風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第399回  影富士

『日本百景』 秋 第399回 影富士 〔山梨県〕

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天海のスクリーンに映し出される
夕陽が投影した富士山の影

  富士山 ふじさん (富士伊豆箱根国立公園)
富士山の標高は3776m・・。 誰もが知る日本最高峰で、標高の憶え方も「富士山のようにみななろ・3776m」というように、小さい頃から教わったものだ。 富士山は裾野を直径40kmにも広げる典型的なコニーデ型火山で、その秀麗な山容は世界に誇れるものの一つである。 しかし、『登山』に関しての魅力はかなり乏しく、あまり登山意欲の湧かない山である。 

なぜなら、この山が比較的新しい山で高山植物がほとんど咲かない事、そして登山客と山頂神社の専横でかなり俗化しているからではなかろうか。 山頂での『県境の線引き』をめぐっての“人間の思惑”による争いが未だに続いている現状に、唖然とするばかりである。

山は“神”が作ったのではない。 ましてや、神社のいう“神”とやらの所有物でもない。
山は、大自然が長い年月を経て創造しえたものである。 俗世間の垢を落とす為に山へ登りに来たというのに、山頂での醜い“人間の思惑”を見せられたらたまったものでない。 この醜い“人間の思惑”が消えない限り、ワテの中では登山の魅力あふれる“登ってみたい山”とはなりえないであろう。

結論からいって、この山は『登る』よりも『眺める』べき山なのであろう。 それを踏まえて、行程表も『眺める』を念頭において組んでみた。 さて、『眺める』でお薦め所としては、朝霧高原はどうだろう。 朝霧高原にある広大なススキの原を借景に・・は、なかなか叙情的な風景である。



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富士山・吉田口ルート 詳細図

   行程表             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 富士吉田駅(現 富士山駅)よりバス(1:00)→富士山五合目・吉田口登山口
     (1:20)→七合目・入口(1:20)→七合目・山荘《東洋館》前
《2日目》 七合目・山荘《東洋館》前(1:20)→本八合目(1:00)→九合目(1:00)→吉田口頂上
     (0:40)→富士山・剣ヶ峰(0:40)→吉田口頂上(2:20)→七合目・山荘《東洋館》前
     (1:00)→七合目・入口 (1:00)→富士山五合目・吉田口登山口よりバス
     (1:00)→富士吉田駅(現 富士山駅)

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我が国で最も高い所へ

 《1日目》 拠所ない事情で八合目手前でビバーク
項目説明でも述べた通り、富士山は高山植物が少なく、また宗教という名の人間の思惑に毒されているなど、登山としての魅力は今イチといっていいだろう。 だが、我が国の山岳の最高峰として、山好きであるならばいずれは登らねばならぬ山なのだ・・とも思う。

かく言うワテも、この『我が国の最高峰』は「登るべき意志を抱く山」の最後に登頂を目指すべく想定していた。 そして、天候や身体の都合により最後ではなかったが、「登るべき意志を抱く山」=〔名峰次選〕の『ラス前』の山として登る機会がやってきたのであった。 それでは、この時の登山の出来事を交えて記していこうか。

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帰りに魅せられた美しいシルエット 

先程に述べた通り、あくまでも富士山は〔名峰次選〕全山踏破のファイナル峰として登るつもりだった。 しかし、この山行の一つ前の北海道遠征で身体を痛めた事(肋骨2本ポッキンのわりと重症)で計画が狂ってしまった。

それは、この富士山を『ファイナル』にするべく北海道の次に登る予定だった南アの山は、装備一式を担いだ幕営山行で「傷が癒えたばかりの身体でコレはキツイ」との判断で、比較的楽で山荘宿泊が可能な富士山を先にする事にしたのであった。 でも、急遽予定を変更して下調べを全くしていなかったので、探訪ガイドを本分とするメイン項目ではできれば記載を避けたかった『オチャメ』(お笑い)な目に遭遇するのであった。

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富士山駅のバスロータリーから望む富士山
これよりあの頂へいくのだ

前置きが長くなったが、富士吉田口の富士山登山のメインルートを登って、我が国の最高峰を踏破しに行こう。 平成25年の6月に文化遺産として世界遺産登録された(ワテ的には、山そのモノでなく『山のデキモノ=不純物』である宗教構築物が登録されただけ・・と言う時点で、客寄せの道具として以外は無意味だと思うのだが)事によって、私の住む関西圏から富士山登山の基点である富士吉田まで直通の夜行バスが定期運行しているのである。

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大阪や名古屋からも
直通夜行バスが運行されている
※ ウィキペディア画像を拝借

まぁ、この点においては、「世界遺産登録・・様々」な事なのであるが。 そして、その富士急線の富士吉田駅は、『富士山』駅に名称変更されていたのである。 でも、駅の名称から大切な自らの市の名前を下ろして『富士山』とした所に、「調子に乗り過ぎ」の感が否めないが・・。

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到底ヤマの拠点駅とは思えない富士山駅
元の『富士吉田駅』に戻して欲しいよ
※ ウィキペディア画像を拝借

夜行バスはつづがなく『富士山』駅前のバスロータリーに到着する。 登山口となる《富士山五合目》行きのバスも、このバスロータリーから発車する。 バスの本数は一日5~6本だ。 夏休みシーズンならば時刻表に乗らない臨時バスの増発で、恐らくこの倍の本数はありそうだ。 バスは1時間程で《富士山五合目》に着くが、かなり込み合うので始発の富士吉田駅(どうも、『富士山』といった調子に乗り過ぎの駅名には抵抗がある)から乗った方が賢明だろう。

バスが着いた《富士山五合目》であるが、「これから登山をする場所」とは到底思えない『都会の観光地』そのものの光景に、気合いが完全に萎えてしまう事だろう。 のっけから気合いを殺がれると長丁場となる登山では著しく不利だが、ここは耐えるより他に策はあるまい。 中でも承服し難いのは『世界遺産』と言いながら、自然破壊&生体系破壊の最たる行為の『ペット連れ込み』を容認している姿勢である。

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ヒトモドキが連れ込んだペット犬から
ディステンバーに感染して保護された野生のタヌキ
これでもペットの連れ込みは影響ないというのか?
感染症の蔓延でヤマの動物が絶滅しかねないのだ

「『世界遺産』として富士山を守っていく」という決意をしたのなら、こういうチョーセンの様な国土破壊行為こそ率先して防がねばならんだろう! これも、怒りで気が落ち着かない要因である。
幸いな事に、この不埒な行為は《富士スバルライン》の延長線上の砂利道の観光歩道だけで、実質の登山道入口となる《泉ヶ滝》より上ではこんな人として恥ずべきチョーセンヒトモドキ行為はなかったが・・。

まぁ、観光地として馬車も通るような所(馬糞の臭いが凄い)に連れこまれたペット犬にとっても、恐怖で精神を蝕まれる哀れな存在=飼い主によって虐待されているいい例なのだが・・。 この事となるとヒートアップしていかんので、先に進める事にしよう。

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富士の紅葉は今イチかな

実質の登山ルートの入口となる《泉ヶ滝》は湧水の枯れた「水ナシ滝」で、これは語る程の事もないが、その横にある立て看板は「記された内容を語る必要」があったのである。 それは、「富士山・吉田口ルートの山荘の全てが9/15の敬老の日をもって閉鎖となる」営業終了と登山道の冬季期間閉鎖の告知であった。 でも、9/15とは目を疑ったよ。 下調べを全くせずにやってきた弊害がここに発生したのである。 これで、「本日は山荘に泊まる」という予定は、完全に「ハシゴを外された」のである。

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スバルラインの砂利道より望む
富士五湖の一つ・山中湖

登山道は簡易的にゼブラロープで進入を防いでいたが、日帰りで山頂往復なら通行可の想定なのだろう。 ここで、なぜ「ハシゴを外された」と表現したのかと言うと、山荘への宿泊を見越して幕営用具を持ってこなかったからだ。 幸いな事に自炊用具とシュラフは持って来ていたので、一泊二日の登山行程の継続は可能である。 だがこれは、秋の標高3000mで「ゴザ敷いてゴロ寝」という、浮浪者スタイルでの野宿といった『オチャメ』を経ねばならぬ事が確定した訳である。

10月手前の秋の標高3000mは昼は蒸し暑く、夜は底冷えする「出入りの激しい」気候条件だから、普通の人はマネしない方が身の為だろう。 これを回避するには「今日は営業中の佐藤小屋に泊まって翌朝日帰りで頂上往復する」方法があるが、残念ながら筆者の所持金が「往復ギリギリの持ち合わせ不足」という現実に苛まれていたのである。 従って、この『オチャメ』の回避不能と相成ったのである。

またまた『オチャメ』事の発生で『ガイド』の内容から外れてしまったが、行程を先進めていこう。
《泉ヶ滝》からは登山道然とした道が続くと思いきや、《富士スバルライン》と変わらぬ砂利道が続く。 時折、シェルター状のトンネルや砂利の途切れた石段となるので、馬車は下の《スバルライン》以外は通れないだろう。 約30分程で、シーズン中は登山指導所の建つ《六合目》に着く。

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標高に幻惑されたのか
あまり高くは感じない眺めが続く

ここからは傾斜は増すものの、ブルドーザーが通れる位の幅の砂利道のつづら折りとなる。
周囲は山腹の崩壊を防ぐ巨大な土堰がグサグサと突き立てられ、見た目にも雰囲気の思わしくない登山道だ。 そして、つづら折りの折り返す地点で山肌が薙っている所では、実際にブルトーザーが作業していた。 どうやら完全に段差を取り払った下り専用のルートを、ブルトーザーが実際に往来しているみたいなのである。

この治山工事帯の中を通るつづら折りの砂利道は、約1時間ほどで通り抜ける事ができる。
上を向けば七合目の山荘街の建物が、斜面に建てられた別荘の如く床下を張り出している。
遠目から見ると、小動物の巣のようだ。 この『動物の巣』が近づいてきて、やがてその前に登り着く。 最初に前を通る山荘《花小屋》の入口や窓は鉄板で封じられ、その鉄板に『ココガ七合目 花小屋』と記されてあった。

山荘街は、今まで登ってきたブルドーザーも通れる程に幅が広かった登路に比べると極端に狭く、路地に群れて建つ長屋のような面持ちだった。 七合目の山荘街はこの路地に5件ほどが密集して建ち、残り2件は見上げる上に建つ赤鳥居の《七合五勺》上にあり、この間は砂利道歩道が続く《富士山・吉田口ルート》では稀な『火山岩の岩コロ登り』という極く普通の登山道となる。

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七合目の山荘街を抜けると
やっと登山道らしくなる

たが、それは長く続かず、程なく赤鳥居の建つ《七合五勺》に登り着く。 「そろそろ疲れてきたし、山荘の看板に記された標高はそろそろに2900mやら3000mとなってきた事もあるし、この辺りが『オチャメ』処とするのがいいだろう」と、脈絡もなく決め打ちにかかる。

《七合五勺》の赤鳥居に「今夜の乗り切り」を祈願して(・・というのはウソで、形式的に手を合わせただけ)、更に山荘の土台の石堤となった山肌を脇から石段で登っていくと、七合目最後の山荘である《東洋館》の前に出る。 この山荘も当然にシーズン営業を終えて閉鎖されていたが、山荘の前は木のテラスとなっていて眺望がすごぶる良かった。

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テラスからの眺め
どこのヤマだろうか?
位置からすると南アルプスのヤマ?

そしてこの木のテラスは、これより『地べたに転がってゴロ寝』をする者にとっては、適度にクッションの効いた『最上級の地べた』なのである。 ここまで書き記すとお解りであろうが、筆者はこの地を『オチャメ』場所と決めたのであった。

時刻は13時過ぎ。 登り始めたのが10時半頃だったので、ここまで2時間半って所だろう。
まだ午後の昼下がりという事で陽も高く時間にも余裕があったが、この先にこれ以上に『上級の地べた』がある保証もないので、ここを今夜の寝床とする。 宿泊地が確定すれば、他にする事と言えば夕飯時までの『昼寝』以外ないだろう。

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クライマックスシーンが発動し始めて・・

・・で、建物の隅の風の当たり難い所にゴザとなるシュラフマットを敷き、その上にシュラフを敷いて『ゴロ寝』を味わう。 日のある内は暑い位だったよ。 木のテラスでゴロゴロしていると(このタワケ・・ 浮浪者そのままだな)、時が経って日が陰り始めて『クライマックス』の夕暮れ時を迎える。

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雲海のキャンバスがピンク色に染まって
クライマックスの時が近づいてきた

その『クライマックス』は、この『オチャメ』事が最大限に幸運な出来事に昇華させてくれた。
木のテラスから望む雲海のキャンパスに描かれた美しい三角錐の山影・・。 そう、富士の山体の背面が斜陽に照らされて、その影が真綿のような雲海のキャンパスに『影富士』として投影されたのである。

もちろん、こんな所で『地べたに転がってゴロ寝』を選択するタワケなどいるハズもなく、この標高3000mでの『影富士』のシーンは私一人だけの情景となったのである。 それでは、その最大限の幸運をとくとごろうじろ。

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ほのかに染まった雲海のキャンパス
にアルプスの山々が浮かぶ

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その視線を北東に剥けると・・

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美しき雄大な富士のシルエットが
雲海のスクリーンに映し出されていた

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麓で魅た富士のシルエットそのままの影が
ほのかに染まった雲海のキャンパスに・・ 

  ※ 続く《2日目》の登頂編は、次回の記念!?すべき『第400回 日本最高峰』にて・・



クドいけどもう一度・・
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