風来梨のブログ

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よも”ヤマ”話  第73話  裏剱・仙人池 その1

よも”ヤマ”話 第73話 裏剱・仙人池 その1《立山三山縦走》 〔富山県〕 ’93・10
立山・雄山 3003m (2度目の登頂) 、立山・大汝山 3015m【名峰百選 31峰目】、
立山・真砂岳 2861m 、立山・別山 2880m

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秋はシースンを捉えるのが難しい
この年は立山の紅葉は遅かったようた
なのでこの写真は’90年に撮ったモノです

  剱・立山 つるぎ・たてやま (中部山岳国立公園)
立山連峰の盟主・立山は大汝山 3015メートル を最高点とする山塊で、古くから山岳信仰の中心であった。 立山黒部アルペンルートが開通してからはファミリー登山コースとなってしまったが、それまではアルピニズム発祥の山として、様々な登攀争いが繰り広げられた山域だ。 

それはそうとして、山の眺望はあまりにも楽に登れるのが腹立たしくなる程に素晴らしく、剱岳をはじめ、黒部渓谷・後立山連峰・槍穂高・・、果ては富士山までも見渡せる。 また、立山の麓にある広大なお花畑・五色ヶ原も、この山域の魅力を大いに引き立てている。 そして、バス停すぐの《室堂平》や《弥陀ヶ原》などの景勝地のトレッキングなど、「あくまでも楽に・・」という人にも『立山』は楽しめるのである。

一方、立山連峰の中でもひときわ嶮しく、氷河地形を顕著に示しているのが剱岳である。
山頂は氷食尖峰で、氷河が永い時をかけて多くの嶮しき谷を創りだしている。 これらの谷は、《長次郎谷》・《平蔵谷》など、これらの谷を世に広めた先駆者達の名前がつけられている。

剱岳の魅力は、何といっても“奥の深い”楽しみ方にある。 初心者ならば、室堂からお花畑を突っ切って剱の頂に立つコースがお勧めである。 山歩きに慣れた中級者ならば、剱沢雪渓を渡って仙人池・黒部渓谷に至るコースがいい。 剱沢の万年雪渓を突っ切って、裏剱の八ッ峰と仙人池を目指すのである。

このコースの全般に渡って眺められる裏剱の景観は、とにかく“素晴らしい”のひとことに尽きる。
八ッ峰を映す仙人池や彩り鮮やかな池ノ平、そして夏の“まだ人知れぬ”池ノ平山のお花畑、秋の燃える紅葉と、魅力が盛りだくさんである。



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裏剱・仙人池コース・1日目〔室堂~立山三山~剱沢〕行程図

   行程表            駐車場・トイレ・山小屋情報
1日目》 JR富山駅より鉄道利用(1:05)→立山駅よりケーブルとバス(1:00)→室堂
     (0:20)→一ノ越(1:00)→立山・雄山(0:15)→立山・大汝山(1:00)→真砂岳
     (1:00)→立山・別山(0:20)→剱御前小屋(0:30)→剱沢キャンプ場
《2日目》 剱沢小屋より一服剱まで往復1時間40分(0:30)→剱沢雪渓取付(0:50)→真砂沢ロッジ
     (1:30)→近藤岩・二股(2:20)→仙人池(途中の仙人峠より池ノ平まで片道30分)
《3日目》 仙人池(1:20)→仙人温泉(1:20)→阿曽原温泉(4:30)→欅平より渓谷鉄道利用
     (1:20)→宇奈月温泉駅より鉄道利用(1:30)→富山駅   

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秋色を示す山肌の峰を渡っていこう

  《1日目》 立山三山を伝って剱御前・剱沢へ
今回の行程における最大の懸案は、未踏だった立山最高峰の大汝山を登るにあたっての『立山ケーブル』の乗車待ちである。 ひどい時には富山始発の電車で立山駅に着いても、2~3時間待ちとなる事もある。 《上高地》や『立山ケーブル』などの北アルプスの登山基地は、スニーカー履きの行楽客が混ざるので、シーズンの休日はいつもダダ混みだ。 

さて、このような待ち時間があるゆえ、登山開始は早くても8時半となるだろう。 これを踏まえて、立山三山周りの所要7時間弱という行程時間は結構キツいのである。 あまりゆったり構えすぎると、秋という日が短くなりつつある季節も相俟って、カンテラを照らして稜線の岩稜地帯を歩かねばならぬハメにも陥るのだ。

まぁ、コレの解決方法としては、室堂の雷鳥沢のテント場で一泊して、登山のセオリー通りに朝一からの登山が開始できるようにする事だけれど。 でも、放浪期なら日程を気にする事もなかったけど、1日有給+土日の身の上なら『日程の枷』が覆い被さるだろうね。

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一ノ越から望む室堂と大日三山

《室堂》のバスターミナルの屋上に出て名水『立山の湧水』を水筒に入れてから、東に向かって進んでいこう。 整備された道をやや上り気味に歩いていくと、『雷鳥保護センター』を併設している《室堂山荘》の前に出る。 ここで室堂山と浄土山をめぐるコースを分けて、石畳みの敷かれた《祓堂》経由の短絡ルートに入っていく。 

早い時期などは、途中に浄土山から落ちる雪渓の端が石畳みの道を覆っていて、行楽客などの軽装者がスニーカーでおっかなびっくり伝っているのが目に入ったり、転倒して大騒ぎする中高年ハイカーがいたりして、登山コースらしき趣はあまり感じない。 

《祓堂》の祠を過ぎるとジグザグの急傾斜となって、これを乗りきると《一ノ越乗越》だ。 
ここには《一ノ越山荘》が建っていて、行楽客から縦走登山者まで様々な格好の人々が、山荘前のテラスで思い思いにくつろいでいる。 山荘前のテラスから見渡すと、眩い光にうっすらと富士山や槍の穂先が雲間に浮かんでいる事だろう。 

このテラスからの眺めも素晴らしいが、立山の頂点に立って3000mの高さから見下ろす眺めはもっと素晴らしいのである。 この“もっと”素晴らしい景色を眺めるべく、立山の頂へ登っていこう。 

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秋色の山肌を魅せる
立山を魅ながら登っていく

《一ノ越山荘》から立山までの標高差は300m・・。 山荘の正面から連なる大岩がゴロゴロと転がる岩ガレの急傾斜を、ほぼ一直線に登っていく。 登っていくと、頭上に見えたハイマツと岩屑の丘・《三ノ越》にいつの間にか登りつき、この丘からは《立山奥宮》の社務所が初めて視界に入る。 こうなれぱ頂上も近い。

社務所の打ち鳴らす太鼓の響きを聴きながら登っていくと、《立山奥宮》の社務所の左端に踊り出る。
社務所で立山・雄山の通行手形を買って(当時200円)、社務所の右端の鳥居をくぐり30段程の石段を登ると、立山・雄山 3003メートル 頂上だ。

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針ノ木岳から鹿島槍へと続く
後立山のスカイライン

頂上からは富士山をはじめ、北アルプスの津々浦々の山なみが見渡せる。 そして、足元に蒼紺のルビーのような光を魅せる《黒部湖》と《黒部ダム》、深い筋を魅せる針ノ木岳 2821メートル や赤沢岳 2677メートル の山なみ。

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紅葉の時期に合えば
山肌が錦に染まるのだが・・
※ 前回登頂時の写真から

紅葉の頃なら、錦繍きらびやかなじゅうたんが、山麓に向かって彩り鮮やかに敷かれている事だろう。 また、《室堂平》に建物が粒のように建ち、その先に広大な《弥陀ヶ原》が広がっている。 

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残念ながらこの年は紅葉には早かった
雄山山頂より室堂を見下ろす

周りを見渡して最後に目にするのは、やはり岩の殿堂・剱岳 2998メートル であろう。 
《八ッ峰》に連なる岩峰は、いつ眺めても感動のため息が出る。 素晴らしい眺めを思いっきり味わったなら、立山の最高峰・大汝山に向かっていこう。 立山の縦走路は、一旦社務の鳥居まで戻ったその脇から続いている。 岩ガレの中につけられた道を小さく上下しながら15分程伝っていくと、立山の最高峰・大汝山 3015メートル の頂上だ。 

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立山の社務所が管理している雄山と違って
本当の山頂の姿を示す立山最高峰の大汝山

頂上に乗っかかる大岩の上に立つと、北アルプスの山なみのほとんどを見渡す事ができるだろう。 
最高峰の感慨を満喫したなら、縦走路に戻って先に進んでいこう。

大汝山から少し岩ガレを下っていくと、大汝の休憩舎が見えてくる。 シーズン中に限り出店があったみたいだが、普段はトタン板が打ち付けられて中には入れない。 この休憩舎から、しばらく岩屑をまぶした平坦な道を行く。 やがて、《富士ノ折立》のつけ根に差しかかり、この山塊を横目に見ながら急傾斜で下っていく。 下り始めは、丸太の階段となっているので道は判り良い。 

かなりのオーダーで下っていくと、道が岩屑の転がるガラ場からザラザラの砂地に変わっていく。 
道がザラザラに変わると真砂岳の緩やかな稜線上に出て、緩傾斜で登りつめると真砂岳 2861メートル の頂上だ。 天気が良ければ、剱の《八ッ峰》がタイナミックに展開している事だろう。 

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富士ノ折立と剱岳

山頂から真っすぐに延びる《内蔵助山荘》から《黒部ダム》への道を見送り、一段下の《別山乗越》へ続く道に進路を取る。 この道を進むと、やがて道は二手に分かれる。 右は立山・別山の頂を踏むコース、左はショートカットして直接《別山乗越》へ向かう道である。 頂上を踏めるチャンスがあれば、できるだけ踏んで行きたいものである。 従って、頂上経由の右の道を行く事にしよう。 分岐からものの10分で、別山山頂台地に着く。 

この台地は茫洋とした感じの広い丘で、霧にでも巻かれると方向を見失いやすい所だ。 
山頂台地から岩コロが転がる丘を歩いていくと、日本最高所にある“池”《硯ヶ池》が見えてくる。 
この池を見送って先に進むと、《別山・北峰》と記されたプラカードが差してある草むらに出る。 
ここが立山・別山 2880メートル の頂上みたいだ。 踏跡はこの先のブッシュに向かって続いてはいるが、道はここまでだ。 

往路を山頂台地の端まで戻ろう。 先程も述べた通り、この辺りは茫洋とした岩ガレ場で道が判りにくいので注意しよう。 道は山頂台地に登り着いてから、すぐに左に折れている。 《硯ヶ池》が視界に入ると、「縦走路から外れている」という事を憶えておこう。 左折してからすぐに《別山山頂》とある大きな標柱があり(左折地点では大岩に隠れて見えない)、以後は明瞭な道が《別山乗越》に向かって続いている。 

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立山・別山から望む
ダイナミックな姿を魅せる剱岳

下り始めてすぐに短絡道と合わさって20分程歩くと、《剱御前小屋》の建つ《別山乗越》だ。 
ここからの剱岳は真にダイナミックだ。 ここからは、剱沢へ向けて下降していく。

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剱御前より望む剱の八ッ峰

日程の都合により今回の山旅では剱の本峰を踏まないので、今晩は剱沢小屋に泊る事としよう。 まぁ、来年からはテントを担いでのモノとなるので、次回以降は全てテント場のある剱沢に下りていく事になるのだが・・。

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明日は剱沢を下っていく

明日は剱沢の雪渓を下っていく。 秋は雪渓が腐ってクレバスだらけとなるので、注意が必要だ。
そして、裏剱の絶景に魅せられよう。

  ※ 続きは、次回の『第74話 裏剱・仙人池 その2』にて・・。



秋はいいけど冬になると
全くの季節を外した夏山ネタとなるなぁ
今年は雨が降ると思った盆休みがピーカンで
7月は雨ばかりだったなぁ



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No Subject * by 根室大喜
災害用のテントは持っています
悲しいことがあった時、家の中にテントを張り、そこで泣き尽くしましたとさ

No Subject * by 鳳山
立山連峰、佐々成政がアルプス越えをしたところですね。成政もこの景色を見たと思うと感慨深いものがあります。

Re: No Subject * by  風来梨
根室大喜さん、こんばんは。

> 災害用のテントは持っています
> 悲しいことがあった時、家の中にテントを張り、そこで泣き尽くしましたとさ

私は、かつては楽々と担ぎ歩けたのが、1.5倍も時間がかかるまでに退化して、その夜はテントの中で、かつてを懐かしんで、枕代わりの合羽巻きを涙で濡らしています。 もう、涙でボトボトに濡れます。(笑)

Re: No Subject * by  風来梨
鳳山さん、こんばんは。

> 立山連峰、佐々成政がアルプス越えをしたところですね。成政もこの景色を見たと思うと感慨深いものがあります。

佐々成政が越えたのは、この立山よりやや南に位置するザラ峠から黒部湖の位置(但し、ダムなんぞない昔なので、黒部川の源流部かと・・)を渡って針ノ木岳の肩から針ノ木雪渓を下ったモノだと思われます。

ちなみに、私はザラ峠までと黒部湖からの登り返しの中腹部の船窪から蓮華岳を通って針ノ木雪渓は歩いた事があります。 もちろん、夏の無雪期に・・です。

そう思うと、先人はすざましいパワーを持ってたのですねぇ。

はじめまして(^^)/ * by mt minnie
風来梨さま♪
 よも”ヤマ”話さまのページは新しい記事がある時など
見せていただいていました、剱、立山は大きな石の山々ですね。実は富士山と立山はいつか行こうと最後になってしまい
ましたが富士山も昨年、立山はやっと今年行くことが出来ました。なので初めてですが、やはり北アルプスは眺望がすばらしく花畑も素晴らしかったです。
拙いブログをリンクして頂き有難うございます。
こちらもリンクさせて頂きます。遅くなりました。

Re: はじめまして(^^)/ * by  風来梨
mt minnieさん、こんばんは。

> 風来梨さま♪
>  よも”ヤマ”話さまのページは新しい記事がある時など
> 見せていただいていました、剱、立山は大きな石の山々ですね。実は富士山と立山はいつか行こうと最後になってしまい
> ましたが富士山も昨年、立山はやっと今年行くことが出来ました。なので初めてですが、やはり北アルプスは眺望がすばらしく花畑も素晴らしかったです。
> 拙いブログをリンクして頂き有難うございます。
> こちらもリンクさせて頂きます。遅くなりました。

リンクの御承認と折り返しのリンクを結んで頂き、有難うございます。
最近は身体がヘタって、山での所要時間が倍になりました。 それでもメゲずに山の便りを届けたいな・・と思います。

「よも”ヤマ”話」は私の登山史で、今は若き日の事が記事となってますので、今は到底このペースで登るのはムリです。

それでは、今後とも宜しくお願いします。

コメント






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No Subject

災害用のテントは持っています
悲しいことがあった時、家の中にテントを張り、そこで泣き尽くしましたとさ
2019-08-28 * 根室大喜 [ 編集 ]

No Subject

立山連峰、佐々成政がアルプス越えをしたところですね。成政もこの景色を見たと思うと感慨深いものがあります。
2019-08-29 * 鳳山 [ 編集 ]

Re: No Subject

根室大喜さん、こんばんは。

> 災害用のテントは持っています
> 悲しいことがあった時、家の中にテントを張り、そこで泣き尽くしましたとさ

私は、かつては楽々と担ぎ歩けたのが、1.5倍も時間がかかるまでに退化して、その夜はテントの中で、かつてを懐かしんで、枕代わりの合羽巻きを涙で濡らしています。 もう、涙でボトボトに濡れます。(笑)
2019-08-29 *  風来梨 [ 編集 ]

Re: No Subject

鳳山さん、こんばんは。

> 立山連峰、佐々成政がアルプス越えをしたところですね。成政もこの景色を見たと思うと感慨深いものがあります。

佐々成政が越えたのは、この立山よりやや南に位置するザラ峠から黒部湖の位置(但し、ダムなんぞない昔なので、黒部川の源流部かと・・)を渡って針ノ木岳の肩から針ノ木雪渓を下ったモノだと思われます。

ちなみに、私はザラ峠までと黒部湖からの登り返しの中腹部の船窪から蓮華岳を通って針ノ木雪渓は歩いた事があります。 もちろん、夏の無雪期に・・です。

そう思うと、先人はすざましいパワーを持ってたのですねぇ。
2019-08-29 *  風来梨 [ 編集 ]

はじめまして(^^)/

風来梨さま♪
 よも”ヤマ”話さまのページは新しい記事がある時など
見せていただいていました、剱、立山は大きな石の山々ですね。実は富士山と立山はいつか行こうと最後になってしまい
ましたが富士山も昨年、立山はやっと今年行くことが出来ました。なので初めてですが、やはり北アルプスは眺望がすばらしく花畑も素晴らしかったです。
拙いブログをリンクして頂き有難うございます。
こちらもリンクさせて頂きます。遅くなりました。
2019-11-04 * mt minnie [ 編集 ]

Re: はじめまして(^^)/

mt minnieさん、こんばんは。

> 風来梨さま♪
>  よも”ヤマ”話さまのページは新しい記事がある時など
> 見せていただいていました、剱、立山は大きな石の山々ですね。実は富士山と立山はいつか行こうと最後になってしまい
> ましたが富士山も昨年、立山はやっと今年行くことが出来ました。なので初めてですが、やはり北アルプスは眺望がすばらしく花畑も素晴らしかったです。
> 拙いブログをリンクして頂き有難うございます。
> こちらもリンクさせて頂きます。遅くなりました。

リンクの御承認と折り返しのリンクを結んで頂き、有難うございます。
最近は身体がヘタって、山での所要時間が倍になりました。 それでもメゲずに山の便りを届けたいな・・と思います。

「よも”ヤマ”話」は私の登山史で、今は若き日の事が記事となってますので、今は到底このペースで登るのはムリです。

それでは、今後とも宜しくお願いします。
2019-11-04 *  風来梨 [ 編集 ]