2020-06-10 (Wed)✎
よも”ヤマ”話 第104話 白峰三山・塩見岳 大縦走 その3 農鳥岳 〔山梨県・静岡県〕 '94・8
西農取岳 3051m、農鳥岳 3026m【名峰百選 42峰目】
農鳥岳から望むデカい間ノ岳と
スラリとした三角錐の北岳
白峰三山 しらみねさんざん (南アルプス国立公園)
南アルプスの北部には、北岳 3192メートル ・間ノ岳 3189メートル ・農鳥岳 3026メートル と、ひときわ高い峰が連なっている。 この3つの峰は、『白峰三山』と呼ばれている。
北岳は“知る人ぞ知る”日本第二の高峰で、間ノ岳も日本第四位につけている。 現在は、南アルプス林道の開通によってアプローチが容易となり登山者も増えてきたが、ひと昔前はこの山に登ろうとするなら前に立ちはばかる鳳凰三山を乗り越えるしか手がなく、限られた熟練クライマーのみが登頂を許される山であった。
景観では北岳が特に素晴らしく、雲海から上の眺めや周りの山々全てを“肩越し”に眺める爽快感、東面に落ち込む北岳バットレスの大岩壁とその斜面を飾る花々がおりなす“アルペン”風景、そしてこの山を染める高山植物の大群落など、高山的魅力はつきない。
白峰三山・塩見岳 大縦走 2日目 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR甲府駅よりバス(2:05)→広河原(2:30)→大樺沢二俣(2:00)→八本歯ノコル
(0:45)→吊尾根分岐(0:15)→北岳(0:50)→北岳山荘
《2日目》 北岳山荘(1:35)→間ノ岳(1:10)→農鳥小屋(0:45)→西農鳥岳
(0:35)→農鳥岳(1:10)→農鳥小屋(2:30)→熊ノ平
《3日目》 熊ノ平(2:45)→北荒川岳(2:00)→塩見岳(1:00)→塩見小屋
(2:20)→三伏沢幕営場
《4日目》 三伏沢幕営場(0:20)→三伏峠(3:30)→塩川よりバス(1:25)→JR伊那大島駅
※ 前回の『第103話 白峰三山・塩見岳 大縦走 その2』の続き
農鳥岳より望む富士
間ノ岳からは、ザラザラの砂地を急下降していく。 すぐ下に《農鳥小屋》がちょこんと建っているのが見えるが、なかなか着かない。 道が二重山陵の窪地に入ったり稜線上に上がったり・・と状況は変わるものの、なぜか小屋はなかなか着かない。 視野に入る小屋の大きさも変わらない。 事によれば、これは登るより疲れるかもしれない。 特に精神的に・・。
間ノ岳の二重山稜のガレ場下り
:
苦手な下りは『奇跡の体力』時でも
コースタイムと同じの平和(ピンフ)
ヘタった今ではドラ無しの三倍満(2.4倍)だ
それでも、この時は我が人生の最盛期である『奇跡の体力』の最盛期で、苦手の下りでもコースタイム通りに農鳥小屋まで下る事ができたよ。 だが、登りに比べて下りに時間を要するワテは、間ノ岳までの登りの方が2分早かったよ。 コレって、下りが遅いのか・・、はたまた登りが『奇跡』な位に早いのか。
間ノ岳からは
こういうガラ場の下りだ
さて、何とかこのキツい急傾斜を乗りきって、《農鳥小屋》に着く。 これから、眼前にそびえる農鳥岳へと登るのだ。 400m下って、250m登り返すのだ。 この先は熊ノ平へのショートカット道を通るので、荷物は小屋前にデホしていこう。
農鳥小屋から農鳥山塊を見上げる
※ ヘタレた20年後に撮った写真デス
眼前にそびえる農鳥岳山塊への“イッキ”の登降は、南アルプスの山を登るにあたっての“宿命”である。
だが、見た通り“イッキ”に登っていくので、そんなに時間がかからずにこの頂に登り着く事ができる。
山塊の上には割とアッサリと登り着くが、これは農鳥岳ではなく、西農鳥岳 3051メートル だ。
この峰は農鳥岳の前にあるが、あまりにも影の薄い存在で頂上標はおろか三角点さえ置かれぬ“悲運”の山だ。
西農鳥岳より望む
甲斐駒と鳳凰三山
だが、“本峰”の農鳥岳より25mも高く、南アルプスでも10番目の“高峰”である。 西農鳥岳からは、砕石帯をトラバース気味に下って緩やかに登り返すと、砕石がギザギザにささくれ立った細長い峰の頂に立つ。 白峰三山の最後の峰・農鳥岳 3026メートル の頂上だ。
農鳥岳からの代表的な眺めと言えば
間ノ岳と北岳の高峰揃い踏みですね
ちなみに、ここでも『奇跡の体力』の再生時とヘタレた今との違いを知る事になったよ。
これより20年後の『〔名峰次戦〕ファイナル』で農鳥岳に登った時は、西農鳥岳と農鳥岳の間のギザギザの砕石帯越えに行きも帰りも63分と、この時の往復にかかった時間の60分を片道だけで越えちまったよ。 まぁ、絶頂時が凄いと、歳食って割り引く様も凄いよね。 自身でも思うよ、「これはワテを騙る別人」だと。
明日に踏むターゲットの
漆黒の鉄兜・塩見岳を望む
登り着いた農鳥岳からの眺めは、“ゴージャス”のひとことである。 美しく端正な三角錐を魅せる北岳、そして二重山陵の筋を白く輝かせている巨大峰・間ノ岳の取り合わせに目を奪われる。 振り返ると、入道頭のような塩見岳 3052メートル 、その奥にそびえる悪沢岳・中岳・荒川前岳の勇姿も望める。
農鳥岳の頂上には、詩人・大町桂月の歌碑が立っている。
富士は少し離して
他の山々を入れた方がいいね
あいにく、草書体で刻まれているので何と詠んでいるのかは解からないが、たぶんこの素晴らしい眺めに魅せられた“思い”を詠んだのであろう。 素晴らしき眺めに立ち去るのも口惜しいが、午後は炎天下で蒸し焼きとなりかねないので、程よい所で切り上げよう。
そろそろ頂上を後にする時がきた
定番の「揃い踏み」のカットで
「so long! またくるよ」の挨拶としよう
『奇跡の体力』を発動して、農鳥岳の往復を頂上での滞在時間を含めて3時間でこなして、荷物をデポした農鳥小屋に戻ってくる。 ここからは、間ノ岳の懐をショートカットして熊ノ平に至るバイパス道を行く事にする。
このショートカット道はそんなに荒れてはいないが、脆く崩れやすい砂礫帯を通り、足を取られて転倒したりする危険が大いにあるので通過には注意が必要だ。 それに、この砂礫帯は白い砕石が多く、盛夏などは照り返しが思いのほか強烈である。 その暑さに意識がもうろうとして、ついつい足元の注意が散漫となり転倒する“行き倒れ”型の転倒が多いのである。
転ぶ前兆とは・・
炎天下で意識がもうろうとして
頭の中に花が咲き乱れる
※ 掲載写真無いので20年後の写真おば
転倒すると砕石帯なので、とても痛いのは言うまでもない。 ここで転倒した本人が言うので本当である。 それは何でもない平坦な所で、道の端で盛ったようになってた砂礫のガレを踏み抜いて、ド派手に2回転して転んだのである。 もう、「ツインリミテッド・ローリング・サンダー・スライデンク・スーパーヘッド・スペシャル」による「逆転サヨナラトライ」を決めてしまったよ。
「スーバープレイ」が炸裂して
美しい花の喝采を(妄想で)浴びる
※ 掲載写真無いので20年後の写真おば
もちろん、この「スーバープレイ」の後でタワケがした事は、「誰も見てないか」の確認である。
その確認が済んだら、二通りの対策の枝分かれがある。 それは人がいた場合といない時の分岐である。 人がいれば、もちろんカメラを撮るフリして転んだのを誤魔化すのである。 人がいなければ、道端にうずくまって転んだ痛さを堪えるのである。
転んだなら薬の投薬おば・・という事で
朝日を浴びる薬の花・トウヤクリンドウ
※ 掲載写真無いので20年後の写真おば
但し、誤魔化すのは血が出てない事が条件となるが。 花智(鼻血)など垂らして誤魔化すと、反って状況的にマズくなるのは自明の理な訳で。 歳食った昨今では反射神経が衰えて、コケると結構な確率で華知ブーとなるんだよね~、コレが。
歩くのが遅くなった事を
誤魔化す算段として
「高山植物撮影タイム」なる
モノを編み出したワテ
:
※ 20年後にこの新システムを駆使して
タカネツメクサを撮るワテ
さて、「ツインリミテッド・ローリング・・」発生地点から少し歩くとこの短絡道のほぼ中間地点で、《三国沢》の源頭の水場に出る。 この陽炎さえ出て意識がもうろうとなり「ツインリミテッド・ローリング・・」をカマす位に猛烈な暑さの中で、この沢はとても心強い。 ここで水を口に含み、気力を取り戻そう。 《熊ノ平》まで、あと1時間半程だ。
この水が水筒にある事を心の支えに、この苦行を乗り切る。 今日の幕営地・《熊ノ平》は水の豊富な所だ。 今日一日、暑さと渇きで苦しんだ分、ちょっと贅沢に水を使おう。 また、雨天の場合、食事付の小屋もあるので心強い。 明日は花の稜線を奥深く、南アルプスの南部に入っていこう。 そして、『漆黒の鉄兜』の異名を持つ塩見岳の頂を極めよう。
明日は『漆黒の鉄兜』を踏むぞ!
※ 続きは次話の『第105話 白峰三山・塩見岳 大縦走 その4』にて・・
掲載予約したこの記事が出る頃には
ワテは四国で『滝と鉄道の旅』
をやってるかと・・
なぜなら武漢ウイルスで
勤め先がヒマとなって
月2回が全社休業日となったから
旅でこの余暇を利用すると同時に
勤め先の給料以外の副収入の
充実を図らねば・・と思うワテ
今の所で副収入の割合は25%位・・
これを100%以上にせねば老後が
危ういと思うワテ
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No Subject * by 根室大喜
読んだり見たりしてるうちにゼーゼーと肩で息をするようになり、イタタタと全身に痛みを感じるようになりました。美しい山々を直に見るためには苦労が多そうですね^^)
Re: No Subject * by 風来梨
根室大喜さん、こんばんは。
私の場合、(自分の書いた若き日々の山の記事)を読んだり、見たりしたその翌朝の枕が、若き日の懐古の情で涙で濡れています。
私の場合、(自分の書いた若き日々の山の記事)を読んだり、見たりしたその翌朝の枕が、若き日の懐古の情で涙で濡れています。