2019-09-13 (Fri)✎
よも”ヤマ”話 第76話 裏剱・仙人池 その4《黒部渓谷・欅平》〔富山県〕 ’93・10
秋に染まり始めた仙人谷を下っていく
黒部渓谷 くろべけいこく (中部山岳国立公園)
雲ノ平ではまだ源流であったあの優しい小川が、このような大渓谷を創るとは想像もしえない事である。 立山連峰と後立山連峰を2つに裂くこの壮大なV字谷は、最大の所で水面標高差2000mを越えるという。 しかし、数値で示した所でピンとはこないであろうから、実際に探勝してみるのがいいだろう。
さて、この探勝路であるが、《黒部ダム》より上流は文字通り川を遡行せねばならず、相当な知識と体力・技術を持ってしても難しい所である。 だが、ダムより下流は、『日電歩道』というダム建設調査路の跡がそのまま残っていて、これを伝っての探勝は可能だ。 しかし、川面まで200mの崖をヘツった道がほとんどで、これはもう登山者の領域だ。
・・最後に、主な景勝ポイントとして、“幻ノ大滝”・剱大滝を要する剱沢と鹿島槍ヶ岳を源とする棒小屋沢がひったりと十文字に交差する十字峡、新越沢が断崖から直落下する新越ノ滝、流れの妙が魅力のS字峡、幽谷の魅力あふれる白龍峡などがある。
裏剱・仙人池コース・3日目〔仙人池~欅平〕行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR富山駅より鉄道利用(1:05)→立山駅よりケーブルとバス(1:00)→室堂
(0:20)→一ノ越(1:00)→立山・雄山(0:15)→立山・大汝山(1:00)→真砂岳
(1:00)→立山・別山(0:20)→剱御前小屋(0:30)→剱沢キャンプ場
《2日目》 剱沢小屋より一服剱まで往復1時間40分(0:30)→剱沢雪渓取付(0:50)→真砂沢ロッジ
(1:30)→近藤岩・二股(2:20)→仙人池(途中の仙人峠より池ノ平まで片道30分)
《3日目》 仙人池(1:20)→仙人温泉(1:20)→阿曽原温泉(4:30)→欅平より渓谷鉄道利用
(1:20)→宇奈月温泉駅より鉄道利用(1:30)→富山駅
※ 前回『第75話 裏剱・仙人池 その3』の続きです。
黒部の谷を挟んで対峙する
後立山の山なみを見ながら下っていこう
《3日目》 仙人池から阿曽原温泉を経て黒部渓谷・欅平へ
朝、目覚めたなら素早く外に出て、《仙人池》と《八ッ峰》を眺めよう。 もし晴れていたなら、《八ッ峰》が朝日を浴びて輝く様が《仙人池》の水面に投影される事だろう。 いつまでもいたい、いつまでも眺めていたいが、《欅平》のトロッコ列車の便の事もあるので6:30頃には出発せねばならない。
後ろ髪をひかれる思いで出発する。
だが、初めて訪れたこの時は、《欅平》でのトロッコ列車の便に気を取られて、朝の景色そっちのけで出発の支度をしてしまったよ・・残念! 最初の頃の方が体力的にも余裕あったのに・・。
でも、朝の『仙人池・水鏡』の絶景は次に訪れた機会にバッチリリベンジしてるので、この『よも”ヤマ”話』でその機会がきたなら話そうと思う。 なので、今回は「触り」という事で、以前トップページで使った写真を一枚だけ・・。
仙人谷への下りは
延々と下り辛いガラ場の急下降だ
《阿曽原温泉》へは、ヒュッテ前のクマザサの道を右へ下っていく。 クマザサ帯を過ぎると、岩が敷きつめられた階段状の道となる。 途中、つづら折りに折り返す地点が土砂崩れとなっているので注意しよう。 この土砂崩れを伝っての踏跡もついていて、逆コースからだと短絡ルートと見まがいそうだが、決して入らぬように(シーズン中はロープを張ってあるようである)。
時が経つごとに
朝日が山肌を照らしていく
しばらくこの石畳状の道を下っていくと、《仙人峠》から刻まれた本谷と合流する。
ここから、長い長い《仙人谷》の下りだ。 この谷筋は8月初旬頃まで長大な雪渓となっていて傾斜もそれなりにあるので、早い時期だとアイゼンが必要となろう。 下っていくに従って谷幅も広くなり、雪渓も途絶えて右岸の岩場の一段下った所から登山道が現れてくる。 この道を伝っていくと、左下に《仙人温泉》の白い湯煙りが見えてくる。
この時は仙人温泉小屋辺りが
最も紅葉が色づいていた
これが見えると左岸に渡って、石の階段を下ると《仙人温泉小屋》前に出る。 時間があればひと風呂浴びたい所だが、《欅平》までの道程が長く時間に追われているだろうから、今回は“見送り”であろう。
たぶん、この時間(AM8時頃か)に立ち寄っても、風呂には入れないであろうが・・。
《温泉小屋》前を通った先にある温泉風穴でひと息着いたなら、またひたすら下っていこう。
仙人湯
野趣あふれる露天風呂だ
※ 仙人温泉小屋のウェブサイトより
上の記述ではこのように書いたが、ぢ・つ・わ・・、この時に《仙人温泉小屋》で露天風呂に入っていたりして・・。 いゃぁ、『奇跡の体力』がほぼ開花しているこの頃は、下りも風呂に入る余裕をかませる程に早かったのね。(涙)
下るごとに山奥へ
分け入るような感覚だ
《温泉小屋》からは、特に変わりばえのしない樹林の道を下っていく。 途中の変化といえば、『黒四発電所』の鉄塔が見える位であろう。 期待する《黒部渓谷》の流れは、俯瞰できそうにないみたいである。
やがて、樹林帯の中にもぐり込み、視界がなくなると《阿曽原峠》だ。
峠からのつづら折りの坂を下って、《黒部渓谷・下ノ廊下》を貫く道と合わされば、程なく《阿曽原温泉小屋》の前に着く。 ここから《欅平》までは『旧日電歩道』を延々12km・・、所要時間は約4時間半である。 この風呂では、余程の「怖いモノ知らず」でないと、「欅平まで12km」という距離と最終列車の時間が気になって入れないだろうね。 小屋で受付してから風呂場まで2~3分かかるしィ。
欅平までの『旧日電歩道』は、落差200mの崖っぷちの『ヘツリ道』である・・という事と、途中に《志茂谷トンネル》という崩れた瓦礫で埋もれた中を掘られたトンネルの通過以外は問題となる所はない。
《欅平》までの12kmをただひたすら歩くのみだ。
なぜか・・志茂谷トンネルは撮らずに
志茂谷のガレ沢を撮っていますた・・
なお、この《志茂谷トンネル》であるが、延長300m位の“洞窟”なのである。 もちろん暗闇で、下は水深10cmの水が流れているのである。 なので、登山靴が布製などの脆いものだと、靴の中に水が浸水してしまうだろうね。 また、洞窟の中を行くようなモノなので、カンテラが必須であるのは言うまでもない。
後は、決して『水平歩道』上で暴れない!?事だ。 『水平歩道』から転落したなら、200mの“奈落の底”である事を忘れずに・・。 雨の日さえ避ければ、何も恐れて歩く必要はない。
渓谷を楽しみながら歩いていくとしよう。
後は《阿曽原温泉小屋》を出た直後はデンと前方に構えていた奥鐘山の大岩壁が、後方に見えるようになるまで歩いていかねばならない・・という事だ。 そして、この『日電歩道』は《志茂谷》や《折尾谷》といった渓谷に合流する谷筋を忠実に沿っているので、直線距離で1kmくらい前方に《欅平》のトロッコ鉄道の橋梁が見えてるのに、地形に従って食い込む谷筋を迂回せねばならない事に苛立ちを抱くだろうね。
折尾沢の無名滝
:
黒部渓谷にはこのような
落差50m超の無名滝がひしめいている
途中の見どころといえば《黒部渓谷・下ノ廊下》の景観と、《折尾沢》に掛かる落差50~60mの無名滝と、渓谷の対岸にある黒部第三発電所と、この『日電歩道』の建設に供した黒部上部軌道の線路跡を跨ぐ所くらいだろうか・・。
黒部上部軌道の線路跡はこんな感じ・・
:
写真撮ってなかったの・・
※ グーグル画像より
黒部第二発電所の軌道の写真を拝借
延々と歩き続けて奥鐘山の大岩壁が後方の位置に移動したなら、《欅平上部》という鉄塔の上に出て、トロッコ鉄道のある《欅平駅》まで200mの急下降だ。 でも、ここまで来るであろう・・トロッコ鉄道のトレッキング目当ての乗客の為に整備されているのか、仙人谷の急下降より下りやすいよ。
欅平に着いてからの試練・・
それは乗客をぞんざいに扱う
トロッコ鉄道の乗車だ
だが、延々12kmを歩き抜いてやっと着いた《欅平》では、登山行と違った試練が待ち構えている。
それは《欅平》からトロッコ鉄道に乗って帰るのだが、乗車にあたって難点が2つある。
1つは乗車定員制で、行楽客の押し寄せる秋本番ともなると1日乗車待ちを食らう事もあるのだ。
吹きッさらしの一般車両に乗ると
トンネルの中に入れば
尋常でない寒さが身体を襲う
:
汗をかいた登山後の乗車だと
低体温症に陥ったような
ヤバい震えを体感できるよ
もう一つは、「乗車中の寒さが尋常ではない」という事である。 これは、最低クラスの“普通車”(吹きっさらしの車輌である)の利用者に限られるが・・。 車輌の“囲い”に料金差をつけるとは、「関西電力もやってくれるな」という気持ちでいっぱいである。 また、終点の《宇奈月温泉駅でも、荷物料金を取っているにもかかわらず登山リュクは放り込まれるなどぞんざいに扱われるのである。
こういうハリボテを目にすると
「大丈夫か?」と思ってしまうよ
後は、《宇奈月温泉》でひと風呂浴びるも良し・・、そのまま富山に出て帰路を急ぐも良し・・である。
ダメだと思っていた
扇沢行のバスの予約が取れたよ
最近は車で山に行くのが億劫で・・
無駄に歳食ったな
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