2019-09-02 (Mon)✎
よも”ヤマ”話 第74話 裏剱・仙人池 その2《剱沢雪渓・裏剱》〔富山県〕 ’93・10
剱の八ッ峰に突き上げる三ノ窓雪渓
剱 岳 つるぎたけ (中部山岳国立公園)
立山連峰の中でひときわ嶮しく、氷河地形を顕著に示しているのが剱岳である。 山頂は氷食尖峰で、氷河が永い時をかけて多くの嶮しき谷を創りだしている。 これらの谷は、《長次郎谷》・《平蔵谷》など、これらの谷を世に広めた先駆者達の名前がつけられている。
剱岳の魅力は、何といっても“奥の深い”楽しみ方にある。 初心者ならば、室堂からお花畑を突っ切って剱の頂に立つコースがお勧めである。 山歩きに慣れた中級者ならば、剱沢雪渓を渡って仙人池・黒部渓谷に至るコースがいい。 剱沢の万年雪渓を突っ切って、裏剱の八ッ峰と仙人池を目指すのである。
剱の八ッ峰を映し出す仙人池・水鏡
このコースの全般に渡って眺められる裏剱の景観は、とにかく「素晴らしい」のひとことに尽きる。
八ッ峰を映す仙人池や彩り鮮やかな池ノ平、そして夏の「まだ人知れぬ」池ノ平山のお花畑、秋の燃える紅葉・・と、魅力が盛りだくさんである。
バリエーションルートの長次郎雪渓を
「直に登る」のも剱岳の醍醐味だ
そして、上級者ならば、楽しむ観点はやはり「直に観る」であろう。 《長次郎谷》から標高差1000mの雪渓を乗り越えて頂上に立ったり、八ッ峰を「眺める」ではなく「直に登る」というのも上級者ならではの楽しみ方であろう。 また、一生涯をかけて、『幻の滝』・剱大滝にアタックするのも夢がある。
・・このように、どのレベルの登山者でも楽しめるのが、この剱岳である。
裏剱・仙人池コース・2日目〔剱沢~裏剱〜仙人池〕行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR富山駅より鉄道利用(1:05)→立山駅よりケーブルとバス(1:00)→室堂
(0:20)→一ノ越(1:00)→立山・雄山(0:15)→立山・大汝山(1:00)→真砂岳
(1:00)→立山・別山(0:20)→剱御前小屋(0:30)→剱沢キャンプ場
《2日目》 剱沢小屋より一服剱まで往復1時間40分(0:30)→剱沢雪渓取付(0:50)→真砂沢ロッジ
(1:30)→近藤岩・二股(2:20)→仙人池(途中の仙人峠より池ノ平まで片道30分)
《3日目》 仙人池(1:20)→仙人温泉(1:20)→阿曽原温泉(4:30)→欅平より渓谷鉄道利用
(1:20)→宇奈月温泉駅より鉄道利用(1:30)→富山駅
※ 前回『第73話 裏剱・仙人池 その1』の続きです。
いよいよ剱沢の雪渓へ・・
《2日目》 剱沢雪渓を通って裏剱・仙人池へ
朝、夜明け前に起きて、もし星が夜空に見渡せたなら、テントを張ったまま一服剱までいってみよう。
一服剱まで約1時間位だ。 そして、剱岳と鋭角的な“二ッ耳”を魅せる鹿島槍ヶ岳が朝の薄紅色の空に染まる絶景を目に焼きつけよう。 これこそ、山の醍醐味である。
記述文では書いたけど往復1時間は
『奇跡の体力』があったれば・・こそで
今なら到底ムリな事だぁね
:
なので『よも”ヤマ”話 第52話』の写真をば・・
この素晴らしき眺めを存分に味わったなら、剱岳へと登っていく登山者達にエールを送って《剱沢》に戻ろう。 《剱沢》に戻ったなら、テントを片付けて出発だ。
秋になると雪渓は後退して
かなりの間が剱沢のガレ場下りとなる
《剱沢小屋》前の涸れ沢を下っていくと、やがて《剱沢雪渓》の白銀の帯が見えてくるだろう。
この雪渓は比較的平坦でアイゼンなしでも歩いていけるが、“素”だと疲れるのも早いのでアイゼンを着けた方が得だ。
秋は雪渓が後退してクレバスだらけとなる
のでほとんど右岸を高巻く
雪渓に入ってから20分程歩いていくと、剱岳の大岩盤に昇り竜の如く一直線に突き上げている雪の筋を見る事ができる。
この雪渓の高巻き道は
一枚岩のトラバースもあってちょっと危険
平蔵谷出合を越えた辺りから
剱沢雪渓も傾斜がキツくなる
これが《平蔵谷》の雪渓だ。 何でも平均傾斜35°、《平蔵ノコル》付近の最上部に至っては45°とも50°ともいわれる急傾斜だ。 「これが剱岳の最短ルートだ」と言われても、さすがに登っていく気にはなれないだろう。 また、このルートを行くのであれば、それなりの装備と気構えが必要だろう。
周囲は岩肌が紅葉に染まる絶景だ
秋ならば、この辺りからそろそろ錦の帯を山肌に掲げてくるだろう。 雪渓の奥を望むと、後立山連峰の山なみが雄々しくそびえ立っている。 広い雪渓の中央に荷物を下ろして、カメラ片手に駆けまわりたくなる風景が次々と惜しみなく現れる。
八ッ峰の鋭い岩峰群が魅えてきた・・
八ッ峰が視界に広がると
長次郎雪渓の入口を示す大岩が現れる
絶景の中を進んでいくと、紅葉の両側を飾られた明るい雪渓の谷筋が視界に入ってくる。
これが《長次郎谷》の雪渓である。
長次郎雪渓を見上げて・・
でも秋は雪渓の上部が大きな
クレバスとなって登高は不可能デス
:
この雪渓は『日本百景 夏 第388回 長次郎雪渓』の記事にてチャレンジしているので、興味のある方はどうぞ。 また、いずれの『よも”ヤマ”話』でも書き記す予定である。
長次郎谷出合を越えると雪渓は消えて
紅葉を魅ながら真砂沢へ下っていく
《長次郎谷》の出合から先の《剱沢》は更に明るく開放的となり、広潤な気分満点に歩いていける。
やがて雪渓が薄れて退くようになっていくと、程なく《真砂沢ロッジ》前の広場に出る。
真砂沢出合より
下ってきた剱沢を望む
:
秋は雪渓がかなり崩れている
真砂沢ロッジよりは
沢のヘツリと河原歩きだ
ロッジの建物の脇を下っていくと《剱沢》の河原に出る。 河原に下りてすぐにある《剱沢》に架かる鉄のハシゴを見送って直進する。 ちなみにこの鉄ハシゴは、《ハシゴ谷乗越》へのルートの入口である。
ハシゴを見送って飛び石伝いに歩いていくと、裏剱の末端から延びる雪渓を渡っていく。
見上げると裏剱の岩盤が
紅葉をまとって美しく・・
この雪渓は《南股の雪渓》と呼ばれていて、例年秋のシーズン時期には《剱沢》に流れ込む支流に大きなスノーブリッジをかけるので通過には注意が必要だ。 《南股の雪渓》を越えると概ね《剱沢》の左岸を伝っていくようになるが、沢に迫り出した岩をへつる鎖場があったり、大岩を高巻きしたりと結構“忙しい”道程である。
南股の雪渓を越えると
沢の左岸をヘツっていく
途中には沢の縁をヘツる鎖場もあるよ
この沢のそばを1時間半ほど歩いていくと下流方向の視界が開け出し、左側に《三ノ窓谷》の雪渓と紅葉に覆われた八ッ峰の絶景が見渡せるようになるだろう。 そうなれば、《二股》も近い。
三ノ窓雪渓の上部が
見えてくると二俣は近い
三ノ窓雪渓
:
体力のある内に行っておけば良かったよ
今はムリっぽいし・・
《二股》には巨大な岩小屋・《近藤岩》が《剱沢》の中央にデンと居座り、沢の流れを二つに割っている。 《二股》に着くと立派な吊橋で《北股》を渡り、《近藤岩》のたもとを通って《仙人池》と《池ノ平》の分岐に出る。
池ノ平へ向かう北股沢ルート
:
通る者が少なく荒れて
廃道化しているとの事
尾根筋の道・仙人新道を進路に取る
直進して《三ノ窓》の雪渓を絡んで《北股沢》へと続く道が、《池ノ平》へのルートである。
この道は上級者向けとの事なので、あえて回避しよう。 目指す《仙人池》へのルートは、右手の樹林帯の中へ入っていく。 階段状の急坂を登っていくと、ザレ状の道を経て尾根上に出る。
三ノ窓雪渓と剱・八ッ峰
右手には鹿島槍と五竜の間にある
八峰キレットが望まれる
尾根上は樹木が薄れて所々視界が利くようになり、左手に《三ノ窓》の大雪渓と剱の《八ッ峰》が現れる。 また右手には、後立山の盟主・鹿島槍ヶ岳が双耳峰をそろえて対峙している。
その懐に向かって“幻の大滝”『剱大滝』を抱く《剱沢》が、緑を深く刻んでいる。
鹿島槍の双耳峰は
剱岳サイドから望むのが最も凛々しい
『幻の大滝』・剱大滝を抱く剱沢が
この下を深く刻んでいる
三ノ窓雪渓の全容も見渡せる
紅葉で飾ってみたけど
肝心の三ノ窓雪渓と
八ッ峰に被って駄写真に・・
これらを見ながら登っていくと、樹木に覆われたピークを2つ程越えて進行方向が右に変わる。
すると、谷を隔てて《仙人池ヒュッテ》の屋根が見えてくる。 こうなると、《仙人峠》は近い。
仙人峠より鹿島槍の双耳峰を望む
後は尾根下を巻くような感じで伝っていくと、《仙人峠》の分岐に出る。 この分岐を左に進むと、情緒豊かな《八ッ峰》の情景を魅せてくれる《池ノ平》へと誘ってくれる。 《仙人池》へは、右に進路を取る。 高山植物の保護の為のロープで仕切られた道を下る事15分で、《仙人池ヒュッテ》に着く。
たどり着いた《仙人池》では、時の流れを忘れさせる情景を魅せられる事だろう。
この記事の最後は八ッ峰の岩屏風おば・・
:
仙人池・水鏡の絶景は次話のお楽しみ・・
波紋一つない水面に投影される裏剱の《チンネ》・《八ッ峰》・《クレオパトラニードル》などの岩峰、池を取り囲む紅や黄色に色づいた樹木、岩を刻み“窓”をくり貫く長大な雪渓。 この情景に言葉はいらない。 時の流れを止めて、ただひたすら眺めていたい。 この地域は幕営禁止との事なので、今日は《仙人池ヒュッテ》で宿泊しよう。 明日の朝、《八ッ峰》を眺める期待を胸に休もう。
※ 続きは、次回の『第75話 裏剱・仙人池 その3』にて・・。
歳食うと金より
休みが嬉しく感じるよ
でもその休みもヤマに行く以外は
ゴロ寝かPC前の悲しい現実・・
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No Subject * by 根室大喜
画像見て感動を禁じ得ませんでしたが、登ろうとは思いもよりません><;死ぬ
Re: No Subject * by 風来梨
根室大喜さん、こんばんは。
> 画像見て感動を禁じ得ませんでしたが、登ろうとは思いもよりません><;死ぬ
『奇跡の体力』在りし頃は楽々登れた所も、今では「死ぬ」一歩手前の状態です。 そう、かつてより最大17㎏も痩せたのに、体力はもっと失いましたよ。 この事で解りました。 もっと食わねば・・。 そう、過ぎたる脂肪は『力なり』です!
> 画像見て感動を禁じ得ませんでしたが、登ろうとは思いもよりません><;死ぬ
『奇跡の体力』在りし頃は楽々登れた所も、今では「死ぬ」一歩手前の状態です。 そう、かつてより最大17㎏も痩せたのに、体力はもっと失いましたよ。 この事で解りました。 もっと食わねば・・。 そう、過ぎたる脂肪は『力なり』です!