2019-07-27 (Sat)✎
よも”ヤマ”話 第69話 南アルプス南部・大縦走 その5《百閒洞~畑薙ダム》〔静岡県・長野県〕’93・8
大沢岳 2819m〔名峰次選 19峰目〕、中盛丸山 2807m、小兎岳 2738m、兎岳 2818m、
聖岳 3013m【名峰百選 27峰目】、奥聖岳 2982m、小聖岳 2662m、上河内・南岳 2702m
上河内岳 2803m【名峰百選 28峰目】
最南端に位置する
3000m峰・聖岳を目指して・・
南アルプス南部 みなみアルプスなんぶ (南アルプス国立公園)
南アルプスは白峰三山を越えると、頂を踏むのに二日がかりとなる。 それだけに、深山の趣をあふれんばかりに感じ取る事ができるのである。 まず、『漆黒の鉄兜』の異名を持つ塩見岳 3052メートル。
この山は南アルプスのほぼ中央にあり、どこから登っても二日以上かかるのだが、頂上に立つと南・中央・北と全てのアルプス、そして日本の全ての3000m級の山を見渡せるのである。
塩見岳を越えると、南アルプスの盟主・荒川三山と赤石岳がそびえたつ。
悪沢岳 3141メートル ・荒川中岳 3083メートル ・荒川前岳 3068メートル と連なる荒川三山は、赤石岳の雄大な眺めと鞍部ごとにある広大なお花畑が素晴らしい。 中でも、荒川前岳の標高差400mにも及ぶ大斜面を染め上げるお花畑が赤石岳を借景に広がる風景は、言葉にできない雄大さがある。
もう一つの盟主・赤石岳 3120メートル は、赤みを帯びた山肌とその巨大な山容が印象的だ。
そして、その巨大な山陵から望む朝の紅に染まった富士や悪沢岳の美しさには、思わず息を飲む。
そして南部には、最後の3000m峰・聖岳 3013メートル がある。 この聖岳まで、赤石岳から僅か6km。 しかし、この間にピークが4つもあり、全て頂を越えていかねば聖岳までたどり着けない。
この苦しい登りこそ南アルプスの魅力であり、これを克服してこそ雄大な風景を思いのままに味わう事ができるのである。
また、更に南に進めば、『お花畑』との地名を持つ上河内岳 2803メートル や、“光石”を抱く光岳 2591メートル など個性的な魅力を持つ山々が連なり、広大で懐の深い山域なのである。
南アルプス南部・大縦走〔百閒洞~聖平〕行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 静岡市街より車(2:30)→畑薙第一ダム(4:40)→椹島
《2日目》 椹島(3:20)→蕨段(2:00)→千枚小屋、千枚岳へは往復1時間20分
《3日目》 千枚小屋(0:45)→千枚岳(1:30)→悪沢岳(1:30)→荒川中岳
(0:25)→荒川前岳(1:10)→荒川小屋
《4日目》 荒川小屋(0:40)→大聖寺平(1:45)→赤石岳(2:00)→百間平
(0:50)→百間洞露営地〔百閒洞山ノ家へは約5分〕
《5日目》 百間洞露営地(1:30)→大沢岳(2:00)→兎岳(2:30)→聖岳、奥聖岳へは片道20分
(1:50)→聖平
《6日目》 聖平(2:20)→上河内岳(1:30)→茶臼小屋(1:45)→柿窪沢小屋
(1:00)→ウソッコ沢小屋(1:30)→畑薙大吊橋(0:50)→畑薙第一ダムより車
(2:30)→静岡市街
※ 前回の『第68話』の続き
赤石岳のシルエットを背に
『愛の6連発』に挑もう
《5日目》 聖岳を越えて聖平へ
今日は、いよいよこの山行における核心である南アルプスの名物・『愛の六連発』に挑む。
大沢岳から聖岳までの区間には、巻道などといった妥協を一切許さない南アルプスらしい強烈なアップダウンが待ち受けている。 この強烈な急登は、露営地の脇にある登り口からいきなり始まる。
まずは、大沢岳Ⅱ峰への350mの直登である。
朝のミルク色の空に
南アの山なみが連なる絶景
最初は、シラベ林の中を登っていく。 やがてこの密林を抜けて、岩礫が敷きつめられて急斜面となった山肌を張り付くように登っていく。 この登りはろくにジグザグも切っておらず、文字通り岩角に手掛け足掛けの直登である。 約1時間、岩にへばりついて登っていくとハイマツの茂みに突入し、傾斜も幾分穏やかになってくると大沢岳Ⅱ峰は近い。
朝のキツい登りも
富士の優雅な姿で癒される
朝日にギラリと輝く盟主・赤石岳
振り返ると、朝日に染まる黄金色の空の中にアルペン的な切り立った稜線のシルエットを魅せる荒川三山、逆光に映えて巨大なシルエットを魅せる赤石岳、黄金色に輝く雲海に浮かぶ富士山、濃緑の山肌に朝の光を受けて深みのある色調を魅せる聖岳など、素晴らしき情景が大パノラマで広がる。
朝日輝く赤石岳と富士山
赤石岳の背後に
今まで歩いてきた稜線が・・
中でも、将棋の駒のように端正な五角形を示し、その深い緑の色調とあいまって重量感あふれる姿を示す聖岳に目を奪われる。 頂上に何もない大沢岳Ⅱ峰を越えて50m程の上下をこなすと、三角点のある大沢岳 2819メートル 本峰に登り着く。 頂上からの眺めは雄大で、より大きく存在感を示す聖岳に魅せられる。
将棋の『王将』の如くの
存在感を示す聖岳
素晴らしい山風景を眺めて、朝からいきなりの急登で乱れた息を整える事にしよう。
まだ『愛の六連発』は、序曲を終えたに過ぎないのだ。 気合を入れ直して次に進む事にしよう。
山名は平凡なるも
最も険しい山容の中盛丸山へ
大沢岳の次は、美しいハイマツの円頂峰である中盛丸山への登りだ。 大沢岳から150mを下って、中盛丸山との鞍部に出る。 ここから尾根上を通って中盛丸山の右側に取り付いて、山肌を巻くように登っていく。
影となってる信州側は
大きく崩壊した薙となっている
この辺りは信州側が大きく崩壊していて、足元が細く高度感満点だ。 信州側は今でも崩壊が進行しているので、注意して登っていく。 登っていくうちにハイマツが腰まで深く迫ってきて、これを漕いで上に飛び出ると中盛丸山 2807メートル の頂上だ。
中盛丸山の頂にて・・
『愛の六連発』はこの辺りから
ジワジワと効いてくる
この山の頂は、狭いながらもハイマツと高山植物がおりなす小庭園を形成しており、広潤な気分満点だ。
山頂からの眺めも、赤石岳・聖岳などの先程までのラインナップに、山らしい山容の大沢岳が加わってより魅力的となる。
南アルプスの全ての山が見渡せて・・
目指す聖はまだまだ遠い
聖岳と同じく、底辺をドンと据えた五角形の姿を魅せる大沢岳と、空を舞うが如くたなびく銀杏雲との取り合わせが印象深い。
銀杏雲たなびく大沢岳
さて、『愛の六連発』の3つめに至ると、そろそろ全身にジワジワと効いてくるだろう。
ゆっくり休憩をして次に進もう。 次は『六連発』の中で唯一、気を許せる小兎岳 2738メートル の頂上越えである。
今まで通った道とガラリと変わって、広い砂礫帯の中央につけられた道が緩やかな起伏を経て兎岳の取付まで続いている。 この峰の登頂は特段に辛くはないが、お約束通り峰に登頂するごとに休憩を入れていこう。 こういう事をはしょると後々辛くなるハメ!?となるので、しっかり休憩しておいた方がいいだろう。
小兎岳を越えて兎岳との鞍部に下り、その取付から兎岳を見上げると、思わず声を上げたくなる。
兎岳の頂上まで延々と続く砂利ガレのジグザグ登りで、標高差200m・・。 遮るものもなく、直射日光が照りつけて陽炎で歪む中を・・である。
登り始めると想像した通り、みるみる内に水分は搾り取られて体は日干し状態に、また足元はズルズルと砂利にめり込んで踏ん張りが効かず、行程差以上に辛い登りである。 これが5発目に来るのだから、ボディーブロを食らったように積み重なって効いてくるのである。
中盛丸山と小兎岳を連ねる
稜線縦走路と中央アルプス
取り付いてから50分、やっとのことで兎岳 2818メートル の頂上へ登り着く。 兎岳の頂上には赤石岳の雄大な展望が待ち受けているが、もはや疲れてそれ所ではないだろう。 たぶん、火照った自分の体を仰ぎ、水筒の水をむさぼるように飲みながらヘタリ込んでいる事だろう。 だが、まだ終わりではない。
これより、聖岳へ向けての最大のアップダウンが待ち受けているのだ。
兎岳の西側斜面を下っていくのだが、この西側斜面は先程と打って変わって切り立った岩場の崖下りとなり、疲れの汗と共に“冷や汗”も出る。 下り始めてからすぐに、《兎岳避難小屋》への道を右に分ける。 上から見た避難小屋は屋根部分の波板に“ウサギ”と書いてあるブロック小屋で、“荒廃”しきり・・といった感じだ。 南アルプスの避難小屋は、荒れていて使い物にならないのが多い。
崩壊寸前の兎岳避難小屋
※ 南アルプス山小屋案内より
でも、この時のワテは体力が『奇跡』に近づきつつある事で、チャレンジャー精神旺盛だった。
それは今度来た時に、「この荒廃小屋で泊ってやろうか・・」と画策したのである。
入口はゴミで封鎖されてたよ
:
中は改修されて十分使える・・らしい
まぁ、先に『奇跡の体力』が終焉を迎えて実現には至らなかったが、その後に南ア・鋸岳の《大岩下ノ岩小屋》や阿蘇の《月見小屋》、知床岬の廃番屋などの『伝説の小屋』にも泊まれる程の野宿野郎となったのだから、体力を裏付けにした勢いとは凄いモノである。
さて、この下りは、聖岳との鞍部まで標高差300mをイッキに下っていく。 下っていく前方には、《聖の大崩壊》がすざましい様相を魅せている。 聖岳との最低鞍部に下り着くと、《聖の大崩壊》を右手に見ながら、キレットの“窓”のように痩せた稜線を伝って聖岳に取り付いていく。
ここから聖岳までは450mの“バカ登り”で、見上げる聖岳の頂の遠さには愕然となるのである。
だが、ここまできたなら登りつめるしかない。 東側にそびえる雄大な赤石岳の眺めで気持ちを高めて、イッキに登ってしまうとしよう。
この眺めを力水に
イッキに登ってしまおう
・・見栄えのいい山というのは、たいがい登りがキツいというのはどうやら正論のようである。
朝、大沢岳から眺めた風格漂う聖岳は今、強烈なアップダウンとなって疲れた体に襲い掛かってくる。
取り付いてからは、赤石岳にあったものと同じ性質の赤茶けた大岩をよじ登り、ハイマツ帯の中をくぐり、岩ガレのジャリジャリ道の急登“三点セット”で登りつめる。 やがて傾斜が緩くなり、ハイマツと岩石が交じる蛇行した坂を登りつめると、本邦最南端の3000m峰・聖岳 3013メートル の頂上広場に踊り出る。
今はこんな飄々とした顔で
アリバイ写真など撮れないわなぁ・・
頂上に着いての最初のひと事は、たぶん“バテた・・”って言葉である。 累計登り1500m、下り800m(これより下る聖岳を入れると1600mになる・・)の強烈なアップダウン群『愛の六連発』は、こうしてフィナーレを迎える。
聖岳の頂上でしばし昼寝でもして多少体力が回復したなら、奥聖岳 2982メートル まで行ってみるといい。 片道20分で、より赤石岳が迫力を増してそびえ立つ姿を目にする事ができる。
また、《百間洞山ノ家》も手に取るように見渡せて、距離的にはあまり離れていない事を実感できるであろう。
『愛の六連発』の“元”を取り返すべく雄大な眺めを満喫したなら、下りにかかろう。
聖岳からは、今日の宿泊地・《聖平》までの標高差780mに及ぶ“バカ下り”が待っている。
この聖岳は、おそらく最も登頂するのに苦労する3000m峰であろう。 赤石岳方面からだと、今日に紹介した『愛の六連発』に乗り越えねばならないし、《畑薙ダム》や《便ヶ島》だと《聖平》に登り着くのにひと苦労し、なおかつ780mの“バカ登り”が待ち受けているのだ。
さて、その“バカ下り”であるが、いきなり滑りやすい砂利坂をジグザグに切って下っていく。
やがて樹林帯の中に突入して、悔しい程にズンズン下っていくと、小屋の建つ《聖平》に下り着くのだが、これがなかなか着かない。 普通に下っても砂利坂を下りきるのに1時間以上、樹林帯を越えるのに1時間半はかかる。 これを『愛の六連発』で疲れきった体でこなさねばならないのだ。
しかし、キツい行程は今日だけではない。 明日も続くのだ。 ダラダラ下って、ケガでもしたら取り返しがつかない。 もうひとふん張り、気を引き締めていこう。 苦労して下り着いた《聖平》は、清らかな沢が流れる絶好のキャンプ地だ。 今日は、早めに休んで明日に備る事にしよう。
南アルプス南部・大縦走〔聖平~茶臼岳分岐〕行程図
《6日目》 上河内岳を踏んで畑薙ダムへ
今日の行程は、『お花畑』の地名を持つ名峰・上河内岳を経て、イッキに《畑薙ダム》まで下りきる“体力勝負”の長丁場だ。 歩行時間も約9時間と、かなり長い。 従って、《聖平》は夜明けと同時に出発したいものだ。
天気が良ければ
富士を見ながら登っていける
《聖平》を出るとすぐに深い樹林帯の中に入り、木の根を踏みしめての急登となる。
この急登でひと汗、ふた汗とかくと、樹林帯を抜け出して聖岳の展望の利く丘の上に出る。
晴れていたなら爽やかな朝の空の下、樹林帯の林を前景に聖岳の勇姿を望む事ができるだろう。
晴れていれば聖の雄姿が望める
※ 別の時に撮影
この丘から再び樹林帯の中に分け入り、小さい上下をこなして小さな鞍部に出る。 この鞍部を境にシラベ林からダケカンバ、やがてハイマツ帯へと変わっていく。 上を覆っていた樹木が背丈の低いハイマツに変わると、視界がパッと開けて、聖岳を背に仰ぎながらの爽快な稜線歩きとなる。
かなりきわどい
上河内・南岳の崩壊薙
※ 別の時に撮影
この稜線を緩やかに登りつめると上河内岳の前衛峰・南岳 2702メートル の頂上に出るが、途中に1ヶ所右手・信州側に大きく崩れ落ちたガレの縁を通るので注意が必要だ。 この大きな崩壊地はかなりの高度感があり、それを見ながらトラバース気味に登っていくので、多少の恐怖感を味わうはずだ。
登りきった南岳からは、真正面に美しくそびえ立つ聖岳を望めるだろう。 但し、「晴れていたなら」であるが・・。
南岳は両面非対称の山容のようで、この頂上からは草原の丘を下るかのように緩やかに下っていく。
天然の石畳みが敷きつめられた二重山陵の窪みまでくると緩やかな下りは終わり、上河内岳の肩に向けての登り返しとなる。 徐々に傾斜を増し、最後はお花畑の斜面をジグザグ登りで乗りきると、二重山陵の一方の頂点である上河内岳の肩に出る。 ここから砂礫帯を登る事10分で、南アルプスの中でも“シブい”魅力を持つ名峰・上河内岳 2803メートル の頂上だ。
上河内岳より望むレンズ雲と富士
※ 別の時に撮影
その”シブい”魅力を持つ名峰・上河内岳であるが、残念ながら上河内・南岳からタダ雨が降り出し、写真を撮るどころではなかったのである。 故に、これから先は、2度目に通った体験を元に語っていく事としよう。
天気が良ければ
雲海に浮かぶ聖と赤石が望める
※ 別の時に撮影
角度を変えて裾野を広げて撮ってみる
:
これも天気が良ければの話
※ 別の時に撮影
頂上からの展望はいうまでもなく雄大で、南アルプス南部の奥深き魅力を余す事なく魅せてくれる。
聖岳・光岳・笊ヶ岳など、美しい山なみを心ゆくまで眺めたなら先に進む。 上河内岳からの下りは、この山の“シブい”魅力をたっぷりと味わう事ができるだろう。 肩に戻ったなら、南に下っていこう。
急過ぎず、なだらか過ぎずの傾斜を下っていくと、辺り一帯が砂礫地のお花畑の中に突入する。
チシマギキョウ
寒冷地由来の花の為か鞭毛が生えている
イワブクロ・イワギキョウ・ハクサンイチゲ・キンバイソウなどが咲く中を雷鳥が戯れ、野鳥がさえずる別天地の中を歩いていくと、伏し尖った小岩峰地帯に出る。
奇岩・竹内門をくぐる
※ 別の時に撮影
岩と岩が重なってできたトンネル『竹内門』をくぐり抜け、岩ガレ帯を二重山陵の窪地まで下っていこう。 花が所狭しと咲き乱れるこの窪地こそ、国土地理院が定めた“地名”『お花畑』である。
“地名”お花畑より望む上河内岳
※ 別の時に撮影
花期になるとその名の通り、素晴らしい花々の饗宴を魅せてくれる。 また、天然記念物・『亀甲状土』も、お花畑の南側に“土の花”を咲かせている。
土に咲く花・・
天然記念物“亀甲状土”
※ 別の時に撮影
振り返ると、お花畑の草原を前景に二重山陵を走らせた上河内岳の凛々しき姿を望める事だろう。
ワテがこの峰を【名峰百選】に選んだのは、この山岳美溢れる情景と、地名『御花畑』を抱く山だからである。
“地名”お花畑より眺める
上河内岳は正に名峰だ
※ 別の時に撮影
お花畑の中を突っ切ると崩れやすい砂礫帯の稜線に戻って、緩やかにアップダウンを繰り返すと茶臼岳の鞍部に出る。
南アルプス南部・大縦走〔茶臼岳分岐~畑薙ダム〕行程図
ここは分岐となっていて、この分岐は下山すべく左の《茶臼小屋》に向かって進路を取る。
なお、直進すると、南アルプス最南の名峰・光岳への縦走路だ。 分岐から10分も下ると、《茶臼小屋》の建つ段状の丘に出る。 ここからは、1500mにも及ぶ“タダ下り”を下っていく。
ダケカンバの林の中をジグザグを切って下っていくと、『水場』の表示のある岩清水の水場に出る。
この水場は日照り続きだと涸れてしまうのであてにはならないが、位置的にはちょうど《柿窪沢小屋》との中間を過ぎた辺りにあり、位置の目安としては使える。
花落ちたチングルマが“アート”に変わった
※ 別の時に撮影
この辺りから、樹林帯の植生もダケカンバから針葉樹林に変わり、光の届かない薄暗い中をジグザグに下っていく。 飽きる程にジグザグ下りをこなすと、涼しげな沢音が聞えてくる。 この音が徐々に大きくなって、沢が視界に入ってくると《柿窪沢小屋》も近い。
このまま沢まで下っていくと、沢の畔に建つ《柿窪沢小屋》に着く。 この小屋は’91年に新築された真新しい小屋で、泊り心地も良さそうだ。 《畑薙ダム》から登ってくるとしたなら、ここら辺りまでが初日の行程となろう。
さて、下りはまだまだ続く。 水量豊富な《柿窪沢》を鉄の吊橋で渡り、《柿窪峠》を越えると、再びアカマツの樹林帯の中のジグザグ下りとなる。 下を俯瞰すると情け容赦のないジグザグ下りが続いてウンザリするが、足元はアカマツの落葉がソフトクッションとなっていて、思ったより楽に下っていける。
「これでもか!」と続く下りを1時間も続けると、ようやくジグザグは途切れてハシゴ伝いの急下降となる。
急なハシゴを4~5ヶ所下ると、森の中に囲まれた《ウソッコ沢小屋》の前に出る。
ここからは、“南アルプス名物”・木の吊橋や丸太を伝いながら沢に沿って下っていく。
途中に、《ヤレヤレ峠》なる登り返しがあるので留意しておこう。 ゴール間際の約150mの登り返しは、その名の通り“ヤレヤレ”である。
1500mの標高差を下ってきて、なおかつ《大井川東俣林道》が視界に入り、“もうすぐだ・・”と気が急く中で・・である。 地勢には逆らえぬとはいえ、これは虚脱感に襲われても止むを得ないだろう。
《ヤレヤレ峠》の上に立つと、《畑薙大吊橋》が見えるだろう。 見えてきても大きく山肌を巻く為に、なかなか着かないのだ。 その為だろうか、《畑薙大吊橋》を渡る時はとても感慨深い。
万感の思いを込めて畑薙大吊橋を渡る
後は、《大井川東俣林道》を3km程歩くと、《畑薙第一ダム》のダムサイトに着く。
下山したなら、まずは温泉に行こう。 3km下に無料の温泉『赤石温泉』があるので、利用するといい。(現在は、宿泊可能な温泉クアハウス・白樺荘となっていて有料である) 山のいで湯で山の疲れを洗い流しながら、相風呂の方々と山の思い出を語り合うのもまた楽し・・である。
南アの大縦走だけで
5話も使っちまったぜ・・
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