2019-10-03 (Thu)✎
よも”ヤマ”話 第78話 大天井岳 〔長野県〕 ’94・ 5
大天井岳 2922m〔名峰次選 22峰目〕、常念岳【名峰百選 33峰目】
美しい稜線スカイラインを魅せる大天井岳
燕・常念 つばくろ・じょうねん (中部山岳国立公園)
槍・穂高の展望台として・・、岩のオブジェを抱く魅力的な峰として人気の高いのが、この燕・常念山系である。 温泉郷である中房の登山口から“北ア三大急登”といわれる合戦尾根を伝い、“大自然の美術館”・燕岳 2763メートル の岩のオブジェに魅せられる山旅・・。
岩のミュージアム・燕岳
そして、常念岳 2857メートル を目指して、槍・穂高の素晴らしい眺めを望みながら歩く稜線遊歩の楽しい山旅・・。 この2つの贅沢な山旅が同時に味わえるのだ。
このコースを紹介しない事には、北アルプスの魅力を余す事なく伝える事が叶わない。
ひいては、『日本百景』の根幹である“その場所に訪れる楽しさを伝えたい”、“その場所の抱く魅力を伝えたい”という思いに反する事になるだろう。 従って、補欠ながらこのルートを取り上げたのである。
燕・常念縦走ルート 2日目行程図・その1
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR穂高駅よりバス(1:00)→中房温泉(3:00)→合戦小屋(1:00)→燕山荘
燕山荘から燕岳へは所要上り40分・下り30分
《2日目》 燕山荘(2:00)→切通岩(0:40)→大天井岳(2:45)→常念乗越
常念岳へは所要上り1時間10分・下り55分
《3日目》 常念乗越より常念岳往復・所要上り1時間10分・下り55分
(3:30)→ヒエ平登山口よりタクシー利用(0:40)→JR穂高駅
※ 前話『第77話 燕岳』からの続き
雪霞みの空に沈み始める夕日
《2日目》 稜線を伝って大天井岳・常念岳へ
朝、運が良ければ、槍・穂高連峰から昇る御来光が拝めるであろう。 また、朝日に染まる燕岳・岩のオブジェも堪能できるだろう。 これらを眺めたなら、出発しよう。 なお、この日の朝は御来光がダメだったぽく、一枚も御来光シーンが見当たらない。 なので、昨日の夕日のシーンで代替するとしよう。
一日の終わりを名残り惜しませるべく
空が最大の美しき情景を魅せる
それが落日の情景なのだと思う
ほのかに染まる燕岳に
楽しかった山の旅を思いめぐらす
薄っすらと靄をかけて
穂高連峰に沈みゆく夕日
やがて靄と同化するように
夕日は消えていった
山荘を出発してからしばらくは、燕岳の続きのような風化花崗岩が散らばる稜線上をいく。
右手に槍・穂高連峰、左前方に大天井がそびえ、振り返ると燕岳が残雪と風化花崗岩のまだら模様で大きくそびえ立っている。 これらを見ながら歩いていくと、やがて巨大な露岩帯に差しかかる。
雪をまとった槍の穂先は
よりその鋭さを魅せつける
穂高の山なみも美しく雪化粧
この露岩帯は特徴ある岩が多く、いろいろな名前がつけられている。 中でも有名なのが、ガマガエルのような《蛙岩 げいろいわ 》だ。 通常の縦走路は《蛙岩》の左側をすり抜けていくのだが、稜線に雪が載る〔積雪期〕はこのルートが雪で吹きだまるので、《蛙岩》の間を直接くぐり抜けてから岩の上に這い上がってこの上を伝う“冬道”を使う事になる。 しかし、この“冬道”は《蛙岩》の空洞の中をくぐり抜けるなどかなり狭く、大きな荷物だとつかえて岩の上に這い上がれないかもしれない。
夏ならそれ程でもない《大下り》も
積雪期は慎重に下っていこう
これを越えていくと、《大下り》に差しかかる。 標高差100m位の下降だが《大下り》という程の厳しさはなく、いささか“看板倒れ”の感がある。 雪も風で飛ばされたのか余りなく、下地の花崗砂岩が見え隠れする。 見た目には何ともなさそうに見えるが、やはり〔積雪期〕の“下り”という事で注意が必要だ。
特にこのような吹きっさらしの所は、早朝時はアイスバーンとなる可能性が高い。
燕・常念縦走ルート 2日目行程図・その2
《大下り》を最低部の“窓”まで下ると、稜線の左側を巻くように登り返す。 上を見上げると、《為右衛門吊岩》と呼ばれる岩が向こう側の下降点の上に乗っかっている。 これを登りきって岩の左側をすり抜けると、痩せ尾根で両側は切り立ってはいるが起伏のない平坦な歩きよい道をいくようになる。
やがて、眼前に大天井岳が大きく迫り寄ってくる。
山の情景ばかり撮って
《蛙岩》や《為右衛門吊岩》を撮ってなかったよ
これより、この大天井岳に登っていくのだが、この山の取付の前に一度《切通岩》の鎖場を下降しなければならない。 鎖場といっても高さ3m位の《切通岩》を下降するだけなのだが、下に残雪のある時は注意が必要だ。 これを下って鞍部に出ると、いよいよ大きくそびえ立つ大天井岳への直登が始まる。
夏ならば頂上を通らずに左側を巻いていくコースもあるが、〔積雪期〕はこれが雪に覆われて使えず、嫌でも頂上を越える直登コースを行く事になる。
真に『台形』の姿を魅せる
稜線の最高峰・大天井岳
これから登っていく大天井岳の北面はガレにガレた砕石帯で、雪ならぬ砂利石で滑る嫌な登りだ。
登っていくと途中に丸太の棒が一本立てかけており、ここが中間地点のようである。
ここから大岩が積み重なりだして、これらを這い上がるようにつめていくと、小さな祠の立つ大天井岳 2922メートル の頂上だ。
大天井岳の頂上から
雪で輝く穂高の山々を望む
雪深い穂高の山々
:
これより20年ほど後・・
ヘタレてからこの雪の峰に挑む
順序というモノを全く考えないタワケ
雲間から射す光が
槍というキャンパスに光と雲の影を描く
この山系の最高峰であるこの頂からは、大きくそびえる槍の穂先が印象的だ。 この大天井岳は典型的な非対称の山で、山荘の建つ南斜面は牛の背中のようにノッペリとしている。 そして、その稜線上には雪が満々と積もっている。 ラッセルをしても追いつけない程である。
大天井岳の肩に建つ《大天荘》を見送って、緩やかな稜線を下り気味に歩いていく。
稜線上にコブのように突き出る中天井岳・東天井岳・横通岳は、全て頂上は通らずに山腹の信州側を巻いていくので、ほぼ起伏のない平坦な道となっている。
縦走路は起伏に乏しく
常念岳が一層ピラミタルな姿に魅える
あまりにも起伏がないので、常念岳が一層そそり立ったピラミット型に見えてしまう。
ハイマツと積雪の稜線を山頂を避けながら進んでいくと、東天井岳の山腹で大きく進路を右に変えて下のガラガラの沢へ下っていく。
燕・常念縦走ルート 2日目行程図・その3
ここから先は、山肌に隠されて雪は消えている。 しかし、信州側が大きく切れ込んだ崖っぷちの下りなので、高度感はかなりある。 これを越えると再び穂高側に移って、ハイマツと積雪に埋もれた道を歩いていく。 やがて下方に《常念乗越》てと《常念山荘》が見え出し、それと共に《常念乗越》に向かっての急下降となる。 さすがに、この下降はアイゼンが必要だ。
穂高側はほとんど雪のない
大天井岳を振り返り・・
ちなみに、ここで生まれて初めて『滑落』したよ。 小屋が見えて「早く着きたい」あまりに注意力が散漫となったんだろうね。 でも、雪の乗った登山道上を尻セードで滑ったこの15mほどが、今後に下りが遅くなるキッカケとなったようである。 次話の下山の『オチャメ』との「合わせ技」で、下りが滅法遅くなってしまったしィ。
これよりの山行では『奇跡の体力』となっていた事から、下りより登りの方が断然早かったよ。
いつも登りでコースタイムを1時間以上短縮して、下りはコースタイムを切る事が稀で「登りで稼いで下りで食い潰す」パターンが確立されていたしィ。 下手すると登りの方が下りより1時間以上早かった事もあるし、登りではいつも他の登山者をゴボウ抜きしてたしィ。
これを下っていくと、豪勢な造りの《常念山荘》が建っている《常念乗越》に着く。 山荘で宿泊手続を済ましたなら、荷物を置いての身軽ななりで常念岳へ登ってみよう。 道はガレキの緩やかな登りの後、急激に傾斜を増してイッキに登ってしまう感じだ。 この間は岩に根雪がこびり着いて滑りやすいので、アイゼンは必要だろう。
常念岳に着いた頃には
雪がチラチラ舞ってたよ
これを登りつめると、方角指示盤の裏側から常念岳 2857メートル の頂上に出る。
さすがは“槍・穂高の展望台”との呼称通り、素晴らしい展望が広がる。 中でも《大キレット》の切れ込み゜は、“そそる”眺めである。 そして、蝶ヶ岳への稜線は、深く切れ込んだ山なみに残雪を筋模様に残して美しい。
常念岳から望む雪の峰々
空が陰ってモノトーンな情景
となった穂高の山々
常念岳より蝶ヶ岳に延びる稜線縦走路
:
20年ほど後にヘタレた身で歩いたら
蝶ヶ岳まで7時間かかったよ
槍が最も雪深かったのが印象的だった
今日踏破した
大天井岳を振り返り・・
頂上の方向表示盤で山名を確認しながら、山頂での楽しいひとときを過ごそう。
槍・穂高の展望台の眺めを十分味わったなら、往路を山荘まで戻る。
下りは根雪の着いたガラ場の下りとなるので、アイゼンを引っ掛けたりせぬように注意しよう。
今度の休みは鹿島槍だから
穴が空かぬよう記事の書き溜め
せねばならないのに筆の進みが悪い
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No Subject * by 根室大喜
凄い景色ですね@@;実物を自分の目で見ることはアタイにはないでしょう
Re: No Subject * by 風来梨
根室大喜さん、こんにちは。
お返事遅れてスミマセン。 たった今、電波が安定してつながるエリアまで降りてきましたので・・。
> 凄い景色ですね@@;実物を自分の目で見ることはアタイにはないでしょう
過去に山をやっていれば、ヘタレ野郎でも行けますよ。 でも、ヘタレると、所要時間が1.5倍になります。
今回も、下りで登りより時間がかかる『ヘタレ症候群』に冒されました。 ヘタレると、膝や股関節が脆くなって、転けるのが怖くなって、絶望的に下りが遅くなります。
お返事遅れてスミマセン。 たった今、電波が安定してつながるエリアまで降りてきましたので・・。
> 凄い景色ですね@@;実物を自分の目で見ることはアタイにはないでしょう
過去に山をやっていれば、ヘタレ野郎でも行けますよ。 でも、ヘタレると、所要時間が1.5倍になります。
今回も、下りで登りより時間がかかる『ヘタレ症候群』に冒されました。 ヘタレると、膝や股関節が脆くなって、転けるのが怖くなって、絶望的に下りが遅くなります。