風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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よも”ヤマ”話  第91話  黄金ヶ原

よも”ヤマ”話  第91話  黄金ヶ原 〔北海道〕 '94・7

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あの大地が白く光る所まで
歩いていこう

  トムラウシ山 とむらうしやま (大雪山国立公園)
大雪山の山の中で、最もどっしりとした山容を魅せるのが、このトムラウシ山 2141メートル である。 この山は、山頂部に円頂丘を持つトロイデ型の火山で、大雪南部の盟主として知られている。 
そしてこの山は、周りに素晴らしい自然の造形を創り上げている。

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大地を自らの花の色で染める
大雪のお花畑

まずは、トムラウシ山腹にある『トムラウシ・日本庭園』である。 池塘と、花と、雪渓がおりなす自然の山水画・・。 大自然が、いったいどのようにしてこの景観を創造しえたのか。

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大地を花の色で染めて輝かす
奇跡の光景が見られるかも

また、トムラウシ山の西側には、『五色ヶ原』に優るとも劣らない“花の世界”・『黄金ヶ原』がある。
『黄金ヶ原』は、ミヤマキンバイやキンポウゲなど黄金色の花が多く咲き乱れ、その名の通り花が大地を黄金色に輝かすのである。 そして、この山は“眺める”のもいいだろう。

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大雪に咲く花は
どの花も色濃く魅惑的だ

《化雲平》から眺めるトムラウシ山は、また格別。 すぐ間近に、トムラウシ山がどっしりと構えた姿を魅せて壮観だ。 またこの平原は、ホソバウルップソウやエゾノハクサンイチゲの大群落地としても有名で、特にホソバウルップソウが満開の時は最高。 山の緑と紫の花が美しく、この平原を飾るのである。



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ヒサゴ沼~トムラウシ周遊 行程図

   行程表               駐車場・山小屋・トイレ情報
《1日目》 層雲峡温泉より車(1:00)→沼ノ原登山口(1:40)→沼ノ原・大沼(3:00)→五色ヶ原
     (0:20)→五色岳1:10)→化雲岳分岐(0:40)→ヒサゴ沼避難小屋
《2日目》 ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
     (1:25)→北沼(0:30)→トムラウシ山(2:00)→黄金ヶ原
     (1:40)→トムラウシ・南沼(1:35)→トムラウシ・日本庭園
     (1:00)→ヒサゴ沼避難小屋
《3日目》 ヒサゴ沼避難小屋(1:50)→五色岳(0:15)→五色ヶ原(2:30)→沼ノ原・大沼 
     (1:00)→沼ノ原登山口より車(1:00)→層雲峡温泉
       ※ 前回『第90話 トムラウシ・日本庭園 花めぐり』からの続き

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もう一つの花の楽園と言われる
黄金ヶ原へ

“憧れの山”・トムラウシからの眺めは、その期待を裏切らない素晴らしい眺めで、化雲岳の“デベソ岩”や、旭岳・白雲岳など『表大雪』の山々、そして《高根ヶ原》から続く大平原、遙か遠くそびえる石狩連峰の山なみ・・と続く。

だが圧巻は、これより先の十勝岳方面・・、黄金ヶ原の情景だ。 ユウトムラウシ川のカール地形を囲むように続く大地の先が、白く光っていたのだ。 この白い大地はいったい何なのか? それを確かめに、あの光る大地に向けて歩いていこう。

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トムラウシから下った所にある
花の宿場・トムラウシ南沼

トムラウシの頂から少しガチャガチャしたガレ場を下ると、程なく《トムラウシ・南沼》のキャンプ指定地の脇に下り着く。

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花に囲まれた別天地
トムラウシ・南沼

ここはトムラウシ山からの湧水が流れる別天地で、今後何泊もお世話になるテント露営地である。
この露営地を仕切る庭園状のハイマツを越えると、土砂崩れのような土崖を急下降するようになる。 

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トムラウシ・南沼からは
土崖を急下降していくようになる

約150mほど下って、お花畑が両端を挟む小道を進んでいく。 ふと振り返ると、トムラウシ山が二段の丘を従えてそびえ立っている。 まるで、城壁に囲まれた天守閣のようだ。 ここから見ると、トムラウシ山のトロイデ型火山・円頂丘の特徴がよくわかる。 お花畑が両端を飾る小道を歩いていくと、やがて緩やかな起伏を繰り返す砂礫帯に変わっていく。 

砂礫地に咲いてた花々 その1
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艶のある紅色を魅せる
タカネナデシコ

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魅惑的な紫を魅せる
ミヤマリンドウ

花も、エゾノハクサンイチゲやチシマフウロの群落が途切れ、チシマギキョウ・タカネナデシコ・ミヤマリンドウなど、砂礫地に咲く花々が見られるようになる。 しかし、あの“光放つ大地”は、この緩やかな砂礫の丘に隠されて見えない。 

砂礫地に咲いてた花々 その2
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小さい白い花なれど存在感の大きな
イワイチョウ

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砂礫地が途切れ草原となると
エゾコザクラのピンクの絨毯が広がる

だが、隠されると、より見たくなるのが人情だ。 こんな緩やかな小道ならカメラ片手にのんびりと歩くのだが、「光放つ大地」が頭から離れない。 それが何なのか、一刻も早く確かめたい。
その思いを更に強めて先を急ぐ。 

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この砂礫地でエゾノハクサンイチゲを
見かけなかったなぁと思った矢先に

道はハイマツのブッシュを乗り越えて、この丘の頂につながっている。 このハイマツ帯を乗り越えて、丘の頂に立とう。 すると、「白い光を放つ大地」の正体が明らかになる。 それは、下に広がる大平原一面、エゾノハクサンイチゲの花・花・花・・。

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白い光を放つ大地の正体・・
それは大地を埋め尽くす
エゾノハクサンイチゲの花だった

言葉も失う光景がそこにあった。 あの白く光る大地の輝きは、エゾノハクサンイチゲの白い花が一つ一つ合わさったものであったのだ。

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真に花・花・花・・
それ以外の表現の言葉が浮かばない

これは、《五色ヶ原》を凌ぐ“花の楽園”である。 あまりにも凄すぎて、写真を取るのもおごがましいような気がした。 後の言い訳になるかもしれないが、この偉大な『花の楽園』の全てを写真で表現する事は不可能ではないだろうか。 

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ともすれば白い斑点となり
写真での表現が難しい
背後に灌木の茂みをいれて
アクセントをつけたがムダだった

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ならば背景にヤマを入れようとしたが
生憎の空模様でヤマが霞んでしまった

そして、この『楽園』のすざましさは、エゾノハクサンイチゲ以外の花がほとんど見られない事だ。
だからこそ、大地から光放つ事ができるのだろう。 このため息さえ出る『楽園』の中に、一筋つけられた道を歩いていく。 

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花の楽園の中に続く
一筋つけられた道をゆく

道は左手の崖の方向に延びていて、やがて『楽園』を離れ、崖に沿うようになる。 この崖の下はユウトムラウシ川源流のカール地形となっていて、カールの底は森や雪渓、沼や小川など、『森』のイメージをそのままの風景が広がる。 そして、オプタテシケ山の三角錐が、カール端に裾野を延ばしているのが望まれる。

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今度訪れる時は霞んで見えた
オプタテシケのヤマを越えていこうか

今回は、このユウトムラウシ川源流のカール地形を形成する崖の手前、この広大な『花の楽園』が途切れ始める辺りで折り返す事にしよう。 帰り道も、息も着かせぬ白い花の波の中を歩いていく。

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踏み入れる事のできない楽園の奥は
より一層光を放っていた

帰路はトムラウシの頂を通らずに《トムラウシ・南沼》のキャンプ指定地を突っ切る、トムラウシの山裾のショートカット・ルートを通って《北沼》の畔に出る。

北沼の湿地帯に咲く花々
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イワイチョウが午後の光に輝く

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ミヤマリンドウが光を浴びて
より魅惑的な紫に

後は往路を往復して、ヒサゴ沼の避難小屋に戻る。 出発時に述べた通り、往復にかかる標準のコースタイムは10時間超であるので、あまりグズグスはしてられない。

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帰路のトムラウシ・日本庭園では
タカネナデシコの紅の誘惑に乗ったり

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キジムシロの
眩い黄色に惑わされたり

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ミヤマリンドウの濃紺の幻想に囚われて
足元が疎かにならぬよう

y90-3 (6)10時間かかって戻り着く頃には
空が夕立雲に覆われるから
落ち着いていこう

だが、焦って駆けだすのも御法度だ。 それは全般的に平坦なルートではあるが、途中にロックガーデンやハイマツのブッシュ・湿地帯の泥濘と、最後のヒサゴ沼への雪渓の急下降があるのだから。
慌ててケガでもすると、翌日の下山口までの長い行程に差し障るのだから。


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No Subject * by 鳳山
大雪山系の高山植物の花畑、本当にきれいです。大自然の素晴らしさを改めて感じました。

Re: No Subject * by  風来梨
鳳山さん、こんばんは。

> 大雪山系の高山植物の花畑、本当にきれいです。大自然の素晴らしさを改めて感じました。

この大地を白く輝かすエゾノハクサンイチゲは、ただただ驚異でした。
この大自然を前にして、人のちっぽけさをまざまざと感じましたね。
私は日頃神など「人が支配の為に作った偶像」として信じていませんが、この花の楽園を目にした時から「神があるとしたらこの大自然の事だ」と思うようになりました。


No Subject * by 根室大喜
北海道は広いので、花ものびのび広がって咲きますね^^)

Re: No Subject * by  風来梨
根室大喜さん、こんばんは。

> 北海道は広いので、花ものびのび広がって咲きますね^^)

大雪はご覧の記事の様に、一つの花で大地を染めます。
日高は、いろんな花がコロニーを作ります。
暑寒別は、稀少な種類の花が咲きます・・と、北海道のヤマは全て個性があります。
そして、その個性に大いに魅かれますね。



コメント






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No Subject

大雪山系の高山植物の花畑、本当にきれいです。大自然の素晴らしさを改めて感じました。
2020-02-16 * 鳳山 [ 編集 ]

Re: No Subject

鳳山さん、こんばんは。

> 大雪山系の高山植物の花畑、本当にきれいです。大自然の素晴らしさを改めて感じました。

この大地を白く輝かすエゾノハクサンイチゲは、ただただ驚異でした。
この大自然を前にして、人のちっぽけさをまざまざと感じましたね。
私は日頃神など「人が支配の為に作った偶像」として信じていませんが、この花の楽園を目にした時から「神があるとしたらこの大自然の事だ」と思うようになりました。

2020-02-17 *  風来梨 [ 編集 ]

No Subject

北海道は広いので、花ものびのび広がって咲きますね^^)
2020-02-29 * 根室大喜 [ 編集 ]

Re: No Subject

根室大喜さん、こんばんは。

> 北海道は広いので、花ものびのび広がって咲きますね^^)

大雪はご覧の記事の様に、一つの花で大地を染めます。
日高は、いろんな花がコロニーを作ります。
暑寒別は、稀少な種類の花が咲きます・・と、北海道のヤマは全て個性があります。
そして、その個性に大いに魅かれますね。


2020-02-29 *  風来梨 [ 編集 ]