2019-09-04 (Wed)✎
『日本百景』 晩夏 第395回 尾瀬めぐり・その1 燧ヶ岳 〔福島県・新潟県〕
隣に対峙する平ヶ岳の稜線より
望む燧ヶ岳は美しい双耳峰だ
燧ケ岳 ひうちがたけ (日光国定公園)
東北最高峰の燧ケ岳 2356メートル は、いつも尾瀬ヶ原の大湿原を見下ろすようにそびえ立っている。 この山も、尾瀬と同様に花の宝庫で、山頂湿原を飾る花々は、頂からの眺望とともにこの山の魅力を大いに引き立てている。
・・『尾瀬』を楽しむためには、是非ともこの山をコースに組み込みたいものだ。 モデルコースとしては、尾瀬沼~燧ケ岳~尾瀬ヶ原の縦走がお薦めである。 このコースは、尾瀬沼のニッコウキスゲの群落を見て、燧ケ岳で花と尾瀬の全景、そして東北や日光の山なみを眺めて、下ってからは尾瀬ヶ原の大湿原を散策と、3つの『尾瀬』の魅力を味わう事ができるのである。
燧ヶ岳~裏燧林道周回ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 会津高原駅より車(1:40)→尾瀬・御池(1:40)→熊沢田代(1:45)→燧ケ岳・柴安嵓
(2:40)→下田代十字路
《2日目》 下田代十字路(0:30)→元湯山荘(0:50)→三条ノ滝(0:40)→燧裏林道分岐
(1:40)→上田代(0:30)→尾瀬・御池より車(1:40)→会津高原駅
湿原に咲くコオニユリ
《1日目》 尾瀬・御池口より燧ケ岳へ
今回の行程では、東北最高峰の燧ケ岳に登って、《尾瀬ヶ原》を探勝してみよう。
燧ケ岳には5本の登頂ルートがあるが、《尾瀬・御池口》より登っていくのが体力的に最も楽であろう。
但し、《尾瀬沼》は、一日余分に取らないと訪れる事はできないが・・。 朝早くの登山開始は、登山の鉄則だ。 楽で登山者の多いこの山でも、この鉄則には従おう。 従って、《尾瀬・御池》には、前日にアプローチしておくべきであろう。
さて、空がピンク色に染まったなら出発しよう。 尾瀬・御池の駐車場奥にある登山口からしばらく砂利道を歩くと、《三条ノ滝》と燧ケ岳の分岐に出る。 『燧ヶ岳へ』の指示に従って、この分岐を左に入っていく。 なお、直進方向に延びる《三条ノ滝》への道は、帰りに歩いてくる道である。
道はぬかるみの混じった岩コロの道で、上部から泥水がチョロチョロと流れ落ちて登り辛い。
たぶん、この上の湿地帯より流れ落ちているのであろう。 ここは、靴底に水がしみ込むのを覚悟でひたすら登っていこう。
このルートは美しい田代を見ながら
燧ヶ岳至る絶好の登山ルートだ
約50分の登りで樹林帯を抜け出て、見晴らしの良い湿原に出る。 ここは《広沢田代》という湿原で、小規模ながらも多くの池塘をめぐらし、ニッコウキスゲ・イワイチョウ・キンコウカなどの花が咲いていて小気味良い。 周囲の眺めも、日光連山の山なみが朝日に輝き美しいシルエットを魅せている。
この素晴らしい眺めの中、ザックを下ろして写真を撮るのも乙である。
サワギキョウ
湿原も夏の終わりを告げる
濃い紫の花が咲いていた
但し、湿原の中は木道が敷設されているので、踏み外したりせぬように心掛けたい。
ひと休みしたなら、再び頂上を目指して登っていこう。 木道が尽きると《広沢田代》を抜け出して、再び樹林帯の泥混じりの登り坂となる。 靴に水がしみ込んで歩きにくいが、この上に広がる素晴らしき眺めを味わう為の試練として、ひたすら辛抱して登っていこう。 この樹林帯のぬかるみ道も、約50分で抜け出る事ができるだろう。
この樹林帯を抜け出ると、またもや素晴らしい湿原に出る。 もちろん、眺めもすごぶる良くなる。
ここは《熊沢田代》と呼ばれる湿原で、先程の《広沢田代》よりも起伏があり、湿原全体を見渡すのに都合がいい。 そして、この《熊沢田代》の“売り”は、何といっても前にそびえ立つ燧ヶ岳の眺めであろう。
熊沢田代より望む燧ヶ岳
この湿原のシンボルである2つの大きな池塘をアクセントに、丸みをおびた優しい容姿でそびえ立つ燧ヶ岳、そして起伏に富んだこの湿原の地形がカメラアングルに花を添えてくれる。
また、池塘の周りをワタスゲ・キンコウカ・ミズギボシなどの湿性植物が咲いていて、雰囲気も上々だ。 この素晴らしき眺めを味わいながら進んでいこう。 道は《熊沢田代》のシンボル・2つの大きな池塘まで、その起伏に富んだ地形に沿って緩やかに下っていく。
この2つの大きな池塘から先は、燧ヶ岳に向かって一直線に急登していく。 《熊沢田代》から、右に大きくカーブを描いて燧ケ岳の尾根筋に取り付く。 樹林帯を急登で抜け出して、燧ヶ岳の北東に延びる沢筋の中を登っていく。 この沢筋には遅くまで雪渓が残っていて、たぶん雪渓の急登となろう。
雪渓を乗り越えても粘土質の岩礫帯の急坂が続き、ややキツイ“最後の試練”を乗り越えると、360°絶景の眺めの待つ燧ヶ岳・爼嵓(まないたぐら) 2346メートル の山頂だ。
尾瀬沼がみちのくの山々に囲まれて・・
尾瀬ヶ原の大湿原が一望できる
平ヶ岳や景鶴山といった
未開の山々も見渡せる
先程の通り《尾瀬ヶ原》や《尾瀬沼》、そして平ヶ岳・至仏山・男体山・奥白根山・磐梯山など、名峰目白押しの360°の絶景が広がるのである。 なお、この爼嵓は三角点があり、地図上では燧ヶ岳の山頂となっている。 この素晴らしい景色の中でひと息着いたなら、最高峰の柴安嵓にいってみよう。
爼嵓から一度下って登り返すこと15分で、燧ケ岳の最高点・柴安嵓 2356メートル に登り着く。
燧ヶ岳でのアリバイ写真
:
『奇跡の体力』のホルダーだった頃・・
いゃぁ・・太ってますね
この事からも「過ぎたる脂肪は力なり」
が実証されたのである
柴案嵓より望む俎嵓
最高峰の柴安嵓も、爼嵓に負けず劣らずの素晴らしい眺めが広がる。 そして、《尾瀬ヶ原》と至仏山・平ヶ岳がより一層広がって見える。 平ヶ岳は山裾の急峻さに比べ、丘のように丸くなだらかな山頂部分を持つ特徴ある山で、山好きならばきっと「あの山に登ってみたい」という望みを抱く事だろう。
なお、この平ヶ岳に関しては、また次の機会に記事を上げようと思っている、 また、『日本百景』の『東日本編』《補-5》でコースガイドをしているので、そちらも参照して頂きたい。 最高峰からの素晴らしき眺めを満喫したなら、眼下に広がる《尾瀬ヶ原》に向けて下っていこう。
山頂からは、ガレにガレた岩礫帯を下っていく。 燧ヶ岳自体が岩礫の積み重ねでできているようなものなので、このようなガレ道は当然といえば当然だろう。 浮石が多いので、岩を踏み外しての転倒や落石に注意しながら下っていこう。
しばらく下っていくと、樹林帯に突入して《尾瀬ヶ原》は見えなくなる。 ここからは、鬱蒼とした樹林帯の中を延々と下っていく。 下りの苦手な人ならば、音を上げたくなる程のダダ下りだ。
約2時間下って、ツガやブナなどの樹林の間から《尾瀬ヶ原》のライトグリーンの草原が見え隠れするようになると、ゴールの《尾瀬ヶ原・下田代十字》は近い。
燧ヶ岳が見上げる位置に見えてくると
下田代十字は近い
だが、《尾瀬ヶ原》が見え隠れし始めてからも、30分は歩かねばならない。 長い下りの後に、この30分はかなり応えるのである。 やがて、木道となって《尾瀬沼》との分岐を分けて、《尾瀬ヶ原》の東端にあたる《下田代十字》に出る。 《下田代十字》は《山ノ鼻》と並ぶ《尾瀬ヶ原》の中心地で、別館も含めて十数件の民宿(もはや“山荘”とは呼べないのでは・・)が建ち並んでいる。 自然保護を声高々に叫ぶにしては、それと逆行する眺めである。 今日は、ここで泊るとしよう。
なお、ここはキャンプ指定地があるので、キャンプを張るのもいいだろう。
雑踏とした“民宿街”を避けて、フィールドの中で一夜を明かすのも乙である。
至仏山へ続く尾瀬散策は
次回のお楽しみ・・
《2日目》 三条ノ滝を経て尾瀬・御池へ
朝、少し早く起きて、まだ人の歩かぬうちに《尾瀬ヶ原》に出てみよう。 本来、《尾瀬ヶ原》が抱く、静寂な雰囲気を味わう事ができるだろう。 なお、次回以降の《その2》・《その3》で《尾瀬ヶ原》・至仏山と続けるので、ここは敢えて《尾瀬ヶ原》に深入りせずに、《三条ノ滝》経由で下山する事にしよう。
さて、朝の早いうちに出発しよう。 あと2時間もすると、《尾瀬ヶ原》も雑踏と化するからである。
《下田代十字》から《尾瀬元湯》までの間、少しではあるが《尾瀬ヶ原》の朝の静寂とした雰囲気を味わおう。 朝日を浴びて黄金色に輝く草原、その奥にそびえる至仏山、夜露を浴びて輝くモウセンゴケやキンコウカの花々など、“尾瀬”を心ゆくまで満喫できるひとときである。
朝露を浴びるミズギボシ
朝日に名の如く光るキンコウカ(金光花)
ゆっくり歩いても、30分もあれば元湯山荘の建つ《尾瀬元湯》に着く。 いつもは「早く到着したい」思うのだが、今日ばかりは早く着くのが口惜しい気さえする。 この《尾瀬元湯》で《尾瀬ヶ原》は終わり、道は湿原内に敷設されている木道から、滑りやすい濡れた露岩の急下降となる。
所々、ハシゴや鎖場のある露岩帯を下っていくと、只見川の早瀬が下方に寄り添ってくる。
只見川に沿って一番急な鎖場とハシゴを下っていくと、大きな岩崖の上に立つ。
500mもの長さの滑滝を形成する平滑大滝
ここから見下ろす只見川は、大きな一枚岩の岩盤を滑滝となって流れている。 これが《平滑ノ滝》である。 この岩崖の上はこの滝の展望台となっているのだが、岩崖のせり立っている角度が悪く、また周囲の樹木が邪魔をしてあまりいいアングルで見ることができない。 そして、樹林帯の陰で薄暗いので、写真撮影にも不向きだ。
ワテもカメラを構えてはみたが、どうも“今いち”のようである。 《平滑ノ滝》からは展望台の岩崖より右手に折れて、再び濡れた露岩帯を急下降していく。 約30分、樹林帯の中の薄暗い露岩帯を下っていくと、《三条ノ滝》への分岐に出る。
三条ノ滝へ下る急な鎖付きのハシゴは
階段に替えられていたよ
名瀑・《三条ノ滝》へは、ここから10分下るといい。 但し、《三条ノ滝》の展望台へは、3つの鎖付きの急なハシゴがあるので慎重にいこう。 展望台からは、《三条ノ滝》を正面きって眺める事ができる。
尾瀬ヶ原より流れ出る
全ての水を集めてイッキに
瀑布を落とす三条ノ滝
只見川を流れる全ての水、すなわち、あの広大な《尾瀬ヶ原》より流れ出る全ての水を集めてイッキに瀑布を落とす様は迫力満点だ。 日本でも有数の名瀑を心ゆくまで眺めたなら、分岐へ戻ろう。
分岐まではかなりの急な登りとなるので、重い荷物は分岐にデポしておいた方がいいだろう。
分岐からは、《兎田代》に向かっての150mの急登だ。 これを登りつめると、《兎田代》の湿原に出る。 ここは、乾いて荒れ果てた湿原跡といった感じで、あまり見るべきものもないので先を急ぐ事にしよう。 この湿原跡の少し上で《渋沢温泉》から《小沢平》に抜ける道を分け、更に5分程進むと、《尾瀬ヶ原》への短絡道の『段吉新道』を分けて『裏燧林道』へ入っていく。
裏燧林道は樹林帯のアップダウンだ
『裏燧林道』の前半はブナの樹林帯の中でのアップダウンで、やや退屈な道である。
また、コースのほとんどに木道が敷設され、ワイルド味にも欠ける。 《尾瀬ヶ原》の探勝路と違って、「こういう道は早く抜け出たい」と思うのだが、こういう道に限ってなかなか思い通りに早く抜け出せないものである。 しかし、これを抜け出せば、待ちに待った素晴らしい景色が広がるのである。
越後三山も見渡せる
《西田代》・《横田代》・《上田代》と続く、見晴らしのいい湿性の草原地帯である。
これらの“田代”は、乾燥化が進みすぎて“湿原”としてはあてはまらないが、ライトグリーンに輝く草原としてみれば情緒ある風景である。 また西側には、平ヶ岳が魅力ある容姿を魅せてそびえ立っている。
平ヶ岳はこれら“田代”のどこからでも眺める事ができるが、最も眺めがいいのは《上田代》付近であろう。
上田代から望む平ヶ岳
平ヶ岳に向かって
夏の雲が流れ込んでいく
やっぱり『尾瀬』は凄い。 最後の最後まで魅せてくれるのだから・・。 《上田代》から約20分で、登りの時に分けた分岐に戻り着く。 ここから駐車場へは、砂利道を約5分である。
無事下山したなら、《尾瀬・御池》より15km先にある《桧枝岐温泉》で汗を洗い流そう。
ひと風呂浴びると、今回の山旅の思い出が次々と思い浮かんでくる事だろう。
Yahoo!が移転推奨ブログにFC2を入れなかったのは
β版への強制転換通告にYahoo!を見限って
FC2へ大量移転された事の逆恨みだろうね・・
そうでもなければ推奨先以外に移転したいという
ブログ主の気持ちを汲んで
どこでも移転できる余地を残すハズだよね・・
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