっての急登だ。 でも、振り返ればコバルトブルーの輝きがあり、そして左肩越しに奥白根山の荒々しいガレ尾根が見渡せて、さほど苦もなく登っていけるだろう。 もし、余裕があるなら五色山 2379メートル へ登って、《五色沼》と奥白根山の絵姿を眺めるもいいだろう。 この風景は、写真集でもよく取り上げられている構図である。
さて、火口壁に登りつめると五色山への縦走路を分けて、程なくもう一つの火口湖・《弥陀ヶ池》に出る。こちらの池は《五色沼》よりずっと小規模で、池をめぐる登山道に沿って木道が敷設されている。
カメラアングルとしてはこの木道や行き交う人が入ると興ざめなので、これを上手くカットすると割りとまとまりある作品に仕上がりそうだ。 なおここは、奥白根山へのガレ道コースの取付でもある。
《弥陀ヶ池》で奥白根山の名景と名残を惜しんだなら、そろそろ下りに着こう。
奥白根山と残り秋
これより先は樹林帯に突入して、下山口の《菅沼》まで展望はほとんど期待できない。 だが、登路としては整備が行き届いていて、傾斜も獲得標高も最も小さい初心者向けのルートである。 下りでこのコースを使うと、1時間半程で《菅沼登山口》に下り着けるだろう。
下山口の《菅沼》は、湯元温泉ほどではないが茶屋が建ち、金精道路をゆく車の峠の茶屋としてにぎわっている。 バスの便はないが、シーズンともなると下山客待ちのタクシーが待機しているので、難なく湯元温泉に戻れるであろう。 後は、山で強ばった筋肉を日光・湯元の強い硫黄泉で癒せばいいだろう。
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