2019-06-09 (Sun)✎
よも”ヤマ”話 第62話 大雪・トムラウシ縦走 その3 《高根ヶ原・花》 〔北海道〕 ’93・7
大雪・平ヶ岳 1752m 、忠別岳 1963m 〔名峰次選 15峰目〕・・その2と同じ
コマクサが砂礫に
ピンクの斑点を示して・・
裏大雪 うらたいせつ (大雪山国立公園)
『表大雪』の裏側にそびえる白雲岳 2230メートル を中心とした山々は、『裏大雪』と呼ばれている。 『裏』と呼ばれるだけに、交通手段・設備などは『表大雪』に遅れをとっているが、高山植物をはじめ、山頂からの眺望、漂う原始の香り・・など、山の魅力にあふれる地域だ。
・・『裏大雪』の最大の魅力は、何といっても原始の香り漂う大平原と、それを覆い尽くすお花畑である。 さて、この地域のプロフィールだが、赤岳 2078メートル 手前の《コマクサ平》や、咲く花の種類が『日本一』といわれる小泉岳 2158メートル 、主峰・白雲岳の裾野に広がる《高根ヶ原》の大平原とそこに咲く壮大なお花畑の群落、白雲岳山頂より眺める見事な縞模様の雪渓や、冠型の独特の山容を誇るトムラウシ山 2141メートル 、《高根ヶ原》の大平原から望む“遙か遠き山”『東大雪』・石狩岳 1967メートル 、《大雪高原温泉》の“秘境”沼めぐりコース、原始の香り漂う平ヶ岳 1752メートル ・忠別岳 1963メートル 、《五色ヶ原》の入口となる五色岳 1868メートル など、尽きない魅力を秘めている。
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》JR旭川駅よりバス (1:30) →旭岳温泉よりロープウェイ
(0:20)→姿見ノ池(1:45)→旭岳(1:20)→間宮岳(0:50)→北海岳
(1:05)→白雲岳避難小屋
《2日目》白雲岳避難小屋(0:40)→高根ヶ原・大雪高原温泉分岐(2:30)→忠別岳
(1:30)→五色岳(1:10)→化雲岳分岐(0:40)→ヒサゴ沼避難小屋
《3日目》ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
《3日目》ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
(1:25)→北沼(0:30)→トムラウシ山(1:30)→トムラウシ・日本庭園
(0:20)→ヒサゴ沼分岐 (0:45)→化雲岳(0:50)→小化雲岳
(1:30)→第一公園 (1:20)→滝見台 (0:45)→天人峡温泉よりバス
(1:05)→JR旭川駅
※ 前回の『第61話』で歩いた《高根ヶ原》に咲く花の話です
朝も5時前でないと
『北のモルゲンロード』の情景は望めない
北の大地の短い夏の朝は早い。 夏至近くになると、深夜の3時前より空の縁が薄らと白くなる位だ。
そして、4時台にはもう夜明けの時を迎え、5時過ぎには早朝とは言いづらい程に陽が高く上っている。 上の写真の「トムラウシのモルゲンロード」も、避難小屋を出発する朝の5時前に、気合いを入れるべく撮ったモノである。
その朝の情景も、6時を周ればただの朝景となり、7時を過ぎれば昼とも思える夏空が広がるのである。 だから、5時に避難小屋を発って高根ヶ原の平原に繰り出した30~40分が、高山植物撮影の『勝負時』となるのだ。
朝露の宝石を花びらいっぱいに乗せ
輝くチングルマ
:
贅沢過ぎる朝の御褒美だ
でも、「早起きは三文の得」との諺以上に、北のヤマと大地は早起きの御褒美を魅せてくれる事だろう。 それは、朝露の水滴の宝石を花びらいっぱいに乗せて朝の光に輝く花々の姿である。
もう、この可憐な花情景に言葉はいらない。 拙いかもしれないけれど、ワテの写真で語る事にしようと思う。
エゾツガザクラの小さな花提灯が
朝の光を吸収して光を発して・・
朝露の宝石を乗せたチングルマの競演
エゾツガザクラの花提灯と
朝露の宝石を散りばめたチングルマとのコラボ
朝の花々を愛でながら進むと、気づかぬ位に早く時間が過ぎ去り、あっという間に大雪高原温泉への道・三笠新道との分岐に出る。 避難小屋からここまでコースタイムにして1時間足らずだが、朝の花の絶景で足を止められて1時間は経っている事だろう。
辛うじて朝の雰囲気の残る
大雪高原沼と石狩連峰
知らず知らずのうちに陽の位置も朝とは言いづらい程に高く上り、その光も朝を示す黄色ではなく、ギラギラと白く眩い夏空の光となっている事だろう。 この三笠新道分岐から、目的地のヒサゴ沼までの標準コースタイムが7時間の長丁場なのだ。 従って、あまり余裕をかましていると、ヒサゴ沼の避難小屋で悲惨な目に遭う(これはヒサゴ沼に至る次話で語るとしよう)ので御用心・・。
もう陽の光は夏空の
ギラギラモードになっていた
なお、この大雪高原温泉へと分岐する三笠新道であるが、以前は下れば秘湯の高原温泉ロッジがある絶好のエスケープルートであったが、ワテが訪れたこの頃よりヒグマの出没が多く報告されて閉鎖となっている。 道が閉鎖された後も高原温泉ロッジは、「ロッジより上は通行禁止」で細々と営業していたみたいだが、数年で撤退したとの事。
ちなみに、この高原温泉への林道と高原温泉ロッジは、花の楽園・五色ヶ原や沼ノ原へのアブローチ道で、事前に営林署へ林道ゲートの解除ナンバーを聞いておかねばならぬ程の山奥の秘境なのであるが、「楽園へのアクセスルートと宿泊施設」としてかなり重用されていたようである。
右手に残雪のストライプを魅せる旭岳
左手はバックライトに光る
雲海に浮かぶ石狩連峰
:
大雪の名峰に囲まれた極上のルートだ
三笠新道分岐からは背後に白雲岳、右手に残雪のストライプを魅せる旭岳、左手に雲海の眩いバックライトに浮かぶ石狩連峰をに魅せられながら歩いていく。 道は高根ヶ原の大平原を忠別岳に向かって緩やかに登っていく感じだ。
果てしなく続く
緩やかな丘を登っていくと・・
花の種も朝のチングルマやエゾツガザクラから、コマクサ・ホソバウルップソウ・イワブクロといったルート上の地形である砂礫帯に咲く花々が主となってくる。
ホソバウルップソウの魅惑の紫
その色彩に北の遠き領土に思いを馳せる
高山植物の女王・コマクサ
神かかりな花の造形を魅せる
女王・コマクサ
砂礫地に咲くイワブクロ
砂礫に咲く花を見ながら、真正面にある遥かなる山・トムラウシを目指して、高根ヶ原の大平原を歩いていく。 この広く潤った感覚は、北海道の大雪山ならではの味わいのある感覚である。
正面にそびえる
トムラウシの『王冠』に向かって・・
花を愛でながら歩いていくと、さしも広い高根ヶ原の広大な砂礫地も終端を迎える。
その終わりは、今まで延々と続いた砂礫帯がいきなり途絶え、忠別沼を要する足元が泥濘む湿地帯に突入するのである。
こんな感じで
いきなり砂礫帯が途絶える
ワテが通ったこの時はまだ湿地帯を渡す桟道の設置前で、岩がゴロゴロと転がる砂礫地からいきなり泥坊主にハマる苦難な道だったよ。 言い訳がましいが、この忠別沼の泥濘む湿地帯の通過に手間取って、沼の写真はあまり撮れなかったよ。 なので、コレも前回の使い回し・・。
辛うじて忠別沼が写ってますね・・
前回の使い回し写真
:
でも桟道見当たらないでそ・・
この厄介な泥濘を越えると、ようやく忠別岳に向かって高度を稼いでいく。
まぁ、高度を稼ぐ・・といっても今までが緩やか過ぎただけで、普通の登山道の登りよりは遥かに緩い傾斜なのだが・・。
この傾斜は草原帯となり、先程までとはまた違った花々に魅せられるのである。
花の層としては草原に群落をなす花々で、傾斜のかかった草原の大地をその花の色のじゅうたんとして染め上げるのである。
大地を染め上げる
エゾコザクラのピンクのじゅうたん
ピンクのじゅうたんが
坂の上から敷かれている
その他、珍しい希少種が咲くエリアでもある。 リシリリンドウやマシケゲンゲなど、ヤマの名がついた希少種がチラホラと姿を魅せるのである。
花の峰・暑寒別由来の希少種・マシケゲンゲ
魅惑の紺色・・
希少種・リシリリンドウ
また、これまた珍しい白のエゾコザクラも見られたのである。 ピンク色に染まる花のじゅうたんに、光り輝くような純白のエゾコザクラ・・。 コレを目にした時は、もう言葉にできない程の感動があった。
ピンクに染まる草原の中に・・
純白のエゾコザクラに魅せられた感動・・
やがて、大平原の端で、頂上を境にストンと崖となって落ちる忠別岳に登り着く。
ここまでコースタイムで4時間程・・。 まだ、目的地のヒサゴ沼までの6割強の道程だ。
いつまでも眺めていたいが・・
まだ今夜の宿・ヒサゴ沼避難小屋
までの半分を過ぎた位だ
忠別岳の頂上を埋め尽くすハクサンイチゲの花と目指すトムラウシの絶景の中でひと休みしたら、先に進む事にしよう。
※ 次回の『第63話』は、『ヒサゴ沼からトムラウシ』おば・・
思ったより営業効果あるみたい・・
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遙かなるトムラウシ * by hanagon60
トムラウシも行かれていたのですね。登山を始めて30年以上経ちますが、大雪山は当初から憧れていました。一度に夏が来るから素晴らしい光景が展開していますね。
特にトムラウシ! クワウンナイ川遡行から登ってみたかったです。💰も時間もなくて遙かなる山です…
ブロ友よろしくお願いしたいと思います。
特にトムラウシ! クワウンナイ川遡行から登ってみたかったです。💰も時間もなくて遙かなる山です…
ブロ友よろしくお願いしたいと思います。
Re: No Subject * by 風来梨
ぎゃめさん、こんばんは。
> こんなたくさん咲いてるコマクサを見た事がありません
> その他の花も素敵ですね
> 朝露に輝きが宝石みたいです(^.^)
実際、凄いですよ! これで、一発で「北海道フリーク」になってしまいました。 次回は、大地が花で白く染まるシーンおば・・。 乞う、御期待ください。
> こんなたくさん咲いてるコマクサを見た事がありません
> その他の花も素敵ですね
> 朝露に輝きが宝石みたいです(^.^)
実際、凄いですよ! これで、一発で「北海道フリーク」になってしまいました。 次回は、大地が花で白く染まるシーンおば・・。 乞う、御期待ください。
Re: 遙かなるトムラウシ * by 風来梨
はなゴンさん、こんばんは。
> トムラウシも行かれていたのですね。登山を始めて30年以上経ちますが、大雪山は当初から憧れていました。一度に夏が来るから素晴らしい光景が展開していますね。
> 特にトムラウシ! クワウンナイ川遡行から登ってみたかったです。💰も時間もなくて遙かなる山です…
> ブロ友よろしくお願いしたいと思います。
こちらこそ、宜しくお願いします。
山の記事を見せ合いましょう!
トムラウシと日高は、オチャメを繰り返した事もあって特別に思い入れがある山ですね。 そのオチャメの数々は、また追々記事にしていこうかと・・。
あぁ、そう言えば、私も山に登って30年になりますね。
途中途切れた事もあったけど・・。
> トムラウシも行かれていたのですね。登山を始めて30年以上経ちますが、大雪山は当初から憧れていました。一度に夏が来るから素晴らしい光景が展開していますね。
> 特にトムラウシ! クワウンナイ川遡行から登ってみたかったです。💰も時間もなくて遙かなる山です…
> ブロ友よろしくお願いしたいと思います。
こちらこそ、宜しくお願いします。
山の記事を見せ合いましょう!
トムラウシと日高は、オチャメを繰り返した事もあって特別に思い入れがある山ですね。 そのオチャメの数々は、また追々記事にしていこうかと・・。
あぁ、そう言えば、私も山に登って30年になりますね。
途中途切れた事もあったけど・・。
No Subject * by 鳳山
花に詳しくないので偉そうなことは言えませんが、高原植物は独特の美しさがありますね。
Re: No Subject * by 風来梨
鳳山さん、お早うございます。
> 花に詳しくないので偉そうなことは言えませんが、高原植物は独特の美しさがありますね。
高山植物の花々は、ヤマの短い夏に虫たちに受粉してもらうために精一杯華やかに、そして厳しいヤマの自然環境に耐える為に可憐に咲くのでしょうね。
精一杯生きている姿が、魅せられる者に感動を抱かせるのでしょうね。 だから、後生にこの大自然を伝える義務があると思いますね。
> 花に詳しくないので偉そうなことは言えませんが、高原植物は独特の美しさがありますね。
高山植物の花々は、ヤマの短い夏に虫たちに受粉してもらうために精一杯華やかに、そして厳しいヤマの自然環境に耐える為に可憐に咲くのでしょうね。
精一杯生きている姿が、魅せられる者に感動を抱かせるのでしょうね。 だから、後生にこの大自然を伝える義務があると思いますね。
こんなたくさん咲いてるコマクサを見た事がありません
その他の花も素敵ですね
朝露に輝きが宝石みたいです(^.^)