風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第415回  仏ヶ浦・冬景

『日本百景』 冬 第415回  仏ヶ浦・冬景 〔青森県〕

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波涛が奇岩の基部を
エグるように打ち付ける

  仏ヶ浦 ほとけがうら (下北半島国定公園)
仏ヶ浦(ほとけがうら)は、青森県下北半島西岸の下北郡佐井村南部に所在する景勝地で、古くは仏宇陀(ほとけうだ)と称した。 陸奥湾口の平舘海峡に面した峻険な海岸沿いに、2km以上に渡って奇異な形態の断崖や巨岩が連なる海蝕崖の海岸である。

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下北半島の峻険な海岸沿いに
2km以上に渡って奇勝・奇岩が続く仏ヶ浦

緑色凝灰岩を主とした岩石が永い間の海蝕を受けて形成されたもので、それぞれの奇勝には、浄土のイメージを重ねて「如来の首」「五百羅漢」「極楽浜」など名づけられている。 90メートルを超える断崖もあるなど陸地から近づくのが困難な土地で、長らく地元民のみに知られる奇勝であった。

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この奇勝連なる景観は
永らく地元民だけが知り得たという
神秘のベールに包まれていた

文人で、登山家・紀行家としても日本各地に足跡を残した大町桂月(1869~1925)は、1922年9月に下北半島を訪れた際、仏ヶ浦を見て強い感動を覚え、「神のわざ 鬼の手つくり仏宇陀 人の世ならぬ処なりけり」の和歌をもってその奇観を賞した。 この歌を刻んだ歌碑が、仏ヶ浦の岸に建てられている。
仏ヶ浦が世に広く知られるようになったのは、桂月の紹介によるものである。

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天然記念物に指定された奇岩群は
この冬の荒波によって創造されたのだ

1934年に青森県の天然記念物に、1941年には国の名勝および天然記念物に指定され、『仏宇陀(仏ヶ浦)』と呼称されて、1968年には下北半島国定公園内の奇勝に指定されている。 更に1975年には、周辺の海域が『仏ヶ浦海中公園』に指定されている。 1991年には、観光船の接岸を目的に小規模な桟橋が建設された。



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仏ヶ浦 周辺地図

   アクセス
むつ市街より、大間崎経由で仏ヶ浦まで約90km・車で約3時間半。
  国道279号線・大間崎経由の道以外は全て冬季閉鎖。 大間崎から先の国道338号線
  は全線で舗装はされているものの、観光船が出航する佐井港より先はアイスバーンの
  狭隘区間となり、佐井~仏ヶ浦の33kmは1時間以上かかる。

   行程表
仏ヶ浦入口より下の砂浜までの高低差100mを、木段と桟道で急下降する。 所要・約25分。

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雪が降らない訳ではない
吹き荒れる風が雪を全て飛ばしてしまうのだ

かつては、青森からも途轍もなく遠いこの地は完全な『陸の孤島』と化し、この奇勝『仏ヶ浦』も地元民のみが知り得る存在だったという。 その事は、現代のそれも冬季に訪れる事で思い知らされる事だろう。

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波が削ったのか・・
地形の鉞(まさかり)の如く尖った尖岩

鉞(まさかり)の形をした下北半島の『刃』の部分に当たる位置にある『仏ヶ浦』へは、刃先に至る両端の大間崎と脇野沢の両端を結ぶ国道338号は冬季には脇野沢と集落の端である牛滝の間が冬季閉鎖となり、また恐山や宇曽利湖といった主要観光地を結ぶ県道も冬季閉鎖となる。

かつては、青森からも途轍もなく遠いこの地は完全な『陸の孤島』と化し、この奇勝『仏ヶ浦』も地元民のみが知り得る存在だったという。 その事は、現代のそれも冬季に訪れる事で思い知らされる事だろう。

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海の断崖もヤマと同じく
冬は通れない『嶮』となる

鉞(まさかり)の形をした下北半島の『刃』の部分に当たる位置にある『仏ヶ浦』へは、刃先に至る両端の大間崎と脇野沢の両端を結ぶ国道338号は冬季には脇野沢と集落の端である牛滝の間が冬季閉鎖となり、また恐山や宇曽利湖といった主要観光地を結ぶ県道も冬季閉鎖となる。

実際訪れてみると、下北半島の中心都市のむつ市街からでも、本州最北端の大間崎を周って5時間はかかるし、この間の公共交通機関もない。 そして、冬に現地を訪れる旅人も、ワテ以外にいなかった。

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冬に訪れたこの奇勝は
「ワテ一人のパラダイス」であった

でも、この『仏ヶ浦』は。冬季は訪れる観光客が極少ゆえに閉鎖されるような観光地ではない。
逆に、「冬こそ観光客が多い」のである。 だが、その『仏ヶ浦』を観光で訪れる観光客は現地には足を踏み入れず、遊覧船に乗って海上からの景観を楽しむのである。 その訪れる観光客のワテを除く全てを捌く観光船が出航する佐井港は、レストランから温泉・ホテルまで建ち並ぶレジャー港湾施設となっている。

要は、冬の名物である海上に渦巻く突風に身体を晒す事もなく、厳しい寒さに震える事もなく、高巻き襲い来るような波濤に慄くもなく、安全・安心に奇勝・絶景を愉しむ事ができるのだ。

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車道に設けられた展望台から
覗むだけもワテには物足りない

しかし、この奇勝・絶景を『日本百景』に選定したワテは、それでは物足りない。 船に乗って海上の着かず離れずの位置から眺めるだけでは物足りないのだ。 だから、もはや「冬は来る奴など誰もいない」として、施設が全て冬季閉鎖となった『仏ヶ浦』に敢えて向かう。 もちろん泊まる所もないので、冬の荒れた天候の中で車寝だ。

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木段を下る途中で目にする
最初に出会う奇岩

冬の一夜を凌いで翌朝、高低差100mの崖を階段と桟橋で下って、奇勝がそびえ立つ砂浜に立つ。

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高低差100m・木段と桟道を
約300段下って奇岩がそそり立つ砂浜へ

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砂浜に下り立って海を見渡すと
いきなり10m以上の高波が
仏ヶ浦来訪の御挨拶

波が波涛・・いや怒濤となって迫りくる。 『日本百景』の選定を思い立った頃、四半世紀前の夏に訪れた時は、今の怒濤が「夢まぼろし」でも見てるが如くの限りなく穏やかな眺めだったのに。

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夏の穏やかな時は
真下に立てたモアイ岩も
冬はこれ以上近づけない

もう、ムー大陸のモアイ岩の表情が岩の真下からマジマジと望めて、真に奇勝であった。
でも、今は違う。 寄せる波より上手の位置からでも、怒濤の波しぶきが降りかかってくる。
そして、波涛は空に渦巻いて上り、空の鈍重な雲と同化する。 もちろん、近づくと巻き上げられかねない強烈な怒濤だ。

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埠頭に打ち寄せる波涛が
空に舞って鈍重な雲と同化する

以前は歩けた遊歩道は、砂浜より先は全て波が被って通行などできない。 そう・・、ロクに近づく事もできないのに、奇岩の真下に立てた夏とは比べものにならない迫力が伝わってくる。

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遊歩道はこの先で波に巻かれて
通行不能だった

夏の観光船からの散策下船の為の港も、港埠頭が完全に波に巻かれて近づけない。 近づけば、確実に波の藻屑となる怒濤風景であった。 その「そら恐ろしい」眺めなるも、何か熱い感情のこみ上げる情景だった。

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遠くから眺めた埠頭は
怒濤となった波に飲み込まれる瞬間だった

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夏に観光船から散策客を降ろす埠頭も
波の藻屑となっていた

もう、これ以上文を記しても驚愕を表す冠詞の繰り返しとなるだけなので、フイルムカメラを通じて語った「いつまでも消えずに残る」写真を通して表現する事にしようか。

奇岩・仏ヶ浦の絶景
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そそり立つ奇岩と白く砕けた波と
冬の低い雲と隙間射す光がおりなす芸術

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雪と苔に彩られた屏風岩

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波涛が怒濤となって
モアイ岩を襲う瞬間

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肩を並べるモアイと
岩を越えて砂浜に押し寄せる波涛


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No Subject * by 鉄道日本一周
冬の仏が浦ですか…。すごーい。
私は56年前の1964年の夏に初めて行きました。当時は佐井から漁船をチャーターして一人寂しく訪れましたが、その感動は変わっていないようですね。
大間からのバスの便も悪く、行きはバスを利用したものの、帰りは佐井から大間までとぼとぼ歩きました。
夏でしたが、霧や雲が立ち込めて寂しかったことを覚えています。

No Subject * by 根室大喜
寒そう怖そう
駄菓子菓子
プロカメラマン?

No Subject * by 鳳山
恐山、仏ヶ浦、霊場と言われる理由が分かりますね。何とも不思議な景観です。

Re: No Subject * by  風来梨
日本一周さん、こんばんは。

> 冬の仏が浦ですか…。すごーい。
> 私は56年前の1964年の夏に初めて行きました。当時は佐井から漁船をチャーターして一人寂しく訪れましたが、その感動は変わっていないようですね。
> 大間からのバスの便も悪く、行きはバスを利用したものの、帰りは佐井から大間までとぼとぼ歩きました。
> 夏でしたが、霧や雲が立ち込めて寂しかったことを覚えています。

私も始めての仏ヶ浦は25年も前の夏でした。 日本一周さんが感じられたのと同じく、冷たい海霧が立ち込めて寂しい雰囲気でしたが、波だけは穏やかでモアイ岩の真下まで歩けたのを憶えています。

佐井の港から大間まで12kmはありますよ。 凄いですね。 昔の国道338号線は、ほとんどダート道だっただろうし。

Re: No Subject * by  風来梨
根室大喜さん、こんばんは。

> 寒そう怖そう
> 駄菓子菓子
> プロカメラマン?

慣れとは凄いモノで、今ではこういう状況になるのを喜んでいます。
プロカメラマン!? いえいえ、写真クラブなどの写真界からスポイルされて写真界の底辺を這いずる『写真床』です。

Re: No Subject * by  風来梨
鳳山さん、こんばんは。

> 恐山、仏ヶ浦、霊場と言われる理由が分かりますね。何とも不思議な景観です。

仏ヶ浦は、近年まで地元民のみが知り得る神秘の景勝だったそうです。
厳しい気候に耐える民の心の支えになった事で、霊が宿る奇勝と成ったのでしょうね。

コメント






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No Subject

冬の仏が浦ですか…。すごーい。
私は56年前の1964年の夏に初めて行きました。当時は佐井から漁船をチャーターして一人寂しく訪れましたが、その感動は変わっていないようですね。
大間からのバスの便も悪く、行きはバスを利用したものの、帰りは佐井から大間までとぼとぼ歩きました。
夏でしたが、霧や雲が立ち込めて寂しかったことを覚えています。
2020-01-31 * 鉄道日本一周 [ 編集 ]

No Subject

寒そう怖そう
駄菓子菓子
プロカメラマン?
2020-01-31 * 根室大喜 [ 編集 ]

No Subject

恐山、仏ヶ浦、霊場と言われる理由が分かりますね。何とも不思議な景観です。
2020-01-31 * 鳳山 [ 編集 ]

Re: No Subject

日本一周さん、こんばんは。

> 冬の仏が浦ですか…。すごーい。
> 私は56年前の1964年の夏に初めて行きました。当時は佐井から漁船をチャーターして一人寂しく訪れましたが、その感動は変わっていないようですね。
> 大間からのバスの便も悪く、行きはバスを利用したものの、帰りは佐井から大間までとぼとぼ歩きました。
> 夏でしたが、霧や雲が立ち込めて寂しかったことを覚えています。

私も始めての仏ヶ浦は25年も前の夏でした。 日本一周さんが感じられたのと同じく、冷たい海霧が立ち込めて寂しい雰囲気でしたが、波だけは穏やかでモアイ岩の真下まで歩けたのを憶えています。

佐井の港から大間まで12kmはありますよ。 凄いですね。 昔の国道338号線は、ほとんどダート道だっただろうし。
2020-01-31 *  風来梨 [ 編集 ]

Re: No Subject

根室大喜さん、こんばんは。

> 寒そう怖そう
> 駄菓子菓子
> プロカメラマン?

慣れとは凄いモノで、今ではこういう状況になるのを喜んでいます。
プロカメラマン!? いえいえ、写真クラブなどの写真界からスポイルされて写真界の底辺を這いずる『写真床』です。
2020-01-31 *  風来梨 [ 編集 ]

Re: No Subject

鳳山さん、こんばんは。

> 恐山、仏ヶ浦、霊場と言われる理由が分かりますね。何とも不思議な景観です。

仏ヶ浦は、近年まで地元民のみが知り得る神秘の景勝だったそうです。
厳しい気候に耐える民の心の支えになった事で、霊が宿る奇勝と成ったのでしょうね。
2020-01-31 *  風来梨 [ 編集 ]