風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第439回  大日三山 その1 (夕景)

『日本百景』 夏  第439回  大日三山 その1 (夕景) 〔富山県〕

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立山・地獄谷越しに望む大日三山
奥大日岳がひときわ高い

  大日三山 だいにちさんざん (中部山岳国立公園)
北アルプスの山で最も魅力的な岩の“殿堂”・剱岳。 この剱岳の絶好の展望台が、傍らに鎮座するこの大日三山である。 山の雑誌でよく見る剱岳の写真も、この大日三山の稜線から撮られたものが多い。 
お薦めはは山が染まる夕暮れ時。 岩の殿堂が雲海と伴に輝くのだ。 

また、豊富なお花畑もこの山域の魅力の一つだ。 雲海に浮かぶ岩の殿堂を望み、お花端の庭園で遊ぶ山旅は、バスやロープウェイの車窓からは決して味わえない感動を体感できるだろう。



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大日三山・山遊ルート 行程図

   行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR富山駅より鉄道利用(1:05)→立山駅よりケーブルとバス利用(1:00)→室堂
      (0:30)→雷鳥沢(0:50)→新室堂乗越(2:00)→奥大日岳(2:10)→大日小屋
       大日小屋から大日岳へは往復20分
《2日目》 大日小屋(2:20)→奥大日岳(1:50)→新室堂乗越(0:50)→雷鳥沢
      (0:40)→室堂よりバスとケーブル(1:00)→立山駅より鉄道利用(1:05)→JR富山駅

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奥大日岳から望む
残雪眩しい立山の絶景

 《1日目》 室堂より剱岳を眺めつつ大日三山へ
アルピニストの憧れ、剱岳。 この山に登るのは山好きにとっては必定の事であるが、その姿を眺めるのもまた、山好きの“山好き”たる条件ではなかろうか・・と思う。 ひとくちに“剱を望む”といっても、剱は壮大で方角によって様々な姿を魅せてくれる。 

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剱が最も勇壮な姿を
魅せる場所への素晴らしき山旅へ

ヨーロピアン風景を奏でる裏剱・《八ッ峰》や《チンネ》、剱沢より望む本峰から《源次郎尾根》へ連なる“岩の殿堂”たる眺め、《長次郎谷》より望む剱刃鋭い岩峰群、そして剱が谷底から突き上げて圧倒的な迫力で迫る剱岳西壁。 今回は、この剱岳西壁の絶好の展望台である大日三山より、剱の圧倒的な山岳風景を眺めつつ、お花畑を愛でる素晴らしい山旅をしてみよう。

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眺望だけではなく
立山山域で最大のお花畑も楽しむ
贅沢極まる山旅へ出かけよう

剱・立山への玄関口・《室堂》は、言わずもがな『アルペンルート』の中心地点で、シーズン中は観光客が「芋洗い」の状態でやってくる。 この観光客の波がまた厄介で、休日ともなるとケーブルや高原バスは数時間の順番待ちを強いられるようになる。

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シーズンに入ると観光客で
ごった返す立山ケーブル乗り場
下手すると3時間待ちで
登山断念も有り得る混み様だ
※ ウィキペディア画像を拝借

《室堂》を散策する程度の観光目的ならばこのロスも許容範囲であろうが、登山となるとそうはいかない。
こういったロスが原因で登山の開始が午後にずれ込む事になれば、それこそ“一大事”である。
従って、日程の許す限り、平日に山行を計画する事をお薦めしたい。 例え平日であっても、信じられない程に多くの観光客がいるのだが。 

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ヤマに登るなら遅くとも7:20発の
ケーブルカーに乗らねばならないだろう
※ ウィキペディア画像を拝借

さて、前日からの夜行利用で富山方面からの始発列車を乗り継いできたのなら、立山7:20発位のケーブルに乗車できるだろう(あくまでも、平日の事であるが)。 想定通りの時間にケーブルとバスに乗車できたなら、室堂着8:30とギリギリの許容で登山を開始できる。

・・《室堂》のターミナルより、数本ある遊歩道を伝って《雷鳥沢》へ向かう。 時期が早ければ《室堂》周辺といえども豊富な残雪があり、遊歩道の階段に雪が残る事もあるので注意しよう。 なお、地獄谷めぐりのルートは、有毒ガス噴出の為に閉鎖されている。

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室堂での絶景は
ミクリヶ池に投影する立山の姿だろう

また、スニーカーでよたよた雪面を下る観光客が邪魔で、なかなか前に進めないかもしれない。
とにかく、《雷鳥沢》のキャンプ場まで下れば遊歩道は途切れるので、観光客とも離れる事ができる。
だが、この遊歩道の石段は踏み代が尖っているので、転ぶと大ケガにつながるので無理に観光客を抜き去る事は止めておいた方がいい。

《雷鳥》にかかる橋で《称名川》を渡った所から登山道は始まる。 これからアタックする大日三山の稜線は水場が皆無なので(大日小屋も天水利用との事である)、ここでしっかりと水を補給していこう。 

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称名川を渡って登山の領域に入ると
花もチラホラと現れ出す

橋を渡って《称名川》の右岸を伝うと、程なく剱御前への登路を右に分ける。 大日三山へは、そのまま直進して斜上気味に山裾に張り付いていく。 人の流れとしては、剱御前へ向かうのが7割から8割方という所であろうか。 

山裾を斜上気味に伝っていくと、《称名川》から離れて木道が敷設された雪渓の下部に出る。 
やがて木道は途切れ、《新室堂乗越》から直接落ちるこの雪渓をイッキに登っていく。 初心者ならば、アイゼンが必要な位の雪渓の急登だ。

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早い時期だとアイゼンがなければ
ややキツい雪渓の登高となる

この雪渓を登りつめると、剱御前への“裏ルート”の分岐点である《新室堂乗越》だ。 この分岐の周辺は、《雷鳥坂》(最初に分けた剱御前へのメインルート)の道とよく似ていて、《雷鳥坂》を数回登った者なら戸惑うかもしれない。

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新室堂乗越のお花畑越しに
大日三山を望む

《新室堂乗越》の高みを乗りきると、登山道は山腹を平行に巻くようにつけられている。
程なく剱御前への道を分けて、雪田の残る山肌を魅せて眼前に立ちはばかる奥大日岳の前衛峰に向かってつめていく。 しばらく起伏がほとんどない道を伝っていくと、ハイマツ越しに待ちに待った剱岳西壁の勇壮な岩壁が現れるだろう。 「天を衝く」という形容がぴったりの鋭い様相だ。 

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稜線上に出ると
武骨な岩塔の節々を引き連れて
天を衝く剱岳が現れる

剱を見ながら伝っていくと、いつの間にか足元にはお花畑が広がっている事だろう。 お花畑を愛でながら最高の山岳風景を眺める、山に来た喜びが胸いっぱいに込み上げる情景だ。 登山道は雪田を越えるごとに徐々に傾斜が増してきて、これをつめていくといつの間にか奥大日岳の前衛峰の頂に登り着く。 

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前衛峰から望む
奥大日岳の山屏風と大日岳

前衛峰からは、今までの道中であまり見渡せなかった奥大日岳の本峰が、巨大な山屏風となって現れる。 
ここから一度下って、この巨大な山屏風を稜線上に向かって斜めに突き上げていく。 この間は、しばらく剱岳とはお別れだ。 奥大日岳の西面は岩崩れが顕著で、幾筋にも崩壊筋が《称名川》に落ちている。
そして、この山屏風を登りつめると、このコースの最高の見せ場となる。 

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奥大日岳の頂上直下は
立山山域では最大のお花畑だ

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そして残雪眩しい立山の絶景が
眼前に広がる

稜線上の最端にある奥大日岳 2611メートル の頂上に向かって、花と山岳展望のおりなす雲上の楽園となるのだ。 豊富な残雪は水蒸気を上げ、太陽の光を拡散させて剱岳を幻想的な姿に浮かび上がらせている。

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雪田からの水蒸気によって
幻想的な姿を魅せる剱岳

花と残雪、そして目映く幻想的な剱岳。 これらの絵姿を望むと、ある欲望が頭から離れなくなる事だろう。

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斜陽を浴びて
眩く幻想的な姿を魅せる剱岳

それは、「この場所で、夜明けの誰もいない時にじっくり味わいたい」という願望・・。 そこには、もっと素晴らしい情景が広がっているに違いないのだ。 それだけの期待を抱かせるに十分な情景なのである。

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午後の斜光がキツくなり
剱がゴースト光線でクスんでくる

だが、現在の通過時刻が正午近くで雲も上がってきているので、やや剱岳がくすんできているかもしれない。 最高の条件で最高の景色を望みたいと思うのも、また山好きの性分なのである。 このまま進んで《大日小屋》で宿泊してしまうと、奥大日岳の頂での夜明けの情景は『夢』となる。 

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ただ頂上に登るだけでは
物足りなくなってくる
奥大日岳の頂上にて

『日本百景』の編集や《別冊》と銘打って自分の山旅を好き勝手に書き連ねると、いい景色を最高の条件で見ずにはいられぬ性分となってしまう。 そして、最高の情景を“夢”として諦める事も。 
従って、この山行では非合法は重々承知の上、ある事を実行したいと思う。 それは、途中の幕営可能地点での幕営である。 さて、脱線した話を元に戻して先に進もう。

奥大日岳よりは、再び西面を行く事になる。 相変わらず崩壊の激しいゴロゴロとした岩の急傾斜を下っていく。 当然、剱岳は奥大日の背後に姿を隠し、単調で足元のおぼつかない嫌な下りとなる。
西側は遮るものが何もなく立山と浄土山、そして《室堂》へ至る『アルペンルート』が望まれるが、観光バスがイモムシのように這っていたり、ホテルがチャーターした輸送ヘリが爆音を上げて飛び回るなどかなり無粋である。 

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眺めは絶景なるも
時折ヘリの爆音が耳につんざく

脆い崩壊地をイッキに下って最後の崩れきった所は長いハシゴで下ると、大日三山の稜線上で最低標高点となる《奥大日岳のコル》に下り着く。 ここの標高は2350m。 ここまで260mをイッキに下降する事になる。 稜線上で“イッキ下り”すると、大抵“お約束”の登り返しがあるものである。 もちろん、ここも例外ではない。 コルを境に、ゴロゴロとした岩場の急登が始まる。 

剱岳は奥大日岳の背後に隠れて、僅かに《早月尾根》が見えるだけとなっている。 奥大日岳より《大日小屋》の辺りまで剱岳は姿を隠し、代わりに毛勝山 2414メートル が中央にデンと居座るようになる。 午後によく発生する鈍重な雲のせいもあって、眺めも今イチである。 

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中大日岳の頂上台地の端が
明日の絶景への夢を紡ぐ場所となる

この登り返しをつめると、中大日岳の頂上台地の端に出る。 稜線上で唯一、快適にテントを設営できる所がここである(但し、1張りのみ)。 荷物をここにデポして、大日岳まで往復してこよう(但し、ここで幕営することは、あくまでも本行程のみであるので悪しからず。 正規の行程では《大日小屋》での宿泊となるし、水と食料と幕営装備一式を担いで来る必要がある)。 

このデポ地点から少し進むと、《七福園》と呼ばれる山上庭園が現れる。 ワテが通った時は花が少なく、岩と池塘のみの“秋”のような気配を漂わせていた。 庭園に敷設されている木道を通って《方丈窟》の岩小屋を見やると、樹木が周りを囲うようになり、それとなしに中大日岳 2500メートル の頂上を通過する。 中大日岳を示す山頂標は全くないので、たぶんその通過には気づかないだろう。 

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七福園ではイワカガミが
チョロっと咲いていたのみだった

頂上を越えると急下降となり、足下に見え出す《大日小屋》に向かって下りていく。 小屋でひと息着いたなら、大日岳 2501メートル を往復してこよう。 約10分の登りで大日岳の頂上だ。 
ワテが登った時は午後に湧き立つ雲で完全な曇天となり、残念ながら剱はもとより何も望む事ができなかった。 

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コイツはホントに肝が据わってたよ
小屋泊まりで軽装の登山客の群れが
騒ごうが悠然と砂掛けに興じていたよ

ただ、頂上では、人が見ていようが、カメラを向けようが悠然と砂かけをするドン鳥・・もとい雷鳥がずっと居座っていた。 頂上で一服して、今日は先程荷物をデポったテント設営地点に戻る。
さぁ、明日は最高の情景を心ゆくまで堪能しよう。

コレに魅せられたいが為に・・
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立山の山域が急速に暮れ始めて

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遠く薬師岳も雲の布団をまとう
日暮れの準備に取り掛かり

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そしてクライマックス・・
大日岳の方に陽が沈む

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クライマックスシーンに振り返ると
神秘の峰・毛勝山が
ピンクに染まる夕空に茫洋と佇んでいた

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夕陽の残照に染まる立山の峰々
明日の絶景に夢を馳せよう

  ※ 続く《2日目》は、次回の『第440回 大日三山 その2 (朝景)』にて・・


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