風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第382回  奥深き峰・赤石南嶺 その2

『日本百景』 夏  第382回  奥深き峰・赤石南嶺 その2 〔長野県・静岡県〕

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黒薙の大崩壊地から望む
双耳峰・池口岳

   ’14・ 7  名峰次選 アルプス八千尺制圧作戦!?より・・
関東制圧編で目的の2峰(和名倉山・女峰山)をクリアして、「体力が消え失せ、筋肉がメタボ脂肪に変わっても何とかなるじゃない!」と頭に乗ったタワケ(筆者)は、その裏付けの全くない余裕と自信で、更にステップアップしたムズくシンドイ山を目標に掲げてしまう。 もちろん、目標達成の為の鍛錬や努力は一切ナシで・・である。 それが、今回の山行のあらましである。

その「更にステップアップしたムズくシンドイ山」というのが、今回の南北アルプスの縦走路から外れた位置にある2500m前後の峰々である。 これらの峰々はメイン登山ルートより外れているが故に、頂上までの歩行距離が長かったり、山小屋などの設備が皆無であったり、水場が乏しかったり・・で、テント装備必須の登山レベルでいうなら中級より上の健脚向けのレベルの山々なのである。

それを、『目標達成の為の鍛錬や努力は一切ナシで・・』を信条にしている大タワケが行くのである。
コリは、今回はどんな『オチャメ』に遭い対しますやら。 今回もバテた筆者の「時の涙を見る」モードによる、責任転嫁な呻き声が山中に響き渡る事だろう。

・・と言う事で、前回の『奥深き峰・赤石南嶺 その1』の続きです。



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赤石南嶺・池口岳 登山ルート行程詳細図

   行程記録             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 『道の駅・遠山郷』より車 (0:35)→池口岳登山口 (2:40)→黒薙
     (1:30)→ザラ薙の頭 (0:10)→ザラ薙平〔露営地〕
《2日目》 ザラ薙平〔露営地〕 (1:30)→加加森山ジャンクション (0:40)→池口岳(北峰)
     (2:00)→ザラ薙平〔露営地〕 (1:20)→黒薙 (2:00)→池口岳登山口より車
     (0:35)→『道の駅・遠山郷』

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山の南面全体が薙となって崩落している
池口岳・南峰

  《2日目》 池口岳往復と下山
翌朝、4時に目覚める。 昼寝したのに、良く寝れた。 朝飯は持ってきたコンビニおにぎりで済ませて、5時過ぎには出発。 今日の行程は、頂上まで上りの所要2時間半の池口岳往復に加えてそのままイッキに下山と、『目標達成の為の鍛錬や努力は一切ナシ』のタワケ野郎にはかなりハードルの高い内容である。
そして、その『高いハードル』に追い打ちをかけるように、お天気もグズつき気味だ。

さて、ルートは明瞭な一本道なれど、所々に倒木が転がる微妙な内容だ。 これまでに幾度となく、最近ではほんの2ヶ月程前に道迷いで連続『遭難フラグ』をおっ立てたワテとしては、多少通り難くても間違い様のない『一本道』の方が好ましいのである。 総じて言えば、山小屋皆無で水場もないマイナーな山域にしては登山道の状況は優良である。

岩が割と敷き詰められて歩き易い樹林帯を抜けると、いよいよ池口岳のある南アの深南領域の稜線から派生する尾根の上に出る。 この尾根は両側がすっぱりと切れ落ちた痩せ尾根で、深南嶺の稜線までボコッボコッとコブ峰を2つ持ち上げて連なっている。 もちろん、痩せ尾根なので巻き道などはなく、このコブの頭を忠実に踏み越えていかねばならない。 右手はザラ薙ぎの崩壊地形、左手は深い針葉樹林の崖と、結構高度感のあるこのコブ尾根を伝い登っていく。

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痩せ尾根のコブから薙の崩壊側を見る

尾根上の登山道は右手の「落ちたらヤバい」ザラ薙の崩壊地形をできるだけ避けるように付けられていて、いよいよ通過が難しくなっていくと左手に張り出した針葉樹林の幹に巻きつけられたゼブラロープを手繰って、コブ尾根の岩塊を左から巻くように越えているようだ。 森林のある左手は、木の幹や枝など手足の『取っ掛かり』が多数あるので当然だろう。 でも、尾根コブの岩塊を左巻きに巻くと、ゼブラロープ片手の懸垂下降となるのは、どう見ても一般の山の登山道ではないわなぁ・・。

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ゼブラロープ片手の懸垂下降・・
一般登山道でない証

・・で、尾根上に見える2つのコブ尾根を「左に巻き付いてゼブラロープで懸垂下降」で越えると、程なくコミカルな文字で『J・P ジャンクションピーク』と書かれた木の道標が巻きつけられた大木が現れる。 どうやら、ここが《加賀森山ジャンクションピーク》のようである。

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稜線上への入口
加賀森ジャンクションピーク

《ジャンクションピーク》と言うからには稜線上に出た事を意味するのであろうが、周囲は視界の全くない針葉樹林の森の中で、この山が森林限界より標高の低い山である事を周囲の情景が証明しているようだ。

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加賀森ジャンクションピークより
薙の崩壊方向を振り返る

《ジャンクションピーク》から稜線に上がると、痩せ尾根では右手に見えていたザラ薙の崩壊地形の源頭部を巻くように伝っていく。 一方、稜線の静岡県側は緩やかな草原地形が広がり、浸食によって露骨な非対称地形となっているようだ。

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地味目のゴゼンタチバナもチラホラと・・

この辺りから、チラホラと花も現れ出してくる。 エーデルワイスのウスユキソウ、ハクサンフウロ、ゴゼンタチバナなどが、崩壊地の源頭部にひっそりと隠れ咲きしている。 これは身を乗り出し気味にせねば撮りづらいが、あまり乗り出し過ぎると薙ぎの崩壊地に転がり落ちて標高差1000m真っ逆さま・・となるので注意しよう。

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エーデルワイスの別名がある
タカネウスユキソウ

冗談めかしに記したが、麓まで落ち込む大崩壊地はけっこうそそるモノがあるし、花も崖の岩に隠れ気味に咲いているので、撮影には危険が伴う事は留意頂きたい。

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花はこういうデンジャラスな所に
ひっそりと咲いていた
花を撮る為に身を乗り出し過ぎると
もちろん「サヨウナラ」・・

ザラ薙の源頭部の上にあるキレット状の痩せた鞍部を越えると、一転して広い草付きの中に出る。
その草付きの中を斜めに緩やかに登りつめていくと、4等三角点のある池口岳の頂上に着く。
頂上には南アの中央盟主の峰々の頂上にある『頂上標柱』がなく、木に『池口岳』と書かれた板切れかず巻きつけられただけの寂しい頂上風景である。

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 池口岳の頂上標
貧祖な頂上標がこの山域のマイナーさを物語る

もちろん、ワテ以外に誰一人としていない無人の山頂である。 これを目にして、この山域が『南ア』を名乗りながらも、あまり人の寄り付かないマイナーな山域である事を実感したよ。

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池口岳を含む
大井川源流部の説明板

頂上からの眺望であるが、頂上は適度にスペースがあるものの、周囲は木々が遮って眺望はあまり宜しくない。 だが、双耳峰である池口岳の南峰方向へ50m程出ると、池口岳の南峰がデンと立ちはばかっていて壮観だ。 また、池口岳名物の薙の大崩壊も見事に均一された傾斜で、イッキに頂上から麓まで1300mを落としている。

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1000m以上の均一された傾斜で
底まで続く地滑りとなっている

遠くの静岡側にそびえる山々は、登頂が困難極まる存在なのをひた隠すべく、穏やかな山容を魅せていた。 このまま進んで南峰も踏みたい所だが、タイムオーバーになる恐れに加えて、そもそもに今置かれた立場が現役から退化したメタボーマンである事実は如何ともし難く断念と相成った。
あぁ・・、奇跡の体力があった時は行けたんだろうなぁ、南峰までの往復1時間半・・。

n382 (5)
南峰への1時間半は
今のヘタレまくりでは無理だな

さて、下りであるが、あの厄介な痩せ尾根の岩峰からの懸垂下降は、下山時には逆に上りとなるので通過は格段に楽となる。 難関峰の頂上を極めた達成感も加わって、上機嫌でザラ薙の源頭部に咲くエーデルワイスを撮りつつ下っていく。

まぁ、和名倉山の道ロストから始まって、徳本峠の雪山(ぢ・つ・わ・・、雪が深くて霞沢岳に行けなかったの・・)、和名倉山リベンジ、女峰山と連発で山行をこなしてきたので、ちょっとは身体があの時の『奇跡』に近づいたのかもしれない。 下りもそんなにキツくなく、テント場の《ザラ薙平》に戻り着く。

テントを撤収して下山に取りかかるが、当初の想定では「バテにバテて、この地で連泊」も最悪のパターンとしていたので、午前10時過ぎに下山準備にかかれるのはすごぶる上出来である。
だが、空が『上出来』ではなくなってきた。 雨が落ちてきたのである。 急いで合羽を着て、テント場を出発。

これより黒薙までは森の中を通るので、あまり雨に打たれる事がなかった。 それ故に雨が降っている感覚がつかみ辛かったのである。 ・・が、黒薙に出た途端、状況は一変した。 薙ぎ落ちた黒薙の東面に向かって、暴風雨が吹き荒れていたのである。 そして、この東面が薙ぎ落ちた黒薙を、暴風雨をモロに受けながら通過しなければならなくなったのである。 状況は、薙に下ろす暴風雨に煽られたなら、薙に転がり落ちてしまう・・って寸法だ。

さすがに「これはマズい」と思ったよ。 そして、この暴風雨に幅50cmしかない黒薙のヘツリを越えるのは、5分以上の確率で「薙に吹き飛ばされて転がり落ちる」気がしたのである。 能天気極まるタワケがこう思うのだから、結構「くる」最悪の状況だったのだ。

そこで、困難な目に遭遇すると『ゴキブリなみの足掻き力』を発揮するこの筆者(タワケ)は、妙に落ち着いて考えられる最良の通過方法を思いつく。 それは、暴風吹きすさぶ薙の通過を回避して、森の中のブッシュを草をつかみながら移動するのである。 この黒薙の西面も急斜面ではあるのだが密林の草付で、草を穿り、木の根や幹を手繰りながら行けば暴風雨に晒される事が回避できるのである。

・・で、実際にやってみると、思ったほどに急斜面でもなく、思ったほどにブッシュに阻まれる事もなく、暴風雨に当てられる事なく危険地帯を回避できたのである。 でも、通過して安全な草原地帯までくると、さすがにヘタリ込んだよ。 安全な草原地帯に出て、身の安全を確認できるとホッとして、タダ雨に打たれる中で荷物を下ろして胡坐をかき座り休憩・・。

ひと息着いてから再び下り出すが、下っていく毎に雨は弱くなっていき、どうやら暴風雨は黒薙より上だけのようだ。 要するに、山の頂稜部のみに黒雲がドッカリ被って、麓はセミがミンミンと鳴く蒸し暑い夏空・・ってパターンのようだ。

下りきって面平の平坦部まで降りると、案の定に樹が覆わない所から強烈な夏の日差しが照りつけてきた。 着ていた合羽が見る見るうちに乾いてパリパリのゴアゴアと着心地がすごぶる悪くなったので、溜まらず脱いで丸めてザックの天袋に仕舞う。

でも、ザックの天袋部は黒薙の大雨の水を含んでダボダボなので、パリパリのゴアゴアなのに濡れいて、なおかつ合羽の機能である水を弾く機能皆無の「使えない化学繊維」と化していたよ。
これが2万円だからねぇ。 人の造りだしモノは、到底自然のパワーの前には無力のようだねぇ。

n382 (8)
信濃俣や大無間山など
里では拝めぬ山なみを望む奥深き山旅だった

・・で、昼の2時前に、夏の日差しで乾燥して地割れを起こしている車置きスペースの荒地に戻り着く。 車の中はキンキンに熱せられて、ハンドルが握れなくなるほどに熱くなってたよ。
なので、エアコンが利きだすまで、雨の山行の後片付け。 誰もいないのでパンツ一丁になってTシャツなどを着替えて、麓にある『道の駅・遠山郷』へ。 ここで温泉に入り(この道の駅はクアハウス併設である)、この難関峰への山行を終える。


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No Subject * by 鳳山
困難に遭っても最良の解決策を見つけ出す。流石です。

Re: No Subject * by  風来梨
鳳山さん、こんばんは。

> 困難に遭っても最良の解決策を見つけ出す。流石です。

いつも「なんでこんな所で・・」という程に簡単に『オチャメ』る(ドジってツボにハマる)のですが、『オチャメ』ると妙に冷静になれるんですよね。 まぁ、これだけ『オチャメ』を体験すると、必然的に対応力が着くのかな?

こんなに『オチャメ』ってそれごとにパニクっていたら、恐らくこの世にはいないでしょうし・・ね。(笑)

拍手! * by hanagon60
余程の物好き(失礼(_ _))でなければこのような山行は考えないでしょう!
その体力、精神力に拍手です。

Re: 拍手! * by  風来梨
はなゴンさん、こんばんは。

> 余程の物好き(失礼(_ _))でなければこのような山行は考えないでしょう!
> その体力、精神力に拍手です。

この池口岳は200名山に指定されてるので、一部の猛者が空身で日帰りでやって来る程度ですが,日帰りだと空身の猛者でも往復12時間かかる難関中の難関峰ですね。

『奇跡の体力』が過去のモノとなってヘタリきった私は、あえて天泊としました。 水を担ぎ上げる苦労はあるけれど、余裕のある山行ができますね。

それでも、『オチャメ』る私って・・。 物好きなんでしょうね。 おかげで、私の選んだ山200峰の〔名峰次選〕が完踏出来ました。

コメント






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No Subject

困難に遭っても最良の解決策を見つけ出す。流石です。
2019-06-16 * 鳳山 [ 編集 ]

Re: No Subject

鳳山さん、こんばんは。

> 困難に遭っても最良の解決策を見つけ出す。流石です。

いつも「なんでこんな所で・・」という程に簡単に『オチャメ』る(ドジってツボにハマる)のですが、『オチャメ』ると妙に冷静になれるんですよね。 まぁ、これだけ『オチャメ』を体験すると、必然的に対応力が着くのかな?

こんなに『オチャメ』ってそれごとにパニクっていたら、恐らくこの世にはいないでしょうし・・ね。(笑)
2019-06-16 *  風来梨 [ 編集 ]

拍手!

余程の物好き(失礼(_ _))でなければこのような山行は考えないでしょう!
その体力、精神力に拍手です。
2019-06-17 * hanagon60 [ 編集 ]

Re: 拍手!

はなゴンさん、こんばんは。

> 余程の物好き(失礼(_ _))でなければこのような山行は考えないでしょう!
> その体力、精神力に拍手です。

この池口岳は200名山に指定されてるので、一部の猛者が空身で日帰りでやって来る程度ですが,日帰りだと空身の猛者でも往復12時間かかる難関中の難関峰ですね。

『奇跡の体力』が過去のモノとなってヘタリきった私は、あえて天泊としました。 水を担ぎ上げる苦労はあるけれど、余裕のある山行ができますね。

それでも、『オチャメ』る私って・・。 物好きなんでしょうね。 おかげで、私の選んだ山200峰の〔名峰次選〕が完踏出来ました。
2019-06-18 *  風来梨 [ 編集 ]