2011-08-12 (Fri)✎
『私の訪ねた路線』 第45回 広尾線 〔北海道〕
広尾駅の入場券と
1000万枚売り上げたという
広尾線の縁起切符たち
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度 / 営業係数(’83)
帯広~広尾 84.0km 780 / 851
廃止年月日 転換処置 廃止時運行本数
’87/ 2/ 2 十勝バス 6往復
縁起駅・愛国駅と幸福駅のスタンプ
《路線史》
改正鉄道敷設法に規定された、「苫小牧より浦河(襟裳)を経て、広尾・帯広へ至る」という計画路線の一部である。 即ち、この建設計画は、日高山脈の外周を大回りして襟裳岬を回遊する壮大な路線構想だったのである。
遙か彼方から波が押し寄せて 海の難所を見護ってきたモノ
襟裳岬灯台
苫小牧側の建設路線は現在の日高本線で、鉄道建設が最も盛んだった昭和初期の北海道開拓期(1935年)に、襟裳岬の50km程手前の様似まで開通している。 そして、帯広からの建設路線がこの広尾線である。
帯広からの路線建設は、山脈西側の日高本線(軽便鉄道2社の買収・国有化〔1927年〕と延伸)と同時期に建設が開始される。 まず、1929年に中札内までが開業。 その翌年には大樹まで延伸、1932年には広尾までの既存区間全通と順調に路線建設が進められた。
帯広からの路線建設は、山脈西側の日高本線(軽便鉄道2社の買収・国有化〔1927年〕と延伸)と同時期に建設が開始される。 まず、1929年に中札内までが開業。 その翌年には大樹まで延伸、1932年には広尾までの既存区間全通と順調に路線建設が進められた。

海際に咲く花が
ちぎれんばかりに吹く強風が
岩礁に波の花を呼び起こし
だが、これ以遠の延伸は全くもって進まず、様似~広尾は未開通のまま取り残される。 恐らく、太平洋戦争に突入していく過程で建設計画が凍結されたのであろう。 その後は、我が国の鉄道建設を担う『鉄建公団』の地方交通線建設計画線(通称AB線と呼ばれた)にも明記される事はなかったのである。
海の難所は海鳥達の楽園
襟裳岬にて
この未開通区間は国鉄バス(現 JRバス北海道・日勝線)によって静内~えりも~広尾と連絡されているが、襟裳岬へ向かう国道336号線は、建設と維持に莫大な費用がかかった事から『黄金道路』との別名がつけられている。 この事からも判る様に、無理矢理に未開通区間を建設してつなげたなら、莫大な建設費用とその維持費によって『国鉄再建法』が制定される以前に破綻をきたしていたかもしれない。
さて、この広尾線の『有名どころ』と云えば、『愛国から幸福ゆき』や『新生から大樹ゆき』の縁起切符であろう。 この縁起切符は、折からのブームも手伝って都合1000万枚以上の売上を記録し、一時的にせよ広尾線の収益が大いに改善された・・と云われている。
さて、この広尾線の『有名どころ』と云えば、『愛国から幸福ゆき』や『新生から大樹ゆき』の縁起切符であろう。 この縁起切符は、折からのブームも手伝って都合1000万枚以上の売上を記録し、一時的にせよ広尾線の収益が大いに改善された・・と云われている。
本当に1000万枚以上
売れたのである
最後にこの路線の結末であるが、縁起切符ブームで収益が改善されたと言ってもそれは前述の如く一時的な事であり、縁起切符の販売のほとんどは通信販売や自家用車による訪問客で、広尾線の利用増には結びつかなかったのである。
愛国から幸福へ
この線はこれに尽きる
といっても過言ではない
《乗車記》
今は高架駅となって、根室本線の途中駅然となっているが、かつての帯広駅は、根室本線と士幌線・広尾線が十字にクロスする鉄道の要害であった。 そして、鉄道輸送の最盛期であった1970年台までは、不定期ではあったが、士幌線の糠平から広尾線の広尾までの直通急行が運転されていたという。 大雪山の麓の温泉地から、襟裳岬への夢の観光列車が実際に運行されていたのである。 できる事なら、一度乗ってみたかったナァ・・と思い描くのであるが。
さて、広尾線の列車は、帯広駅の母屋より最も離れた5番線より発車する。 帯広を出た列車は暫く根室本線と併走して、街外れで南へ反れていく。 分岐してすぐに十勝川と分かれたばかりの札内川を渡って、90度右へ折れて真南へ進路を取る。 程なく依田駅だ。 ここはホームだけで待合室もない棒線駅で、駅名は開拓者・依田勉三から取られている。
次の北愛国は、この広尾線を一躍有名にした縁起駅の前座に位置する。 しかし扱いは、木造の簡易待合室のみと、寂しい限りだ。 次の愛国は、縁起キップの本家本元の駅である。 駅名の由来は、この地に『愛国青年団』というコッテリした名前の開拓団があったからだというが、そのお陰で、都合1000万枚以上のキップ・入場券が売れたという事実がある。 なお、この愛国は周辺人口も多く、線内最大の乗降客数があった。
線内随一の利用客のいた駅
でもあった愛国駅
愛国ともう一つの縁起駅・幸福とに挟まれた大正は、広尾線の帯広市行政区内の中心駅だ。
1982年の貨物廃止までは貨物の取扱駅として稼動し、付近で獲れる馬鈴薯の輸送で賑わったという。
また、縁起駅に挟まれたこの駅も、『大正→幸福』で“たいそう(大正)幸福”との無理矢理の語呂合わせで縁起キップに仕立てていたのが笑える。
そして、次の幸福はいわずと知れた縁起駅の代表である。 テレビの紀行番組で取り上げられて以来、爆発的な売り上げを示し、前述の如く1000万枚以上を売り上げて広尾線の収支を大いに改善せしめたという。 駅舎には訪れた観光客が足跡として自らが使った使用済の定期券やキップが所狭しと貼り付けられて、駅舎の美観として問うならあまり宜しくないが、観光地のそれとして捉えるなら、観光客を呼ぶ施設としての機能を果たしているので良しとしよう。
様々な“愛を語る
”スタンプが設置されていた
幸福を出ると中札内村に入り、中札内駅に着く。 これよりは、一町村に一駅の典型的なローカル線区となっていく。 従って、どの駅も交換設備を有しているか、その跡がある駅が多くなる。 さて、この中札内だが、知る人ぞ知る(のかな?)中部日高の名峰・カムイエクウチカウシ山への登山口となる所だ。
まぁ、登山口といっても、沢に入渓して沢を漕ぐので、まともな道は皆無なのだが。
中札内から進路を90度左へ変えて、東の方向に進む。 更別村を経由する為だ。 東に進路を変えて暫く進むと、更別駅だ。 更別村の中心駅である。 次の上更別は、更別村の字集落である。
利用客は当然に少ないが、交換駅としての設備を有し、無人駅ではあるが運転要員は廃止時まで配属されていた。 なお、上更別駅の周辺は、村名の起源となった葦の群生した湿原・上更別湿原がある。
次の虫類は、ナウマン象の化石発掘で一躍有名となった村だ。 あらゆる村の施設にナウマン象の名称をつけて村興しをしている。 次の十勝東和からは大樹町に入る。 この駅は忠類村と大樹町の境の小集落上の駅で、利用客は少なく木造の粗末な待合室だけの棒線駅であった。
次の大樹駅は大樹町の中心駅で、駅舎も近代的で立派な駅舎であった。 そして、この駅も縁起キップの駅として知られ、この駅から4つ先の新生駅からの『新生→大樹』が、子供の成長を願う所帯家族に受けてかなりの売り上げがあったという。
次の石坂駅は、雰囲気のいい木造駅舎。 駅名の由来は、地元の開拓者からとの事である。
石坂を出ると広尾町に入る。 次の豊似も、石坂駅と同じ造りの木造駅だ。 だが、手入れの違いからか、石坂駅より痛んでいるようだ。 野塚は、駅舎建替えの際に周辺の路線と同一のプレハブ規格の待合室に立て直されたようだ。
そして、終点1つ手前の新生。 地元からの請願駅で、小集落上の棒線駅である。 だが、駅名が大樹と結んで縁起キップとして取り上げられ、これより子供が産まれる所帯家族を中心に大いに売れたという。
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No title * by 風来梨
yamanbou様、こんばんは。
今朝到着の夜行で帰ってきました。
鳥海山・・、雨でした。 影鳥海もナシ。
水場も枯れて、水のない登山者の足元を見ての水1リットル1000円の暴利・・。 ほんまに、山を守る神社かいな?と思う事しばしば・・。 まぁ、初日は晴れたので、最高峰の新山だけは登りましたが・・。 今回はイマイチです。
12日を飛ばすと10日空白となるので、消えた記事を思い出してパパパパパッと・・。 レイアウトの不備が気になりますけど・・。
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12日を飛ばすと10日空白となるので、消えた記事を思い出してパパパパパッと・・。 レイアウトの不備が気になりますけど・・。
No title * by yamanbou
おかえりなさい。
1リットル1000円!?
ビールみたいですねぇ(笑
1リットル1000円!?
ビールみたいですねぇ(笑
No title * by 風来梨
ただいまです。
鳥海の深層水なるペットボトル500mlで500円
炊事で使うとなると、最低1リットルは必要ですので・・。
仕方がないので1.5リットル購入しました。
この事で学んだのは、鳥海山に登るなら7月・・、そしてアプローチはバス便なくて辛いけど、矢島(内陸側)の祓川か大清水から入って、唐獅子平か七ツ釜の無人小屋経由で登るべきだな・・と。
7月なら、この2つの避難小屋の前に水がある=幕営・無人小屋泊OKですから・・。
鳥海の深層水なるペットボトル500mlで500円
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7月なら、この2つの避難小屋の前に水がある=幕営・無人小屋泊OKですから・・。
良くあることですよ。
ctrl押してzで復活したこともありますが・・・
愛国~幸福行き 鉄道マニアではない私でも憧れたものです。