風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第408回  仙人池 再び・・ その3

『日本百景』 秋 第408回 仙人池 再び・・ その3 《近藤岩~仙人池》 〔富山県〕

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我が国山岳情景屈指の絶景へ・・

   仙人池 再び・・
時が経つ(歳を喰う)のは早過ぎるというか残酷なもので、前回仙人池に訪れた時からもう20年経ってしまった。 あの頃は『奇跡の体力』の最盛期で、今回の所要時間の半分で駆け抜ける事ができたが、今はヘタるだけヘタれてしまったよ。

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ヘタレを克服して得れる
絶景を求めてヤマへ

これだけヘタれると、何度か通った仙人池へのルートも「ほとんど初めて歩いた感覚」となるのだ。
それは、若き頃に保持していた『奇跡の体力』が終焉を迎え歳を喰うと共にヘタレが加速して、実際にヤマに訪れてはその事をイヤという程に思い知らされ続けて、「あの『奇跡の体力』は夢まぼろしだったのだ・・」と諦めが頭の中を支配し始めた証なのだろう。

もし、あの『奇跡の体力』の残像がまだ頭の中にこびり着いていたなら、「こんなハズではない」という思いに苛まれているだろうし・・。 それでは、何度か通ったこの仙人池へのルートを、20年の時を経て「初めて歩いた感覚」で伝ってみようと思う



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今回の山行の1・2日目行程図

   行程記録 ・・記してて涙がこぼれそうになった行程記録
《1日目》 JR富山駅より鉄道利用(1:05)→立山駅よりケーブルとバス(1:00)→室堂
     (0:30)→雷鳥平(1:50)→剱御前小屋(1:00)→剱沢(4:40)→真砂沢小屋前
《2日目》 真砂沢小屋前(1:40)→近藤岩・二股(3:20)→仙人池
《3日目》 仙人池(3:00)→仙人温泉(4:30)→仙人ダム(1:20)→阿曽原温泉
《4日目》 阿曽原温泉(6:40)→欅平より渓谷鉄道利用(1:20)→宇奈月温泉駅より鉄道利用
     (0:30)→黒部宇奈月温泉駅
    ※ 前回『第407回 仙人池・再び・・ その2』の続きです。

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今日の行程は安息日に近く
この《近藤岩》まででも
コースタイムは1時間ちょっとだ

《2日目》のこの日は地図上のコースタイムで4時間足らず・・と、キリキリ歩けば昼前早くに仙人池に登り着く行程であるが、この山行を企画した当初は「最大の難関」がある日でもあった。
それは、これより渡る北股沢の吊橋が撤去されて、渡渉が必須となった事だ。

でも、これは想定違いで、何度も通った事があり『安全パイ』と目された《初日》でさえ、メインザイルを撤去されて残置ザイルしかないツルツルのスラブ一枚岩の下降や、時間がかかり過ぎてカンテラが必要になったり、真っ暗闇の沢に炊事の水を汲みにいく『オチャメ』な目にあったし。 そして、これまでも丸太の桟道が縦になって「幅一本分」となった鎖場など、「最大の難関」と目していた沢渡渉が比較して『大したイベント』ではなくなってきていたのである。

でも、結構流れの大きな急流の沢で、生涯幅跳びで3mの大台を超えた事がないなど、タダでさえ身体能力が下の下のワテにとっては「生唾モノ」のイベントだったのである。 しかも、装備一式22㎏を担いでいるので、沢で転ぶと即座にゲームオーバーとなる恐怖が付きまとうのである。

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北股沢は三ノ窓雪渓より流れ出る沢で
周囲は絶景が広がる

さて、《近藤岩》が鎮座する河原で剱沢の秋景色を撮って心を落ち着けて、このすぐ先にある北股沢に向かう。 案の定、綺麗サッパリと吊橋は跡形もなく撤去されて、両岸にコンクリートの橋の土台があるのみだった。 そして、結構急流な早瀬が流れていた(ワテにはそう見えた)。 朝に抜かれた今日中に阿曽原温泉まで行く方によると、この沢は「膝下位の水位で、飛び石伝いで渡れる」との事だそうだけど、ワテにはムリである。

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小屋の営業終了の2日後に撤去とは
「仕事が早い!」
昨日の工事用のボンボリライトは
コレの撤去のためだったのね

この時、昨日《真砂沢》に着く直前に目にした遥か遠くで灯っていた「工事用のボンボリライト」は、この吊り橋の撤去工事の為のものだと解ったよ。 いゃぁ・・「仕事が早い!」、イヤ早すぎるよ!
文句垂れたけど、この渡渉を見越して渡渉靴をもってきていたので、ジャージのズボンを脱いでトランクスイチになる。 足が常人に比べて短いので、ジャージの裾を捲っただけでは濡れる事必至だったからである。

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この沢を渡渉しますた

そして登山靴と水に濡れたらオシャカのカメラをムリヤリザックに詰め込んで爆発させて、ストックだけを頼りに「イベント」に挑む。 珍しく用意周到に臨んだせいか、あっさりと渡渉できたよ。
でも、ストックを握る手やTシャツの中の上半身が、緊張で汗ばんでいたけど。 だから暑くてちょっとの間、上着・中シャツを脱いでTシャツ一枚で登っていたな。

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『イベント』の沢渡渉を終えると
右手の紅葉の尾根を登っていく

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これより500mの直登だ
気合いを入れるべく
絶景をズームで引っ張って激写!

さて、この渡渉『イベント』を終えると、後は《仙人池ヒュッテ》の建つ頂稜部まで《仙人新道》の500mイッキ登りだけだ。 そして、その前にポリタンに2リットルの水を汲んで担いでいかねばならない。
なぜなら、もう《仙人池ヒュッテ》も《池ノ平小屋》も営業終了していてこれよりは、この頂稜部を越えて仙人谷の沢筋に下るまで水が得られないからである。

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今日もう一つのミッションの
2リットルの水を担ぎ上げるべく
この沢で水を汲む

2リットルの水を汲んでパッキングして、ワテが精神的に潰れる限界の『25㎏』まで「アト1㎏」となったよ。 まぁ、『25㎏』を意識して、普段はポリタン目一杯(目一杯汲んで2.2リットル相当)汲む水をちょうど2リットルにするトコトン『小市民』のワテ。

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紅葉にシャドーが入り
得も言えぬ絶景シーンに

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背後の三ノ沢雪渓を絡めると
絶景はより魅惑的に

さて、登り始めは急登だが、小屋の営業期間中はかなりの人が通ったのか頃良い踏み段状となった道を登っていく。 人の足が届かない程の段差には脚立ハシゴが架けられていて、手間取る事なく登っていける。

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森林帯より出ると
紅葉に彩られた山なみが広がる

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ルートは後立山そびえる
黒部側を巻いて登っていく

沢で汲んだ水を含めて24㎏担いでる割にはスタスタと登ってゆき、40分程で三ノ窓雪渓の絶景が見渡させる尾根上の最下端に出る。 それでは、紅葉に彩られた三ノ窓の絶景をごろうじろ。

奇跡の絶景・三ノ窓雪渓
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言葉を失う絶景がそこにあった

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撮りながらあの雪渓を登っている
若き日のワテの姿を想像をしたよ
未踏のまま歳食ったけど

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いつかムリヤリにでも登ってみようかな
若き日の何でも叶う気がしたあの心で

ここで30分近く、フイルム1本近くを費やして「お腹一杯」になっちゃった。 人間というモノは、「お腹いっぱい」になると行動がモタモタするものだ。 つまり、ダレてくるのである。 ワテも右に倣えで、ここから上りの傾斜は緩くなるものの、足が前に出なくなる。

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三ノ沢雪渓だけでなく
紅葉に彩られた山々にも魅せられて

そして、足が前に出辛くなる度に「絶景の撮影タイム」と銘打って、カメラをいじりながら立ち止まるのである。 その上に天気はドピーカンで、秋とは思えない程に暑い日差しが照り注ぐのである。

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三ノ窓だけでなく黒部側の後立山の
山なみにも魅せられる

これの繰り返しとなると、どんな奴でも必ずバテるのである。 案の定ワテもバテてきたよ。
暑くて水を飲みたくなるが下の沢で汲んだ水に手をつけるのは御法度で、「この水を飲めば飲んだ分だけ軽くなるのに」という妄想だけ抱いて、飲む事を許可されたペットボトルの行動水(スティクミルクティー・テイスト)をチマチマと飲む。 まぁ、この登りまでの沢伝いでは自由に沢の水を飲めたので、喉がカラカラって訳ではなかったけど。

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左を見れば三ノ窓の絶景

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右を見れば後立山と黒部の絶景

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そして正面も紅葉に彩られる山の絶景
コレだけ立ち止まると
バテるよね・・絶対!

やがて、20年前はなかった『展望ベンチ』があらわれる八ッ峰の展望台に登り着く。
もちろん、ここでも10分以上の「絶景の撮影タイム」となったよ。 それでは、その絶景をごろうじろ。

八ッ峰の絶景
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角突き上げるクレオパトラニードル

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小窓雪渓を入れるアングルは
より嶮しさを魅せて

このベンチを越えると紅葉に色着いた灌木帯に入り、紅葉に魅せられながらの登りとなる。 山肌の右側を斜めを切るように登っていくと、登っていく尾根がぶつかる頂稜部の右端に《仙人池ヒュッテ》の建物がみえてくる。 だが、ここからなかなか、「登っている尾根がぶつかる頂稜部」に着かない。

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展望台ペンチからは
山肌の黒部側に取り付いて
斜めに登っていく

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この辺りが紅葉の色着きが
マックスのようだ

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山肌の右側に取り付いて後立山側を望むと
仙人池ヒュッテの建物が見えてくる

あくまでも感覚で時計は見てないが、ヒュッテの建物が見えてから小一時間たったのではないか・・と思う。

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ヒュッテが見えてからが長かったよ
小一時間の間ずっとヒュッテの
大きさが変わらんかったしィ

・・が、キリキリ登ってもダラダラ登っても最終的に登り着く事ができるという『結果』は同じなので、ヘタレとなったワテでもヤマを続けられるのである。 まぁ、コレが過ぎると、昨日の様にカンテラ点けて・・となるけど。

やがて「尾根がぶつかる頂稜部」の《池ノ平・仙人池分岐》に出る。 ここから《仙人池ヒュッテ》までは、踏み板の階段に整備されてたよ。 踏み板状の階段は雨が降ったら滑るが、晴れていたら「延々に椅子が並ぶ」ヘタレにとっては最高のシュチュエーションとなるのである。

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踏み板にただ座っていただけではない!
キチンと腰を据えて写真撮ってたよ

このシュチュエーションに甘えて、10段で1回のスパンの勢いで腰かけていたよ。 だから地図上10分が25分の『三倍満』以上の和了となったよ。 このおかげで、予定到着時刻の12時を1時間上回る13:03に《仙人池ヒュッテ》前に到着。 ヒュッテは既に営業を終え、入口や窓は板が打ち付けられていたよ。

テント場は《池ノ平小屋》で《仙人池ヒュッテ》前は幕営禁止なのだけど、もうヒュッテは閉鎖してるので、ヘグを打って地面に穴を開けない『お約束』で、ここにテントを張る。 今のヘタレじゃぁ、+30分の《池ノ平小屋》で明日の明るい内に《欅平》まで下山できないから。←からっていうか、明日1日で下山できなかったんだけど・・

  ※ 続くクライマックスの『仙人池・水鏡』の絶景と下山は、
    次回のこの山行最終回『第409回 仙人池 再び・・ その4』にて。



いつもはこの秋に登ったヤマは
記事を書く余裕を確保すべく
来年の秋にアップするのだが

この絶景を魅せたくて冬に突入した
12月にアップしてしまったよ


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No Subject * by 鳳山
三ノ窓雪渓、壮観ですね。その他の景色も高山特有で素晴らしい。下界で生きる私などは絶対に経験できません。

Re: No Subject * by  風来梨
鳳山さん、こんばんは。

> 三ノ窓雪渓、壮観ですね。その他の景色も高山特有で素晴らしい。下界で生きる私などは絶対に経験できません。

秋の裏剱は、我が国屈指の絶景です。あの絶景が見たくて、ヘタレにムチ打って山旅をしました。 それで、ますます進行する不治の病・ヘタレの悪化を思い知らされましたよ。 でも、生涯の楽しみとしてやめられませんね。 山ノボラーは・・。

コメント






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No Subject

三ノ窓雪渓、壮観ですね。その他の景色も高山特有で素晴らしい。下界で生きる私などは絶対に経験できません。
2019-12-07 * 鳳山 [ 編集 ]

Re: No Subject

鳳山さん、こんばんは。

> 三ノ窓雪渓、壮観ですね。その他の景色も高山特有で素晴らしい。下界で生きる私などは絶対に経験できません。

秋の裏剱は、我が国屈指の絶景です。あの絶景が見たくて、ヘタレにムチ打って山旅をしました。 それで、ますます進行する不治の病・ヘタレの悪化を思い知らされましたよ。 でも、生涯の楽しみとしてやめられませんね。 山ノボラーは・・。
2019-12-08 *  風来梨 [ 編集 ]