2019-09-22 (Sun)✎
よも”ヤマ”話 第77話 燕岳 〔長野県〕 ’94・ 5
燕岳 2763m【名峰百選 32峰目】
芸術的な造形岩を従えてそびえる燕岳
燕・常念 つばくろ・じょうねん (中部山岳国立公園)
槍・穂高の展望台として・・、岩のオブジェを抱く魅力的な峰として人気の高いのが、この燕・常念山系である。 温泉郷である中房の登山口から“北ア三大急登”といわれる合戦尾根を伝い、“大自然の美術館”・燕岳 2763メートル の岩のオブジェに魅せられる山旅・・。 そして、常念岳 2857メートル を目指して、槍・穂高の素晴らしい眺めを望みながら歩く稜線遊歩の楽しい山旅・・。 この2つの贅沢な山旅が同時に味わえるのだ。
このコースを紹介しない事には、北アルプスの魅力を余す事なく伝える事が叶わない。
ひいては、『日本百景』の根幹である“その場所に訪れる楽しさを伝えたい”、“その場所の抱く魅力を伝えたい”という思いに反する事になるだろう。 従って、補欠ながらこのルートを取り上げたのである。
燕・常念縦走ルート 1日目行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR穂高駅よりバス(1:00)→中房温泉(3:00)→合戦小屋(1:00)→燕山荘
燕山荘から燕岳へは所要上り40分・下り30分
《2日目》 燕山荘(2:00)→切通岩(0:40)→大天井岳(2:45)→常念乗越
常念岳へは所要上り1時間10分・下り55分
《3日目》 常念乗越より常念岳往復・所要上り1時間10分・下り55分
(3:30)→ヒエ平登山口よりタクシー利用(0:40)→JR穂高駅
造形岩のおりなす美術館のヤマへ・・
《1日目》 合戦尾根を伝って燕岳へ
北アルプスの山々は、やはり人気がある。 シーズン中や5月の連休などは、早朝5時前にJR穂高駅に着く急行【アルプス】号に連絡するバスが運行されていた。 一方、関西圏も長野まで急行【ちくま】号が運行されていて、松本での早朝乗り換えはあるものの、その日の早朝から登り始める事ができた。
2005年に運行廃止となった
大阪発の登山列車・急行【ちくま】
※ ウィキペディア画像を拝借
だが、鉄道の斜陽化でこれらの列車は全て廃止となり、代わりに登山者をヤマへ誘う手段が夜行高速バスとなってしまった。 これらの交通機関は値段が安く登山口へ直行なので便利なのであるが、明日早朝から登山を控えるにあたって狭い車内ではグッスリ眠る事が難しく、またバスの定員が3列シートの場合だと僅か50名ほどで、シーズン中は余程早くから予約しないと席が取れない弊害もある。
急行【アルプス】代替の
快速〔ムーンライト信州〕も
2018年を最後に運行されていない
この事からも、ゆったり広い車内でしかもオール指定席以外は定員は問わない鉄道は良かったなぁ・・としみじみ思うよ。 ちかみに、この時のワテはマイカーで穂高駅まで行って、ヤマに行っている間の車をタダで預かってもらう代わりにタクシーで中房温泉に行く交渉が成立して、前夜はタクシーの宿直室で寝かせてもらえたよ。
タクシー代は中房温泉まで5500円となかなかの値段だったが、駐車料金と宿直室で泊れたので宿泊代が浮いたと考えると、十分元が取れたと思うよ。 当時はまだ道の駅なんてモノはなく、またコイン駐車場もようやく市街地で現れた程度で、田舎町ではそんなのなかったし・・。 そして登山口の中房温泉にはホテル宿泊客の駐車場しかなく、燕岳山域はマイカーでのアプローチが難しいヤマだったのである。
名峰のお膝元では無粋な人の
思惑が思惑が漂っていたようだね
当時は何でこうだったのか・・というと、中房温泉の温泉組合が、ホテルに泊まらず金を落とさないマイカー登山者を強硬に拒否っていたらしい・・との事である。 従って当時は、登山者のバスとタクシーの利用比率が高かったようである。 まぁ、こういう訳で、鉄道の利用需要もそれなりにあったんだろうね。
さて、約束通りタクシーで《中房温泉》のバス停前まで乗せてもらって、そこから《温泉山荘》の売店横をすり抜けると『合戦尾根』コースの登山口だ。 登山口に入ってすぐにジグザグの登りとなる。
これをひと登りで尾根上に出て、少し伝うと《第一ベンチ》と呼ばれる休憩所に着く。 ベンチの後ろを10m下ると冷たい清水が湧いていて、この湧水がこのコース唯一の水場となっている。
ここからは、傾斜が増して長い急登となる。 長くキツい登りに汗が出て、体が火照ってくる。
そろそろ、厚着のジャンバーがうっとおしくなってくるはずだ。 この急登の途中にある《第二ベンチ》の休憩所で、厚い上着を一枚脱ぐ。 だが、脱いだ上着は、ザックの上にいつでも取り出せるようにしておく。
登山口から合戦小屋まで
一枚も撮ってなかったので・・
脈絡もなく燕岳おば・・
これから進んでいく『合戦尾根』の上部はまだまだ白銀の世界で、少しでも休憩すると強く冷たい風に体温を奪われるからである。 まだ雪山には慣れてないので、こういう基礎的な事には従順なワテであった。 でも、今ならクシャクシャに丸めてザックに押し込んでいるだろうね。
もう・・掲載理念がメチャクチャだわ
今なら丸めて詰めるであろう防寒着のように・・
なおも続く急登で《第三ベンチ》の休憩所を越えると、やがて樹林帯より抜け出して《合戦小屋》前の広い丘の上に出る。 そろそろ、この辺りから銀世界が広がってくる。 この広い丘の上に立つ《合戦小屋》は売店のみの休憩所で、荷揚げ専用のロープウェイでジュースやカップメンなどを取り寄せている。
ここから上は潅木帯に変わり、雪が枝に模様を創造し始める。 もちろん、足元も踏みしめても抜けない程の積雪となってくる。 辺りは明るく展望は利くが、それは裏返すと常に風に吹きっさらされるという事でもある。
《合戦小屋》からのひと登りで、最初のピーク・《合戦沢ノ頭》に出る。 このピークからの展望はなかなかのものである。 真っすぐに続く『合戦尾根』の頂点に建つ《燕山荘》、そして白銀と岩のまだら模様の燕岳、その背後にうっすらと姿を魅せる餓鬼岳と、尾根上にに一直線に並んで見渡せる。
尾根上から望む雪を載せた
餓鬼岳へのスカイライン
ここからは、強風に煽られるのを注意しながら小1時間歩いていくと《燕山荘》に着く。
今回は〔積雪期〕という事で、無理をせず山荘泊山行の形式を取ろう。 荷物を山荘に預けて、“山の美術館”・岩のオブジェを魅せる燕岳を往復してこよう。 雪と風が長い年月をかけて花崗岩を彫刻した岩のオブジェは、1日かけてゆっくり周っても飽きる事はない。
燕岳・岩の造形美術館にて・・
命名・ダイヤモンドアイスピック
高価なダイヤモンドのアイスピックだ
:
ダイヤモンドのアイスピックで飲むロックは
どんな飲み心地なんだろうね・・
根っこ? いや歯ぐき?
それとも寄り添う家族岩?
燕岳の岩のオブジェを世に知らしめた
御存知『イルカ岩』
これはオーソドックスに
『剣山』でしょうな・・
“イルカ岩”や“ダイヤモンドピック”・“水晶の剣”など、色々と名前を連想してみるといい。
ゆっくりと岩のオブジェを観賞しながらでも、小1時間もすれば燕岳 2763メートル の頂上に着く。
立ち並ぶ造形岩と雪で凛々しく・・
槍の雄姿は次話で・・という事で
燕岳のアップおば・・
頂上からは、槍・穂高の山なみが残雪眩しくそびえ立っている。 帰りも、岩のオブジェを観賞しながらいこう。
露光量を変えると
印象が違ってくるもんだね
今日宿泊する《燕山荘》は、“高山のコテージ”と呼ばれる程おしゃれな造りで、山荘主のホルン演奏や西洋風の豪華な夕食などサービス満点だ。 ただ、”山の民”が求める素朴さは少なくなってきている。
何もないランプ灯りの土間小屋が抱く素朴さと、このような贅沢さとは全く相反する。
どちらを望むかは人それぞれだろう。
斜陽に輝き始める燕岳
明日は大天井岳を越えて
薄っすらと姿を魅せる常念岳へ
※ 続く《2日目》は、次回の『第78話 大天井岳』にて・・
鹿島槍は遠いわ・・
去年の9/30に台風、今年の7/25も台風
・・で今回の9/22も台風でポシャったよ
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