2020-08-02 (Sun)✎
よも”ヤマ”話 第112話 幌尻・七ッ沼・戸蔦別 その2 (七ッ沼カールへ) 〔北海道〕 '95・7
日高・幌尻岳 2052m(2度目の登頂) ※ 前回の第111話からの引き続き
我が国屈指の絶景へ・・
日高山脈 ひだかさんみゃく (日高山脈襟裳国定公園)
北海道の山も、近年ではかなりオープンとなってきた。 しかし、この日高山系だけは原始の姿を多くとどめていて、登山道はおろか未だ踏跡さえない山もあり、素人登山を決して受け付けない厳しさがある。
だが、原始の山とは、大いに征服欲をかきたてるものだ。 そして、大自然相手に数多くの困難の末、山頂にたどり着いた者のみが大自然そのままの景観を欲しいままにできるのである。
・・さて、日高の山のプロフィールであるが、大きく3つに分けられる。 最高峰の幌尻岳 2052メートル ・戸蔦別岳 1959メートル を含む北日高、カムイエクウチカウシ山 1979メートル や、標高がそのまま山名となった1839 (イッパーサンキュウ) 峰 1842メートル を含む中部日高、またペテガリ岳 1736メートル より南部にある南日高と呼ばれる山々に分けられる。
そして、この山系の見どころとしては、七ッ沼・コイボク・八ノ沢など、この山系の特徴である《カール地形》が挙げられる。 花ならば、戸蔦別岳からペテガリ岳までのカール地形に群落を成している。
しかし、これらの山々や“花の楽園”であるカールの底へたどり着くには、川を渡渉し、沢をつめ、時には滝を遡上しなければならない。
コース難度も全てが上級向きで、山小屋も北日高の幌尻山荘を除くと山中には全くなく、装備・体力・経験の全てが要求される。 初心者ならば、さしてキツくないアポイ岳 811メートル への“花の登山”から始めるといいだろう。
幌尻・七ッ沼・戸蔦別回遊ルート 行程図
行程表 ※ 当時の若き日の体力を元に作成 今はこの行程表通りに行くのはムリ
《1日目》 平取町・振内より車(1:10)→林道・振内ゲート(1:20)→北電・額平川取水ダム
(2:40)→幌尻山荘
《2日目》 幌尻山荘(1:30)→命の水(2:30)→幌尻岳(1:30)→七ッ沼カール底
《3日目》 七ッ沼カール底(1:20)→戸蔦別岳(3:00)→幌尻山荘(3:50)→林道・振内ゲートより車
(1:10)→平取町・振内
※ 前回の『第111話 幌尻・七ッ沼・戸蔦別 その1』の続き
日高・幌尻岳の頂上からは
日高の山なみが一望できるのだが
カールの端から、馬蹄形に半周まわり込むように登れば、日高山脈の盟主・幌尻岳 2052メートル に着く。 頂上からの眺めは雄大だ。 ピラミットのように端正な三角錐を形どる戸蔦別岳と、東西南北に展開する日高の山なみ。 登ってきた《北カール》や、《東カール》の縁の広がりも素晴らしい。
幌尻岳からはその稜線に隠されて
七ッ沼カールの絶景は見通せない
だか、《七ッ沼カール》は、戸蔦別岳からの稜線に隠れて見る事はできない。 はるばる日高までやってきても、日高・幌尻岳で最も「美味しい」情景を魅る事が叶わないのだ。 でも。『日本百名山』に感化されてこの山域に来た登山者は、得てして幌尻岳の頂上のみ踏んで往路を引き返していく。 せっかく苦労してここまで来たのに、一番“美味しい”所を見ないで帰るとは何ともったいない事だろう・・と思うよ。
それに空身とはいえ、標準コースタイムで上り4時間半の下り4時間近くかかるので、空身ピストン行程の登山者の方が頂上でも余裕なく、アリバイ写真を撮って慌ただしく下っていくようだ。
あぁ・・、もったいなぁ~。
ここまで来てこの絶景を
望まない事には満足できまい
※ 前回に登った時に撮影
だがワテは、それでは満足できない。 せっかく、我が国でも最高位にある大自然の地を踏んだのだ。
幌尻岳山頂の雄大な眺めを心ゆくまで楽しんだなら、本当の『日高』の魅力を思う存分味わうべく、まだ見ぬ“楽園”《七ッ沼カール》へ行こう。
幌尻岳からのルートであるが、幌尻岳からはゴツゴツした岩場をトラバース気味に下っていく。
岩にハイマツが絡みついて歩き辛いものの、辺り一帯は砂礫地のお花畑となっていて、エゾノハクサンイチゲ・チングルマ・エゾノツガザクラ・キジムシロ・ヨツバシオガマ・ミヤマクワガタ・チシマギキョウ・ミヤマリンドウ・・などが美しく彩っている。
カール壁に咲く花々
毒を持つ美しき花
エゾノハクサンイチゲ
ミヤマリンドウ
北に咲く花の紫は少し濃く魅惑的だ
紅い宝石
エゾノツガザクラ
ミヤマクワガタ
厳しい自然環境に耐えるべく
小さな花が多い
鮮やかな黄色を魅せる
キジムシロ
イワブクロ
:
この花を見かける場所は
いつも急傾斜の砂礫地だ
ついつい花に見とれてしまって、思わぬ時間を費やして幌尻岳の肩に着く。 ここからの《七ッ沼カール》の眺めは、言葉では言い表せない。 『楽園』そのものである。 そう・・、幌尻岳より先に下って行ってカール壁の上に立った者だけが、この地に立つ快感と喜びを享受できるのである。
「カックン」と傾斜が急になる地点に
咲いていたイワヒゲの白い宝石
しかし、楽園に見とれてばかりはいられない。 これから、『楽園』向わねばならないのだ。
幌尻岳の肩からカールの底まで、岩ガレの急坂をイッキに400m下降するのだ。 幌尻岳の肩からカール壁までは、膝がガクガクする程のキツい下りではあるのだが、何とか前を向いて下りる事ができる。
カール壁から望む幌尻岳
:
頂上からの急下降が見通せる
※ 前回に登った時に撮影
問題は、カール壁より先だ。 これまでより、更に急傾斜となるのだ。 足を踏み下ろす度に崩れ落ちる石ガレの急坂が続き、最後に“スプーンでえぐった”ような雪渓の下降が待ち受けているのだ。
カメラマン泣かせの絶景が広がる中で
最も危険なカール壁下降に挑まねばならない
しかも、周りを彩るお花畑、そして青く輝く《七ッ沼》や端正な三角錐の裾を広げる戸蔦別岳の景観と、カメラマン泣かせの好展望が足元に対する注意を散漫にさせる。 カメラを構えつつ下っていくと、“最後の雪渓”に取り付く。 雪渓の縁と岩肌はポケット状のクレバスとなっていて、取り付くのに苦労する。
やっとの思いで取り付いても、まだ油断は禁物。 この雪渓は、かなり急なのだ。
カール壁下部の雪渓は
スプーンでえぐったような急傾斜だ
おっかなびっくり下っていって、ついには“尻セード”(決して、マネはせぬように)で、“憧れの地”に降り立つ。 幌尻岳の雪解け水を飲んで心を落ち着かせてから、地上の『楽園』・七ッ沼カール探勝をしよう。
地上の『楽園』に降り立つ
カール底は池塘が
宝石の如く青く光っていた
カール底に下り立ち
下りてきたカール壁を見上げる
カール底より戸蔦別岳の三角錐を望む
:
カール底の道床は混じり気のない細かい砂粒で
それは無人島の海岸の砂浜のようであった
沼の縁を飾るお花畑、ハイマツのトンネル、切り立ったカール壁、両脇にそびえ立つ幌尻岳と戸蔦別岳、白砂の“庭園”と可憐に咲くミヤマアズマギク、その一つ一つが素晴らしき“楽園”なのだ。 その絶景は、到底ワテの拙い言葉では言い表せない。 なので、掲載写真にて語るとしようか。
我一人のパラダイスで遊ぶ
白砂の丘を見えると
「我一人のパラダイス」が広がっていた
艶めかしい淡い紫を魅せる
チシマフウロ
紅い宝石と白の妖精
エゾノツガザクラとチングルマ
キンバイソウ
人の寄りつかぬ所に咲く花は
色濃く生き生きとしている
今日はカール底のお花畑を散策した後、カール底に形成された白砂の丘を2~3越えた所にある『七ッ沼カール』と言わしめた大きな池塘の畔で、「我一人のパラダイス」の一夜の夢を紡ぐ事にしようか。
今夜・・一夜の夢を紡ぐ場所で
戸蔦別岳が近づいてくると
チングルマのコロニーに彩られた
七ッ沼の名づけ元となった
大きな池塘が現れる
今夜・・「我一人のパラダイス」の夢を紡ぐ所
池塘の畔に咲く
ミヤマアズマギク
カール底より明日登る
戸蔦別岳を見上げて
:
カール壁への下降は
コチラの戸蔦別側からの方が
傾斜が緩く安全だ
この地の夕暮れの絶景は
次回の113話にて
・・次々と現れる絶景の数々に、掲載写真の枚数がオーバーしてしまったので、『七ッ沼カール』の夕景は、次回の『第113話 幌尻・七ッ沼・戸蔦別 その3』にて語るとしよう。
カテゴリを『山・高原』から
『山・森林写真』に変えて
参加するブログさんの質が良くなったよ
これはメインのカテゴリが
『旅行』から『写真』に
変った事が理由だろうね
『登山』や『山・高原』のカテゴリに
見ていて最もつまらん
『家族登山日記』内容が多いのも
メインカテゴリが『旅行』だからだろうね
でも『家族日記』内容は本当につまらんよ
なぜなら「今日泊った山荘の食事がどうたら」とか
「山荘の様子がどうたら」とか
「子供(我が子)がどうたら」とか
別に知りたくもない内容満載だからだ
それに加えて日本の自然や山、
野生動物を死に追いやる事を
楽しいと抜かすチョンそのままのヒトモ▼キ
犬連れ登山のクズが蔓延ってきているし
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Re: No Subject * by 風来梨
さゆうさん、こんばんは。
ようこそ、おいで下さいました。
風景写真の第一任者のさゆうさんに見て頂いて嬉しい限りです。
25年ぐらい前の頃はこのようにハード山行ができたのですが、今は到底無理で、若きあの頃を思い出してワクワクしながら書いてます(笑)。
さゆうさんのブログの写真には、いつも魅せられます。 さゆうさんの記事を見て、冬のコッタロ湿原の撮影旅を計画している私です。
コメントを頂き、有難うございました。
ようこそ、おいで下さいました。
風景写真の第一任者のさゆうさんに見て頂いて嬉しい限りです。
25年ぐらい前の頃はこのようにハード山行ができたのですが、今は到底無理で、若きあの頃を思い出してワクワクしながら書いてます(笑)。
さゆうさんのブログの写真には、いつも魅せられます。 さゆうさんの記事を見て、冬のコッタロ湿原の撮影旅を計画している私です。
コメントを頂き、有難うございました。
No Subject * by 根室大喜
堪能いたしました^^)
Re: No Subject * by 風来梨
根室大喜さん、こんばんは。
堪能頂いてなによりです。 でも、もう一回続きます。 山行を挟みますので、この続きのアップは8/12以降です。 宜しなに~。
堪能頂いてなによりです。 でも、もう一回続きます。 山行を挟みますので、この続きのアップは8/12以降です。 宜しなに~。
素敵な山の絵と高山植物の数々ワクワクしながら観させて頂きました。
今日は訪問ありがとうございます。
とても嬉しかったです。