風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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よも”ヤマ”話  第67話  南アルプス南部・大縦走 その3

よも”ヤマ”話 第67話 南アルプス南部・大縦走 その3《悪沢岳~荒川小屋〔静岡県〕’93・8
荒川中岳 3083m〔名峰次選 18峰目〕、荒川前岳 3068m【名峰百選 25峰目】

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赤石岳を借景にしたお花畑の大斜面

  南アルプス南部 みなみアルプスなんぶ (南アルプス国立公園)
南アルプスは白峰三山を越えると、頂を踏むのに二日がかりとなる。 それだけに、深山の趣をあふれんばかりに感じ取る事ができるのである。 まず、『漆黒の鉄兜』の異名を持つ塩見岳 3052メートル。 
この山は南アルプスのほぼ中央にあり、どこから登っても二日以上かかるのだが、頂上に立つと南・中央・北と全てのアルプス、そして日本の全ての3000m級の山を見渡せるのである。

塩見岳を越えると、南アルプスの盟主・荒川三山と赤石岳がそびえたつ。 
悪沢岳 3141メートル ・荒川中岳 3083メートル ・荒川前岳 3068メートル と連なる荒川三山は、赤石岳の雄大な眺めと鞍部ごとにある広大なお花畑が素晴らしい。

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荒川前岳の頂上直下から続く
大斜面のお花畑

中でも、荒川前岳の標高差400mにも及ぶ大斜面を染め上げるお花畑が赤石岳を借景に広がる風景は、言葉にできない雄大さがある。

もう一つの盟主・赤石岳 3120メートル は、赤みを帯びた山肌とその巨大な山容が印象的だ。 
そして、その巨大な山陵から望む朝の紅に染まった富士や悪沢岳の美しさには、思わず息を飲む。 

そして南部には、最後の3000m峰・聖岳 3013メートル がある。 この聖岳まで、赤石岳から僅か6km。 しかし、この間にピークが4つもあり、全て頂を越えていかねば聖岳までたどり着けない。 
この苦しい登りこそ南アルプスの魅力であり、これを克服してこそ雄大な風景を思いのままに味わう事ができるのである。

また、更に南に進めば、『お花畑』との地名を持つ上河内岳 2803メートル や、“光石”を抱く光岳 2591メートル など個性的な魅力を持つ山々が連なり、広大で懐の深い山域なのである。



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南アルプス南部・大縦走〔千枚小屋~荒川小屋〕行程図

   行程表            駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 静岡市街より車(2:30)→畑薙第一ダム(4:40)→椹島
《2日目》 椹島(3:20)→蕨段(2:00)→千枚小屋、千枚岳へは往復1時間20分
《3日目》 千枚小屋(0:45)→千枚岳(1:30)→悪沢岳(1:30)→荒川中岳
     (0:25)→荒川前岳(1:10)→荒川小屋
《4日目》 荒川小屋(0:40)→大聖寺平(1:45)→赤石岳(2:00)→百間平
     (0:50)→百間洞露営地
《5日目》 百間洞露営地(1:30)→大沢岳(2:00)→兎岳(2:30)→聖岳、奥聖岳へは片道20分
     (1:50)→聖平
《6日目》 聖平(2:20)→上河内岳(1:30)→茶臼小屋(1:45)→柿窪沢小屋
     (1:00)→ウソッコ沢小屋(1:30)→畑薙大吊橋(0:50)→畑薙第一ダムより車
     (2:30)→静岡市街

   ※ 前回の『第66話』の続き

さて、悪沢岳からの眺めであるが、何といっても深い谷筋を刻んで盟主たる姿を示す赤石岳が印象的である。 また花の風景は、この悪沢岳よりが最高潮となる。

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タカネツメクサ
こんな小さな花の色で大地が白に染まる

まずは、荒川中岳との鞍部に向かって続く、砂礫帯を白く染めるタカネツメクサの花・花・花。
そして、本谷の沢に落とす急斜面を黄色く染め上げるミヤマキンバイの群れ。 また、別の斜面では、ハクサンイチゲが白い花のじゅうたんを敷きつめていた。

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7月末~8月上旬の花の主役は
ミヤマキンバイとハクサンイチゲだ

これらの花風景は、中部山岳地帯では特質な眺めである。 北アルプスでは、まず見られぬ大地を染める“花のじゅうたん”。 これは、北海道の山に多い眺めである。

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斜面を埋め尽くす花・花・花・・

だが、ルート的には悪沢岳のガチャガチャした下りと荒川中岳への登り返しで、この日の最大のアルバイト行程となる。 花に見とれて落石を起こしたり、浮石に乗っかって転倒しないように気を引き締めて歩かねばならぬ所でもある。

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悪沢岳~荒川中岳は
こんな大きなアップダウンなのですが・・

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体力的に余裕がある若い頃なら
花しか目に入りません・・ ハイ・・

だが、体力的に余裕があり、そして『若い』という事もあって今とは比べモノにならない俊敏性があるがゆえに、多少の危険な下りも折り返しの急登も記憶に残る事がないんだよね~。 つまり、余裕で通過する事ができたなら、気にもならないのである。

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「綺麗な花は毒を持つ」が如くの
イタい錯覚を呼び・・

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ヘタれた今・・ この坂を上下すると
坂の傾斜ばかりが気になって
「こんなキツい坂でなかったのに」と嘆くのデス

・・とはいっても、この最盛期でも身体能力は平均を大きく下回ってたりして。 何せ垂直飛び33cm(高校男子平均は62cmらしい)で、走り幅跳びでは生涯一度たりとも3mの壁を越えた事がない・・という『king of 運痴』の金字塔を打ち立ててるしィ。 まぁ、ワテって、結構『不思議ちゃん』なのですね。 アッハッハ・・。(虚)

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斜面ごとに花が埋め尽くす
楽しい稜線歩き・・

谷に落ち込む急斜面を様々な花がおりなす“一色の花のじゅうたん”を見ながらの楽しい稜線歩きをこなすと、避難小屋の建つ荒川中岳 3083メートル に登り着く。 頂上と三角点は、小屋の裏手から50m程進むとある。 だが、眺めは今いち冴えない。 

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荒川中岳でアリバイ写真
若さと裏付けのない自信で
満ち溢れてるね・・ このタワケ

やはり、悪沢岳から望んだ赤石岳が印象強く残っているので、ちょっとやそっとの景色ではやはり物足りない。 でも、この山の名誉の為に言っておこう。 国土地理院における『荒川岳』の盟主、つまり地理学的な主峰はこの荒川中岳なのである。 

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頂上だけみると
ノッペリとした平凡な峰だが・・

荒川中岳から、やや下方向に登山者が群れている“丘”が見渡せる。 のっぺりとした感じのこの丘が、【名峰百選】の荒川前岳 3068メートル の頂上である。

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そのノッペリした荒川前岳から
大崩壊地を創造する無名峰を望む
この頃は荒川前岳自体が
山頂標柱も設置されない無名峰扱いだった

頂上だけ見ると、のっへりして“しまらない”この峰が何で!?と思われるかもしれない。
でも、これから始まるクライマックスの情景を魅せられれば、絶対に納得いくはずである。

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その「クライマックス」は
頂上直下から始まる

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斜面を駆け下りる花の波

頂上直下から、赤石岳に向かって落ちる標高差400mもの大斜面を染め上げる大お花畑。 
人を感動させる風景がそこにあった。 この大自然が創造し素晴らしき風景。 
この風景を目にしたなら、誰しも思う事だろう。 “行ってみたい”、そして“登ってみたい”と。 
この思い・・、これこそ【名峰百選】の“山”を選ぶ根幹なのである。 

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斜面を彩る花たち

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その彩りの一つ一つは
白く小さな花がおりなす斑点だ

ワテは山を選ぶのに、“山の歴史”の有無などに逃げたりはしない。 “山の歴史”とは、人間が勝手になすりつけてたものである。 それを評価の要因とするのは、山を冒涜しているに他ならない。 
人間の作った“ものさし”で大自然に優劣をつける、そんな思い上がりこそ戒めるべきだとワテは思う。 

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お花畑の迷路を
ジグザグに下っていく

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白に隠れて薄紅色もあった・・
イワカガミ

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迷路の区画ごとに
白と黄色の勢力が入り乱れていた

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白の斑点をおりなすハクサンイチゲの花

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花の迷路を下っていくと
小屋の建つ広場が見えてくる

さて、この花の大斜面は、移り変わりの“妙”も魅せてくれる。 7月中旬のシナノキンバイなどの黄金色の大斜面もいいし、8月に入ってからのハクサンイチゲによる“白”の器も魅せられる。
背後にそびえる赤石岳も懐を大きく悠然と構えて、この情景をより引き立てる。 赤石岳の沢筋まで広がるこの大斜面のお花畑に、時を忘れてしばし酔おう。 

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徐々にガスが漂ってきて・・

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ひと雨くる前に小屋に着くべく
先を急ぐを得なくなる

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霧の水滴が瞬く間に花に乗って・・

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ガスが立ち退いた一瞬・・

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ヤマがワテに
クライマックスを魅せてくれた

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クライマックスを終えて暫く下ると
高低差400mの大斜面のお花畑も
終わりの時を迎えたようだ

荒川前岳より続く大お花畑をジグザグに下りきると、グンナイフウロの群落を横切って今日の宿泊地・《荒川小屋》前のキャンプ場に着く。

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その色・・ 姿がエロスを魅せる
グンナイフウロ

水場も近く(但し、小屋に向かう途中の沢だったので、涸れている可能性もあり)、荒川・赤石といった名峰に囲まれた絶好のキャンプ地である。 

しかし、なぜか、ここを通り過ぎて次の小屋まで進む人が多い。 大概の山のガイドでもここは通過して、より設備のいい(近年、荒川小屋も立て直されて“山荘”となってしまった。 旧小屋は素泊まり小屋となっているようである)《赤石小屋》や《百間洞山ノ家》までを1日の行程としている。

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素晴らしいお花畑の余韻にひたるべく
ヤマに1日多く滞在しようか・・

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女王・クロユリも
お出迎えしてくれたし・・

だが無理は禁物だ。 それに、雄峰・赤石岳には疲れた体ではなく、余裕を持って登るのが盟主たる山への礼儀だと思うのだ。 ・・という訳で、ワテはここでストップしようと思う。 今回のような大縦走の山旅では、中に1日は安息日を設ける事が肝要だろう。 それでは、明日に登る赤石岳に山の夢を馳せよう。


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なぜならコレがワテの
ライフワークだから・・


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No Subject * by 鳳山
荒川前岳の標高差400mにも及ぶ大斜面を染め上げるお花畑、壮観でしょうね。まさに大自然が作り出したキセキの絶景です。

Re: No Subject * by  風来梨
鳳山さん、こんばんは。

> 荒川前岳の標高差400mにも及ぶ大斜面を染め上げるお花畑、壮観でしょうね。まさに大自然が作り出したキセキの絶景です。

この400mに及ぶお花畑が、当時は3000m峰でありながら無名峰同然の扱いだった荒川前岳を我が【名峰百選】に選びし理由ですね。 ホントに奇跡の情景です。 神を例えるなら、この大自然の偉大な創造力こそが『神』ですね。

でも、花の勢力が衰えつつある心配もあります。

コメント






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No Subject

荒川前岳の標高差400mにも及ぶ大斜面を染め上げるお花畑、壮観でしょうね。まさに大自然が作り出したキセキの絶景です。
2019-07-16 * 鳳山 [ 編集 ]

Re: No Subject

鳳山さん、こんばんは。

> 荒川前岳の標高差400mにも及ぶ大斜面を染め上げるお花畑、壮観でしょうね。まさに大自然が作り出したキセキの絶景です。

この400mに及ぶお花畑が、当時は3000m峰でありながら無名峰同然の扱いだった荒川前岳を我が【名峰百選】に選びし理由ですね。 ホントに奇跡の情景です。 神を例えるなら、この大自然の偉大な創造力こそが『神』ですね。

でも、花の勢力が衰えつつある心配もあります。
2019-07-16 *  風来梨 [ 編集 ]