風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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よも”ヤマ”話  第68話  南アルプス南部・大縦走 その4

よも”ヤマ”話 第68話 南アルプス南部・大縦走 その4《荒川小屋~百閒洞〔静岡県〕’93・8
小赤石岳 3081m、赤石岳 3120m【名峰百選 26峰目】

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赤石岳でゴキゲンのアリバイ写真
凛々しいジャン! 若き日のワテ

  南アルプス南部 みなみアルプスなんぶ (南アルプス国立公園)
南アルプスは白峰三山を越えると、頂を踏むのに二日がかりとなる。 それだけに、深山の趣をあふれんばかりに感じ取る事ができるのである。 まず、『漆黒の鉄兜』の異名を持つ塩見岳 3052メートル。 
この山は南アルプスのほぼ中央にあり、どこから登っても二日以上かかるのだが、頂上に立つと南・中央・北と全てのアルプス、そして日本の全ての3000m級の山を見渡せるのである。

塩見岳を越えると、南アルプスの盟主・荒川三山と赤石岳がそびえたつ。 
悪沢岳 3141メートル ・荒川中岳 3083メートル ・荒川前岳 3068メートル と連なる荒川三山は、赤石岳の雄大な眺めと鞍部ごとにある広大なお花畑が素晴らしい。 中でも、荒川前岳の標高差400mにも及ぶ大斜面を染め上げるお花畑が赤石岳を借景に広がる風景は、言葉にできない雄大さがある。

もう一つの盟主・赤石岳 3120メートル は、赤みを帯びた山肌とその巨大な山容が印象的だ。 
そして、その巨大な山陵から望む朝の紅に染まった富士や悪沢岳の美しさには、思わず息を飲む。 

そして南部には、最後の3000m峰・聖岳 3013メートル がある。 この聖岳まで、赤石岳から僅か6km。 しかし、この間にピークが4つもあり、全て頂を越えていかねば聖岳までたどり着けない。 
この苦しい登りこそ南アルプスの魅力であり、これを克服してこそ雄大な風景を思いのままに味わう事ができるのである。

また、更に南に進めば、『お花畑』との地名を持つ上河内岳 2803メートル や、“光石”を抱く光岳 2591メートル など個性的な魅力を持つ山々が連なり、広大で懐の深い山域なのである。



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南アルプス南部・大縦走〔荒川小屋~百閒洞〕行程図

   行程表            駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 静岡市街より車(2:30)→畑薙第一ダム(4:40)→椹島
《2日目》 椹島(3:20)→蕨段(2:00)→千枚小屋、千枚岳へは往復1時間20分
《3日目》 千枚小屋(0:45)→千枚岳(1:30)→悪沢岳(1:30)→荒川中岳
     (0:25)→荒川前岳(1:10)→荒川小屋
《4日目》 荒川小屋(0:40)→大聖寺平(1:45)→赤石岳(2:00)→百間平
     (0:50)→百間洞露営地〔百閒洞山ノ家へは約5分〕
《5日目》 百間洞露営地(1:30)→大沢岳(2:00)→兎岳(2:30)→聖岳、奥聖岳へは片道20分
     (1:50)→聖平
《6日目》 聖平(2:20)→上河内岳(1:30)→茶臼小屋(1:45)→柿窪沢小屋
     (1:00)→ウソッコ沢小屋(1:30)→畑薙大吊橋(0:50)→畑薙第一ダムより車
     (2:30)→静岡市街

   ※ 前回の『第67話』の続き

 《4日目》 赤石岳を越えて百間洞露営地へ
いよいよ今日は、南アルプス南部の盟主・赤石岳に登る。 今日は歩行時間5時間と短い行程だが、早発は山の鉄則なので早く出発するに限る。 荒川小屋を出ると、砂礫帯の大斜面の縁をトラバース気味に平行移動していく。 約40分程歩くと、《大聖寺平》というだだっ広い砂礫地の丘の上に出る。 

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大聖寺平~ダマシノ平に咲く花
ハクサナフウロ

ここは荒天の場合、方位を見失って“リングワンダリング”に陥る危険があるので注意が必要だ。 
進行方向は、やや左向きに真っすぐ進む感じだろうか・・。 道が正しければ、《位久光霊神》の碑が道脇にあるので、憶えておくと便利だ。 

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ハクサンチドリ
ヨツバシオガマとの見分け方
4つの葉があるのがヨツバシオガマ
ないのがハクサンチドリ

《大聖寺平》から砂礫帯の丘に向かってジグザグに登っていくと、先程の眺めとよく似たただっ広い丘の上に登り着く。 もし、荒天時に全く地理感なしに登ったなら、ここも“リングワンダリング”に陥ったと思うかもしれない。 それもそのはず、この丘はよく《大聖寺平》と見誤る為、通称“ダマシノ平”と呼ばれているのだ。 この2つの丘の“差”は、《ダマシノ平》がハイマツの庭園状を成していて、やや花が多いみたいである。 

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ダマシノ平では一瞬日が射して
ミヤマキンバイが輝いた

登った日はあいにくの荒天だったので、この地形の弊害である“道に迷いやすい”という事を重点的に述べたが、好天時には小赤石岳・赤石岳・《百間平》・大沢岳が美しい稜線を魅せる高山的な雰囲気満点の眺めである・・との事である。

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雨ならばしっとりとした
花が撮れるかも・・よ

だが、ワテの訪れた3回はいずれも雨で、この赤石岳で高山的な雰囲気満点の眺めを味わった事がない。 こういう時は意のままにならぬ天気を恨めしく思うが、それは仕方あるまい。 山に入ると3~4日に1日は天気が悪いので、荒天時の心得も必要だ。

・・さて、《ダマシノ平》から、左にそびえる岩礫の急斜面をジグザグに登っていく。 
見た目には滑りやすそうで、高低差もかなりあり嫌な感じだが、登ってみると30分もかからずに割りとあっさりと登り着く。←言っとくけど、当時の体力を以ってして・・だよ!

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岩場に咲くエーデルワイス

この急登を登りきったなら、小赤石岳の肩である。 ここからは、展望の素晴らしき3000mの稜線歩きが続く。 振り向けば、荒川三山が高山美あふれる山容を魅せている事だろう。
晴れていれば・・、であるが。 

“肩”の丘から、広潤な雰囲気いっぱいの“3000mの稜線”を楽しみながら、雨天ならば粛々と登っていこう。 岩の突起を3~4つ越えると、小赤石岳 3081メートル の頂上だ。 本邦第14位の標高を誇る山なのだが、その扱いは“粗末”なもので、頂上を示すものは“シャモジ大”のプラカードが指してあるのみだった。 小赤石岳からは、カール地形を見下ろしながら右に緩やかに反る様な方向に進む。 

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雨ならば粛々と・・
たまにカメラを向けて登ろう

緩やかな登り降りを繰り返し、《赤石小屋》への分岐を分けて登っていくと、石剣やケルンの乱立するカールバンドの上に出る。 ここまでくればもうひと息だ。 カールバンドを頂までつめていくと、三角点や測量やぐらや石柱の展望案内板がある赤石岳 3120メートル の頂上だ。

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赤石岳頂上標
この時の『だんご型』山名標
の方がよかった・・

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コチラの眺めの方が
赤石岳の山頂らしいかな・・

頂上からの展望は、素晴らしい・・だろうね。 晴れていれば・・。 特にキザギサとに尖った悪沢岳の眺めとカールバンド上に延々と立ち並ぶ石剣越しに望む富士山は、絵心をくすぐられる素晴らしき情景だ。 写真で見ただけだけれど・・。 盟主たる頂上の大展望を満喫したなら、下り始めよう。
なお、赤石岳の頂上直下の窪地には、当時は《赤石岳避難小屋》があった。

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赤石岳山頂から
これより行く方角を望む
下に写っているのが
『本物』の赤石岳避難小屋

窓は壊れて中は荒れているようだが、使えなくはなさそうだ。←次に訪れた際は実際に使ったよ。
中にテント設営して泊ったけど・・。 なお現在は、檜造りのロッジタイプの小屋が建っていて、食事付の有人小屋となっている。 時代は変わったものだ。 

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頂上の雪渓と山鳥

また、朝に赤石岳の頂上にいち早く立ちたいと思うならば、ここでの宿泊もいいだろう・・っていうか、今や飯付きの山荘が建ってるので、シーズン中は「朝に赤石岳の頂上にいち早く立ちたい」と目論む登山客でいつも満杯で、『畳一枚に3人』のスペースとの事である。

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赤石岳より望む
明日の『愛の六連発』の山々

水は下から持ち上げなくてはならない(もちろん、今は金を払えばもらえるし)が、自分だけの贅沢な山行を演出するのも楽しいだろう。 かつては、これができたのだ。 現在は便利となったが、一抹の寂しさを感じる。 そして避難小屋は取り壊されたようで、この記述は「昔の話」となってしまったなぁ・・。

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赤石岳の南側は
山名通りの赤石のガレ場だ

・・さて、赤石岳の頂上からは、山頂を形成する小さなピークを2つ程越えてから、赤茶けてゴロゴロした石の堆積する急斜面を下っていく。 赤石岳という山名は、この山を構成する赤茶けた岩石よりきている。 このゴロゴロした赤い岩石群の積み重なる光景は見た目には何とも重々しく、特に日差しがキツい時などは熱波を吸収して、その放射熱で“蒸し焼き”にされるだろう。 

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この堆積する赤石からの
炎熱効果でやたら熱いのである

この天然の“焼け火鉢”ゾーンを通過しても、続いて白い堆積岩帯のトラバースとなり、岩に密着して通過するので照り返しがキツく、今度は“照り焼き”の目に遭うだろう。 このダブルパンチは、体に相当こたえるのである。 

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炎熱ゾーンを越えてひと息着こう

この2つの灼熱地獄を越えて尾根上の小ピーク上に立ったなら、そよ風が顔に当たる心地よさに思わずヘタり込むだろう。 今日は時間的には余裕のある行程なので、大沢岳から聖岳へ続く山なみを見ながらしばし休憩しよう。

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晴れ間も出てきた・・
明日は天気も回復するだろう

尾根上に出ると進路を右に巻くように取り、脆いガラ場の下りとなる。 やがてガレた尾根筋を下っていくと、やがて広々としたハイマツ交じりのだだっ広い丘の上に下ってくる。 ここは《百間平》といい、ハイマツと砂礫地に咲く花々とがおりなす庭園を形成している。

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百閒平に咲くグンナイフウロ

だが、横に広々と広がったいるので進路が判りにくく、ともすれば“リングワンダリング”に陥る危険もあろう。 道標も、漠然と西方向を指しているのみで判り辛い。 なおコースは、ハイマツ帯を左に横切って、丘の尽きる所から急下降していくようにつけられている。 

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コチラ側は花の色が濃い
シナノキンバイが咲いていた

ここから《百間洞》までは、行程差250mをイッキに下っていく。 そして明日は、大沢岳に向かって350mを登り返す『愛の六連発』の序曲が待っているのだ。 前方にそびえる大沢岳を見るにつけ、250mを下ることの口惜しさをひしひしと感じる事だろう。

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百閒洞の入口付近

下りきった所が《百間洞》の露営地で、展場のそばを清らかな沢が流れる絶好のキャンプ場だ。 
すぐそばにまだ真新しい《百間洞山ノ家》が建っていて、“ゴージャスな夕食が出る・・”と評判も上々である。 

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早く着いたから
花を撮って昼寝と洒落こもう

少し早いが、今日はここでストップとする。 なお、今日の行程は、歩行5時間少々と比較的楽に取ってある。 それは、明日以降の『愛の六連発』を含む厳しい行程に備えて、あえて設定したものだ。 
明日は、累計標高差1500mづつのアップダウンがあるこのコース最大の難関・『愛の六連発』が待ち受けている。 今日は早めに就寝して疲れを癒し、鋭気を養おう。


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No Subject * by 鳳山
厳しい環境で可憐に咲く高山植物、美しいですね。

No Subject * by 根室大喜
ワテさんは昔凛々しかったんだ(^m^)しかし凄い写真ですね

Re: No Subject * by  風来梨
鳳山さん、こんばんは。

> 厳しい環境で可憐に咲く高山植物、美しいですね。

咲くのが夏のいっときしかない高山植物・・。 飛び交う虫に寄ってもらって受粉=後生に自身の存在を伝える為に精一杯美しく存在を魅せる・・という大自然が与えた子孫を残す知恵なんですね。

でも、そんなゴタク抜きで、魅せられて虜になりますね。

Re: No Subject * by  風来梨
根室大喜さん、こんばんは。

> ワテさんは昔凛々しかったんだ(^m^)しかし凄い写真ですね

コノ「彼」は、今のワテからすると「詐欺」ですね。(笑)
アイドルの「天池真理」が、ぶっとくなってバラエティに出ていたのとダブるが如く・・。

こういう写真を見た後、いつも次の朝・・、枕が涙で濡れてます(悲) 結構、(ワテにとって)破壊力のある凄い写真です(溜め息)

コメント






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No Subject

厳しい環境で可憐に咲く高山植物、美しいですね。
2019-07-22 * 鳳山 [ 編集 ]

No Subject

ワテさんは昔凛々しかったんだ(^m^)しかし凄い写真ですね
2019-07-23 * 根室大喜 [ 編集 ]

Re: No Subject

鳳山さん、こんばんは。

> 厳しい環境で可憐に咲く高山植物、美しいですね。

咲くのが夏のいっときしかない高山植物・・。 飛び交う虫に寄ってもらって受粉=後生に自身の存在を伝える為に精一杯美しく存在を魅せる・・という大自然が与えた子孫を残す知恵なんですね。

でも、そんなゴタク抜きで、魅せられて虜になりますね。
2019-07-23 *  風来梨 [ 編集 ]

Re: No Subject

根室大喜さん、こんばんは。

> ワテさんは昔凛々しかったんだ(^m^)しかし凄い写真ですね

コノ「彼」は、今のワテからすると「詐欺」ですね。(笑)
アイドルの「天池真理」が、ぶっとくなってバラエティに出ていたのとダブるが如く・・。

こういう写真を見た後、いつも次の朝・・、枕が涙で濡れてます(悲) 結構、(ワテにとって)破壊力のある凄い写真です(溜め息)
2019-07-23 *  風来梨 [ 編集 ]