風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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よも”ヤマ”話  第79話 常念岳

よも”ヤマ”話  第79話  常念岳 〔長野県〕 ’94・ 5
常念岳【名峰百選 33峰目】(前日に続いて登頂)

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事件のあった現場を絵にしてみました
どういう精神構造してるのかね
このタワケは

  燕・常念 つばくろ・じょうねん (中部山岳国立公園)
槍・穂高の展望台として・・、岩のオブジェを抱く魅力的な峰として人気の高いのが、この燕・常念山系である。 温泉郷である中房の登山口から“北ア三大急登”といわれる合戦尾根を伝い、“大自然の美術館”・燕岳 2763メートル の岩のオブジェに魅せられる山旅・・。

そして、常念岳 2857メートル を目指して、槍・穂高の素晴らしい眺めを望みながら歩く稜線遊歩の楽しい山旅・・。 この2つの贅沢な山旅が同時に味わえるのだ。 

このコースを紹介しない事には、北アルプスの魅力を余す事なく伝える事が叶わない。 
ひいては、『日本百景』の根幹である“その場所に訪れる楽しさを伝えたい”、“その場所の抱く魅力を伝えたい”という思いに反する事になるだろう。 従って、補欠ながらこのルートを取り上げたのである。



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燕・常念縦走ルート 3日目下山行程図

   行程表            駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR穂高駅よりバス(1:00)→中房温泉(3:00)→合戦小屋(1:00)→燕山荘
       燕山荘から燕岳へは所要上り40分・下り30分
《2日目》 燕山荘(2:00)→切通岩(0:40)→大天井岳(2:45)→常念乗越
       常念岳へは所要上り1時間10分・下り55分
《3日目》 常念乗越より常念岳往復・所要上り1時間10分・下り55分
     (3:30)→ヒエ平登山口よりタクシー利用(0:40)→JR穂高駅
       ※ 前話『第78話 大天井岳』からの続き

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常念岳山頂にて
道標の示す蝶ヶ岳を踏むのは
これより四半世紀後となってしまった

 《3日目》 一ノ沢谷に沿って下山
山荘泊なので“夜明け前”とはいかないが、朝天気が良ければ常念岳に再び登って槍・穂高の朝の風景を楽しんでくるとしよう。 再度頂上に登って、常念山系の素晴らしい景色を胸に下山するとしようか。

常念の絶景よ
ひとまずさらば・・
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雪の表銀座の絶景

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常念から蝶ヶ岳に続く尾根筋

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夏に通った大キレットが
今は行く事が適わぬ雪の壁に

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雪をまとった槍は
凛々しくそして美しく・・

下山口の一ノ沢へは交通機関はないが、山荘でタクシーの迎車予約ができるので、下山者2~3人を見つけて一緒に相乗りの予約をしておくと費用を浮かせる事ができる。 この当時の『若さ』の特権を活かしてタクシー代金を免除してもらう腹つもりが、このクソタワケの心のどこかに潜んでいたかは藪の中に・・。

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「タクシー代タダ」を狙うロクデナシでも
何故かいい写真が撮れたりする不思議

下山コースは、最短ルートの《一の沢谷》コースだ。 最短コースゆえに、下降点からの傾斜はかなり急である。 まず、樹林帯の中の急下降から始まる。 ここまではたとえ滑っても樹林をつかむ事ができるので、雪があってもそんなに心配する事はないが、この樹林帯を抜け出した所からが問題となる。
通称・“胸突き八丁”の急下降だ。

上部稜線付近の樹林帯の縁から、“胸突き八丁”を埋め尽くす大きな雪渓の中央へトラバースしていく。
このトラバースを過ぎると、最大傾斜40°近くでイッキに300m下っていくのである。
これは、アイゼンがなければまず通過できないし、あっても四本爪の簡易アイゼンでは心許ないのである。 前爪のあるキックステップに対応できるアイゼンを用意したいものであるが、このタワケの持ってきたアイゼンは、中を取った『六本爪』だったりして・・。 

夏ならば「ジグザグに切られた登路&巻き道に敷設された階段での登高」であるが、今は雪が道を全て埋め尽くされて直下降しかトレースがない。 従って、これを“滑り落ちず”に慎重に下っていくしかないのだ。 もちろん、下っている間は腰を下ろしての休憩は御法度だ。 そんなことをすれば、見る見るうちに滑り落ちてしまうのである。 

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ここで「やっちゃった」よ
70mの大『かつく』

この“胸突き八丁”さえ越えてしまえば、後は常念岳を振り返りながら雪道を下っていくだけ・・なのだが、やっちまったよ。 70mに及ぶ滑落を・・。 でも、この滑落はすごぶる「余裕のある滑落」で、滑り落ちてる最中に雪渓中に転がる石ころや雪面のへこみ、雪渓中に横たえる木の枝などの「ぶつかれば大事となるモノ」が全て見えていたよ。

もう、尻セードで滑ったかのような感覚で滑り落ちていったのである。 その証拠に、滑り落ちるのが止った瞬間に間を待たずにスクッと立ち上がり、誰もやってこないかをキョロキョロと見回して、即効走って逃げたのである。 この「やっちまった」タワケの頭の中は、(滑落によるケガを心配して)こちらにやってくる人が全てワテを狩る敵に見えてそれが渦巻いていたのである。

それは、大都会の駅の階段で転び落ちた時に心配してやってくる人だかりが、階段を転び落ちた自分をコケにして笑っている悪魔に思える被害妄想と一緒である。 2~300m走って逃げて人が見えなくなると、「やっちまった」このタワケはカメラを取り出して、「写真を撮ってるフリ」をしてゴマかす小市民的な行動を取る。

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走って逃げた後
精神を落ち着ける(らくをゴマカす)べく
写真を撮ってるフリをするクソタワケ

落ちてからの時は長かった。 滑落した事が無かったかの如く取り繕うべく、不自然に吹けもしない口笛を吹く真似をしながら下山口まで降りていったのだから・・。 やがて、雪が消えて沢地形に出ると河原を伝って進み、《王滝》という沢滝付近から左の土手に上がっていく。 後は林道並みに整備された道を行くと、林道終点に出る。

長く感じた林道終点までだが、滑落で70mも端折ったのと、2~300m走ったのと、下りて雪の消えた道を歩く際も引け目を感じて早足となって、タクシーの相乗りを予約した他の3名様をブッチ切る速さで下山していたよ。 恐らく、我が下山記録では最速だったかも・・。 この20年後には、あまりにも下山が遅すぎて降りれなくなって山頂での『ナシナシビバーク』さえせねばならなくなったというのに。

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このタワケってこんなに『オチャメ』
っても反省なくのほほんとしてられる
存在稀な幸運を持っているのだろうね

林道終点の転車場では、山荘で予約したタクシーが着く前で、一緒に乗るべく山荘で予約した方も到着前だったよ。 こんな事は、後にも先にもこの時限りだったしィ。 そしてラッキーな事に、40分後に下りてきたタクシーに同乗する方々は全て、ワテの滑落の失態を見ていなかったようである。

そしてなおかつ、このタワケの『腐ったミカン』ブリが炸裂するのである。 タクシーの車内で《穂高温泉郷》に寄って風呂に入る事を提案したのが同乗者に受けて、タクシーの代金も免除と相成ったよ。
しかも下山後のひと風呂も浴びて、「腰に手を当ててフルーツ牛乳」の風呂上がりの至福も味わえたよ。

だから、この滑落は「幸運の滑落」だったのかな!? でも、この滑落を契機に下るのが遅くなっていったような気もするので、アニメであった「等価交換の法則」がこのタワケの頭上にも乗っかかっているのだろうね。



今まで最悪だった
台風のめぐりあわせがズレて

「今度の仙人池は台風一過の快晴だな」と
ホクソ笑む『King of  ロクデナシ』なワテ

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No Subject * by 鳳山
常念岳、もう雪が降っているんでしょうね。山の冬は早く来ますし、春は遅く来ます。そして危険と隣り合わせ。それが山の魅力でもあるんでしょうね。

Re: No Subject * by  風来梨
鳳山さん、こんばんは。

> 常念岳、もう雪が降っているんでしょうね。山の冬は早く来ますし、春は遅く来ます。そして危険と隣り合わせ。それが山の魅力でもあるんでしょうね。

ヤマはこれより長い冬眠に入るべく、今が最も紅葉が華やかな時です。 そして頂は冠雪し、周囲は鮮やかな紅葉に彩られ、直射日光の降り注ぐ場所では夏の名残りの高山植物が咲く季節の三色パックが楽しめます。

秋の素晴らしさは、真にカムイの創りし楽園の情景ですね。

コメント






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No Subject

常念岳、もう雪が降っているんでしょうね。山の冬は早く来ますし、春は遅く来ます。そして危険と隣り合わせ。それが山の魅力でもあるんでしょうね。
2019-10-11 * 鳳山 [ 編集 ]

Re: No Subject

鳳山さん、こんばんは。

> 常念岳、もう雪が降っているんでしょうね。山の冬は早く来ますし、春は遅く来ます。そして危険と隣り合わせ。それが山の魅力でもあるんでしょうね。

ヤマはこれより長い冬眠に入るべく、今が最も紅葉が華やかな時です。 そして頂は冠雪し、周囲は鮮やかな紅葉に彩られ、直射日光の降り注ぐ場所では夏の名残りの高山植物が咲く季節の三色パックが楽しめます。

秋の素晴らしさは、真にカムイの創りし楽園の情景ですね。
2019-10-11 *  風来梨 [ 編集 ]