2019-06-23 (Sun)✎
よも”ヤマ”話 第64話 大雪・トムラウシ縦走 その5 《トムラウシ山~下山》〔北海道〕 ’93・7
大雪・化雲岳 1954m 〔名峰次選 16峰目〕、小化雲岳 1925m
『神遊びの庭』から望む王冠・・
トムラウシ山
トムラウシ山 とむらうしやま (大雪山国立公園)
大雪山の山の中で、最もどっしりとした山容を魅せるのが、このトムラウシ山 2141メートル である。 この山は、山頂部に円頂丘を持つトロイデ型の火山で、大雪南部の盟主として知られている。
そしてこの山は、周りに素晴らしい自然の造形を創り上げている。
まずは、トムラウシ山腹にある『トムラウシ・日本庭園』である。 池塘と、花と、雪渓がおりなす自然の山水画。 いったいどのようにして、大自然はこの景観を創造しえたのか・・。
また、トムラウシ山の西側には、『五色ヶ原』に優るとも劣らない“花の世界”・『黄金ヶ原』がある。
『黄金ヶ原』は、ミヤマキンバイやキンポウゲなど黄金色の花が多く咲き乱れ、その名の通り花が大地を黄金色に輝かすのである。 そして、この山は“眺める”のもいいだろう。
《化雲平》から眺めるトムラウシ山は、また格別だ。 すぐ間近に、トムラウシ山がどっしりと構えた姿を魅せて壮観だ。 またこの平原は、ホソバウルップソウやエゾノハクサンイチゲの大群落地としても有名で、特にホソバウルップソウが満開の時は絶景だ。 山の緑と紫の花が美しく、この平原を飾るのである。
大雪~トムラウシ縦走 3日目
トムラウシ山からの下山ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》JR旭川駅よりバス (1:30) →旭岳温泉よりロープウェイ
(0:20)→姿見ノ池(1:45)→旭岳(1:20)→間宮岳(0:50)→北海岳
(1:05)→白雲岳避難小屋
《2日目》白雲岳避難小屋(0:40)→高根ヶ原・大雪高原温泉分岐(2:30)→忠別岳
(1:30)→五色岳(1:10)→化雲岳分岐(0:40)→ヒサゴ沼避難小屋
《3日目》ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
《3日目》ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
(1:25)→北沼(0:30)→トムラウシ山(1:30)→トムラウシ・日本庭園
(0:20)→ヒサゴ沼分岐 (0:45)→化雲岳(0:50)→小化雲岳
(1:30)→第一公園 (1:20)→滝見台 (0:45)→天人峡温泉よりバス
(1:05)→JR旭川駅
※ 『第63話』のトムラウシ頂上からの続きです
湧き出る源流の上に咲く花の様な
『奇跡的な体力』がないと
このコースを1日で下りきるのは無理ッス
最初に言っておくが、ヒサゴ沼の避難小屋からトムラウシを往復して下山するこの行程をやり抜くには、若さとなみ外れた健脚ぶりが必要である。 ワテに当てはめると『奇跡の体力』を保持していた時のように・・。
エゾノハクサンイチゲ
美しいモノには棘がある・・
この美しい花も毒花です
まぁ、無難に行くなら、トムラウシに登る日はヒサゴ沼避難小屋との往復だけに留めておいて、翌日に下山すべきだろう。 歳食ってから6度目に訪れたワテも、大人しく2日かけて下山したし・・。
そして無理な行程を立てると、大雪・トムラウシのツアー登山遭難事故のような事にもなりかねないのである。
トムラウシの懐にある北沼
泉湧き涸れる事のない『奇跡の沼』だ
それでは、トムラウシから天人峡までのロングラン下山を実行しよう。 《ヒサゴ沼》から、トムラウシ山を往復して《ヒサゴ沼分岐》まで戻ってくるのに、山頂での滞在時間も含めて6時間近くかかるので、その事を念頭において、荷物は《ヒサゴ沼分岐》にデポしていくのが妥当だろう・・というのが、トムラウシへの登り始めの前話の『お約束』であった。
ミヤマリンドウ
さて、“楽園”を充分に味わってきたなら、下山に取りかかろう。 《ヒサゴ沼分岐》から、《天人峡》まで12.5kmある。 それに加えて、トムラウシの頂上から《ヒサゴ沼分岐》まで4.5kmの都合17kmあるのだ。
それを思えば、写真を撮りながら下れたあの頃のワテは、真に『奇跡の体力』だったと思うよ。
ちなみに、この春(2019年)のゴールデンウイークに、テント装備一式を担いで九州の祖母傾山の縦走(15.5km)をしたのだが、朝6時出発で日没寸前の18時着と大バテにバテたし・・。
このように、歳食ってヘタれると長時間歩行は無理なのですね。
下りに見たトムラウシ・日本庭園
陽も高くなるとくすんでくるね・・
脱線した話を元に戻そう。 この時のワテで、トムラウシを8時に下り始めたのである。
トムラウシの日本庭園とかは前話で記載したので簡単に留めるが、この時はまだ膝も元気で、今の様に『地獄に落ちるが如くに遅く・・』もなかったようである。
ロックガーデンの下りも「トン・トン・トン」とリズム良く下れていたような気がする。
でも、今のワテが、リズムよくロックガーデンを下りる「若き日のワテ」を目にしたら涙が止まらんだろうね・・。
あらら・・、又また脱線したけど元に戻そう。 《ヒサゴ沼分岐》に戻った時間は記録していないが、10時前後だったろう・・と思う。 《ヒサゴ沼分岐》でデポった荷物を回収して、下りに取り掛かる。
化雲岳へは
キバナシャクナゲのお花畑の登りだ
ルートは《ヒサゴ沼分岐》より、化雲岳へ向けての登りとなる。 ガレ場をジグザグ登りで乗り切ると、『神遊びの庭』と呼ばれる庭園状のお花畑に出る。 ここは、《ヒサゴ沼》への左側雪渓(2日目で通った雪渓)経由の道との分岐点でもある。
『神々が戯れた庭』にて・・
広い山上台地に
チングルマのコロニーが
散りばめられていた
化雲岳への道以外は
花で埋まっていた
『神遊びの庭』の眺めを楽しみながら、緩やかな丘を登っていこう。・・但し、『神遊びの庭』の眺めを楽しむ『条件』として、体力に絶大なる自信がある健脚な御仁か、今日はトムラウシ往復のみの避難小屋連泊予定で明日下山の者に限るが・・。
目指すは丘の上にある
あの『デベソ』・・
目指す指標は、化雲岳 1954メートル 頂上にある《デベソ岩》だ。 この《デベソ岩》は、トムラウシ・『日本庭園』からも確認できる。 《デベソ岩》は化雲岳のシンボルで、これがなければ何の変哲もない山である。
デベソ岩と『神遊びの庭』
障害物のない丸い丘の中心に、まぁ・・これほど見事に“デベソ”が立っているのは、滑稽を通り越して神秘的でさえある。 この自然の創造力に、改めて敬白の念を感じる。
デベソ岩にて
体力があると顔つきも精悍に見えるね
《デベソ岩》でくつろいだなら、《天人峡》へ下っていこう。 化雲岳の稜線を緩やかに下っていくのだが、広い稜線上は『神遊びの庭』から続く庭園状のお花畑で、ミヤマアズマギク・チングルマ・エゾコザクラなどが盛り土ごとに整然と群落を成し、その整った美しさにまた足止めを食らいそうである。
去り難し情景・・
トムラウシとエゾノハクサンイチゲ
真に『神の戯れた庭』だった
表大雪の山なみとお花畑
下りにかかる時間を考えると
「もう最後にしなくては・・」だから
トムラウシをアップで撮って終わらせよう
そして振り返ると、トムラウシ山が盟主として毅然とそびえ立っている。 流れる雲、美しきお花畑、整然とした庭園状の平原、毅然としたトムラウシ山の容姿など、山の全ての魅力を兼ね備えている。
エゾノハクサンイチゲの群落が途切れると
地獄の下りが待っている
お花畑が途切れると
こんな感じで下っていく
やがて、庭園状のお花畑が途切れて、砂礫地をひと登りすると、小化雲岳 1925メートル 山頂に着く。 小化雲岳からは、旭岳がまるで屏風絵のようにそびえ立つのが見える。
この旭岳が振り向く位置になるまで
延々と歩かねばならない
今、その《屏風絵》の右端にいるようなものである。 ここから、《屏風絵》の左端まで移動しなければならない。 言い返せば、目の前にそびえる旭岳が“振り返って見る位置”まで歩かねばならない・・という事だ。
高根ヶ原の稜線・・
昨日まで歩いてきた稜線が望めた
これから、ダケカンバ林の中を延々と下っていくのである。 全くといっていい程に単調で、しかもジリジリと日が照りつけて暑い。 この辛さゆえ、旭岳が早く“振り返って見る位置”に移動して欲しい・・と願うが、これを意識する内はなかなか着かない。
あの大地がストンと落ちた先・・
あそこまで行ってもまだ全体の1/3位だ
ダケカンバ林が途切れると、針葉樹林帯に突入する。 ここは《第二公園》と呼ばれているが特に何もなく、強いていえば旭岳の眺めがいい・・という事だけであろう。 だが、旭岳が真正面に見えるようになり、今までの移動を実感できるだろう。
右側にあった旭岳が
真正面に見えるまで下ってきた
ここからも、ササを刈り分けた道を黙々と歩かねばならない。 歩いていくと、やがてササが途切れて《第一公園》と呼ばれる広場に出る。 今は《第二公園》、《第一公園》共に桟道が敷かれているが、この当時はこの辺り一帯がネマガリダケの根が絡むぬかるみ帯で、通過にはかなりの手間がかかったのである。
それでも、この悪路で歳食った時より断然に早く下れたのは必然的な謎である。
ここまで下ると花層が変わって
レンゲやタンポポが主となる
《第一公園》は花は咲いているのだが、タンポポ・レンゲ・シロツメグサ・・などで、ここまで下るともはや高山的な雰囲気は消えて小高い丘や野原のようである。 でも、花のある所は、くつろぐ場所としては申し分ない。 長く歩いた事だし、ここでひと息入れよう。 ひと息着いたら出発しよう。
ここからは樹林帯を急降下していくのだが、針葉樹林の根をつかみながら下る急下降で、しかも『天人峡まで4.5km』の看板に“大雪はそんなに甘くない・・”という事を実感できるだろう。
これを下りきると、樹林帯のぬかるみ半分の道がずっと続き、あまりの単調さにいささか気が滅入ってくる。 疲れがピークに達した頃、ようやく《滝見台》に着く。
落差250m・・
名瀑・羽衣ノ滝
ここは、《天人峡》の名瀑・『羽衣ノ滝』を眺めるのにちょうどいい高台で、ここまでは“スニーカー族”も多くやってくる。 ここからは、つづら折りの急坂をくどい程こなして《天人峡温泉》へ下っていく。
でも、駆け出しそうな傾斜で、しかも滑りやすいザラザラの砂道だ。 焦って下ると転倒しかねないので落ち着いていこう。
ちなみにこのタワケ(筆者)は、ゴールポスト(登山口の標柱)が見える「ゴールの200m手前」で、石にけつまづいて派手に転び、大雪の大地に「しばしお別れ」の口づけをした上に、両肘に『バイオレット・ハザードの紋章』(巨大なアオタン)を刻んでしまったのは藪の中に・・。
やがて、ホテルの屋根や駐車している車のボンネットの反射光が目に入ってくると、『裏大雪』の山上楽園めぐりもフィナーレを迎える・・。 両肘に『バイオレット・ハザードの紋章』が刻まれた理由は、ホテルの玄関口にある清涼飲料水の自販機が目に入って駆けだした事が主因である事も藪の中に・・。
・・バスの時間に余裕があれば、《天人峡温泉》に浸かって山の疲れを癒すとしよう。
ちなみにワテはここに車をデホしてきたので、旭川までは車での脱出である。
ランキングとは字で書くが如く
心『乱』す『禁』断で『愚』かな順位序列なのか・・
- 関連記事
-
- よも”ヤマ”話 第69話 南アルプス南部・大縦走 その5
- よも”ヤマ”話 第68話 南アルプス南部・大縦走 その4
- よも”ヤマ”話 第67話 南アルプス南部・大縦走 その3
- よも”ヤマ”話 第66話 南アルプス南部・大縦走 その2
- よも”ヤマ”話 第65話 南アルプス南部・大縦走 その1
- よも”ヤマ”話 第64話 大雪~トムラウシ縦走 その5
- よも”ヤマ”話 第63話 大雪~トムラウシ縦走 その4
- よも”ヤマ”話 第62話 大雪~トムラウシ縦走 その3
- よも”ヤマ”話 第61話 大雪~トムラウシ縦走 その2
- よも”ヤマ”話 第60話 大雪~トムラウシ縦走 その1
- よも”ヤマ”話 第59話 仙丈ヶ岳 その2
スポンサーサイト
Re: No Subject * by 風来梨
さゆうさん、こんばんは。
> こんにちは。
> 私のブログにおいで下さりありがとうございます。
> その上リンクまでして頂き凄く嬉しいです。
こちらこそ、おいで頂き有難うございます。
さゆうさんのブログの写真に魅せられました。 いつもあんな写真を撮りたいなぁと思っています。
リンクの御承認を頂き、有難うございます。 これからも宜しくお願いします。
> こんにちは。
> 私のブログにおいで下さりありがとうございます。
> その上リンクまでして頂き凄く嬉しいです。
こちらこそ、おいで頂き有難うございます。
さゆうさんのブログの写真に魅せられました。 いつもあんな写真を撮りたいなぁと思っています。
リンクの御承認を頂き、有難うございます。 これからも宜しくお願いします。
楽園 * by hanagon
まさに天上の楽園ですね。このような処に何度も行かれているとは羨ましい限りです。
単独での山行が多いようですが、北海道でヒグマとか遭遇した事はないのでしょうか?
単独での山行が多いようですが、北海道でヒグマとか遭遇した事はないのでしょうか?
Re: 楽園 * by 風来梨
ひらゴンさん、こんばんは。
> まさに天上の楽園ですね。このような処に何度も行かれているとは羨ましい限りです。
> 単独での山行が多いようですが、北海道でヒグマとか遭遇した事はないのでしょうか?
本当にパラダイスですよ。 何度も行けた『奇跡の体力』とヤマを好きである事に感謝です。
私・・、地獄のペースブローカー(歩くペースがメチャクチャ)なので、ほぼ全て単独です。 ヒグマは、日高のカムエク・八ノ沢カールで、カール壁から石を落としてきたヒグマがいましたね.。 やってくる事が不能な崖の上をノソノソしてたので、ボーっと見つめていました。
> まさに天上の楽園ですね。このような処に何度も行かれているとは羨ましい限りです。
> 単独での山行が多いようですが、北海道でヒグマとか遭遇した事はないのでしょうか?
本当にパラダイスですよ。 何度も行けた『奇跡の体力』とヤマを好きである事に感謝です。
私・・、地獄のペースブローカー(歩くペースがメチャクチャ)なので、ほぼ全て単独です。 ヒグマは、日高のカムエク・八ノ沢カールで、カール壁から石を落としてきたヒグマがいましたね.。 やってくる事が不能な崖の上をノソノソしてたので、ボーっと見つめていました。
私のブログにおいで下さりありがとうございます。
その上リンクまでして頂き凄く嬉しいです。
私のPS「書き込み制限」を宣言されて返信を書き込みできない状態ですので、これから先も訪問して書き込みは出来るのだが、私のブログ上での返信が出来ないので申し訳ありません。
山岳写真とトレインが主な内容なんですね。
山の絵、素晴らしいですねー。若いころは写真より山に少しかじったのですが、病気をしてから写真の方に変身ししました。
今はもっぱら平地での撮影に徹しています。
これからも宜しくお願いします。