2019-11-08 (Fri)✎
よも”ヤマ”話 第82話 鹿島槍~五竜岳縦走 その1 《扇沢~冷池山荘》
〔長野県・富山県〕 '94・7 爺ヶ岳 2670m
湧き立つガスが掛かって
神秘的な姿を魅せる鹿島槍ヶ岳
後立山連峰 うしろたてやまれんぽう (中部山岳国立公園)
秀峰・白馬岳を盟主とした後立山連峰は個性的で優れた山容を持つ名峰が多く、人気・魅力とも北アルプスではトップクラスである。
大雪渓と広大なお花畑を擁する盟主・白馬岳 2932メートル 、高山のいで湯とお花畑が自慢の白馬鑓ヶ岳 2903メートル 、山々の姿を映す八方沼と広大なお花畑をかかえる唐松岳 2699メートル 、武田氏の御陵菱を雪形に持つ五竜岳 2814メートル 、2つのピークが吊尾根で結ばれていて他の山から眺めてもひときわ目立つ後立山連峰のもう一つの盟主・鹿島槍ヶ岳 2890メートル など、今すぐにでも飛んでいきたい名峰がそろっている。
登山コースはどのルートを取っても素晴らしいものばかりだが、特に白馬岳から栂池へ下っていくコースは、山上の楽園を散歩する気分を満喫できる最高のコースである。 その他にも、唐松岳の北側にノコギリ刃のような岩峰を連ねる《不帰ノ嶮》を通るコースや、鹿島槍ヶ岳の北にある《八峰キレット》など、バリエーションコースも豊富である。
鹿島槍~五竜岳 縦走ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》JR信濃大町駅よりバス(0:40)→扇沢(0:10)→扇沢出合(3:20)→種池山荘
(0:50)→爺ヶ岳・南峰(1:00)→冷池山荘
《2日目》冷池山荘(2:00)→鹿島槍ヶ岳・南峰(0:35)→鹿島槍ヶ岳・北峰
(1:50)→八峰キレット(0:50)→口ノ沢ノコル(3:00)→五竜岳(0:50)→五竜山荘
《3日目》五竜山荘(1:20)→大遠見山(1:30)→小遠見山(1:00)→地蔵ノ頭よりリフト
(0:05)→アルプス平駅よりテレキャビン(0:10)→山麓駅(0:25)→JR神城駅
爺ヶ岳の頂から望む
雪渓筋輝く針ノ木岳
《1日目》 扇沢から種池・冷池へ
かつては信濃大町駅5時到着の急行【アルプス】号が運行されていて、それに接続する形で《扇沢》行のバスが運行されていた。 だが、鉄道の立場が決定的に落ち込んで、夜行列車は全て運行廃止となってしまったよ。 その代わりに、上高地や後立山の登山口を牛耳る《アルピコ交通》が登山シーズンに夜行バスを運行するようになった。
だが、夜行バスは狭く寝苦しい上に席数が僅かに48席しかなく、シーズン中の「美味しい休日」を使った山旅では、前の季節である春・・即ち前の季節である春から予約せねば乗れないのである。
車内が広くよく眠れて
予約しなくても乗りっぱぐれのない列車は
山ヤさんにとって優しい存在だったよ
※ ウィキペディア画像を拝借
何かこう・・、便利になったのか帰って窮屈になったか解らん世の中になったよね。
そして、今回のこの縦走ルートは登山口と下山先が異なる縦走山行であるので、マイカーでのアプローチは車の回収が必要の不利となるのである。 まぁ、当時は放浪山旅で、時間と手間なんて気にする必要がなかったのではあるが・・。
でも、これより30年後の今に、この夜行バスの使い辛さを味わうのである。 それは、ただでさえ少ないバスの座席を山岳ツァーを組んだ旅行会社が根こそぎ押さえてしまうのである。 だから、「1ヶ月前なら大丈夫だろう」と予約を入れたら満席で、これはキャンセル待ちに賭けるか、マイカーでシンドイ思い(前夜発の車の運転は疲れる)をするか、山行を断念するかの選択を迫られるのだ。
大阪からの急行【ちくま】も
関西の山ノボラーの強い味方だった
・・で、それも台風が来た途端に旅行会社の押さえていた座席は全てキャンセルで、前日ようやくバスの予約が取れたかと思えば、当日のバスの乗客は僅か7名と「殴ってやりたくなる」ような状況だったよ。
毎日安定運行で混んでいても、乗り遅れさえしなければ確実に乗れる鉄道は、山ヤさんには優しかったなぁ・・と強く感じるよ。
・・さて、この『よも”ヤマ”話』とは全く関係のない今のワテの愚痴を書いたが、話を元に戻そう。
当時は時間よりも金をケチる必然性が高い『プーの放浪山旅』だったので、当然宿泊費に回す金など組んでおらず、登山口にほど近い扇沢駅の駐車場で夜行バスより狭いハッチバックの車の座席を倒して車寝となる。 でも、夜行バスよ断然良く寝れたのは、若さだけのせいではないだろうね。
『道の駅』がまだ出回ってないこの頃
扇沢駅を『道の駅』として使っていたワテ
※ 別の機会に撮影
まぁ、扇沢駅はトイレ・自動販売機完備で、今の『道の駅』の機能を果たしていたし・・ね。
また、庶民層の暮らしも全体的に余裕があったのか、宿泊費をケチるべく車寝するようなのはほとんどいなかったし。
・・で、5時前の空が明るくなった頃に自然に目覚めて、扇沢駅でトイレなど出発準備を整えて、6時前には登山開始できたよ。 扇沢駅からは車道を少し戻り、トラス橋を渡り終えたたもとにある《扇沢出合》から『柏原新道』に入っていく。
ある程度登った所にある
《八見ベンチ》展望台より望む針ノ木岳
この『柏原新道』は、《種池山荘》の経営者・柏原正泰氏が切り開いた事から、その功績を称えて名づけられた道だ。 登山口をくぐって尾根の末端を覆う樹林帯をジグザグに登っていくと、やがて中腹のトラバースに移る。 これより左手が開けて、蓮華岳・針ノ木岳から岩小屋沢岳にかけての立て屏風のような主稜線や、『日本三大雪渓』の1つ・《針ノ木雪渓》が白竜の如く主稜線に突き上げているのが見渡せる。
稜線に出る直前の展望
針ノ木雪渓が森林に隠れてしまったよ
大きなターンを数回こなすと南稜の支稜線の上に出て、シラビソやダケカンバが目立つ石畳みの道に出る。
ここは登山道開設工事の時の石畳みの名残で、そのまま《石畳》と呼ばれている。
ここを通り過ぎると森林限界が近づいたのか、頭上を中心に展望が広がって明るい雰囲気となってくる。
残雪眩しい主稜線を仰ぎながら歩いていくと、道は南稜を離れて西方へ大きく周り込んでいく。
この南稜からの乗り換えの途中で、《扇沢》の右俣源頭を渡る。 普段は涸れ沢のトラバースだが、早い時期などは雪渓を渡る事となろう。 やがて、迫り出した支尾根のヒダを巻き気味に登っていくと道は右に折れて草付きの斜面となり、頭上には《種池山荘》が現れる。 後は《種池山荘》に向かって、ほぼ一直線に仕切られた砂利盛りの道を登っていけばいい。
種池山荘への登りが
最もキツく感じた当時のワテ
※ 大町市の観光案内サイトより
照りつける太陽と白い砂利石からの照り返しのせいか、このルートで最もキツいと思われるこの山荘前の坂を乗りきると、高山植物花咲く《種池平》に飛び出す。 もちろん、《種池山荘》は目の前に建っている。
これより逆光で黒い山体を魅せる
爺ヶ岳に登っている
《種池山荘》で休憩の後、東へ進路を取ってピラミタルな山容の爺ヶ岳に向かって登っていく。
しかし、若かったこの時と今とでは、《種池山荘》のワテの中での立ち位置も随分と変わったモノである。
この当時は、「《種池山荘》なんて位置的に、休憩利用の価値しかない山荘で泊る必要は皆無だな」と『高飛車』を括っていたのが、四半世紀後の今では台風の為に午後から天気が荒れた事もあったが、キッチリと『バタンキュー』して泊ってるよ。
でも、『奇跡の体力』を保持していたこの時なら、風が吹き荒れる中を《冷池山荘》まで歩いていたんだろうね。 この当時は「体力はあるが金はナイ」で予定外の山荘に泊るなどもっての外で、「日程が延びる=金がかかる」という事で、そういう事に神経を尖らせていたもんな~。
さて、《種池山荘》からは、ザラザラの砂礫地を“三歩進んで一歩めり込む”といった感じで登っていくと、頂上にケルンの積まれた爺ヶ岳・南峰の頂上だ。 はっきりした標高は示されていないが、すぐ隣の爺ヶ岳・本峰 2670メートル より高いとの事である。
爺ヶ岳より望む
残雪眩しい剱・立山
この頂からの眺めは、何といっても残雪眩しい剱岳・《八ッ峰》の眺めだろう。 また、真下に俯瞰できる《黒部渓谷》の深く切れ込んだV字谷も目を引くのである。 これから目指す鹿島槍ヶ岳も緑豊かで優雅な稜線の弧を描き、“二ッ耳”の独特の山姿とあいまって素晴らしい情景を魅せてくれる。
今日は、稜線が盛り上がる“付け根”の部分に乗っかかっている《冷池山荘》までの行程だ。
素晴らしい景色を満喫したなら、先に進もう。
爺ヶ岳の頂に立つと
東側の情景も見渡せる
南峰から下って三角点のある本峰、そして北峰と稜線通しに進むルートと、これらの峰を全て巻いていくコースとある。 稜線通しのコースは、下の巻道を行くより15分程時間がかかるだろう。
下の巻道はほとんど起伏がなく、楽に歩いていける。 但し、山の影に隠れた所をいくので、東側の展望は皆無である。 でも、剱の八ッ峰や鹿島槍は極上の姿で見渡せる。 どちらを取るかはお好み次第だ。
爺ヶ岳から望む鹿島槍は優雅な
稜線の弧を描く優しい姿の双耳峰だ
越中側につけられた巻道は、左へ大きくカーブしながらほぼ水平に進む。 歩いていくと、それとなしに北峰を越えて、下りにかかって樹林帯を抜ける。 足元には信濃側が切れ落ちた《冷乗越》が見えて、これを通り過ぎると頭上に《冷池山荘》が見えてくる。
放浪山旅装備として今回の旅から新兵器の二人用テントを持ってきたが、ハイキングルート然の御岳山は別として今回の鹿島槍~五竜岳の縦走が『ファースト山行』なので、身体慣らしも含めて敢えて山荘泊りとしたよ。 但し、食事は自炊で。 まぁ、朝夕2食分で2000円程の節約だ。
爺ヶ岳が斜陽に照らされると
待ちに待った夕日のショーが始まる
今日はこの場所で、鹿島槍と剱岳・《八ッ峰》の贅沢な夕景を見ながら1日を終えよう。 なお、写真掲載枚数の都合で、夕景色の写真の展示は次回の第83話の《その2》にて。
とっておきの夕景・プロローグ
鹿島槍の稜線が
金色に光るガスに包まれて
爺ヶ岳方向の空に
天使の羽根のような雲がたなびいて
立山が夕日で黄金色に
輝くガスに包まれて・・
これよりクライマックスの絶景となる
それは次話のお楽しみ・・
この秋に登った鹿島槍は
『よも”ヤマ”話』のこの話と
モロに被ってしまったので
来年の秋回しにしますた
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No Subject * by 根室大喜
岩場をよじ登り山頂から下界を眺めた時感動したことがあります^^)何十年も前のことですが
Re: No Subject * by 風来梨
根室大喜さん、こんにちは。
> 岩場をよじ登り山頂から下界を眺めた時感動したことがあります^^)何十年も前のことですが
ヤマに登る原動力って、真にコレなんですよね。 頂にたどり着くまでの困難が、上での喜びを何倍にも増加させます。 でも、今はヘタって足の踏ん張りが利かなくなって、下りは登りより嫌になってます。
> 岩場をよじ登り山頂から下界を眺めた時感動したことがあります^^)何十年も前のことですが
ヤマに登る原動力って、真にコレなんですよね。 頂にたどり着くまでの困難が、上での喜びを何倍にも増加させます。 でも、今はヘタって足の踏ん張りが利かなくなって、下りは登りより嫌になってます。
風来梨さま♪ * by mt minnie
こんばんは:-))
種池山荘まではあまり眺望楽しめなくて花も少なかった
と思います。種池山荘からは眺望もい良くて稚児車など
花穂が風の揺れて、眺望の良い尾根道ですね(^^)/
種池山荘まではあまり眺望楽しめなくて花も少なかった
と思います。種池山荘からは眺望もい良くて稚児車など
花穂が風の揺れて、眺望の良い尾根道ですね(^^)/
Re: 風来梨さま♪ * by 風来梨
mt minnieさん、こんばんは。
> こんばんは:-))
> 種池山荘まではあまり眺望楽しめなくて花も少なかった
> と思います。種池山荘からは眺望もい良くて稚児車など
> 花穂が風の揺れて、眺望の良い尾根道ですね(^^)/
この秋にも鹿島槍に行ってきましたが、種池山荘から爺ヶ岳に上がる稜線上から望む鹿島槍は優雅な山容を魅せてますね。
紅葉の山と剱の姿もいいですよ。
> こんばんは:-))
> 種池山荘まではあまり眺望楽しめなくて花も少なかった
> と思います。種池山荘からは眺望もい良くて稚児車など
> 花穂が風の揺れて、眺望の良い尾根道ですね(^^)/
この秋にも鹿島槍に行ってきましたが、種池山荘から爺ヶ岳に上がる稜線上から望む鹿島槍は優雅な山容を魅せてますね。
紅葉の山と剱の姿もいいですよ。
No Subject * by hanagon
鹿島槍は名前も姿もカッコいいですね~
私も扇沢から鹿島槍、五竜を越えて八方尾根下ったことありますが、冷池山荘からずっとガスであまり堪能出来なかった記憶があります。
急行「ちくま」はよくお世話になりました。
私も扇沢から鹿島槍、五竜を越えて八方尾根下ったことありますが、冷池山荘からずっとガスであまり堪能出来なかった記憶があります。
急行「ちくま」はよくお世話になりました。
Re: No Subject * by 風来梨
hanagonさん、こんばんは。
> 鹿島槍は名前も姿もカッコいいですね~
> 私も扇沢から鹿島槍、五竜を越えて八方尾根下ったことありますが、冷池山荘からずっとガスであまり堪能出来なかった記憶があります。
> 急行「ちくま」はよくお世話になりました。
鹿島槍に登った時は、鹿島槍頂上では天気に恵まれていますね。 でも、必ず『オチャメ』ります。 この時はキレット小屋のテラスで昼寝をしてしまって、五竜山荘に着いたのは5時過ぎになってしまいました。 この頃は体力があったので3時間寝ても5時に着きましたが、ヘタレた今なら確実に途中ビバークものですね。
春山に行った時は、遅いのにライチョウの撮影に時間を割いてしまって、冷池山荘まで日が暮れて真っ暗になった中ををカンテラを点けて歩くハメになり、着いた山荘では優しく『ドヤされ』ました。
で、今回の愛生は、登りの日で台風に遭って種池山荘に駆け込み、当初計画していたこの記事以来の四半世紀ぶりの鹿島槍~五竜の縦走は断念とあいなりました。 翌日は台風一過の快晴だったので、勿体なかったですね。
急行【だいせん】、【きたぐに】、【ちくま】よ・・、山ノボラーの強い要望を受けて復活!して欲しいなぁ。(溜息)
> 鹿島槍は名前も姿もカッコいいですね~
> 私も扇沢から鹿島槍、五竜を越えて八方尾根下ったことありますが、冷池山荘からずっとガスであまり堪能出来なかった記憶があります。
> 急行「ちくま」はよくお世話になりました。
鹿島槍に登った時は、鹿島槍頂上では天気に恵まれていますね。 でも、必ず『オチャメ』ります。 この時はキレット小屋のテラスで昼寝をしてしまって、五竜山荘に着いたのは5時過ぎになってしまいました。 この頃は体力があったので3時間寝ても5時に着きましたが、ヘタレた今なら確実に途中ビバークものですね。
春山に行った時は、遅いのにライチョウの撮影に時間を割いてしまって、冷池山荘まで日が暮れて真っ暗になった中ををカンテラを点けて歩くハメになり、着いた山荘では優しく『ドヤされ』ました。
で、今回の愛生は、登りの日で台風に遭って種池山荘に駆け込み、当初計画していたこの記事以来の四半世紀ぶりの鹿島槍~五竜の縦走は断念とあいなりました。 翌日は台風一過の快晴だったので、勿体なかったですね。
急行【だいせん】、【きたぐに】、【ちくま】よ・・、山ノボラーの強い要望を受けて復活!して欲しいなぁ。(溜息)