風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第434回  戸隠山

『日本百景』 夏  第434回  戸隠山 〔長野県〕

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蟻ノ戸渡リ
コリは一般道では反則でしょう
でも戸隠・西岳側には
コレよりエグイのがあります

  戸隠連峰 とがくしれんぽう (上信越高原国立公園)
鬼女伝説の里・鬼無里 きなさ の村里より、鬼女の鎌が如く鋭く尖った岩峰群を連ねた連峰を望む事ができるだろう。 この峰々の連なりが、我が【名峰百選】に選した『戸隠連峰』である。 この山なみを眺めるなら、やはり厳冬期だ。 鋭い峰々に雪がまとって、白刃のような輝きを魅せてくれる。
だが、“登山”となれば別である。 厳冬期にこの荒々しい峰々を越えるのは、無謀以外の何ものでもない。 完全装備をもってしても、なお難関なのである。 

これらのことから、“登山”となればやはり夏、それも初夏の頃だろう。 残雪眩しい尖峰を越えて、連峰の盟主・戸隠山 1904メートル へ。 そして、稜線に咲く花々を愛でながら、遙か高くにそびえる高妻山 2353メートル へ渡っていく雲上のプロムナード。 この道を伝った者は、素晴らしい体験の連続に感動で体が打ち震える事だろう。



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戸隠連峰周遊ルート・行程図

     行程表             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 長野市街より車(0:40)→戸隠・奥社登山口駐車場(0:20)→森林植物園 
     (0:30)→戸隠奥社(2:00)→八方睨(0:10)→戸隠山(0:45)→九頭龍山
     (0:50)→一不動避難小屋・水場は下山路方向へ下り15分
《2日目》 一不動避難小屋(1:30)→八丁タルミ(1:00)→高妻山(2:00)→一不動避難小屋
     (1:30)→戸隠キャンプ場(0:45)→森林植物園(0:20)→戸隠・奥社登山口より車
     (0:40)→長野市街

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霧にけむる戸隠の嶮しい
岩稜線を目にして
気合いを入れて出発しよう

  《1日目》 戸隠奥社より戸隠山稜線へ
さて今回は、戸隠山から高妻山への縦走コースを歩いてみよう。 登山をするにあたって、このコースの特色を2~3挙げておきたい。 この山域には無人小屋しかなく、食料と宿泊用具(シュラフ・カンテラなど)は全て持参せねばならないという事。 次に、《蟻ノ戸渡リ》や《八丁タルミ》・《帯岩》など、通過に困難を伴う場所が数多く存在する事である。 

このことから考慮して、レベルとしては中級以上であると断言できる。 従って、スニーカー履きの初心者がいきなりアタックするのは無謀であるし、山での自炊経験のない者は、経験を経てから挑むべきであろう。 

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戸隠山は花も魅力の一つである

なぜ、このような事を記したのかというと、近頃の山小屋では食事・寝具等全てが備わっていて、お金さえ持ては自らで担いで上がる必要がない山が多くなったからである。 それに慣れてしまうと、山小屋は何でも備わっていていつでも宿泊できるものと錯覚しがちになり、その思想で無人小屋や小屋のない山域に平気でやってくるようになってしまう。 そうなれば困るのは当人であるし、周りにも多大な迷惑をかけてしまうのがオチとなるからだ。 

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難所など微塵も予測できないような
白砂敷きの神社参道が登山道の入口だ
※ ウィキペディア画像を拝借

登山のセオリー通り、朝早く出発しよう。 駐車場前の茶屋の脇にある《戸隠奥社》への参道に入る。 
砂利が綺麗に敷きつめられた杉並木が取り囲む薄暗い中を歩いていくと、立派な山門が現れる。 

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隋神門・・だと思う
神社関連はよく知らんしィ

《隋神門》である。 ここからやや傾斜を増していき、杉並木が途切れるまで伝っていくと、《戸隠奥社》が狭い山裾の高台に建っているのが見えてくるだろう。 ここには水場がある。 この先は《一不動》下の《一杯清水》まで水場はないので、補給をしていこう。 社務所の脇を通り抜けると、いよいよ『戸隠』への登高が始まる。

ここから稜線上の《八方睨》まで、標高差にして550m余り。 それを1.5km足らずで登っていくのだから、如何に戸隠の山肌が迫り出しているが判るであろう。 急登ゆえに登るごとに潅木帯からハイマツ帯に変わっていき、やがて稜線部を占める岩稜地帯へと入っていく。 岩稜地帯の入口には、《五十間長屋》と呼ばれる岩のヘツリがある。 

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五十間長屋のへつり
身長のある人なら頭ぶつかも

このヘツリで90°左に折れて、もうひと回り長い《百間長屋》の岩のヘツリを伝っていく。 
ヘツリの中にはお地蔵さんが祀られていて、厳しい条件の中もこの“長屋”で守られているみたいだ。 
《百間長屋》を通り抜けると、《西窟》と呼ばれる巨大な岩盤を仰ぎながら、この岩盤の裾をトラバース気味によじ登る。 これを這い上がると、《天狗ノ露地》という展望台に出る。 晴れていたなら、戸隠連峰の岩稜の核心部分・西岳や本院岳の姿が望める事だろう。 ここから、いよいよ鎖付きの岩登りとなる。 

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百間長屋には
道祖神が祀られていた

鎖場を3~4つこなして《胸突岩》という岩壁を登りつめると、コース最大の難所・《蟻ノ戸渡リ》である。 この《蟻ノ戸渡リ》は、戸隠山から派生する尾根が僅か50cmのナイフリッジを形成していて、これが吊尾根状に50m程続いているのである。

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馬乗りでなければ渡れぬ
難所の蟻ノ戸渡リ
でもこれより危険な蟻ノ戸渡リが
戸隠・西岳にあるよ
それはまたの機会に・・

もちろん、これを馬乗りになって通過していかねばならない。 それも、最も痩せている中間部は岩が脆くてアングルを打ち込めないようで、“鎖ナシ”なのである。 掲載写真でも判るように、両側は言うまでもなく絶壁である。 また、近年の気象被害の為、巻道も崩落して通行不可となっている・・との事である。 

従って、このコースより戸隠山へ登るのなら、《蟻ノ戸渡リ》は避けて通れないようになってしまった。 
過去に転落死亡事故も多発している・・との事なので、くれぐれも慎重を期して通過願いたい。

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戸隠山の頂上は
木に囲まれて展望はないが
手前の八方睨では
後立山側の眺望が期待できる

この難所を乗りきると、ひと登りで戸隠連峰随一の展望台である《八方睨》に出る。 ワテの登った時はガスに巻かれて視界ナシ・・という状況であったので、“但し、晴れていれば”という言葉を付け加えたい。

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晴れていれば
雄大な情景を独り占めだ

戸隠山 1904メートル の頂上は、これより200mほど北に進んだ所である。 なお、《八方睨》から、戸隠連峰岩稜の核心を成す西岳へのルートが分かれている。 こちらのルートは完全なる岩稜ルートで、ともすれば剱岳・北方稜線級の難度であろう。

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戸隠山の頂上には
チシマフウロが満開だった

さて、縦走路は進路を右に取り、戸隠山の頂上を経て、潅木が茂る片側痩せ尾根を伝っていく。 
潅木の切れ間より時折魅せる東側斜面は、数百mの切り立った崖で高度感満点だ。 道は概ね西側の傾斜の緩い方を巻いていくが、時折東側の断崖の縁を伝うので緊張感は持続させたい。 

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戸隠山からは蟻ノ戸渡リがウソのような
タルい樹林帯のルートを長々と伝って
ようやく一不動避難小屋が見えてくる

樹林に囲まれて展望が今イチ冴えない九頭龍山を通過して、東側に迫り出した《屏風岩》を避けるべく西側を巻いて130mほど急下降すると、今夜の宿となる《一不動》の避難小屋が狭い鞍部にちょこんと建っているのが見えてくるだろう。 小屋内は土間と床が仕切られており、宿泊する分には快適な無人小屋だ。 

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ほど良い広さで建付けも
しっかりしていて
水場も15分程下った所に
いい水場があるが

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土間と床が仕切られているが
野鼠の徘徊とトイレナシと
微妙な位置付けの避難小屋だ

但し、トイレはなく、水場もこれより15分程下った《一杯清水》まで汲みにいかねばならない。 

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一杯清水の先にある滝
清水は滝となって落ちてるしィ

今夜は手持ちの食料と寝具で、この小屋を利用しよう。 明日は、小屋内に荷物をデポって高妻山の往復だ。

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翌朝はまたとない登山日和だった

   ※ 続きは、次回『第435回 高妻山』にて


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6月に入っていよいよ
山のシーズンに突入するが

今年は武漢ウイルスの為に
シーズン突入がうやむやに
なってしまっている

山小屋も今年は開業を
見送るかもしれないね
だとしたらテント山行でないと
山に行けなくなるね



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